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黄輪雑貨本店 新館

黄輪雑貨本店のブログページです。 小説や待受画像、他ドット絵を掲載しています。 よろしくです(*゚ー゚)ノ

    「あらすじ」紹介ページ

    双月千年世界 目次 / あらすじ

    • はじめてこのブログに来たので何から読んでいいかよく分かりません!」と言う方へ。
      当ブログ最大量の長編小説、「双月千年世界」へは、こちらのページから各目次へ飛ぶことができます。
      その他の小説については、一度トップページに戻ってから、右の方にある目次を選んで下さい。

    • 目次は連載順に表示されています。「何が何だか分からないけどとりあえず最初から読んでみたい!」と言う方は、
      一番上の「蒼天剣」から読んでいくことをおすすめします。

    • 久々に来たけどどんな話かすっかり忘れた!」と言う方、
      ざっくり説明聞いてから本編を読んでみたい……」と言う方のために、各部にあらすじを設けています。
      各部(『第1部』とか『第2部』とか)にあらすじへのリンクを張っているので、そこから見てみて下さい。


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    DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 1

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、最終作。
    闇の叡智、新大陸へ。

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    1.
     19世紀のヨーロッパ大陸は、ほとんど常にフランスの動向に左右されていたと言っても過言では無い。2度の帝政と王政の復古、そしてその合間、合間に立ち上がってくる共和制と、フランスと言う国家そのものが目まぐるしく形を変え、その度に、周辺国は翻弄され続けてきた。

     そして当時既に60の大台を超えていたこの小男もまた、フランスに翻弄された者の一人と言えた。
    「忌々しい……! まったくもって忌々しいわッ!」
     遠ざかっていく自分の故郷をにらみつけながら、彼は船上で呪詛(じゅそ)を吐き散らしていた。
    「なにがナポレオンだ! なにが新たな皇帝だ! 一枚皮を剥けば、そこいらの凡百と変わらぬ浪人風情ではないか! ほんのちょっと運が良かっただけの、ただのチンピラだ! なのに何故、彼奴などよりもっと才と実力を持つこの余が、割りを食わねばならぬと言うのだ!?」
    「まあ、まあ、閣下。そのへんで……」
     下卑た顔をくしゃくしゃに歪めつつ、わめき散らしていた老人――数日前までフランスの裏社会で名を馳せていた悪の首魁、「大閣下」ジャン=ジャック・ノワール・シャタリーヌの周りに、やはり品の無さげな男たちが集まって来る。
    「確かに国を追われる形となってしまったのは残念でなりませんが、いい機会ととらえればよろしいではないですか」
    「なんだと!?」
     顔を真っ赤にして憤るJJに、カイゼルひげをたくわえた、恰幅のいい男がこう続ける。
    「アメリカにはチャンスが山のようにあります。旧大陸はおろか、アフリカやアジアからもヒトとカネが集まる東部、そして黄金眠る西部! そのくせ結束力に乏しく、東部と西部では最早異国、異邦、いいえ、異世界と言っていいほど、国としてのまとまりはバラバラに等しい。当然、警察力などと言ったものは皆無。我々のような者が取り入り財と権力を成すには、絶好の土地ではないですか」
    「しかしアルテュールよ……」
     渋い顔をするJJに、身長2メートルはありそうな大男が、幼い子供を胸に抱きながら声をかける。
    「閣下のことですから、祖国に馴染みのない土地は好まれないのではと察しております。ですがルイジアナは元々、我がフランスのものだったではないですか。少なからず我々に縁(ゆかり)ある土地と考えて、何の問題もございますまい」
    「……ふーむ、ふむ」
     途端に、JJの顔が嬉しそうににやける。
    「なるほどジュリウス、お前の言う通りだ。そもそもそのルイジアナ自体、ナポレオンが相場に釣り合わぬ端金(はしたがね)で売り払ったのだ。そのナポレオンも祖国に背を向けられたことであるし、その三世だの何だのを名乗るあの醜男もまた、フランスを代表する権利なぞ無いクズだ。
     よって結論として――ルイジアナ売却に正当性があるなど、正当なるフランス国民、旧大陸の闇の叡智と畏(おそ)れられたこの余は、断固として認めん。であればルイジアナは余がその手中に収めたとて、何の問題も無かろう。いいや、その買収も半世紀以上昔のこと。その半世紀分の利子を付けて、フランス国民の手に返してもらうべきだ」
    「つまり閣下」
     アルテュールはカイゼルひげを指先で撫で付けながら、JJにニヤニヤと笑みを向けた。
    「奪(と)る気ですな、アメリカ全土を」
    「うむ」
     それまでの憮然とした態度を一転させ、JJは握っていた杖の先を西へ向けた。
    「征くぞ、新大陸へ! 征くぞ、新世界へ! アメリカは余のものだ! ぐふっ、ぐふっ、ぐふふふふっ……!」

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    クルマのドット絵 その83

    クルマのドット絵

    クルマのドット絵紹介。
    これで今年分は最後。

    ・シボレー インパラ(2014)
    CHEVROLET IMPALA

    ・ダッジ チャージャー(2014)
    DADGE CHARGER SRT HELLCAT

    今年はアメ車を11種描いたため、
    昨年言っていた日本車・欧州車・米国車の割合が大きく変わりました。
    昨年11月時点では48:46:6でしたが、
    現時点では46:43:11と、当然ながらアメ車のウェイトが増しました。
    ……が、来年の待受のテーマは「80年代日本スポーツカー」のため、
    また日本車の比率が増える予定です。

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    クルマのドット絵 その82

    クルマのドット絵

    今回もクルマのドット絵の紹介です。

    ・フォード トリノ(1968)
    FORD TORINO

    ・シボレー シェベル マリブ SS(1964)
    CHEVROLET CHEVELLE MALIBU SS

    ・フォード フュージョン(2020)
    FORD FUSION TITANIUM

    白猫夢」にて登場した自律人形たちの名前は、
    アメリカで大人気のカーレース「NASCAR」にかつて出場した車種の名前から取られています。


    今年の待受のテーマを「アメ車」に設定した時から、
    上記の6車種については描くことを決めていました。
    もう「白猫夢」が終わって4年経ちますが、ようやく肩の荷が降りた気分。

    (なお自律人形については、トヨタからも「セリカ」と「カムリ」を出しましたが、
    勿論これは日本車なので、今年の待受では除外しています)

    次回作「緑綺星」でも彼女たちの後継機を登場させる予定ですが、
    名前は何にしようかな……。またレース関係の何かかなぁ。

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    クルマのドット絵 その81

    クルマのドット絵

    前回に引き続き、クルマのドット絵紹介。

    ・ラムトラックス ラム(2019)
    TESLA MODEL S(75D)

    ・シボレー シルバラード(2020)
    CHEVROLET SILVERADO

    ・ダッジ コロネット(1966)
    DADGE CORONET

    ラムとシルバラードはカウンタ素材にしやすそうだなーと思うものの、
    今現在、FC2カウンターの素材は僕しか供給してないような状態。
    現状でこれ以上作っても、自分で自分のシェアを奪い合うだけになってしまうので、
    競合相手が出ない限り、新作は作りません。

    長いことネットで活動しているせいか、人気コンテンツの栄枯盛衰を目の当たりにする機会も多くなりました。
    もうカウンタを設置しているサイトなんて、ほぼほぼ見当たりません。
    自分でチマチマとホームページを作るより、ツイッターやyoutubeのアカウント作った方が早いですもんね。
    フォロワー数がカウンタ機能の上位互換と言っていいようなものですし。
    (アクセス数≒人気と捉えれば、フォロワー数の方がより実態を表す数値だろうなって)

    ただ、ブログ自体がもう用済みかって言うと、まだそんな時期じゃないなと思っています。
    10年以上に渡る膨大な数の記事を別の媒体にアーカイブするとなると、とてつもない手間がかかりますし。
    「数日前に見たあのつぶやき、もう一度読みたいな」と思ってツイッターを掘り下げようと試みても、
    恐らく3日分くらいスクロールしたところでうんざりし、あきらめてしまうでしょう。
    それどころか、昨日の話を追うことすらも困難です。
    「過去を振り返る」と言う機能に関して言えば、ブログは非常に有用だと思っています。
    その機能を上位互換できるウェブコンテンツが登場しない限り、
    ブログが利用価値を失うことは無いでしょうし、僕も続けていきます。

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    クルマのドット絵 その80

    クルマのドット絵

    年末も近付いて来たのでボチボチ、クルマのドット絵を紹介していきます。

    ・テスラ モデルS(2012)
    TESLA MODEL S(75D)

    ・シボレー タホ(2014)
    CHEVROLET TAHOE

    ・フォード エクスプローラー(2019)
    FORD EXPLORER

    今年はめっちゃ描いたなぁ。
    携帯待受12点のうち、11点が新規に制作した素材を使用しています。
    今回を含め、4回にわたって紹介していきます。

    長らく「狐と狼の描き分け方が分からない」と言っていましたが、
    矢端さんのアドバイスもあって、最近は自分なりに分けられるようになってきました

    ただ、まだドット絵となると厳しい。
    一応、テスラの横に描いた子は狼のつもりですが、
    今のところ狐との違いは尻尾だけ。
    まだまだ努力が必要なようです。

    (ツノのある動物はすごく楽なんですよね。
    ツノ描けば割とごまかせるから……)

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    2020年12月携帯待受

    携帯待受

    dadge charger srt hellcat

    dadge charger srt hellcat

    dadge charger srt hellcat  dadge charger srt hellcat

    2020年12月の携帯待受。
    フォードのフラッグシップカー、GT。

    あまり時事ネタをいじるのは好きではないですし、
    そもそもクルマのネタじゃないので、さわりだけ。

    共和党(トランプ)の敗北により、2021年からは民主党(バイデン)からの大統領が政権を握ることとなるようです。
    ……で、そもそも「共和党」「民主党」って何がどう違うのか。

    共和党は基本姿勢として、経済や市場への介入を積極的に行いません。
    自由平等」の、自由の方を重視する考え方の人たち。
    いわゆる「(存在感の)小さな政府」路線です。
    一方で民主党は、積極的にアメリカ経済の舵取りをしたがるタイプ。
    各人の「自由」より全体の「平等」を重んじる人たちです。
    こっちは「大きな政府」路線を歩んでいます。

    では「市場への介入」「経済の舵取り」とは、具体的にどんなことをしていたのか?
    2008年(リーマンショック発生)当時、民主党政権(オバマ)であった米政府は、
    経営破綻したGMとクライスラーに約800億ドル(9兆円相当)の資金援助を行いました。
    合衆国政府がアメリカ経済の中核たる自動車産業を見捨てるわけにはいかない」、と言う考え方でしょう。
    そして2016年からの共和党政権。
    アメリカ経済はアメリカ国民の手で回復・成長させてこそ」と言う考え方からなのか、
    雇用状況改善を訴え、大型減税を軸とした政策を推し進めます。
    効果の程や結果の是非はともかくとして(それを論ずるのは僕の主義ではありません)、
    政策面では「自国を助けてこその政府」「国民が立て直すべき」と、
    上から下への公助(トップダウン)下から上への自助(ボトムアップ)と言った対比が見えてきます。



    お気付きかも知れませんが、今回の待受は赤と青、そして星と縞(Stars&Stripes)で出来ています。
    色設定については若干の相違もありますが、
    今年の待受シリーズのテーマである「アメリカ車」を象徴する出来になったかな、と。



    次回もグラデーションの組み合わせについて、twitterにてアンケートを行う予定です。
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    架空ロゴ;「金火狐財団」

    架空ロゴ

     
     
    こないだエリザとランニャの2ショットを描いたついでに制作したものを、改めて紹介。
    「双月千年世界」全編で活躍する大富豪一族、ゴールドマン家が有する巨大組織、
    金火狐財団(Aurora-Tail Foundation)のロゴマーク。
    左上が原作準拠、金と赤の毛並み。
    そして右上・左下・右下の順に、ゴールド・プラチナ・チタンのイメージ。



    ここから妄想、もとい、双月シリーズの設定について。
    2020年現在、原作中での言及はしていませんが、
    このロゴマークを創ったのはエリザの息子のロイド
    エリザの跡を継ぎ、金火狐商会の2代目総帥になった後に制作され、
    以降ずっと使われ続けている、伝統あるデザインとなっています。

    ただしロイドの「業績」は、残念ながらこれくらいしかありません。
    お母さんがものすごく偉大過ぎたこともありますが、
    そもそも彼は実業家向けの性格ではなく、どちらかと言えば芸術家肌。
    やがて経営に行き詰まってしまい、総帥就任から4年で罷免されてしまいました。
    その後3代目総帥に就任したのがロイドの従兄弟で、エリザの甥に当たるレオン。
    事業のほとんどを譲渡・売却し、ほぼ鉱業一本に絞ることで難を逃れましたが、
    それもまた、商売人としては凡人の域を出なかったことの証明。
    初代総帥エリザが築いた「黄金」時代は、この2人によって遠い彼方へと過ぎ去りました。
    この一族が再び世界に羽ばたくのはフォコ、
    即ち10代目総帥ニコル3世の時代が来るまで待たなければなりません。

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    イラスト;エリザ(琥珀暁、6回目) & ランニャ(火紅狐、3回目) / やるんやったらコッソリやな

    双月千年世界

    こないだのパラとランニャが可愛く描けたので、
    考察メンバーでリレーしてみようと思います。

    と言うわけで、今回はランニャとエリザ。

    ランニャ「こーゆーサビたとこ見るとさー、いっぺん塗装全部ひっぺがしてがっつりサビ落として、
    もっぺんきれーに塗装したくなるんだよなー」
    エリザ「分かるわー。横にあるペール缶もベッコベコやから、ついでに直したりたいねんな」
    ランニャ「なー!」
    エリザ「ま、本気でやったら丸一日作業やろし、
    勝手にやったらビルの持ち主に怒られるやろからやらんけども」
    ランニャ「なー……」
    エリザ「……やるんやったらコッソリやな」
    ランニャ「……ふふ」
    エリザ「ふっふふ……」


    小鈴「いつの間にか屋上の手すり綺麗になってんだけど、工事するって言ってたっけ?
    ってか、してたっけ?」
    シュウ「さあ……?」
    パラ「存じません」
    エリザ・ランニャ(ニヤニヤ)

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    イラスト;ランニャ(火紅狐、2回目) & パラ(白猫夢、2回目) / イキイキしてんなぁ

    双月千年世界

    1年半ぶりにランニャとパラを描いてみました。


    天狐ちゃんのドレスを選んだ話の前日譚。
    この2人はあの街にちょくちょく赴いているようです。

    エリザ「アタシらはどないや、って?」
    小鈴「そもそもだけど、別にわざわざココ出る必要無いのよね」
    シュウ「収録に使ってるこのビル、1階にお店とドラッグストアありますもんね」
    小鈴「しかもwi-fi完備の上、全員にスマホ支給だもんね」
    エリザ「そうは言うてもたまーに外出たなるけどな」
    シュウ「別に外出禁止だって名言されてるワケじゃないですもんねぇ」
    エリザ「ソコら辺はテキトーやんな

    カラー。

    パラ「こちらの衣服ですが、天狐ちゃんの容姿に適合することが強く予想されます。
    ですが今ランニャがお持ちの品も同程度の適合度であると思われます」
    ランニャ「あ……う、うん、……イキイキしてんなぁ、パラ。
    ってかさ、無表情で目ぇだけキラッキラさせんの怖いってば」
    パラ「コーデの選択作業に何ら問題は無いものと判断します修正の必要はありません作業を続行します」
    ランニャ(わ、出たぁ。パラの超早口モード)

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    こいつ本当に誰とでも仲良くなるなぁ

    今日の旅岡さん



    10月31日。
    旅岡さんたちは虎海さんのお家、いや、お屋敷に招待されていた。

    「『本日の催し物 ハロウィンパーティ』、……紅の予想当たったね」

    シーツを被った大江さんの一言に、旅岡さんがうなずく。

    「雅ちゃんと話しとると、なーんか一言二言抜けよるからな。
    言葉通りドレスだけ着とったら、逆に恥かいとったわ」

    そう返しつつ、旅岡さんも百均で間に合わせた帽子をポン、と叩く。

    「今日やるパーティ言うたら大体これやろしな」
    「ま、一応ってことでドレスも着てきたけどね」

    と、あっちこっちのテーブルに群がるオバケたちの中に知っている顔を見付け、二人は同時に声を上げる。

    「あ」「おっ?」
    「なーによ?」

    そこにいたのは、吸血鬼風の格好をした夜狼さんだった。

    「あ、や、来てたんだって」
    「わたしが来ちゃいけないっての?」

    とっさに旅岡さんはごまかす。

    「いやいや、そんなん言うてへんやん。
    奈々の趣味と合わへんのちゃうかって思っただけやん」
    「ミヤとは結構一緒に遊んでんのよ。共通の趣味もあるし」
    「そうなんや。あ、話変わるけどな、めちゃめちゃ似合うてんな、そのカッコ」

    旅岡さんにほめられ、夜狼さんの顔に朱が差す。

    「え、……そ、そう? 似合ってる?
    でも間に合わせって言うかとりあえずって言うか、ちゃんと揃えられなくて」
    「全然そんな感じせえへんよ。クオリティめちゃ高やん。ほんま奈々、センスええわぁ」
    「……ありがと」

    夜狼さんはいたずらっぽく笑いながら、両手を挙げる。

    「うふふ……、ぎゃおー」
    「わー血ぃ吸われるー」

    じゃれる旅岡さんと夜狼さんを眺めながら、大江さんはぼそっとつぶやいた。

    「……こいつ本当に誰とでも仲良くなるなぁ。すげーわ」

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    イラスト;克天狐(双月千年世界、8回目) / オレにこんなの着せて楽しいのかよ……

    双月千年世界

    久々にあつ森でマイデザインを制作したので、
    天狐ちゃんに着せてみました。

    線画。

    本人は絶対着たがらない、フリルふりっふりのドレス。

    いつものようにカラー3種。

    レッド。


    ブルー。


    ブラック。

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    2020年11月携帯待受

    携帯待受

    dadge charger srt hellcat

    dadge charger srt hellcat

    dadge charger srt hellcat  dadge charger srt hellcat

    2020年11月の携帯待受。
    ダッジのモダンマッスル、チャージャー。

    「マッスルカー」と言えば60~70年代のやたらパワフルなアメ車を指す言葉ですが、
    現代でも多少ではあるものの、パワフルなアメ車は生き残っています。
    ずっと前に紹介したコルベットとかバイパーなどが相当します。
    今回紹介するチャージャーも、現代(モダン)のマッスルカーと言えます。
    元気が無いだの死に体だのと散々腐していましたが、
    まだこれくらいガッツのあるクルマを作ろうと言う精神は死んでないようです。流石アメリカ。



    さて、来年の待受について考える時期になりましたが、
    今回はテーマを既に決定しており、80年代の日本スポーツを取り上げる予定です。
    と言うのも、ちょっと前に10年前に描いたクルマと今描いたクルマを比較する機会があったんですが、
    やはり10年前に描いたモノは拙い点が多く見られ、いっぺん描き直す機会を設けたいなと考えていたので。
    と言うわけで、上記のテーマに沿った車種をリクエストします。
    ちなみに現在、ハチロクとCR-Xは描くことが確定しています。
    リクエストされる方は、その辺りの車種でご依頼下さい。
    「古いクルマってことでしょ? じゃあGT-Rで! ハコスカとか言うやつ!」
    「日本のスポーツカーって言ったらホンダのTYPE-Rしかないじゃん!」
    とか言い出したら、僕は鼻で笑います。
    あくまで80年代のスポーツカーでお願いします。



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    業務連絡;「琥珀暁」目次とあらすじを追加しました(第6部、あとがき)

    雑記

    下記ページにて、「琥珀暁」第6部とあとがきの目次、そして第6部のあらすじを追加しました。

    http://auring.web.fc2.com/au-novel.html(目次)
    http://auring.web.fc2.com/ko-outline6.html(第6部あらすじ)

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    次回作は現在、頑張って制作していますが、年内には絶対完成しないと思います。
    DWIIIの書籍化作業と来年の年賀用イラストを制作することを考えると、
    とてもじゃないが手を付けられない、……と言うのが現状です。

    いや、それよりも重大なこととして、次回作のネタが全然まとまってません。
    「こう言う要素を盛り込みたい」と言うような漠然としたアイデアはあるものの、
    未だ形となっていない状況です。
    もしかしたら第1部の公開は、来年の下半期くらいになってしまうかも知れません。



    ……燃え尽きちゃった感がある。
    双月千年世界の前身となる未公開小説があることは以前から何度かお伝えしていますが、
    それを「蒼天剣」として書き直した時から、エリザに関してはもっと活躍させようと考えており、
    結果、その思いを10年抱いていたわけで。
    それがこの4年でどうにか消化されたことで、やり切った感覚が自分の中で出てしまっています。

    ただ、これで終わりにするわけが無い。
    色んな謎や伏線をまだ回収してないんですから。
    それにシュウだって活躍させてあげたいと言う思いがありますし。

    もうちょっと色々悩んでから、制作に臨むと思います。
    まずは目の前のDWを片付けてから。

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 14

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第14話。
    ミズ・キャリコ。

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    14.
     キャリコ農場に到着したエミルたちの前に、カウボーイ風の男が現れた。
    「ミズ・キャリコがあんたらを待ってる。案内するよ」
    「ええ、ありがと。……ところであんた」
     そそくさと背を向けかけた男に、エミルが声をかける。
    「前に会ったことがあるわね?」
    「気のせいだろ? ……と言いたいところだが、ごまかすのは無理っぽいな」
     男はそう返し、テンガロンハットを脱ぐ。そこでアデルも、男に既視感を覚えたらしい。
    「あれ……? 確かにあんたの顔、見覚えがあるな」
    「2年前だからな、あんたらに会ったのは。だが未だに、傷は痛むぜ」
     そう言って、男は両腕の袖をまくる。そこに付いた銃創を見て、エミルが声を上げた。
    「ああ、思い出したわ。特務局の不良刑事ね、あんた」
    「ずいぶんな言われようだな。だがまあ、その通りさ」
     その男――2年前に黄金銃事件で汚職が発覚した特務捜査局の元捜査官、ジェンソン・マドックは、苦笑いしつつ自分の身の上を語った。
    「あんたらにバレた後ムショ行きになったんだが、なんでかミズ・キャリコが保釈金を出してくれたのさ。『世話になった貸しがある』って。どう言う意味か分からんかったし、聞いてもはぐらかされちまったが、1ヶ月前、ミズ・キャリコが『答え』を連れて来たのさ」
    「連れて来た?」
     尋ねたアデルに、ジェンソンは右目を手のひらで覆って見せる。
    「イクトミだよ。俺があいつのことを色々助けてたからってんで、ムショから出してもらったのさ。……ま、そんなこんなで、俺はミズ・キャリコに雇われて、ここで牛やら豚やらの世話をしてるってわけだ」
    「結構なご身分ね」
     ひんやりとした返事に、ジェンソンは苦い顔をした。
    「……まあ、怒ってるわな。あん時は空包だったが、実際、あんたらを撃とうとしたわけだからな」
    「お返しに両手両足にブチ込んだし、貸し借り無しにしてあげてもいいけど」
    「そりゃどうも」
     ジェンソンは小さく頭を下げ、帽子をかぶり直して、一行の案内に戻った。

     牧場の北にある屋敷に着いたところで、ジェンソンは主を呼んだ。
    「ミズ・キャリコ! お客を連れて来ました!」
    「ありがと、ジェン。もう下がっていいわよ」
     奥から現れたエミルそっくりの女性が、にこ、と一行に笑いかける。
    「よく来てくれたわね。ご飯の用意をさせるから、ちょっと待ってて」
    「お金持ちなのね。コックもいるのかしら?」
    「多少はね。100万ドルをポンと投げたあなたほどじゃないかも知れないけれど。でも家のことはほとんどあたしがやってるわよ。ご飯は『あいつ』が振る舞いたいって言うからさせてるだけ」
    「あいつ?」
     尋ねたものの、エミルにはそれが誰であるか、察しは付いていた。彼女もそれに気付いたらしく、こんな風に返して来た。
    「言っとくけど、もうあいつのことは、『イクトミ』と呼ばないであげてね。あたしが色々手を回して、新しい戸籍を作ってあげたから」
    「何て呼べばいいのかしら? あんたのことは?」
    「昔と同じでいいわよ、『フィー』」
     そう言われて、エミルの口から、自然に名前が出た。
    「あいつ、……は、そう、『アレーニェ』ってあだ名を嫌ってるから、……そう、……アレンと呼んであげてって、アンジェが。……アンジェって、……誰? 知ってるはず……でも……思い出せない……」
     こめかみに手を当てかけたエミルを見て、彼女はその手をつかむ。

    「やっぱり、覚えてないのかしら? でもきっとそれは、ページが古いインクで張り付いてるようなものだと思うわ、あたしは。丁寧に、優しく引っ張ってあげれば、綺麗にはがれるはずよ」
    「……」
    「あたしのことは、トリーシャと呼んで。さ、もうベーコンの美味しそうな匂いがしてきたし、出来上がる頃よ。あなたとは10年ぶりに話せるもの。
     楽しく、ご飯食べましょう。ゆっくり昔話しながら、ね」

    DETECTIVE WESTERN 14 ~西の果て、遠い夜明け~ THE END
    TO BE CONCLUDED...

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 13

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第13話。
    にぎやかで穏やかな西部町。

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    13.
    「ピクニックに行く程度のつもりだったけど、……そんな雰囲気じゃ無いわね」
     エミルは駅を出るなり、こんなことを言い出した。
    「副局長は田舎だろうって言ってたわよね」
    「だな」
    「ここが田舎だって言うなら、マンハッタン島は人口過密で沈没するわよ」
    「っスね」
     その町は東部沿岸と遜色無いくらいに、人と馬でにぎわっていたからだ。
    「件のミズ・キャリコは相当のやり手のようだね。私も当初、大草原の小さな家と言うような、のどかな風景を想像していたのだが、これはあまりにも予想外だったよ。道理でチケット代が妙に高かったわけだ」
     局長も面食らった様子で、往来を見渡していた。と、往来の向こうからこちらへ向かって来た者に目を留め、手を挙げる。
    「やあ、A」
    「来たな、諸君」
     アーサー老人は駅の時計に目をやり、満足げにうなずく。
    「定刻通りの到着だな。この町は近隣路線で、一番の稼ぎ頭のようだからな。西部有数の正確さだ」
    「鉄道会社の元社長らしい意見だね。だが今は、探偵局の手先としての意見を伺いたいところだ」
    「うむ。2日前に到着し、諸君が来るまでの間に町の調査を行っていた。
     結論から言えば、ここは裏も後ろ暗いところも無い、極めてクリーンな町だ。どうやら町の名士、ミズ・キャリコがにらみを利かしているらしい。乱暴狼藉を働くような輩は即刻ムチ打ちにされると言う話だし、説得力も十分なようだ。この2日間に何度か、すねに傷のありそうな者を何人か見たことがあったが、彼らもそのうわさを聞いていたのだろう、実に大人しくしていたよ」
    「珍しいな。西部の町が、それほどまでに平和をたたえているとは。ふーむ……」
     局長は町の奥にうっすら見えている農場に目をやり、それからエミルに顔を向けた。
    「エミル、君は顔を隠しておいた方がいいだろう。相当似ていると言うなら、声をかけられるかも知れん。妙な受け答えをして変なうわさが立てば、彼女に迷惑がかかるだろうからな」
    「そうね。あたしも会う前にひと悶着起きてムチ打ちなんて、ゴメンだし」
     エミルは素直にバンダナを上げ、口元を覆った。

     町の往来は活気にあふれ、とても明るかった。そして――少なくとも、アデルやエミルがこれまで見てきたどの西部町よりも――人々の顔は穏やかだった。また、確かに他の町であれば腰の拳銃や背負った小銃をチラつかせ、我が物顔で振る舞っているであろう風体の男たちも、ここでは大人しくポンチョやコートを着込み、武器の類を人目にさらさないよう配慮しているようだった。
    「不思議な町だ」
     その様子を眺めていた局長が、そんなことをつぶやく。
    「活気に満ちている。だが、その割に平和だ。人が集まれば騒ぎが起こるものだが、ここにはそれが見当たらない。酒を呑んでいる者さえ、大人しく座っている」
    「単に規律が厳しいだけなら、反発する。無法者ならなおさらだ。だが、そう見える輩でさえ、にこやかに振る舞っている。魔法か何かでも使えるのか、ミズ・キャリコは?」
     首をひねるアーサー老人に、エミルがこう応じた。
    「そんなんじゃないわよ、きっと。あなたも直に彼女に会ったんだから、分かってるんじゃない?」
    「……そうだな。まだ、何となく、ではあるがな」

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 12

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第12話。
    後日談と懸案事項。

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    12.
    「DCの『友人』からも称賛されたよ。特別に名誉勲章と感謝状をもらえるそうだ」
     局長は高笑いしつつ、今回の成果を皆に報告していた。
    「それで、いくらになったのかしら。あなたには金ピカメダル一枚より、緑色のリンカーン一人の方が大事でしょ?」
     エミルに突っ込まれ、局長はニヤっと笑って返す。
    「うむ、その通りだ。ま、あっちこっちから懸賞金やら報奨金やらが届いてね、結構な額になったよ。詳しいことは明かせんが――税金だの何だのとあるし、どこから嗅ぎつけられるか分からんからね――端的に言えば、探偵局の資産は3倍以上になった」
    「そりゃすげえ」
     揃って目を丸くしているアデルとロバートを尻目に、エミルが続けて尋ねる。
    「じゃ、あたしや他の、100万ドルに絡んでるみんなに対して、リターンはあるのかしら? 出資者に配当を渡すのは当然の義務よね?」
    「無論だとも。100万ドルはきっちり返す。……ただし、流石に今すぐ全額と言うわけには行かないから、これは『年金支給』と言う形で勘弁してもらいたい」
    「年いくら? いつから支払いかしら? 勿論給与や、これまでの積立とは別計上よね?」
     局長は苦笑いしつつ、エミルの矢継ぎ早の質問に答える。
    「1年につき最低1000ドル。そこに探偵局の年間収益の3%を均等に分割して付加する。支払いは今年末、12月1日から毎年同日に、口座に振り込んでおく。この契約は100万ドル全額を、きっちり支払い切るまで継続する。これは給与および積立金とは別に支払うものとする。この内容で納得してくれるかね、エミル?」
    「ええ、オーケーよ。みんなもそれでいいわよね?」
    「おう」
     アデルとロバート、そしてサムやダンなど関係している者がうなずいたところで、エミルもにっこりと局長に微笑みかけた。
    「じゃ、今の契約内容、後で書面でお願いね」
    「ははは……、すっかりいつもの君に戻ったようだな」
     局長は大笑いしつつ、こう続けた。
    「ではもうそろそろ、君の懸案事項について話すとしようか」
    「あの農場の場所ね?」
    「うむ。調べること自体は大した手間では無かったし、今から駅に行ってもすぐ、チケットが取れるだろう。ただ、気になる点はいくつかあるがね」
    「って言うと?」
    「キャリコ農場だが、N州では有数の規模だ。農場主はトリーシャ・キャリコと言う女性だが、腕一本でこの10年の間に成り上がったとかで、周囲の人間からは『ウィンチェスターを持った魔女』と呼ばれ、畏れられているとか、慕われているとか」
    「トリーシャ……!?」
     名前を聞いて、エミルが驚愕する。アデルとロバートも、顔を見合わせた。
    「トリーシャって……」
    「大閣下がそう呼んでたな」
    「君の話じゃあ、ニューマルセイルで出会ったのは君そっくりの女性だったそうだな。恐らくはそのミズ・キャリコが、君たちと出会ったその女性本人なのだろう。
     何がどうなっているのか、私も是非詳細を知りたい。私も同行しよう」
    「分かったわ」
    「あと、アーサーも行きたいと言っていた。現地で落ち合う予定だ」
    「大所帯ね。あの時いた人間全員なら、こいつとロバートも行った方がいいかしらね。じゃ、全部で5人?」
    「リロイも付けるかね?」
     冗談めかして尋ねた局長に、オフィスの端で席に付いていたリロイが、ひざの上の猫を撫でながら答える。
    「僕はやめとくよ。随分留守にしちゃったもんだから、セイナがおかんむりなんだ。たっぷり相手したげないとね」
    「了解した。と言うわけでこの5名になる」
    「はーい、はい。楽しいピクニックになりそうね」

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 11

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第11話。
    とても奇妙な、事件の顛末。

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    11.
     女が拳銃を海に捨てたところで、東の稜線から太陽が昇り始め、彼女の顔にも陽の光が差した。
    「なっ……」
     そこでようやくアデルたちは、彼女の顔をはっきり確認できた。
    「え……エミル?」
    「こっちにも姉御、あっちも姉御、……ど、どう言うことスか?」
    「エミル君、君には双子の姉がいたのかね?」
     3人はエミルと、彼女そっくりの顔をした女の顔を交互に見比べ、揃って目を丸くする。
    「い……いない……はずよ? いるはずも……」
     エミル本人も顔を真っ青にし、呆然としている。と、女がエミルに手を差し出す。
    「やっぱりって感じね。あなた、全部忘れてるんでしょ」
    「あたしが? ……なにを?」
    「10年ぶりだからゆっくりお話したいところだけど、もう太陽も昇って来たし、町の人がこっちに来る頃でしょうね。それに大閣下たちを追って来たって話だし、援軍なり何なり、あなたたちも呼ぶつもりでしょ?」
    「え、ええ」
     エミルが手を取り、立ち上がったところで、女は羽織っていたガウンから、一通の封筒を取り出した。
    「落ち着いたらここに来てちょうだい。全部、教えてあげるわ」
     女はエミルたちに背を向け――何故か、気絶したままのイクトミの襟を引っ張って引きずりつつ――そのまま、どこかへ立ち去ってしまった。
    「……どう言う……ことだ?」
     棒立ちになったまま、アデルが尋ねる。だが、その問いに答えられる者は、そこには誰一人いなかった。

    「君の前に君が? ……ごめん、ちょっと何言ってるか分かんない」
    「分かんないでしょうね。あたしだって分かんないもの」
    「で、受け取った手紙には何て書いてあったの?」
     リロイに尋ねられ、エミルはその封筒を差し出した。
    「住所よ。N州ネックプラッツ、キャリコ農場」
    「ネックプラッツ? うーん……、聞いたこと無いな。州からして、相当な田舎って感じだし」
    「調べられる?」
    「局に帰ればすぐ分かるよ」
    「すぐ帰れるかしら」
     リロイはサルーンの窓から港の様子を眺め、肩をすくめて返した。
    「大事になってるみたいだから、もうちょっとかかるかもね」



     リロイの言った通り、組織壊滅から捜査が一段落するまでには、長い年月を費やすこととなった。
     サンドニシウス島は南岸部こそ機銃と爆発で崩壊していたものの、船渠や工場など、他の箇所についてはほとんど無事に残っており、また、隠蔽工作も行われなかったことから、彼らの全犯行計画自体は容易に、白日の下に晒すことができた。
     相当に時間と、そして費用を要する捕物とはなったものの、リゴーニがどさくさに紛れて射殺されていたことにより、費用面における問題は全く起きなかった。彼が大西洋を隔てて築き上げた、違法な遺産500万ドル超は――無論、本人からの異議申し立てなどできるはずも無いので――そっくりそのまま、大西洋に面する各国政府当局の金庫に収められることとなったからである。
     だが一方で、時間面の問題は解決できなかった。彼らが犯した罪はあまりにも多かったために、誰がどんな計画に加担し、実行したのか、そしてその結果どこにどんな被害をもたらしたのか――事細かに調べ上げ、立証し、幹部を含む構成員239名を一人残らず裁判にかけ、その各々に応じた刑が執行されるまでには、最長で20世紀をまたぐ者すら現れる始末だった。

     とは言え、現地での調査にパディントン探偵局が付き合ったのは一週間程度で済んだため、そこからさらに半月後には、全員が東海岸に凱旋することができた。

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 10

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第10話。
    半死人の証言。

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    10.
     と、ベッドの上の包帯男が、「うぐ……」とうなる。
    「あら?」
     エミルが目を向けたところで、ディミトリが息も絶え絶えと言った様子で口を開けた。
    「こ……ここ……は?」
    「ニューマルセイルのサルーン。まだこの世よ」
    「……ぼ……くは……」
    「あんたはディミトリ・アルジャン。ついさっきまでクソ組織の幹部サマだったけど、今は棺桶に片足突っ込んでるところよ」
    「そ……組織……閣下……うう……」
    「ディミトリ君」
     様子を眺めていたアーサー老人が声をかける。
    「いくつか質問させてもらう。君たちはどうやって、州軍の強襲を察知したのだ?」
    「……あ……うう……」
    「覚えていないかね? それとも答える気力が無いのか?」
     尋ね直したところで、ディミトリは切れ切れながらも答える。
    「閣下が……突然……兄貴と一緒に……すぐ島を出るぞと……僕にも……なんでか……良く……」
    「君はいつの間に船を出した?」
    「兄貴が……のど押さえた……ヤバいって思って……閣下を背負って……」
    「爆発の原因は?」
    「……エンジン……閣下は……ハイパワーって注文……でも出力がヤバすぎて……熱が……だから上……ラジエータ(放熱装置)……でも……桟橋から……撃たれ……ラジエータ……吹っ飛んで……すぐ真っ赤になって……また撃たれて……それで……うう……」
    「ふーむ……? 分かるかね、L?」
     尋ねられ、リロイはあごに手をやりながら推測する。
    「察するに――高出力のエンジンを大閣下に言われて作ってはみたものの、発生する熱量がすさまじすぎてあっと言う間に灼け付いちゃうから、そのままじゃ使えなかったんだろう。で、エンジン上部にラジエータを取り付けて放熱させることでどうにか使えるようにはしたけど、桟橋から誰かがそのラジエータを撃って破壊。途端に放熱できなくなったエンジンが灼け出し、真っ赤になって爆発寸前になったところに、とどめの一発を受けてついに爆発した、……と言ったところかな」
    「なるほど、理解できた。体は動かせるかね?」
    「……痛い……熱い……し……死ぬのか……僕は……?」
    「それは君の頑張り次第だ」
     アーサー老人はディミトリに背を向け、リロイに手招きした。
    「彼に聞くことは、今はこの辺りで十分だろう。他の幹部は?」
    「何人か島にいたよ。根こそぎ捕まえて、只今絶賛尋問中さ」
    「それなら彼を何としてでも生かして、余罪を一つ残らず白状するまで追求するような必要も無さそうだな」
    「さっきも言ったけど、この容態じゃ今夜が峠ってとこだろうしね。エミルの言った通り、30分後だって怪しいくらいだ。温情を見せてやるとすれば、このまま見殺しの方がいいかもってくらいだろう」
    「賛否が分かれるところだな。……さて」
     アーサー老人はエミルに顔を向け、彼女にも手招きした。
    「君も『あの件』を詳しく話さねばならんだろう」
    「……そうね。さっきから一人で考え込んでたけど、あたし一人の頭で推理するにはわけが分からなさすぎるもの」
    「そんなに奇妙なことが起きたって言うの?」
     けげんな顔をするリロイに、アーサー老人とエミル、そして部屋の隅で黙々と銃の手入れをしていたロバートまでもが、同時にうなずいた。
    「そりゃもう、奇妙どころの話じゃないわよ」
    「一体、何があったのさ? 君がそんなことを言うなんて」
     尋ねたリロイに、エミルはしばらく悩む仕草を見せた後、言葉を選ぶように話し始めた。
    「そうね、まず何から言ったらいいかしら。……率直に、目の前にあった事実を挙げてくとするなら――大閣下を逃したと思って、絶望しかけたあたしたちのところに」
     そこで言葉を切り、エミルは困った表情を浮かべながら、こう続けた。
    「あたしがいたのよ。あたしたちの、目の前に」

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 9

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第9話。
    カバー・デブリーフィング。

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    9.
     昼頃になってようやく、ニューマルセイルの港に州軍が押しかけて来た。
    「今日、電信電話網が復活したのはありがたかった。でなければここに君たちがいることを突き止めるのは、もっと後になっていただろうからね」
     やって来たリロイに、アデルが応対する。
    「ここに逃げてきた4人のうち、トリスタン・アルジャンとジョルジオ・リゴーニは港で射殺しました。ディミトリ・アルジャンは港に漂着したところを保護しましたが、全身火傷と打撲、複雑骨折で虫の息です。下手すりゃ今日、明日には死ぬでしょうね。
     そして大閣下こと、JJ・シャタリーヌについてですが、乗ってきた船で奴が逃亡を図ろうとしたところ、そいつが爆発しました」
    「爆発だって?」
     目を丸くするリロイに、アデルはこう続けた。
    「港から30ヤードほど離れたところで、突然。その爆発でディミトリが吹っ飛び、まもなく船全体が燃え上がってそのまま、……って感じでした」
    「それに大閣下が乗っていたと? うーん……海の底じゃ、捜索も不可能だろうな。仮に海に飛び込み、爆発から逃れていたとしても、確かもう90歳以上の老体だし、泳いでここ以外の港に着けるような体力は無いはずだ。流石に死んだだろうね。分かった、ジェフにはそう報告しておくよ。ディミトリはどこに?」
    「町のサルーンに運びました。今はエミルとロバートが見張っているはずです」
    「そっか。じゃあ、僕もそっちを見てくるよ」
     リロイは町へ向かいかけ――くる、と踵を返した。
    「アデル。他には何か無かった?」
    「って言うと?」
    「トリスタンを射殺したって言ったよね。以前からエミルは、『自分の実力はトリスタンより下だ』と言っていた。彼女の性格からして、その言葉は卑下や謙遜じゃなく、きわめて客観的な評価なんだろう。でも実際死んでるのなら、誰が倒したのかな、って。まさか君やロバートじゃないだろうし」
    「エミルです。あいつが、不意を突いて」
    「そう」
     リロイはもう一度背を向けかけたが、そのままくるんと一回転して来た。
    「って言うのを、公式発表にしたいってことかな」
    「……そうです」
    「じゃ、本当のところはどうなのか、エミルに聞いてくるよ。州軍や司法当局から事情聴取されたら、僕も今の話で通すことにしよう」
    「ども」

     町のサルーンに着いたところで、リロイはアーサー老人に出会った。
    「君も来てたのか、A」
    「久しぶりだな、L」
     握手を交わし、リロイはアーサー老人に尋ねる。
    「彼は?」
    「上で話そう」
     2階に上がり、ディミトリが運び込まれた部屋に入る。
    「……生きてるの?」
     ベッドの上に横たわったディミトリは全身を包帯でぐるぐる巻きにされており、ぴくりとも動いていない。
    「ギリギリね」
     ベッドの横に座っていたエミルが答える。
    「爆発で吹っ飛ばされたせいで、全身大火傷と全身打撲。おまけに海に叩きつけられたみたいだし、あっちこっち骨折してるわ」
    「それで生きてるとしたら、怪物だね」
    「幸か不幸か生きてるわよ、辛うじて。でもこれだけボロボロじゃ、もうこの先一生、自分で動けない体になってるでしょうね。その一生があと30分だけか、まだ30年残ってるのかは知らないけど」
    「間違い無く不幸だろう。職人が指一本動かせないなんて、そりゃもう生き地獄さ」
    「お似合いよ。こいつらみたいなゲス野郎共にはね」
     エミルの辛辣な言葉に苦笑いを返しつつ、リロイは彼女に質問した。
    「ところでアデルから聞いたんだけど、大閣下も爆死したって?」
    「ええ、多分だけど」
    「爆発の原因は?」
    「さあ? 岸から大分離れてたから分からないわね」
    「ってとこまでが公式発表でいいのかな?」
     アデルに言ったものと同じ台詞を使い、リロイは彼女の目をじっと見つめた。
    「……真実を知りたい、ってことかしら?」
    「そりゃ、ね。どっちみち、詳しく話しておかなきゃあれこれ聞かれた時に矛盾が出ちゃうからね。細かい設定まで詰めとかないと、嘘ってのは付き辛いもんさ」
    「ごもっとも、ね」
     エミルは肩をすくめ、薄く笑みを浮かべた。

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 8

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第8話。
    チェックメイト。

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    8.
    「ふうっ……はあっ……や……やった……!」
     トリスタンが倒れたのを見届けたところで、イクトミはまだ銃口から硝煙をくゆらせるSAAを胸に抱き、ふたたび仰向けになった。
    「やったぞ……僕は……つ、つい……に……」
     声が聞こえなくなり、すっかり呆けていたアデルは我に返る。
    「……あ、……っと! イクトミ! おい、大丈夫かよ!?」
     アデルに続き、エミルとロバート、そしてアーサー老人も物陰から飛び出し、揃ってイクトミの容態を確かめる。
    「……ふむ。息はある。脈も正常のようだ。どうやら気を失ったらしいな。さっきこめかみをかすめていた弾丸が、よほど痛かったらしい」
     アーサー老人の診断に、一同は胸をなでおろす。そして最も安堵していたのは、どうやらアデルらしかった。
    「何だよまったく……へへ……心配かけさせやがってよ」
    「あんた、……そんなに心配してたの?」
     エミルがけげんな顔を自分に向けているのに気付き、アデルは何故だかごまかそうとする。
    「あ、いや、ほら、アレだよ。こんな時に死んじまったら、バカみたいだろって」
    「何て言うか」
     二人のやり取りを見ていたロバートが、呆れた声を漏らす。
    「兄貴って本っ当、マジのお人好しっスよね」
    「……ちくしょう、否定できねえな、はははっ」
     アデルは笑い飛ばし、肩をすくめかけたその時――ぼおー……、と汽笛の鳴る音が港に響き、一同は血相を変えた。
    「しまった!」
     気絶したままのイクトミから離れ、慌てて桟橋へと駆け出す。だが、既に船は桟橋から10ヤードは離れており、飛び移れる距離ではない。
    「このッ!」
     エミルは拳銃を抜き、船に向かって発砲する。だが、人間相手ならば十分すぎる威力を持つ拳銃も、流石に船が相手では効果が無く、ほとんど無傷のままだった。
    「待ちなさいよ、この、このっ……くそッ……!」
     6発全弾を撃ち尽くし、エミルは大急ぎで装填する。その間に、大閣下がディミトリに手を引かれつつ、甲板に現れた。
    「この恨みは忘れんぞ、貴様ら! わしは必ずや、必ずやもう一度組織を蘇らせ、今度こそ貴様ら全員を地獄へ叩き落としてくれるわッ! その時が来るのを、存分に恐れておるがよい! さらばだ!」
    「Marde(クソがッ)!」
     エミルは怒りをあらわにし、もう一度全弾発射する。だが船はやがて拳銃の有効射程からも離れ、エミルたちに船尾を向け始めた。

     その時だった。
    「全員しゃがんで。耳もふさいでちょうだい」
     桟橋に、一人の女が現れた。
    「……え?」
     その女の顔を見た瞬間、そこにいた全員が凍り付いた。

    「あんた……あんた、誰!?」
     エミルがこめかみを押さえつつ、辛うじて声を上げたが、女は先程と同じ言葉を繰り返す。
    「いいから。しゃがんで耳押さえてて」
    「……っ」
     ともかく言われた通りに、全員が耳を押さえて姿勢を低くする。と同時に、女はトリスタンが投げ捨てていたホルスターから、あのホットロード化されたリボルバーを取り出した。
    「Oh, c'est un très grand garçon(あら、わんぱく坊主ね)」
     女は両手で拳銃を構え、ドゴン、と途方も無い音を立てて弾を放った。次の瞬間――。
    「……うおおおっ……」
     既に30ヤード以上は離れていた船から、大閣下のものらしき悲鳴が届く。エミルたちがそちらを向くと、甲板上に露出していたエンジンが真っ赤に光っているのが見えた。
    「Encore(もう一発)」
     ふたたび女は、拳銃を撃つ。この2発目でエンジンは爆発し、人影が一つ、炎に包まれながら宙へ飛んで行った。
    「ぎゃああああー……」
     今度の叫び声には張りがあり、どうやらそれはディミトリのようだった。と、まだ甲板にしがみついていた大閣下が、しわがれた声で叫ぶ。
    「Trichat! Trichat! C'est toi! Trichaaaaaat!(貴様だな、トリーシャあああああッ!)」
    「Bonne réponse(ご名答)」
     彼女はさらにもう1発、発砲する。既に黒煙と炎に包まれ、船の様子はほとんど分からなかったが、それでも大閣下がいた場所から血しぶきが上がったのが、わずかながら確認できた。
    「Bon voyage en enfer, Grand-Excellence(地獄までの良い旅を、大閣下)」
     女は拳銃にキスし、それをぽい、と海に投げ捨てた。

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 7

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第7話。
    命運分けたスタイル。

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    7.
    「なっ……」
     思わず、アデルは木箱の陰から飛び出していた。
    「おい! イクトミ、……おい!」
     どう声をかけていいのか分からず、アデルは名前を呼ぶに留まる。と、ひざ立ちになっていたトリスタンが、足に絡みついていたホルスターをむしり取って投げ捨て、のそっと立ち上がった。
    「次は貴様が相手か?」
     アデルとトリスタンの目線が合う。その時になってようやく、アデルは自分が無防備に突っ立っていることに気付いた。
    「あ……わっ」
     慌てて小銃を構え、引き金を引いたが、トリスタンは「ぬっ」とうめくだけで、当たった様子は無い。
    「く……来るな、来るなっ!」
     何度も撃ち込むが、完全に臆したアデルは狙いを定められず、トリスタンを仕留めることができない。やがて装填されていた弾を撃ち尽くし、レバーはがちゃ、がちゃと空回りする。
    「あ……あ、あっ」
    「死ね」
     トリスタンはアデルの眉間に狙いを定め、自動拳銃を構えた。



     しかしトリスタン・アルジャンの命運は、この時点で既に尽きていたようだった。

     まず、彼はリボルバーと同じ要領、すなわち腰だめに構える形で、自動拳銃を撃っていた。だが自動拳銃は――少なくとも、我々の時代における基本設計として――弾丸発射時に生じる反動を薬莢の排出と次弾装填に使う構造になっている。彼の弟がこしらえたこの拳銃も同様の構想で設計されており、リボルバーのように反動をひじで逃がす撃ち方をすれば、その機構は十分に働かなくなる。
     そしてその弟、稀代のガンスミスであるディミトリ・アルジャンといえども、これまでに前例の無い、全く新しいタイプの拳銃を造るに当たっては、不測の要素が多すぎたらしい。どれだけ弾を撃てば、どこの部品が摩耗・疲労を起こすか。それを正確に読み当てるには、流石の彼でも経験が足りなかったのだ。彼が想定していたより早く内部の部品が破損しており――そして前述のガンファイト・スタイルによって生じた動作不良も相まって――この時、空薬莢が遊底部と排莢口の間で引っかかってしまっていた。
     さらに3つ目の不運は、眉間に狙いを定めて撃ったはずの宿敵イクトミが、頭に銃弾を受けていながら、死んではいなかったことだった。前述の通り、既に自動拳銃は破綻をきたしており、発射された11ミリMAS弾は本来の威力と弾道を発揮しなかったのだ。そのため弾は彼の眉間ではなくこめかみをかする程度に反れ、イクトミに軽い脳震盪(のうしんとう)を起こさせはしたものの、致命傷を与えてはいなかったのである。



     トリスタンが悠然とアデルに銃口を向け、引金を絞った瞬間――まだ薄明の中であり、己の得物や敵の状況を把握できなかったことも重なって――それらの不幸は一挙に、彼へと襲い掛かった。
    「……うっ!?」
     万力のごとき彼の握力を以てしても引金が引けず、自動拳銃はただの長細い鉄塊と化して沈黙している。
    「ばかなっ……」
     トリスタンの目線が正面のアデルでも、死んだと見なしたイクトミでもなく、己が握る拳銃に向けられた、その瞬間――イクトミが飛び起き、宿敵に向かって弾を撃ち込んだ。
    「びちゃ……っ」
     放たれた弾は左胸でも頭部でもなく、彼ののどを、咽頭から右あごへと貫通した。途端にトリスタンの口から言葉ではなく、真っ赤な血が吐き出される。
    「ごぼ……びちゃびちゃ……ごぼぼぼっ……」
     トリスタンは自慢の自動拳銃も投げ捨て、両手で自分ののどを押さえる。だが血は滝のように彼の口とのどから噴き出し続け、やがて彼はどさっと重たげな音を立て、前のめりに倒れた。
    「……ごぽ……っ……」
     おびただしい血を流した末、ついに怪人トリスタンは討ち取られた。

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 6

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第6話。
    最後の決闘。

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    6.
     エミルは素直にイクトミに場を譲り、元通り木箱の陰に隠れる。
    「あら」
     と、そこにアーサー老人が立っていることに気付き、肩をすくめた。
    「あなたの入れ知恵かしら?」
    「うむ。元々、大閣下の経歴と西海岸の町とを比較し、周辺地域で何かあれば恐らく、奴はここを緊急時の脱出路に使うだろうと踏んでいた。そして一週間前、突然西部のあちこちで電信電話網が途絶した。何かがあった、いや、君たちが何かしたと見て、我々も駆け付けたと言うわけだ」
    「流石ね」
    「ところでエミル君」
     アーサー老人はいまだ係船柱に座ったままの大閣下をチラ、と見て、エミルに向き直った。
    「君は何故いきなり、ジョルジオ・リゴーニを撃った?」
    「顔がムカついたからよ」
    「その冗談はさっぱり面白くないな」
     ばっさり言い切られ、エミルは肩をすくめた。
    「じゃ、真面目に説明するわ。話と見た目からあいつが『鉄麦』って言うのは分かったし、あいつ一人でボーッとしてたから始末したのよ」
    「法の裁きに委ねようとは思わなかったのかね?」
    「あなた、あいつの裁判記録知らないの? あなたなら調べてると思ってたけど」
    「……ふっ」
     アーサー老人はニヤっと笑い、小さくうなずいた。
    「なるほど。確かに過去3回の裁判では、いずれも不起訴だったな。相当な額の裏金を撒いたのだろう。それこそ奴の下品に肥え太った顔を見れば分かる」
    「ここで4度目の逮捕ってなっても、またカネ撒いて逃げるだけよ。それなら裁判所じゃなく、天国の門で取り調べてもらった方が手っ取り早いわ」
    「……まあ、不問にしておこうか。私は法の番人では無いからな」
    「どうも」


     一方――イクトミとトリスタンは、静かににらみ合っていた。
    「……」
    「……」
     まだ陽の光は差しては来ないものの、空気は既に温まり始めているらしい。港に強い風が吹き込み、二人の間を通り抜けて行く。
    「アレーニェ」
     と、トリスタンが口を開く。
    「今更貴様と話すことなど、何も無い。お前もそうだろう?」
    「ああ。こうして静かに対峙していても、無駄なだけだ」
    「では、さっさと来い。このまま見つめ合っていたとて、何の意味も無い」
    「君から来い」
    「フン」
     短い会話を終えるが、依然として二人とも動かない。物陰で様子を眺めていたロバートが、アデルに耳打ちする。
    「なんで撃たないんスかね?」
    「撃てばその反動で、どうやったって隙ができる。それにどっちともタマ避けられるような、バケモノじみた運動神経持ってるからな。だから1発目を避けて、相手の隙を突いてズドン。それを狙ってんだろうよ、どっちも」
    「はぇ~……」
     と――港のどこかに巣があったらしく、カモメの鳴き声が辺りに響く。瞬間、二人はその場から弾かれるように動き出した。
    「死ね、アレーニェ!」
    「死ぬのはお前だ、トリスタン!」
     ほとんど同時に、両者は弾丸を放つ。イクトミが放った弾はトリスタンのほおに筋を引き、一方、トリスタンの弾はイクトミの肩をかすめる。
    「うっ……」
    「ぐぬ……」
     どちらも流れる血に構わず、二発目を放つ。ばぢぃっ、とけたたましい金属音が鳴り、アデルは息を呑んだ。
    (うっそだろ……弾と弾が当たったのかよ、今の!?)
     だが、トリスタンの放った11ミリMAS弾より、イクトミの45口径ロングコルト弾の方がわずかに威力が大きかったらしく、ぐちゃぐちゃに融合した弾はトリスタンの方へと飛んで行った。
    「うおお……っ!」
     とっさにかわしたトリスタンの、左のホルスターが落ちる。イクトミの撃った3発目が、ベルトをかすめたのだ。
    「う、ぬっ」
     ホルスターがトリスタンの太ももに絡まり、トリスタンは体勢を崩す。それを好機と見たらしく、イクトミは腰だめに拳銃を構え、もう1発撃ち込んだ。
    「お……ふっ……」
     トリスタンがひざを着く。
    (やった……か!?)
     アデルは勝利を確信したが――次の瞬間、イクトミのシルクハットがばしっと音を立てて飛び、その下にいた彼も弾かれるように、仰向けに倒れた。

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 5

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第5話。
    港にて。

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    5.
     時刻はまもなく朝の6時になろうとしていたが、まだ、東の稜線に光は差していない。その寂れた港はまだ暗く、人の姿は無い。と――沖の方から一隻の船が、ポン、ポンと排気音を上げながら近付いて来た。
    「着きました」
     まもなく船は桟橋に着き、小山のような男が一人、どすんと降り立った。
    「お手をどうぞ、閣下」
    「うむ」
     続いて下卑た顔の老人が、男に手を引かれて船を降りる。
    「トリスタン、追手の姿は……?」
    「一隻もありません。ご安心を」
    「そうか」
     老人は持っていた杖をとん、とんと突き、周囲を探る様子を見せる。
    「岸はどっちだ?」
    「こちらです」
    「暗くて敵わん。夜明けはまだなのか?」
    「じきに差すかと」
    「そうか」
     と、船からさらに二人、姿を現す。
    「お腹空いたねぇ。早いとこ朝飯にしようよ、兄さん」
    「ここから程近いところに町があります。少しばかり大目に出せば、早朝でも作ってくれるでしょうな」
    「うむ。よろしく頼むぞ、リゴーニ」
     老人に杖でトン、と肩を叩かれ、リゴーニと呼ばれたそのでっぷり太った男は、ニコニコしながらうなずく。
    「ええ、お任せを」
    「……しかし」
     老人は元からしわだらけだった顔をさらにくしゃくしゃと歪ませ、吐き捨てるようにつぶやいた。
    「本国での工作がもう少しでまとまろうかと言う時に、いらぬ邪魔が入ったものだ。おかげで『ミストラル号』も中途半端なまま、放棄せねばならなくなった!」
    「あの戦艦ですか。本当に惜しいものです」
     トリスタンがうなずいて見せ、老人も憮然とした顔のまま、うんうんとうなずき返す。
    「26万ドルもかけた大傑作だったのだ。完成していればそれはもう、威風堂々たる……」
    「まあ、まあ、閣下。もう一度作ればよろしい。それだけのことです」
     リゴーニに諭され、老人はフン、と鼻を鳴らした。
    「お前がそう言うのであれば、溜飲を下げておくとしよう。組織も改めて構築せねばならぬし、資金については引き続き、よろしく頼むぞ」
    「ええ、ええ」
     3人の手を借り、老人はよたよたとした仕草ながらも、桟橋を渡り切った。
    「はぁ、はぁ……それで、トリスタンよ。ここから先の『足』は……」
    「調達して参ります。しばしお待ちを」
     老人を係船柱に座らせ、トリスタンが町の方を向いた、その時――暗い港にパン、と音が響き渡った。
    「あへっ……?」
     リゴーニが胸を押さえてごろんと転がり、そのまま海に落ちる。
    「……!?」
     町に向かいかけていたトリスタンが目をむき、あのMAS1873カスタム――自動拳銃を腰から抜いた。
    「誰だあッ!」
    「やっぱりここに来ると思ったわ」
     乱雑に積まれた木箱の陰から、何者かが拳銃を片手に現れた。
    「だって『ニューマルセイル(New Marseille)』ですものね、町の名前。あんたがフランスで拠点にしてた町と同じ名前だったわよね、確か」
    「……」
     係船柱に座ったままの老人――大閣下、ジャン=ジャック・ノワール・シャタリーヌは顔を挙げ、ぼんやりとした目で彼女を見つめていた。
    「……誰だ?」
    「忘れたって言うの? あんた、とことんボケが来たみたいね」
     現れた女性は、大閣下に拳銃を向けた。
    「あたしはエミル。エミル・ミヌー、……いいえ、エミル・トリーシャ・シャタリーヌ。あんたの孫娘よ」
    「……トリーシャ……?」
     大閣下は目をしょぼしょぼと瞬かせ、首をかしげた。
    「……お前が……?」
    「そうよ」
    「違う」
     大閣下はかっと目を見開き、声を荒げた。
    「お前がトリーシャ!? どこがだッ! 似ても似つかぬわッ!
     おい、トリスタン! 何をぼんやりしておるかッ!? さっさとその女を片付けろッ!」
    「し、しかし、閣下?」
     戸惑うトリスタンを、閣下が怒鳴り付ける。
    「お前の目は節穴か!? あの女がトリーシャに見えると言うのか、この馬鹿者ッ!」
    「……閣下が、そう申されるのであれば」
     トリスタンはまだ迷った様子を見せながらも、エミルに拳銃を向けた。
    「お、おい、エミル!」
     と、エミルの背後からアデルと、ロバートが現れる。
    「やる気か?」
    「やらなきゃいけないでしょ? 下がってなさいよ」
    「いや」
     と、彼女の頭上から声が降ってくる。
    「マドモアゼルを危険にさらすわけには参りません。それにこれは」
     続いて白い塊が、彼女の前に降り立った。
    「わたくしの宿命でもあります。どうかわたくしに彼奴と戦う機会をお与え下さい、マドモアゼル」
    「イクトミ? あんた、……どうしてここに?」
     エミルに尋ねられ、イクトミは背を向けたまま答えた。
    「今申し上げた通りです。トリスタンは我が宿敵。倒さねば永遠に、わたくしに安息を得る機会は訪れますまい」

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 4

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第4話。
    夜明け前の制圧作戦。

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    4.
     未明頃にケープビーチを出発した州軍の艦隊は、明け方直前にはその海域に到達した。
    「あれが目的の島かね?」
     海に浮かぶその影を指差した局長に、ジョン司令がうなずいて返す。
    「ああ、あれがサンドニシウス島だ。俺たちが知ってる限りじゃ漁師が中継地にしてる、直径6~7マイルくらいの無人島、……だったはずだが」
     真っ暗な状況でもはっきりと分かるほどに、その島はコンクリートの防壁で覆い尽くされていた。
    「どう見たって、ありゃ基地だ。砲台まで取り付けてやがる」
    「応戦してくる可能性がある、と? 対策は?」
     尋ねた局長に、ジョン司令はフン、と鼻を鳴らして答えた。
    「あんたが最大限警戒しろって言ったんだろうが。ありったけ持って来てるよ」
     ジョン司令は局長に手招きし、甲板に複数取り付けられた鉄製の円筒を、コンコンと拳で叩いて見せた。
    「最新式の重機関銃だ。ガトリングの倍の威力って話だぜ」
    「ほう」
    「すげえ代物だって聞いたから、大枚はたいてイギリスから取り寄せた。ウチの基地の看板娘みたいなもんさ」
    「うむ、『彼女たち』の働きに期待しよう」
     と、島の各所に明かりが灯る。どうやら相手も州軍の接近に気付いたらしく、瞬く間に慌ただしげな様相を呈した。
    「大佐! 相手勢力、砲台の準備に取り掛かっている模様です!」
     観測手からの報告を受け、ジョン司令は手を振り上げた。
    「敵性対象と断定する! 攻撃用意!」
     艦は島に対して側面を見せる形に舵が切られ、最新鋭の機関銃が一基残らず、島に照準を定めた。
    「撃てーッ!」
     ジョン司令の号令と同時に、機関銃が一斉に火を噴いた。途端にコンクリートの防壁が一瞬で砕け散り、爆発が立て続けに起こる。
    「砲台の火薬に引火したか。あれだけの火柱だ、岸辺のヤツらは全員ブッ飛んだだろう」
    「頼もしい限りだ。だがあくまで我々の目的は組織の拿捕だ。一人残らず虐殺、なんてことは避けてくれると非常に嬉しいがね」
    「ま、何とかならあな」
     話している間に機関銃の一斉掃射が終わり、艦上にはもうもうと白煙が漂っていたが、1分も経たない内に海風で散らされ、すっかり様変わりした島の様子が視認できた。
    「防壁が跡形も無いな。岸辺にも動いてる人間の姿は無さそうだ。よし、船を着けるぞ! 乗り込んで制圧するんだ!」
     ジョン司令の号令を受け、艦隊は一斉に島へと向かい出した。

     どうやら一斉掃射によって相手の戦闘能力はごっそり失われてしまったらしく、上陸しても襲って来る気配は全く無かった。
    「なかなかむごい有様だ。ゲティスバーグ以来かな、これだけの惨状は」
    「同感だ。ちょっとやりすぎたかな……」
     兵士たちによる安全確認が済んだところで、局長たちとジョン司令は港に降り立ち、島の奥を望遠鏡で観察する。
    「流石に最新鋭の重機関銃といえども、防壁を越えて奥までは届かなかったと見える。だが動きが無いな」
    「応戦してくるかと思ったが、どうやら戦意を喪失したらしいな」
     ほどなく、奥にあった建物からぞろぞろと、明らかに丸腰と分かる者たちが現れた。
    「投降するか?」
     兵士たちの呼びかけに素直に応じ、彼らは次々、縄で縛られて拘束された。いかにも順調そうに思えたが――。
    「……やけにあっさりしている」
     局長がそうつぶやき、首をかしげる。
    「何だよ、ジェフ? あんた、ドンパチやりたかったのか?」
    「いや、そうじゃあない。ここは組織の本拠地だ。言い換えれば彼らにとって最後の砦、ここを落とされればもう後が無い、と言う場所のはずだ。であればもっと抵抗しても良さそうなものだが」
     局長は不安そうな様子を見せ、拘束した者たちに声をかけた。
    「君たちは大閣下の組織の者で間違い無いかね?」
    「ああ」
    「大閣下はどうしている? ここにいるんだろう?」
    「……」
     答えない手下に、局長は淡々と質問し直した。
    「答えたまえ。もう隠し立てする意味は無かろう?」
    「……分からない」
    「なんだって?」
     相手の返答に面食らった顔を見せ、局長は尋ね返した。
    「分からないなんてことは無いだろう? この7マイル足らずの島にいる最重要人物を知らないと言うのかね?」
    「大閣下は……」
     手下は海の方に目をやり、こう続けた。
    「あんたたちがやって来る直前に幹部2、3人を連れて突然、島を出て行った。どこへ行ったか、多分、誰も知らない」
    「……!」
     局長は目を見開き、黙り込んでしまった。
    「ジェフ、まさか……!?」
     尋ねたリロイに、局長は小さくうなずく。
    「この期に及んで、……私は大閣下を、ジャン=ジャック・ノワール・シャタリーヌと言う男を、甘く見ていたらしい。 何故だ!? 何故、奴は我々の行動を……!?
     教えてくれ、エミル! 一体奴はどんな方法を使って、我々から逃げおおせることができたんだ!? ……うん?」
     局長は顔を挙げ、辺りを見回す。
    「エミルはどこだ?」
    「え?」
     言われてリロイも、他の局員たちも辺りを見回し――そこにエミル、アデル、そしてロバートの姿が無いことに、ようやく気が付いた。

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 3

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第3話。
    あぶり出し。

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    3.
     局長から無茶な注文をされたものの、それでもジョン司令はその通りに答えてくれた。
    「あんたのご注文通り、500人。基地にいる全員を大急ぎで動員させた。おかげでまだコック姿のヤツまでいる始末だよ」
    「ありがとう、ジョン。ではすぐ出発だ。準備してくれ」
    「へいへい、仰せの通りに!」
     ジョン司令が憮然とした顔で、大股で歩き去ったところで、局長とリロイは目配せした。
    「で、エミルたちは?」
    「仰せの通りに、だね」
    「うむ」

     まだ憮然とした様子ながらも、ジョン司令はきっちり、全軍に号令を発してくれた。
    「……と言うわけで、諸君らは直ちにサンドニシウス島へ向かい、そこに本拠地を構えていると目される秘密組織を包囲、および拿捕せよ! 以上だ! 各員、即時行動されたし!」
    「了解!」
     ジョン司令がこぼしていた通り、兵士たちの中には直前まで調理や営繕工事など、軍務以外の作業をしていたらしい者や、まだ私服姿に小銃一挺を抱えただけの者までいる。揃って憮然とした表情を浮かべつつ、彼らはぞろぞろと船や舟艇に向かって行進して行った。
     と――その中の一人が、しれっとその列を離れる。
    「おい、どうした?」
    「腹いてえ。ちょっと済ませて来る」
    「おう」
     いぶかしむ同僚たちにそれらしい言い訳をし、彼は基地内へと引き返す。そのまま電話室に向かい、電話をかけようとしたが――。
    「ん、んん? なんだ? ウンともスンとも言わねえ。……壊れてんのか?」
     がちゃん、がちゃんと受話器を上げ下げしても、まったくつながる気配が無く、彼は困った顔をした。
    「おい、まずいって……。早く伝えねえと」「どうなるって?」
     電話室の外から、女の声が飛んで来る。
    「うっ……!?」
    「聞かせてちょうだい? あんたがこんなタイミングで電話しなきゃ、一体、誰がどうなるのかしら?」
    「そ……それは」
     彼が両手を挙げたところで、別の男の声が掛けられる。
    「そのまま電話室を出ろ。ゆっくりとだ。振り向くんじゃないぜ」
    「あ、ああ」
     彼が電話室を出たところで、赤毛の男が彼のこめかみに小銃を突き付けた。
    「ネックレス見せろ」
    「……わ、分かった」
     相手の言わんとすることを察したらしく、彼は首に下げていた、猫目三角形のネックレスを取り出した。

     内通者を見付け出して拘束し、エミルたちは局長たちがいる部屋に戻って来た。
    「いたわよ」
    「ありがとう。間違い無くいるだろうと思っていたが、やはりか」
    「そりゃ、サンドニシウス島から一番近い軍事基地となれば、ここだからね。仮に当局が動き出した場合、十中八九この基地が関わることになるだろう。なのにここにスパイを仕掛けてないって言うんじゃ、話にならないさ」
     安心した様子の局長とリロイを見て、アデルもほっとした顔をする。
    「じゃあ後は……」
    「うむ。もうこれで組織は、自分たちに危機が迫っていることを知る術を、ほとんど完全に失ったわけだ。残る術はただ一つ、州軍が自分たちのすぐそばまで多数迫っているのを、実際に目にする以外に無い。
     いよいよ、決着の時と言うわけだ。そろそろ我々も船に向かうとしよう」
    「了解です!」
     待機していた他の局員たちと共に、局長とリロイは部屋を後にした。
     が――。
    「アデル。……それから、あんたも」
     局長たちに気付かれないようにしているかのように、エミルはアデルとロバートの服の裾をぐい、と引く。
    「なんだ?」
    「どしたんスか?」
    「局長はもう問題無しだって言ったけど、……あたしの勘が告げてる。チェックメイトにはあと一手、足りないって」

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 2

    DETECTIVE WESTERN

    ウエスタン小説、第2話。
    出動要請。

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    2.
     1週間の期限付きで西部全域の電信電話網が封鎖されてから6日後――パディントン探偵局一行は、どうにかC州に到着することができた。組織が本拠地を特定されたこと、そしてこの封鎖作戦自体に勘付くかどうかが最大の懸念であったが、この6日間で襲撃されることも無く、また、尾行者らしい影も無かったことから、その懸念が杞憂であったことは確かとなった。



    「どうにか日が暮れるまでには、目的地に到着できそうだ」
    「うむ」
     リロイ副局長にうなずきつつ、局長はこう返してくる。
    「太平洋のおかげで、日が沈み切るまでにはたっぷり時間があるからね」
    「そうかも知れないね」
     どことなく呆れ気味に答えながら、リロイは不安げな顔を見せる。
    「あんまり呑気そうにしてるから改めて確認させてもらうけど、本当に頼っていいのかい?」
    「任せたまえ。彼と私とは旧知の仲だ」
    「いつもの、か」
    「そうとも」
     局長はニヤッと笑い、得意げに胸を反らした。
    「こんな時のために築いてきた人脈だ。今こそ役立ってもらわないと困る」

     C州の港町、ケープビーチに到着してすぐ、局長とリロイはこの町の州軍基地を訪ねた。
    「久しぶりだな、ジェフ。いつも唐突にやって来るな、あんたは」
     出迎えた基地司令に、局長は握手して応じる。
    「ちょっと用事があってね。ジョン、君は変わりないかな?」
    「そりゃ、俺の姿を見て言ってるのか?」
     相手は出っ張った腹をぽこんと叩き、笑って返す。
    「この通り、前に会った時から30ポンドは太っちまったよ」
    「前に会ったのはちょうど、10年前だったな。私はこの通りだ。若干シワが増えた」
    「白髪もな。相当忙しくやってるみたいだな」
    「うむ。今回も仕事でね」
     局長がそう告げた途端、ジョン司令は真面目な顔になった。
    「あんたのことだから、厄介なヤツだな?」
    「そうだ。大きな組織を追っていてね、その本拠地がつかめそうなんだ。逃がすととても厄介なことになりそうだからね、人数がほしいんだ」
    「ふーむ……。そう言われても『よし分かった』とは、俺が言えんことは分かるだろう、ジェフ?」
    「見返りはあるとも。犯罪組織が相手だ、全員拿捕できれば合衆国の安全と平和に、大いに貢献できる。事実、その組織は合衆国のあちこちで犯罪行為を繰り返しているし、構成員や幹部の中には懸賞金が出ている者も多数ある。それに……」
     局長はポートショアで手に入れたDC襲撃計画書を、ジョン司令に差し出した。
    「これは私の目からは途方も無い計画のように思えるが、海のプロであるジョン・ダブリン大佐はどう捉えるかな?」
    「ふーむ、……パナマに運河か。いや、しかし俺としては、そう荒唐無稽とも思えん」
    「ほう」
    「実際、やろうって話自体は昔からある。人とカネが集まらんから無理って言われてるけどな。だから本気で集めようってヤツがいたら、実現の可能性はある。実現すれば恐らく、大陸横断鉄道なんか目じゃないってくらいの恩恵があるだろうな」
    「確かに。このルートがもし本当に実現すれば、東部から西部までの海路は大幅に短縮できるだろう。そしてその輸送能力が大幅に向上することも、間違い無い。だが組織はその輸送能力を、合衆国攻撃のために使おうとしている。それを見過ごすことはできん」
    「確かにこんな大それたことをやってのけようってヤツらを捕まえられれば、俺も勲章モノだな。だが失敗した場合はどうする? あんたがつかんだ本拠地とやらの情報がガセだって可能性は? あんたとは昔からの友人だが、だからって一個人、一民間人の要請だ。それを基地司令が真に受けて大軍動かして、その結果ネズミ一匹捕まりませんでしたじゃ、笑って済まされんぞ」
    「詳しい話は省くが、信憑性は高い。私は間違い無くそこに、敵の首領がいると確信している。私の全財産を賭けてもいい」
     これを受けて、ジョン司令は肩をすくめた。
    「もし失敗したら、その全財産で補填ってことか」
    「そう言うことだ。こちらも詳しい額は明かせんが、少なくとも州軍への迷惑料にするには十分だろう」
    「分かった。それで手を打とう。どのくらい人手が欲しい?」
    「敵の規模は不明だが、合衆国全域に魔手を伸ばす輩だ。その本拠地となれば、100人や200人は固まっていてもおかしくあるまい。その倍は用意してもらいたい」
     これを聞いて、ジョン司令は苦笑いする。
    「ってことは400以上か? 基地にいるヤツ、ほぼほぼかき集めなきゃならんな。分かったよ、明日の昼までには揃えられるだろうから、それまで町で待っててくれ」
    「500人だ。今晩中に頼む」
    「……あんたなぁ。何で毎度毎度、無茶な注文ばっかり付けて来るんだ?」
     ことさら苦々しい表情を浮かべたジョン司令に、局長は涼しげな顔で答えた。
    「危機は突然やって来るものだ。即応してこその軍隊だろう?」

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    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 1

    DETECTIVE WESTERN

    ほぼ1年ぶりのウエスタン小説。
    ルイス=クラーク探検隊。

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    1.
     15世紀の終わりにヨーロッパ人がその地に足を踏み入れたその時から、「その夢」はほのかに、彼らの心に現れた。やがて彼らがヨーロッパと袂別し、「アメリカ人」と呼ばれるようになって以降も、彼らはその目標を達成すべく、歩み続けた。
     そして1805年、ジェファーソン大統領の個人秘書であったメリウェザー・ルイスとその親友ウィリアム・クラークによる探検隊がその海に達したその時、その300年以上に渡る宿願――この北米大陸を横断し、太平洋北西部につながる岸辺、即ちこの「新しい世界」の西の果てを実際にアメリカ人の目によって確認する、と言う目標は達成されたのである。

     と言ってしまうと、探検自体はまるで何と言うこともない旅行か何かであったかのように聞こえてしまうだろうが、実際のルイスとクラークの旅は、艱難辛苦の連続であった。何しろ車や鉄道はおろか、蒸気船すら無い時代である。人と物資をかき集めてミシシッピ川を出発した後ミズーリ川沿いに進み、グレートプレーンズを北西方向に横断。途中、インディアンらとの衝突や極寒による足止め、さらには仲間の死や食中毒にまで苦しめられることとなったが、それでもミズーリ川を源流まで遡上した後、ロッキー山脈を越えて現在のオレゴン州に到達。
     そこでようやく太平洋を目にし、彼らの1年半にも及ぶ旅は報われたのである。



    「しかし80年も経った今、我々がまさか、ルイスとクラークになるとはね」
     そうつぶやいたパディントン局長に、ロバートが尋ねる。
    「誰っスか?」
    「知らんのかね? いや、仕方無いことか。君が住んでいた西部の片田舎じゃあ、伝記も出回っていないだろうな。アデル、君なら当然知っているね?」
     尋ねた局長に、アデルは顔をこわばらせる。
    「あ……あー、と、アレ、……です、よね? あの、……アレですよ」
    「……結構。それ以上はしゃべらなくていい」
     被っていた帽子のつばを下げ、局長は残念そうな様子を見せた。が、ここでサムが手を挙げる。
    「ぼ、僕は知ってます。でも局長、彼らと僕たちとでは3点、その、大きな相違があります」
    「ほう? 言ってみたまえ」
     機嫌を直したらしい局長に、サムはどこか得意げに話し始めた。
    「まず、移動ルートです。探検隊は北西方向へ進みましたが、僕たちはほぼまっすぐ西へ向かっています。そして探検隊は政府からの要請と援助がありましたが、僕たちは完全に非公式かつ、私費での行動です」
    「確かに。今回は相当な出費を強いられた。まさに国家予算的だった。その点はエミルに感謝せねば」
    「どーも」
     ぺら、と手を振るエミルに応じつつ、局長はサムに続きを促す。
    「それでサム、3つ目は?」
    「移動技術の進歩です。鉄道が無ければ、僕たちも探検隊と同様、長い年月をかけて大変な旅をしなければなりませんでした」
    「なるほど。同様に感謝せねばならんね、それがヴァンダービルトかモルガンか、それとも我らがボールドロイド君なのかは分からんが」
     そんな取り留めもないことを話している内に、一行が乗る鉄道はまもなく、C州州境を越えた。
    「諸君」
     と、局長が客車内の全局員16名に声をかける。
    「君たちが一人も欠けること無くここまで来られたこと、その幸運と不屈の精神とを称え、そして感謝したい。ありがとう、よくここまで一緒に来てくれた。しかし本懐はまだ、これからだ。どうか最後まで気を緩めること無く、我が探偵局最大の任務を完遂すべく、全力を投じて欲しい」
    「了解です」
     局員たちは全員立ち上がり、局長に敬礼した。

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    琥珀暁 目次 / 2020年9月30日までの 拍手コメントへのお返事

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    「琥珀暁」地図(作成中……)

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    「双月暦」の暦
    双月世界の魔力・魔術観について
    双月世界の種族と遺伝(2019年版)
    双月世界の戸籍

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    あとがき
    1 2 3 4 5

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    第1部;彼訪伝~邂朋伝
    第2部;狐童伝~金火伝
    第3部;
     前編 陥港伝~狐傑伝
     後編 彼心伝~北報伝
    第4部;
     前編 往海伝~歓虎伝
     後編 交誼伝~平岸伝
    第5部;
     前編 接豪伝~新尉伝
     後編 狐略伝~平西伝
    第6部;
     前編 空位伝~湖戦伝
     後編 虜帝伝~女神伝

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    琥珀暁 目次(第6部;「天帝教征北記+補遺」編 後編)

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    琥珀暁・虜帝伝
    1 2 3 4 5 6 7

    琥珀暁・追討伝
    1 2 3 4 5

    琥珀暁・終局伝
    1 2 3 4 5 6 7

    琥珀暁・平東伝
    1 2 3 4 5 6 7 8

    琥珀暁・平南伝
    1 2 3 4 5

    琥珀暁・天帝伝
    1 2 3 4 5

    琥珀暁・女神伝
    1 2 3 4 5 6 7

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    第1部;彼訪伝~邂朋伝
    第2部;狐童伝~金火伝
    第3部;
     前編 陥港伝~狐傑伝
     後編 彼心伝~北報伝
    第4部;
     前編 往海伝~歓虎伝
     後編 交誼伝~平岸伝
    第5部;
     前編 接豪伝~新尉伝
     後編 狐略伝~平西伝
    第6部;
     前編 空位伝~湖戦伝
     後編 虜帝伝~女神伝

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    琥珀暁・空位伝
    1 2 3 4 5 6 7

    琥珀暁・遠望伝
    1 2 3 4 5 6

    琥珀暁・夜騎伝
    1 2 3 4 5

    琥珀暁・内乱伝
    1 2 3 4 5 6 7

    琥珀暁・決意伝
    1 2 3 4 5

    琥珀暁・北征伝
    1 2 3 4 5

    琥珀暁・湖戦伝
    1 2 3 4 5 6 7

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    第1部;彼訪伝~邂朋伝
    第2部;狐童伝~金火伝
    第3部;
     前編 陥港伝~狐傑伝
     後編 彼心伝~北報伝
    第4部;
     前編 往海伝~歓虎伝
     後編 交誼伝~平岸伝
    第5部;
     前編 接豪伝~新尉伝
     後編 狐略伝~平西伝
    第6部;
     前編 空位伝~湖戦伝
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    キャラ紹介;第6部

    琥珀暁 キャラ

    「琥珀暁」のまとめ作業も残すところ、この記事を含めてあと3回。
    今回は第6部のキャラ紹介。
    ちなみに第5部についてはめぼしいキャラがいなかったため割愛。

    名前レン・ジーン / Renn Jean
    性別・種族・生年
    身体的特徴
    男性 / 長耳 / 紀元前10年代頃
    髪:銀 瞳:青
    小柄、痩せ型
    職業皇帝
    北方大陸全土を統べる覇権国家、「帝国」のトップ。
    およそ人間とは思えない残虐性と高い身体能力を併せ持ち、
    その欲と力によって北方を統一した。

    名前アル・ノゾン / Arr Nosonne
    性別・種族・生年
    身体的特徴
    男性? / 自律人形 / 不明
    不明
    中背 フード常時着用
    職業鉄の悪魔
    レンに超人の力を与えた張本人。
    彼の「覇業」はこの頃から始まっていたが、
    結果的に失敗していることを考えると、
    敗北の歴史の始まりなのかも知れない。

    名前克饕餮 / かつみ・とうてつ / Toutetsu Katsumi
    性別・種族・生年
    身体的特徴
    男性 / 短耳 / 不明
    髪:赤 瞳:左・黒、右・緑
    大柄、筋肉質
    職業克大火の三番目の弟子
    克大火の弟子、……と言えばいかにも魔術を使えそうなイメージだが、
    彼にはあんまり才能が無かった。
    その代わりなのか、筋力・膂力はズバ抜けて高く、
    まるで小山のような男だったと言う。

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    双月世界地図;琥珀暁(第6部)

    世界観・補足・考察

    「琥珀暁」第6部、北方の地図。



    帝国本軍との戦いはゼルカノゼロ南岸の防衛線前でほとんど決着してしまっているので、
    帝国軍の動きだとか遠征隊の進軍ルートだとかの解説は、今回ありません。
    なので今回は、皇帝と彼の戦略についての補足説明。



    作中で言及した通り、皇帝ジーンは単騎で敵陣に潜入し、
    敵リーダーを暗殺するのを基本戦術としており、それによって、
    皇帝である自分に対して「どんな力も策も無意味だ」と思わせ、恐怖心を抱かせて戦意喪失させる。
    これを基本かつ唯一の戦略としていました。
    確かにこれは、大軍を動かさずとも敵勢力を易々と壊滅させられる上、
    知識・技術を分け与えて鍛えた兵士たちに裏切られることも無い。
    自分ただ一人だけが優位に立つことを目論んだ、エゴイストな戦略です。

    しかし現実的に考えれば、集団で動く軍を相手に、
    まともに戦える駒が一人では勝負になりません。
    ましてや代替案を用意していないなど、ちょっとトラブル、
    予想外の状況が発生しただけで詰んでしまうのは明らか。
    エリザ暗殺に失敗したジーンは、その時点で既に、遠征隊に対抗できる手段を失っていました。
    どうにか兵士を集めて防衛線突破を目指すも、まともな練兵も行われず、
    軍備も揃っていない兵士たちを無闇やたらにぶつけるだけ。
    こんな体たらくで状況がどうにかなるわけもなく、帝国本軍はあっさり壊滅。
    ジーンは側近アルに助けられ逃亡するも、帝国の命脈はこの時点で絶たれました。

    恐らくは恐怖戦略が初めて成功した時点で、ジーンはそれ以外の策を考えることを、
    いや、恐らく「考えること」自体を放棄していたのでしょう。
    逃げた後は策らしい策を立てることも無く、遠征隊に追い回される形で東山間部を北方向へ逃げ、
    生存不可能圏内に迷い込んだ末に討たれました。

    アタマも筋肉と同じく、使わないとみるみる衰えます。
    作中では言及していませんが、この時のジーンは30代半ば程度。
    しかし考えることを20年前にやめてしまった彼は、
    既に頭の中が老化・萎縮し、耄碌していたのでしょう。
    そう考えると、遠征隊が北方を訪れたその時点でもう、
    ジーンの命運は決まっていたのかも知れません。



    なお終盤の、央南と南海の地図に関しては作成しないつもりです。
    どちらも物語上、地勢や位置関係について言及した記述が無いため。

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    「琥珀暁」あとがき ⑤過去と未来

    琥珀暁 あとがき

    シュウ「あとがきインタビューも今回が最終回! 今回のゲストは、……げっ」

    モール「なーにが『げっ』だ。失礼だね、君」

    ――今作でも結構えぐい活躍した人間ですからね。そりゃ警戒もされます。

    モール「何だかんだでこうやって会うの4回目だろ? もうちょい慣れろってね」

    シュウ「し、失礼しました。……改めましてご紹介します!
    今回のゲストは神に並ぶ大魔法使い! 賢者モールさんです!」


    モール「んで、今回私を呼んだ理由って?」

    ――前作「白猫夢」辺りから、双月世界が成立する以前に存在していたとされる「旧世界」
    の話が少しずつ開示されてきています。これを全て詳らかにするのはもっと後の予定ですが、
    現時点で明らかにできる要素について今一度、触れておこうかと。

    シュウ「ソコで、今作の登場人物の中で最もその事情に詳しいであろうモールさんに、お話を伺おうかと」

    モール「他に詳しそうなのいっぱいいるじゃないね。ゼロとか鳳凰とか」

    ――作中における登場回数の結果と、前々回取り上げたように、
    前半と後半でゼロの性格がねじ曲がりすぎてて、ここに呼ぶには具合が悪いってこともありますので。

    シュウ「その点、モールさんは性格が全っ然変わってないので、話しやすいってコトですね」

    モール「ケッ」

    ――本題に入りますが、今作は双月世界としての文明・文化の黎明期、はじまりに当たります。
    そのため旧世界の名残がチラホラ散見されるところがあります。

    モール「私とエリザが修行した山だとか、第6部の南海だとかだね」

    シュウ「あと、克一門の名前が旧世界で既に存在してたってコトもその一つですね。
    と言うコトは、もしかしたらモールさんは旧世界で大火さんと会ってたって可能性も?」


    ――これは後々の話につながってくることなので明言はできませんが、
    その可能性は無いものとして考えています。
    モールと克一門は、少なくとも旧世界ではほぼ無関係です。
    克一門の一人と個人的に親交があった程度ですね。
    と言うかそもそも、モールは厳密には旧世界には……。

    モール「君、ソレは次回作で話す内容だろ?」

    ――ええ。ですのでこれ以上は話しません。
    設定ばっかり先にこんなところでダラダラ垂れ流しにするくらいなら、ちゃんと物語書きます。

    シュウ「で、その物語とは……? わたしもちゃんと出るんですよね?」

    ――心配しなくてもちゃんと出します。舞台は8世紀、「白猫夢」から百年以上後の世界が舞台です。
    「白猫夢」が現実世界で言う20世紀半ばくらいの時代だったので、次回は現代~近未来くらいの世界観になります。

    シュウ「と言うコトはスマホやWi-Fiやドローンがあっちこっちにあるよーな……?」

    ――そーゆー世界です。そしてこの物語には、モールがものすごく重要な存在として現れます。
    彼だか彼女だか、このあやふやな存在が如何にして出来上がったのか、それが明らかになる予定です。

    シュウ「楽しみです。ちょー楽しみ!」

    ――シュウが世に出て丸10年、ようやくの本編登場となります。僕も書くのが楽しみです。

    シュウ「ちなみにタイトルは?」

    ――「緑綺星 -Hidden and Missing Stars-」の予定です。蒼、紅、白、琥珀と来て、第5弾は緑ですね。



    シュウ「ソレでは最後に恒例の、スペシャルサンクス紹介です!」

    ――まずはいつもの。「クリスタルの断章」のポール・ブリッツさん。
    度々込み入ったご意見をいただき、衝突したこともありましたが、
    いつも絡んでいただけること、少なからず感謝しております。

    そして、双月世界関連ではほとんど絡みはありませんが、「妄想の荒野」の矢端想さん。
    ツイッターでは度々ご紹介いただき、誠に感謝しております。
    天狐ちゃんを描いていただけたのは、本当にありがたかったです。

    また、ツイッターと言えば、野川真実さんには大変お世話になりました。
    エリザやら小鈴やら、双月世界のキャラを何度も描いていただき、嬉しい限りです。

    その他、当ブログ「黄輪雑貨本店 新館」にお越しいただいた皆様、
    小説をご笑覧いただいた皆様、ありがとうございました!

    シュウ「ありがとうございましたー!」

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    「琥珀暁」あとがき ④双月世界の移民史

    琥珀暁 あとがき

    シュウ「はーい、あとがきインタビュー第4回、始まりますよー。
    今回のゲストはこの方! 大食いする方のヒロイン!
    双月世界のハラペ虎(こ)娘の歴史は彼女が作った! リディア・ミェーチさんです!」


    リディア「は、恥ずかしいです、何だか……」

    シュウ「っと、ソレで質問なんですが、『蒼天剣』にもハラペ虎キャラがいましたよね。
    お二人に関連性はあるんですか? 『琥珀暁』の終盤でリディアさんは央中に移りましたし、
    お子さんもエリザさんのトコに馴染んでたみたいですし」


    ――朱海やシリンはもしかしたら彼女の子孫かも分かりませんし、
    他の移民からつながっているかも知れません。
    どちらにせよ北方遠征の後に移民した人は、相当数あったと思います。
    北方の人たちにとってみれば中央はあったかいし、ご飯はいっぱいあるし、
    ゼロやエリザが優秀なおかげで仕事も事欠かないし。
    逆に、ハンとクーが大使になったことで、追従して中央から北方に渡った人間も少なからずいたはず。
    その人たちも北方で親密な人間関係や家庭を築いたでしょうし、
    何割かはハンたちの任期終了後も現地に残ることを選んだであろうことは、想像に難くないでしょう。

    シュウ「双月暦1世紀から『虎』さんや『熊』さんが渡ってたとしたら、
    そりゃ500年後の『蒼天剣』の時代には中央のあっちこっちにいてもおかしくありませんよね。
    すっかり現地民になって、央中の人たちの中にはエリザさんと同じよーな言葉遣いしてる人もいて」


    リディア「うちの子たちはすっかりそうなってましたね。
    多分もう、北方のことばは話せないんじゃないかしら」


    ――ただ、「カルタ」や「コンペイトウ」がいつの間にか日本語になったように、
    あるいは日本語の「津波」が英語の「Tsunami」として広まったように、
    北方から中央に、あるいは中央から北方に渡った文化もいっぱいあるでしょう。
    そしてそれは恐らく、第6部で侵攻した央南でも同じかも知れません。

    シュウ「『蒼天剣』の第2話で『エルフは央北系だ』みたいなコト言ってましたもんね」

    ――そう言えば小鈴は央中からの移民4世ですが、お兄さんや従姉妹は「虎」ですから、
    その遠いご先祖様はきっと北方からの移民。彼女の中には色んな地域の血が混じってるんでしょうね。

    シュウ「だからあんなに美人さんなんですかね? ……もしかしたらわたしも?」

    ――名前からしてハーフみたいですもんね、シュウ・メイスンって。

    シュウ「じゃ、わたし美人さんですか? カワイイ系ですか?」

    ――ちなみに「火紅狐」以降、北方の地名の多くは英語的表記になっていますが、
    これは中央からの文化の影響、と言うことにしています。
    あるいは北方大使になったクーが変えたって可能性もありますが。

    シュウ「しれっと話題変えられたぁー!?」

    リディア「あ、あの、わたしは可愛い方だと思いますよ」

    ――それは可愛い「かた」か「ほう」なのか。

    シュウ「うわーん!」

    ――美人かどうかって本人の前で言及するのもどうかと思いますし、
    婉曲的に言うとすれば、基本的に僕が嫌いなキャラはブスです。
    作中のキャラで僕が一番大嫌いだと言っている克麒麟も「中性的な魅力が」
    とかどっかで言及してた覚えがありますが、イコール容姿の美麗さってわけではありません。
    あと、今作で言うならエマ(乗っ取り前)も割とそっち側。
    性格の意地汚さが外面に現れたような容姿をしていた、と言っておきます。
    その前提で言うとすれば、シュウは僕の中では、旅岡さんと同じくらいのグレードにいますね。

    シュウ「じゃ、……えーと、……えーとー……? き、基準がさっぱり分かんないです」

    ――その辺りに普通にいそうってことです。夕方6時半くらいに駅に行ったら、
    改札の向こうから女子高生やOLさんとかと一緒に出てきそうなくらいの顔立ち。

    シュウ「……はあ……えっと……うーん……その例え全然分かりませんよー……」

    ――シュウが宇宙猫みたいな顔し始めたのでちゃんと言ってあげますが、
    シュウは可愛いです。安心して下さい。

    シュウ「……確かにまあ、面と向かってそんなコト言われたら、ソレはソレで恥ずかしいんですけど」

    リディア「でも良かったじゃないですか! これで可愛いと言うことは確定されたのですし。ねっ?」

    ――ただし。

    シュウ「ただし?」

    ――前述の通り、僕の作品では性格の良し悪しは顔に出ます。
    シュウはまだキャラを固め切っていないので、文句無し、掛け値無しに美人であるかまでは、
    現時点でははっきり言えません。
    無論お気に入りの看板娘ですので、いい娘にしてあげたいとは考えているところですが、
    状況如何では性格が歪む可能性もあるので、今の段階では明言できないところです。

    シュウ「絶対美人にして下さい。マジで頼みます」

    ――精一杯努力します。……と、明日はあとがき最終回です。お楽しみに。

    シュウ「お楽しみに! ……頼みますよ? マ・ジ・で」

    リディア「め、目が怖い……」

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    「琥珀暁」あとがき ③ゼロの変遷と変質

    琥珀暁 あとがき

    シュウ「さあ、あとがきインタビュー第3回です。ゲストはこの方!
    今作の可愛い方のヒロイン! 双月世界の元祖お嬢様! クラム・タイムズさんです!」


    クー「よろしくお願いいたします。ところで『可愛い方の』と仰いましたが、
    それは可愛くない方がいらっしゃる、と仰りたいのかしら?」


    ――ではなくて、今作可愛いのと格好良いのと綺麗なのがいるってことです。
    まあ、ヒロインの多さは今作に限りませんが。

    クー「誰が誰であるとは、言及いたせるのかしら」

    ――してもいいですが、今日の議題はそれじゃないので割愛です。
    前回エリザがどうなのって話をしたので、今回はもう一柱の神様、ゼロについて話します。

    シュウ「第1部では裏表の無い善人、誰もが敬愛するヒーローって立ち位置でしたが、
    第3部辺りから猜疑心と名誉欲の強さが鼻に付くようになっちゃいましたよね。
    そして第6部ではマリアさんをはじめ、大勢の兵士を見殺しにするような暴挙に。
    一体何でこんなに人間性がねじ曲がっちゃったのか? ソレを考察したいと思います」


    クー「そのお話を、当事者の娘の前でされるのかしら。随分とご趣味のよろしいこと」

    シュウ「やんわりした口調ながらトゲがすごい」

    ――ご批判はごもっともですが、話を進めます。
      まず大前提ですが、僕個人の趣味・嗜好としていわゆる「最強チート系主人公による無双モノ」
    が大嫌いと言う話は何度かしていますが、ゼロはほぼほぼこれに当てはまると思います。

    シュウ「言われてみれば無明の何にも無いって世界、文明も文化も大きく立ち遅れた異世界に来て、
    魔術をはじめとする色んな技術をどっさり持ち込んで、ソコにはびこる凶悪なはずの敵たちをあっさり蹴散らしちゃう、
    ……ってまさに無双モノの王道パターンですよね。
    でも何で嫌いだって言ってるのに、そんなキャラを登場させたんですか?」


    ――嫌いである理由は3つあって、1つは安易・安直であること。
    2つ目は主人公が優遇され過ぎなこと。そして最後に、リアリティに乏しいことです。
    「才能と実力にあふれた正義漢が神や天を味方に付けて悪から世界を救いました、おしまい」
    ……で終わる物語など、嘘臭さとご都合主義の塊です。
    正義は勝つ、正義だから勝つなどと言うお話は、
    勝った側が自分を良く見せたいだけの欺瞞と自己弁護に過ぎません。
    本当の戦争とは、勝利のその裏で、勝つために努力と苦心、策略を巡らせていないはずがないのです。
    数多の戦記と戦術書が、それを証明していると言っていいでしょう。
    むしろその要素が一切無いにもかかわらず、来た、見た、勝ったなどと豪語したところで、
    そこに本物らしさなどどこにも感じられない。そんなご都合主義の塊に、リアリティは欠片も無いのです。
    安っぽい英雄譚を紐解けば、すぐ「神様が助けてくれる」「神様が知恵を授けてくれる」「神様が武器をくれる」、
    そんな展開ばかりです。ちょっとは自分でどうにかしようと思わないのか、と。
    なのでまず、第1部において、ゼロには神の御加護と言うような奇跡や都合のいい偶然などと言うものは
    一切起こさせませんでしたし、とことん厳しい状況に置き続けました。それが僕の書く無双モノです。
    「無敵の能力がある? 超絶実力者? それじゃノーマルモードなんかやらせてたまるか。
    イージーなんかもってのほかだ。ハードだって生ぬるい。お前はルナティックモードだ!」
    と艱難辛苦に放り込むスタイルです。

    クー「ひどいお方ですわね」

    ――無双チーターなんだからそれくらいで丁度いいんです。
    実力のある人間には、それ相応の苦難を与えないと話になりませんし。
    それにこんだけ窮地に追いやっても結局、「僕つえーwwwww」となっちゃったんですから。

    シュウ「第6部で言及されてたコトですね。確かに相手をなめてかかってなきゃ、敵陣上陸はしませんよね、普通」

    ――人間である以上、他人より強い力を得れば増長するものです。
    謙虚な強者など、それこそファンタジーやメルヘン、弱者の自分勝手な理想と言うもの。
    どこの世界に「自家用ヘリや高級車を持ってるのにわざわざ普通の満員電車に乗る大富豪」がいますか。
    仮に使わない者がいるとすれば、それは遠慮や謙遜から来る行動ではなく、単なる趣味でしょう。
    話を戻しますが、「琥珀暁」後半における偏執と暴走は、長年優位に立ってきた故の増長に加え、
    その優位を脅かす存在が現れたことも一因です。

    クー「エリザさんのことかしら」

    シュウ「本人自体が優秀な上、ゼロさんの親友が指導したワケですからね。
    自分と互角か、あるいはソレ以上の力量を持ってると感じたのも無理からぬ話ですね」


    ――人間、一度得たモノを手放すのは惜しいと思うもの。
    ましてや多大な苦労や犠牲と引き換えにして、となればなおさらです。
    「いつかエリザが自分の築き上げたモノをすべて奪ってしまうかも知れない」と言う恐怖は、
    恐らく僕たちが想像している以上に感じていたのかも知れません。
    世界を手に入れた男なのですから。

    クー「それを顧みれば、やはりあなたは過酷な運命に導いているように存じますわ。
    普段からあなた、『物語はハッピーエンドじゃないと嫌だ』と仰っているのでしょう?
    もっと幸せな結末を、皆に与えられたのではございませんこと?」


    ――それに関しては、自分の構成力不足であることは否めません。
    ハッピーエンドにしようとなると、ものすごく安易にまとめるか、
    ものすごくシナリオを練りに練らないと到達しにくいものでして。
    もう10年悩んだらもっと改善したのかも知れませんが、
    今作の元となった作品を書いたのが、その10年よりも前のこと。
    元作品よりは格段に面白くなったことは間違い無いと思いますが、
    それでも現時点ではこのクオリティが精一杯でした。
    この期に及んでさらに10年待たせるわけには行かないので、今作はこの出来で勘弁して下さい。

    クー「そんな殊勝を装ったような言葉でごまかされると……」

    シュウ「でもクーさんは幸せになりましたよね」

    クー「んっ、……ええまあ」

    シュウ「結局お父さんも絶頂にいたまま、名誉が傷付かない形で自然に亡くなったワケですから、
    まあまあ良いんじゃないですか?
    もっとひどい死に方した人は大勢いるワケですし」


    クー「……そうですわね、仰る通りと存じますわ。いいでしょう、溜飲を下げておきますわ」

    シュウ(コレ以上難癖付けられると、インタビューがいつまで経っても終わりませんからね)

    クー「何か申されましたかしら」

    シュウ「イエイエナンデモナイデスヨー。……ソレじゃ今日はこの辺でっ!」

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    「琥珀暁」あとがき ②エリザは悪人だったのか?

    琥珀暁 あとがき

    シュウ「はい、今回もあとがきインタビューはじめまーす。
    今回のゲストはこの方! 腕一本で想い人の側近になった男!
    でもソレ報われたのか報われてないのか、ロウ・ルッジさんでーす!」


    ロウ「なーんか紹介の仕方が引っ掛かんなぁ……。ま、よろしく頼むわ」

    シュウ「さて黄輪さん、今回のテーマは?」

    ――今作において一番好き勝手しておいて、でも結局「いい人」みたいに扱われてるエリザ。
    彼女の半生を振り返るに、結構なダークゾーン、グレーゾーンがあっちこっちに存在します。
    果たしてゼロが言ったように、彼女は悪人だったのか? それを検証したいと思います。

    ロウ「んなもん、いい人に決まってんだろーがよ。大体、自分の仕事置いといて北に3年いたんだぜ?
    よっぽどのお人好しじゃなきゃ、んなことやるわけねーだろーが」


    シュウ「でもその遠征って、ゼロさんがほとんどおカネとヒトを出したって話ですよね」

    ――しかも遠征後に出た利益はほぼエリザが取った形。流石にゼロも頭に来たでしょうね。

    ロウ「いや、でも他にもさー……」

    シュウ「他には第2部では討伐隊50人を引き抜いたり奥さんいる人を口説き落としたり。
    第4部ではシェロさんを罠にはめ、第6部ではものっすごい嘘付いてましたし、
    ……客観的に見ると結構えぐいコトしてません?」


    ロウ「いや……でもさー……ううっ……」

    ――ピカレスクロマンは金火狐のDNAに刻まれてるんでしょうね。子孫のフォコの話と言い。
    ……と、これだけだと単純に悪いことしか列記していないので、いい面も挙げないとフェアじゃないですね。

    ロウ「頼むわ。もう俺めげそうだよ……」

    シュウ「まず、先程ロウさんが言っていた通り、自分のお仕事を放っぽって遠征隊に参加、
    と言うのはなかなかできるコトではないですね。後に利益が出たコトはともかくとして、
    基本的に無給・無報酬で3年間誰も行ったコトの無い国に海外出張って、
    そんな条件で行ってくれる人なんて、よっぽどのお人好しですよね」


    ロウ「だ、だろ、だろ!?」

    ――まあ、報酬云々については、既に大富豪だったので給与をもらう必要が無かっただけですが、
    それでも自分の稼業を3年放置するのは、相当勇気がいることです。
    恐らく僕自身、3年小説書かなかったら確実に全キャラの設定を忘れますし、書き方も分からなくなる。
    もうどの小説も、続きは書けなくなるでしょう。
    (こないだ旅岡さんの話に13年前のキャラ出そうとして、どんなキャラ付けしてたかすっかり忘れてて焦りました)
    それを考えれば、これは下手すると自分の事業、ひいては自分の資産・財産を丸ごと手放すも同然の行為。
    ただ打算的・利己的な人であったなら、絶対にやろうなんて思わないでしょう。
    それにゼロが得るはずだった利益をエリザが奪ったと言うような発言が度々ゼロからされていますが、
    エリザが築いた流通・交通ルート、それに商品・産品は、ゼロ側も使っているはずです。
    ゼロが出資したにせよ、それを使ってエリザがもたらしてくれた恩恵を、ゼロも受けているのは間違いありません。
    その上で非難するのは、一体どっちが盗っ人猛々しいかって話になってくるでしょう。

    シュウ「例えるなら、ゼロさんが採ったリンゴをエリザさんが持ってっちゃって、
    でもその後エリザさんが美味しいアップルパイにして(ゼロさんを含む)みんなに配ったのに、
    ゼロさんが『僕のリンゴを勝手に使った』って怒り出したって話ですよね。そのパイ食べながら」


    ロウ「『じゃあ食ってんじゃねえよ』って言いたくなるよな、そりゃ」

    ――他にも第5部で放浪者同然だったシェロたちを助けたり、第6部で身寄りの無くなったリディアを引き取ったりと、
    必ずしも悪人とは判断しがたい行動も、少なからず取っています。
    これは「白猫夢」で言及したことですが、結局は「利益くれる人は善人、迷惑かける人は悪人」なんです。
    ゼロにしてみれば、自分が受けるはずだった利益、いや、称賛を奪うエリザは、どうやったって悪人にしか見えない。
    そう言うことです。

    シュウ「『絶対悪』なんてまず存在しない、って話ですよね。
    ……っと、今回はこの辺ですね。また次回!」

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    「琥珀暁」あとがき ①二柱の神様

    琥珀暁 あとがき

    シュウ「あー、えっと、どーも。(……なんかもう、こっちだと違和感感じるようになってきちゃいましたよ)
    とゆーワケで『琥珀暁』も無事に終わりまして、恒例のあとがきインタビューのはじまりでーす。
    司会はいつものわたし、シュウ・メイスンでお送りいたしまーす」


    ――よろしくお願いします。

    シュウ「って言うかですね、わたしついさっきもエリザさんとお話してたんですよね。
    改まってあとがきとしてお話するのも、なんかピンと来ないって言うかなんですけど」


    ――ちゃんとやらないと次回作が出ませんし、次回作に出られませんよ。

    シュウ「誰がですか?」

    ――シュウが。

    シュウ「わたし? ……わたしですか!?

    ――フォントでかくしなくったって聞こえてます。君です。

    シュウ「……本当に?」

    ――本当に。

    シュウ「……ぃやったあああああ! うわああい出られるー! ほんぺーん! わっほい!」

    ――うわあ、今まで見たことも無いような喜び方だ。

    シュウ「さーと言うワケで、あとがき始めてまいりましょーかっ!
    本日のゲストは全編を通してキーパーソンとなった、ちょっとウラあり熱血漢! ゲート・シモンさんです!」


    ゲート「おう。よろしくな」

    シュウ「ゲートさんは第1部からゼロさんの親友だったり、第3部以降の中心人物であるハンさんの父親だったり、
    はたまたエリザさんの内縁の夫だったりと、あっちこっちで顔や名前を目にする、
    影の主役とも言える活躍をして下さいました」


    ゲート「終わったからいいんだけどよ、最後のいっこは、いじるの勘弁な」

    ――まず、今作のテーマは「聖書を作る」でした。
    これは言い換えれば宗教を作る、神様を作ると言う話でもあります。
    熱心な方からは少なからずお叱りを受けそうな表現ではありますが、
    現在世界に数多ある宗教も、そしてその聖書も、「人間の創作物」です。

    シュウ「ちょっと黄輪さん、そう言い切っちゃうのはまずいんじゃないですか?」

    ――勘違いしないでもらいたいのは、聖書の中に書かれている「神様」も創作物、
    架空の存在であると断言したいわけではありません。
    本当に何百年、何千年も昔に神様なり天使なりが人々の前に降臨したのかも知れませんし、
    その奇跡を否定する材料を、僕は持ち得ていません。
    いたら素敵であるとも思ってますし、まあまあ信じてる方です。
    ですがその神様「について記された書物」は、神様自らが執筆したものでしょうか?
    僕が論じたいのはその点です。

    シュウ「なるほど。キリスト教の新約聖書も、『マタイによる福音書』であるとか、
    『ローマの使徒への手紙』だとか、書いたのはキリストのお弟子さんたちですね」


    ――「神のみことば」と言うその表現でさえ、神様の放った音声が直に紙や石版に印字されたものではなく、
    人の手を介して記されています。である以上、「聖書は人間の創作物」に他ならないと言うことになります。

    ゲート「もしかしたら書き写す時、何かしら余計なもんを付け加えてるかも知れんしな。
    アロイはやらんと思うが、周りから話聞く時、妙な脚色入れてくるようなヤツが確実にいるだろうし」


    シュウ「ソレって何だか冒涜的な気もします。ありのままじゃなくなりますよね」

    ――聖書が人間の創作物である以上、何らかの意味を持って(あるいは持たせようとして)制作されているはずです。
    純粋に宗教的・神学的な欲求なのか、それとも政治的・文化的なものに変化させたいと言う企みがあるのか、
    それは分かりませんが、いずれにせよ、そうした意味を持たせようとした瞬間から、
    聖書も、宗教も、いわゆる「神の思し召し」を離れた「人工物」になる。
    個人的意見ですが、僕の聖書と宗教に対する考え方はこんなところですね。
    ……と、話がそれましたが、今作にて神様作りました。しかも二柱。ただしスタンスは、大きく異なります。

    シュウ「これまでの作品においても、ゼロさんを主神とする方が『央北天帝教』、
    エリザさんの方が『央中天帝教』と、分かれてますよね」


    ――そしてそのスタンスに関しても、これまで紹介して来ました。
    まず央北の方が先にあり、これが中央政府の中核にあった、と。
    その内に中央政府が神の威光を笠に着て無茶振りし始めたので、央中の人たちが神話の中で、
    ゼロと同じような立ち位置にあったエリザを祀り上げてもう一つ新しい宗教を作った。
    これが央中天帝教ですね。

    ゲート「何つーか、『親は子に似る』って言うが、晩年メチャクチャしだしたゼロと似てるなぁ、その流れ」

    シュウ「そしてその暴走を止めてきたのもエリザさんであり、央中天帝教である。
    そう考えてみると『火紅狐』のお話って、ゼロさんとエリザさんの代理戦争みたいなものにも思えてきますね。
    すごい奥さん持っちゃいましたね、ゲートさんは」


    ゲート「無理矢理こっちに話題振ろうとすんなよ……(苦笑い)」

    ――これで「双月千年世界」における精神的支柱、
    あるいは文明・文化の根源となる「宗教」と「聖書」を作ることができました。
    こうした下書き、基礎構造がキッチリ構築できたことに、我ながら満足しています。
    次回作以降は、この「基礎」を基にして、今までより滑らかに物語を動かせるようになるんじゃないかな、と。

    シュウ「念入りに作ってますね、本当。その努力が実ればいいんですけどねー。
    と言うワケで今回はココまで! また次回、よろしくですー」

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    創作西部劇作品で『顔がいい』男前ばかり集めてみた。 / さえまる(@saema_ru)さんにご紹介いただきました

    他サイトさんとの交流

    西部劇界隈の同志、さえまる(@saema_ru)さんに、
    「DETECTIVE WESTERN」のキャラをピックアップしていただきました。
    ありがとうございます!

    正確には「西部劇創作クラスタ各氏の『顔がいい』男前キャラ」を集めた、夢のような企画です。
    自分で紹介したものの、まさかピックアップされるとは思ってませんでした。
    勝手ながら紹介すると……
    ・「Distance」より、アンディ・ウォルト、……と「日本人」(さえまるさん)
    ・「荒野の放浪娘」より、アンソニー・クエイド(矢端想さん)
    ・「荒野の死神」より、"死神"ジェフ・ロギンズ(さん)
    ・「STAR DUST」より、ヘック・ティルグマン保安官(ヒロヤさん)
    ・「DETECTIVE WESTERN」より、ジェフ・F・パディントン局長(ウチです)
    (正直に言うと、さえまるさんと矢端さん以外は面識がありません……。
    勝手なご紹介、誠に申し訳ありません)

    詳細は以下のリンクから。
    https://twitter.com/saema_ru/status/1306266791434285057



    追記:記事作成後、静さん、ヒロヤさんと相互フォローしました。
    ありがとうございます……(*´∀`)

    追記2:矢端さんも紹介記事を作成されていました。
    こちらにリンクを張っておきます。

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    琥珀暁・女神伝 7

    琥珀暁 第6部

    神様たちの話、最終話。
    陽は墜ち――そして、また。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    7.
     饕餮の埋葬が済んだ翌日、エリザは突然、帰郷を提案した。予定よりも随分早かったが、孫たちをはじめとして、船団の皆も故郷を恋しく思い始めていた頃であり、満場一致で帰ることが決定された。
    「ほんでも、何で急に?」
     尋ねたシェリコに、エリザはいつもと同じように、肩をすくめて返した。
    「色々な、思い付いたコトがあんねん。もしかしたらもうアタシ、あんまり時間が無いかもやから、少しでも形にしたくてな」
    「ちょっ……、縁起でも無いコト言わないで下さいよ、女将さん」
    「冗談で言うたんやあらへん」
     エリザは海の向こうを眺めながら、煙管をくわえた。
    「アタシもう、すっかりおばあちゃんやで? やりたいコトがいきなり仰山でけても、もう間に合わへんかも分からんからな」

     その言葉が――極めて残酷ながら――真実であったことは、帰郷後まもなく証明されてしまった。エリザは故郷に戻って数日後、突然息を引き取ってしまったのである。あまりに早過ぎる大女将の死に、息子は勿論、弟夫婦も娘夫婦も、そして親しくしていた側近とその子供たちも、さらには彼女の家に仕えていた使用人たちも――果てには街にいたその全員が、深く涙した。
     エリザは万人から深く惜しまれ、そして悼まれて、豪勢に弔われた。葬儀はまるでお祭りの如く、七日七晩に渡って続けられたと言う。



    《……ってワケでなー、トウテツさんからもらったもん実践してみよか思てた矢先に、ぽっくりやで? そら死んでも死に切れへんっちゅうヤツやん?
     せやからココに居座って、研究続けるコトにしたんよ》
    《あなた、息子さんに助言するのが目的だって言ってなかった?》
     夢の世界、エリザの家。
     彼女に拾われた悲劇の大天才、葵・ハーミットは、エリザ自身から彼女の半生記を聞かされ、いささか疲れた表情を浮かべながらも――やはり当事者本人からの、生の英雄譚であったためか――どこか興奮した様子を見せていた。
    《や、ソレも勿論あるねんで? でもソレだけやとヒマするやんか》
    《死んだ人が忙しいって言うのも変じゃない?》
    《かも分からんけども。……ともかくや、その『目録』、実はココにあんねん》
     そう言って、エリザは自分の胸元に手を入れ、煙管――ではなく、金と紫に光る板を取り出した。
    《コレが克一門の秘蔵の品、『黄金の目録』や。コレ、ホンマにすごいで。コレ自体が桁違いの魔力持っとるおかげで、死んだ後でもアタシ、こーやって夢の世界で好き放題でけるようになったからな。ソレに強化術やら金の錬成法やら、今でも実現困難、実現不可能なハナシまで、実践でける方法が事細かに書かれとるんよ。
     や、そんなんはまだ序の口やな。ホンマのホンマにものすごいんはな……》
     説明しつつ、エリザは「目録」の表面をなぞり、葵にその「ものすごい」内容を見せる。
    《……え? えっ!? う、嘘でしょ!?》
     葵ほどの英才でさえも仰天する様子を見て、エリザはニヤニヤと笑みを浮かべている。
    《ホンマや。コレはもう、魔術の域やない。魔法やねん》
    《あたし、克一門をなめてかかってたよ。……本当に、本当にすごかったんだね》
    《残念ながらトウテツさんは、内容はよお分かってへんかったみたいやけどな。分かっとったらバケモノになるようなヘマ打ってへんわ。そもそもそんな術使う必要無かったんやから》
    《そう、だね》
     葵は「目録」を手に取り、熱心に見入っている。と、エリザは葵から「目録」をひょいと取り上げ、胸元にしまう。
    《あっ》
    《研究はおいおいやって行こか。まずはアンタの部屋作るんが先決や》
    《あ、……うん》
     椅子から立ち上がり、葵が部屋を出る。



     エリザも続いて部屋を後にしようとし――くるんと振り向いた。
    《アタシらまだまだ、コレからやでぇ? アハハハハハハ》

    琥珀暁・女神伝 終

    双月千年世界「琥珀暁」 終

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    琥珀暁・女神伝 6

    琥珀暁 第6部

    神様たちの話、第360話。
    1000年越しの弔い。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    6.
     夢の中で受けた饕餮からの依頼は、エリザが予想していたよりずっと早く、達成することができた。夢を見てから2ヶ月後、ひょんなことから発見できたからである。
    「お、女将さぁ~ん!」
     ぞっとした顔を並べるシェリコとエルモに呼ばれ、エリザは面食らう。
    「何やのん? 二人して、えらい顔しよって」
    「し、島の奥で、えらいもん見付けてしまいまして」
    「そ、そ、そうなんスよ」
     それを聞いて、エリザはピンと来る。
    「何や? 頭蓋骨でも見付けたんか?」
    「そ、そう、ソレなんスよ! 多分人のヤツっス」
    「でも、普通やないんですよ。辺り一面、何て言うたらええか、その……」
    「ちょと見に行こか。案内頼むで」
    「あ、案内……スか」
    「わ、分かりました……」
     揃って肩を落とす兄弟の後ろに付き、エリザはその、骨がある場所へと向かった。
    「おーぉ」
     現場を見て、エリザもうめく。
    「こら怖いな、確かに」
     島の中心と思われる場所に、その頭蓋骨は半分ほど埋まっていた。だが地面は大きくえぐれており、その周囲6~7メートルは、およそ砂や土とは思えない、真っ青な色に染まっている。
    「触って平気、……とはちょと思えへんなぁ、コレ」
     エリザは途中通った森の中に戻り、枝を拾って来る。
    「よっこいしょー、っと。……うわぁ」
     枝を青い地面に刺した途端、枝はぶすぶすと煙を上げ、ぼろぼろに崩れてしまった。
    「結構な強酸やな。ほんなら、中和したら何とかなるかも分からんな」
    「どうすんスか?」
    「ソコら辺の木と海藻集めて燃やし。ほんででけた灰と真水混ぜて撒いてみよか」
     エリザに命じられた通り、シェリコ兄弟とゼラナ姉妹は周囲の木を伐り、浜辺に打ち上げられていた海藻を採って、一緒に燃やして灰を得た。
    「コレでええのん、ばーちゃん?」
    「ん、ありがとさん」
     エリザは灰を含んだ水を撒き、もう一度枝を刺して土の様子を探る。
    「さっきよりは反応薄くなったけども、……まだ煙、うっすら噴いとるな。こら全部中和するのんに二、三日かかりそうやな」
    「女将さん、なんでそんなにあの骨にこだわるんスか?」
     シェリコに尋ねられ、エリザは肩をすくめて返した。
    「野ざらしは可哀想やろ? どんだけ経っとるか分からんけども」
     結局、土が無害な程度に中和されるまでに、4日を要したが――それでもどうにかやり遂げ、エリザは饕餮のものらしい頭蓋骨を拾うことができた。
    「なるほどなぁ。あんな土ん中やったら鳥も獣も寄って来られへんわな。そら1000年放置されるワケやで」
    「1000年?」
     横にいたエルモに尋ねられたが、エリザは笑ってごまかす。
    「そんくらいやろなって。……さ、ほな丁寧にお墓作ったろか。もうひと頑張り頼むで」
    「へーい」

     その日の晩の内に、エリザの夢に饕餮が現れた。
    《頼みを聞き届けていただき、誠に感謝の極みである。ありがとう、エリザさん》
    「そらどーも。……で、報酬はどうやってもろたらええんでしょ」
     尋ねたエリザに、饕餮は懐から一枚の、金と紫に光る板を取り出す。
    《この『目録』をあなたにお譲りする。あなたの心の中に置いておく》
    「はあ……? まあ、もろたっちゅうコトでええんですな」
    《これで私もようやく、心残りが無くなった。もう現世には未練無しだ。……いや、……最期に、一つだけ。と言っても、これはエリザさんに何かしてもらうような必要は、無いかとは思うが》
    「何ですのん? 今更遠慮せんでもええでしょ」
    《うむ……まあ……そうだな》
     饕餮は困った顔をしつつも、口を開いた。
    《師匠はまだ生きている、……と思う。恐らくは私を討った直後、力尽きてどこかの島に漂着したと思われるが、私が自分自身の頭骨の存在を感じていたように、この世界においてもまだ、師匠がどこかで生き残っていることを感じている。だがもし見付けたとしても、彼のことは放っておいてもらいたい。その内、目覚めるだろうから。師匠はそう言うお人だ。
     ただ、それが明日のことか、あるいは50年後、100年後、それとももっと後のことになるかは、私にも見当が付かないが》
    「分かりました。ほな探索は切り上げときましょ。誰も来おへんかったら見付かるコトも無いでしょうし」
    《よろしく頼む。……ではさらばだ、エリザさん》

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    琥珀暁・女神伝 5

    琥珀暁 第6部

    神様たちの話、第359話。
    克大火の弟子;全てを飲み込む者。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    5.
    《麒麟が私に――『コレは緊急の緊急、もうコレやるしかない最終段階って時にだけ、どっちかいっこだけ使うように』と警告した上で――教えた術は2つあった。一つは魔獣の術。己の体を一時、獣同様に換えるもので、私が使えば獰猛な熊のように変身できた。
     そしてもう一つは、魔力を爆発的に増加させる強化術だ。MPPと言って、エリザさんはお分かりだろうか》
    「分かりまへんなぁ」
    《あー……と、となると説明が難しいな。どう言ったものか、……ともかく、魔力を一時的に、通常の数十倍、いや、数百倍に高めることができるのだ》
    「ほんでアンタは、アカン言われてたにもかかわらず、両方いっぺんに使てしもた、と」
    《左様。私の腕では同時に2つ展開して、制御することはできなかったのだ。そしてその結果が……》
     話している間に、回想の中の饕餮の体は真っ二つに避け、その中から熊のようなバケモノが姿を現した。だがその姿もまもなく膨れ上がって原型を留めなくなり、そこから先は虎のような、象のような、しかしやはり、どこかに熊の要素も残っているような――数多の猛獣を混ぜ固めたような、形容しようの無いバケモノへと変貌した。
    「……愚か者め……」
     大火は顔をしかめさせ、その場から姿を消した。

     その後の映像は、数多の修羅場をくぐった経験豊富なエリザでも、絶句するようなものばかりだった。
     完全な怪物と化した饕餮は、確かに所期の目的通り、迫っていたバケモノを、一瞬の内に消し飛ばした。だが攻撃の余波はバケモノたちだけではなく、島自体をも吹き飛ばした。その時点で饕餮の自我は消え去ってしまったらしく、彼はそのまま、空高く飛び上がった。
    「……なっ……なんだ……お前は……!?」
     と、彼の視界に真っ白なローブを着た女――克難訓が映る。それを目にした途端、饕餮は彼女めがけて一直線に飛び込んで行った。
    「く……来るな……来るなーッ! 『バールマルム』! 『ネメシスバルド』! 『アポカリプス』!」
     どうやら難訓は魔術を立て続けに放ったようだが、饕餮の体中に現れた目が3つ、4つ潰れた程度で、ほとんどダメージらしいダメージは受けていない。
    「ひ……ひいいいいいいいっ!」
     あっと言う間に難訓は饕餮の中に飲み込まれ、数秒後、細切れになって背中から排出された。
    「……っ……あ……ぅ……」
     顔面半分と胸から上だけになった彼女も、瞬間移動術で姿を消す。だがそれに気付いた様子は、饕餮には無かった。何故ならその時、彼は別のものに目を向けていたからである。
     饕餮は目に映ったもの――一際大きな陸地に向かって、またも一直線に飛んで行った。

     饕餮はその大地を、破壊し尽くした。たった一日で、北方大陸と同じくらいの大きさであったその大陸は、いくつかの島々を残して海に沈んでいった。



    《……そして私は、次の標的を探すべくさまよっている間に、完全武装した師匠と相見えた。いやまったく、師匠は流石の人であった。私が不完全な形で発動した魔力強化術を短時間で改良し、実用に耐え得るものに調整したのだ。その強化術を用いた師匠は、まさに一騎当千、いや、当万、当十万とも……》「ほんでトウテツさん」
     冗長的になり始めた話をさえぎり、エリザは先を促した。
    「結局そのお強いお師匠さんが、トウテツさんを討ったワケですな?」
    《左様。師匠は私の体を可能な限り細切れにし、数百キロ四方にバラ撒いた。当然、その中にあった私の『元の』頭も、どこかに飛んで行ってしまった》
    「1000年も前やったら、とっくに土に還ってしもてるんとちゃいます?」
     そう返すエリザに、饕餮はかぶりを振る。
    《私には分かる。まだこの南の海のどこかの島に、私の頭骨が残っていると。
     無論、今更見付けたところでどうなるものでもないし、もう1000年、2000年も放っておけば、流石に消えて無くなるかも知れん。だがあると感じる以上、せめてきちんと葬ってほしいと、そう思うのは自然ではないだろうか》
    「まあ、分からんではないですな」
     エリザはいつの間にか手にしていた煙管を口にくわえ、ふーっと一息吐き出す。
    「お話、よお分かりました。どっちにせよ、この辺りは探索しようと思とったところですし、ついでで良ければ探しますで」
    《おおっ、ありがたい!》
    「ですけども」
     顔をほころばせた饕餮に、エリザは煙管の先を向ける。
    「タダで人を使おうっちゅうワケやありませんよね? こっちも酷暑と潮風の中、汗かき汗かき髪と尻尾をゴワッゴワにして捜索するんですから、何かしら見返りはもらわへんと、割に合いませんわ」
    《承知している。エリザさんは魔術に相当お詳しいようだから、それに因んだ品を用意しよう》
    「『用意』て言われても、ソレを幽霊のアンタから、どう受け取ればええんです?」
    《無論、配慮はする。信じてほしい》
    「ま、ええですわ。ソレで手ぇ打ちましょ」
    《よろしく頼む。頭骨を見付けたらどうか丁寧に埋葬し、その上に墓を建ててほしい》
    「はいはい」

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    琥珀暁・女神伝 4

    琥珀暁 第6部

    神様たちの話、第358話。
    饕餮の後悔。

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    4.
    「頭? ……や、そうか、アンタ1000年とか言うてはりましたもんな。幽霊さんなんですな?」
    《そう言うことになるな。この姿は生前の、と言うか、私がまだ正気を保っていた頃のものだ》
    「ふーん……?」
     饕餮はエリザに手招きし、島の奥へ付いてくるよう促す。
    《私はとある一派に属していた。その名も克一門、克大火と神道理(しんとう・まこと)を双璧と仰ぐ、地下組織の一員であった。と言っても非道や不善を働いていたわけではない。ある巨大な組織に、義憤と正義感、そして因縁によって対抗しようと試みる、ゲリラ集団だったのだ。
     色々とあって、まあ、その組織の壊滅には成功したわけであるが、結局のところ、世界の崩壊を食い止めることまではできず、一門は崩壊に伴ってちりぢりになってしまった。師匠の行方も分からず、門弟も生き残っているのか死んでしまったか》
    「ソレについてなんですけど」
     と、エリザが手を挙げる。
    「アンタ、ホウオウって知ってはります?」
    《ほ、鳳凰!? と言うと、お父上に良く似たお顔とお母上と同じ茶髪で、いつも浮世離れしていた、あの鳳凰か! おお、存じているとも!》
    「顔のコトは知りませんけども、茶髪は茶髪でしたな。いっぺん、そのホウオウさんから同じよーな話を聞いたコトあるんですわ。チラっとだけですけども」
    《え……? 本人から?》
     意外そうな顔をした饕餮に、エリザはニヤ、と笑って返す。
    「克一門は不屈揃いやて言うてはりましたわ。『殺しても死なないよーなのが一杯いる』と」
    《はははは……、うむ、左様である。師を筆頭に、そんな者ばかりだった。……が、実際はこの通りだ。まあ、自業自得ではあるのだが》
    「っちゅうと?」
    《それをこれから説明する。見てもらわないと、私の頼みについて具体的には、理解してはもらえんだろうからな》
     話している間に、二人は島の中央に到着する。そこには饕餮と、真っ黒な服を着た男が対峙しており、会話を交わしていた。
    《あれは1000年前の――まだこの姿を保っていた頃の私と、我が師である克大火だ》

     そこにいた饕餮は、土気色の顔でうずくまっていた。
    「はあ……はあっ……」
     対する大火は、どこか呆れたような様子で彼を見下ろしていた。
    「お前には過分に知恵が足りんと思ってはいたが、まさかこんな暴挙に出るほどに愚かだったとは、な」
    「はあ……はあ……すみません……師匠……」
    「とは言え、あいつら相手にたった一人では、致し方無いことか」
     大火は建物の外に目をやる。
    「……?」
     エリザのいた側からは何も見えなかったが、案内してくれた方の饕餮に手招きされ、大火と同じ視点に移動したところで、その禍々しいモノの大群を、建物の窓越しに確認することができた。
    「うわっ……アレは」
    《師が『難訓』と呼んでいた女は――師匠の、かつての一番弟子だったが――はっきり言って狂っていた。一体どう言うつもりであったのか、崩壊した後の世界に、あんな名状しがたきモノ共を、嬉々としてバラ撒いていたのだ》
    「バケモノやんか……。そうか、そのナンクンとかっちゅうのんの仕業やったんか、ほんなら」
     エリザがまだ少女の頃に目にしたバケモノと同じような、異質な造形物たちは、今にも建物に迫ろうとしていた。いや、実際に迫ったものもいたらしく、建物の入口辺りに血だまりができている。
    「アレ、アンタがやらはったんです?」
    《左様。だが師匠が助太刀に来てくれるまでに、相当の間があった。待っていては到底、持ちこたえられないほどに。そこで私は、妹弟子の麒麟が編み出していた術を使い、一掃を試みたのだが……》
     話している間に、回想の方の饕餮の背中が裂け始め、そこから紫色のまばゆい光が走る。
    「あ、アレ、……アレ何ですのん!?」
    《術には重大な欠陥があった。一言で言うなら、暴走したのだ》

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    琥珀暁・女神伝 3

    琥珀暁 第6部

    神様たちの話、第357話。
    老境のまどろみ。

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    3.
     その晩は島の浜辺にテントを張り、エリザたちは数日ぶりに地面の上で眠ることができた。
    「すう、すう……」
    「すぴー……ふがっ……すぴー……」
     エリザのテントにはゼラナとプリムが共におり、エリザは二人の寝息を耳にしつつ、夢と現の境を、うとうととさまよっていた。
    (……参るわぁ……最近また……よぉ寝られんくなってきとるなー……)
     昼間は元気一杯に振る舞っているものの、こうして夜になると、己の「老い」をひしひしと感じてしまう。
    (……そろそろ寝えへんと……またシェリコくん……困った顔しよる……)
     時折、夢の中にどぷんと浸かりそうな感覚を覚えるが、それを知覚すると、途端に現実へ引き戻されてしまう。この晩もエリザは、どうにか夢の世界に飛び込めないかと四苦八苦していた。
    (……あー……眠いよーな……でも眠れへん……んー……)
     それでも何度か行き来を繰り返すうち、ようやくエリザは完全に、眠りに落ちた。



     気が付くと、エリザは浜辺に立っていた。
    「ほぇ?」
     上を見上げると、さんさんと太陽が照っている。
    「え……嫌やわ、アタシそんなボケて来たんか?」
     不安を覚えたものの、老いてなお明晰な頭脳を持つ彼女は、そこが今日、到達した島ではないことに気付いた。
    (いやいやいや……。なんぼなんでも、太陽が2つもあってたまるかっちゅうねん。オマケに森ん中から変な建物がにょきっと生えとるし)
     さらに、自分の手や尻尾を良く見れば、若い頃のものである。はっきり夢の中であると察し、エリザはフン、と鼻を鳴らした。
    「……ま、寝られたんやったらええわ」
     エリザは夢の中で背伸びし、その場に座り込んだ。
    「せやけど変な感じやな。こんなはっきり自分で『コレは夢やー』て分かるコト、今まであったかなー……?」
     自分のひざに頬杖を突き、エリザは水平線の向こうに目をやる。と――。
    「……お? お、おおおっ!?」
     自分の斜め上にあった方の太陽が、ゆっくり降りて来たのである。
    「な、何やな何やな?」
    《突然の失礼、おわび申し上げる》
     と、その太陽がエリザに向かってしゃべり出した。
    《私は克饕餮(トウテツ)。はるか昔、この地で死んだ者である。狐のご婦人、どうか私の話を聞いてはくれまいか?》
    「な、何て? とう、とー、……トウテツ?」
    《左様。死んで1000年、ようやく私の声が聞こえる者が現れて、私は非常に嬉しい》
     太陽は次第に光を潜め、そこに身長2メートルを優に超える、巨漢の短耳が現れた。
    《狐のご婦人、……と何度も呼ぶのは面倒なので、良ければ名前を教えてほしい》
    「あ、はあ……。エリザ・ゴールドマンです。よろしゅう」
    《よろしく》
     トウテツと名乗った男は、エリザに向かって手を差し出して来る。つられてエリザも手を出し、握手を交わした。
    《なかなか豪胆な方と心得る。それに、心もお若い》
    「そらどーも」
     最初は戸惑ったものの、相手が言った通り、肝の図太い彼女である。ものの1分もしない内に慣れてしまい、エリザは饕餮に尋ねた。
    「ほんでトウテツさん、まさか『声聞こえるわー、わーいお話しよかー』で終わりやないでしょ?」
    《うむ》
     饕餮は苦笑いを浮かべつつ、こう切り出した。
    《ご婦人、あ、いや、エリザさん。頼みがあるのだ》
    「そらあるでしょう。無かったら『話聞いて』なんて言いませんやろ」
    《あ、う、うむ。失敬》
     話している内に、エリザは相手の性格も見抜く。
    (アレやな、昔会うた……あの、アレやアレ、シェリコくんのおじーちゃんと同じタイプの人やな、どうも。話す度に一々、ドンドン話が遠回りしよる系の人やな)
    《頼みと言うのは、他でも無い。私の『頭』を探してほしいのだ》
    「は?」
     相手の性格は読めたものの、その頼みの内容までは流石に察することができず、エリザは目を丸くした。

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    琥珀暁・女神伝 2

    琥珀暁 第6部

    神様たちの話、第356話。
    血の濃さ。

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    2.
     エリザは事業拡大の一環として、中央大陸の東に横たわる大海洋をひたすら東へと突き進み、新たな島や大地が無いか、複数の船団を派遣して探検・探査を繰り返していた。その過程で、エリザは大海洋の果てに無数の島が連なっている地域を発見し、その近辺の集中的な探索を始めていた。
     その内にエリザ自身も、若い頃の血がたぎり出してしまい――孫や側近の子供たちを伴って、自らこの海にこぎ出してしまったのである。



    「ホンマにじっとせえへん人やで、ばーちゃん」
    「ホンマなー」
     孫のゼラナとプリムに両側から挟まれる形で、エリザはケラケラ笑っていた。
    「若さの秘訣や。アンタらも老け込みたくなかったら、キビキビ動きよし」
    「ソレなー。ビートのおっちゃんなんかもう、ばーちゃんより老けた顔してはるもんなぁ」
    「なー」
     三人揃って煙草をふかしているところに、シェリコがやって来た。
    「女将さん、とりあえずぐるーっと回って来ました。無人島っスね、ココ。人っ子一人見当たりませんわ」
    「さよか。食べれそうなんは何かあったか?」
    「ヤシの実的なんがチョコチョコと。後は浜辺でカニみたいなんも見かけました」
    「安全そうやね。ほなアタシらも見て回ろか」
    「はーい」
     ゼラノとプリムが揃って手を挙げたところで、エリザがニヤ、と笑う。
    「プリムちゃんはシェリコくんと一緒にご飯作っといて」
    「ぅえ? な、何で?」
     戸惑うプリムの狐耳に、シェリコがぼそ、と耳打ちする。
    「女将さんにバレた」
    「マジで?」
    「マジや」
     それを聞いていたエリザは、ぺら、と手を振る。
    「ほな1時間くらい散策して来るわ。美味しいもん期待しとるで」
    「は、は~い」
     エリザはゼラナを連れて、その場から離れて行った。

     島はヤシやシュロが生い茂り、まさに南国そのものと言った様相を呈していた。
    「あっづー……」
     尻尾の先からぽたぽたと汗を垂らしているゼラナを見て、エリザはクスクス笑う。
    「お父ちゃん似やな、そう言うトコは。央中来はったばっかりの頃、よおそう言う顔してはったで」
    「えぇー、何か嫌やぁ」
    「嫌やあるかいな。ええヤツやないの、ロウくんは。嫌なヤツに似たら最悪やで」
    「え、ソレってお母ちゃんのコト?」
    「や、そうやないけども。例えや、例え。
     しかしアンタ見てると、いっつも不思議に思うわ。お父ちゃん真っ黒な人やし、アンタもちょこっとくらい、黒いのん入りそうなもんやけどなぁ」
     エリザはゼラナの狼耳をハンカチで拭きながら、言葉通り不思議そうにつぶやく。
    「ゴールドマンの血がめっちゃめちゃ強いんやないのん? プリムも金と赤やし、レオンくんもお母ちゃんが茶色やのに、全然毛に出てへんし」
    「血かー」
     ゼラノの汗を拭き終え、エリザは自分の尻尾に目をやる。
    「血と言えばな、アンタのお母ちゃんと伯父さんのお父さん――ま、おじーちゃんやね――めっちゃ顔色悪い系の人やってんけど、ソレ出たんは伯父さんだけやねんな。リンダはドコから出てんのっちゅうくらい元気やし、アンタらもええ顔色やし」
    「じーちゃんってアレやろ、……ヒミツの」
    「せや、ヒミツのアレや」
     二人してクスクス笑いつつ、昔話に花を咲かせる。
    「ま、もうバラしても構わへんかもなんやけど、やっぱり『向こう』で青い顔しはるやろからな」
    「ヒミツにしとくわ、うふふ……」
    「頼むわ、アハハ……」
    「ってか、伯父さん言うたらや」
     と、ゼラナが小声になる。
    「いつ結婚しはんの? もう40超えとるやんな?」
    「40どころか、50も来よるかくらいやで」
    「ヤバない?」
    「ヤバいな。結婚してももう子供でけへんのとちゃうやろか」
    「そらヤバいわ。あたしとプリムが頑張らなな」
    「頑張ってや。言うてもプリムちゃん、じきやと思うけどな」
     それを聞いて、ゼラナが笑い転げる。
    「アレやろ、さっきのん? 尻尾ぶわーってなっとったで、あの子」
    「なっとったなー。傑作やわ」
    「帰る頃にはデキとんのちゃう?」
    「色んな意味でな」
    「アッハッハッハ……、上手いわー、ばあちゃん」
     と、祖母と孫とで、いささか下品な笑い話をしていたところで――。
    「……ん?」
     エリザの狐耳が、ぴくんと跳ねた。
    「どないしたん、ばーちゃん?」
     尋ねたゼラナに、エリザが首をかしげて返す。
    「今……、何や聞こえへんかったか?」
    「へ? ……んーん、何も」
    「さよか。や、何か人の声みたいなんが聞こえたかなーと思たんやけど」
    「ちょっ」
     ゼラナは両腕を組んで、尻尾を震わせる。
    「怖いコト言わんといてーや」
    「ゴメンゴメン、気のせいや。……多分」

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    琥珀暁・女神伝 1

    琥珀暁 第6部

    神様たちの話、第355話。
    女将さんの晩年。

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    1.
     アロイ・タイムズ帝による統治が始まり、中央政府が成立して以降も、タイムズ家とエリザとの関係は続いていた。先帝ゼロが晩年には忌み嫌っていた相手であったものの、エリザは有能で、かつ、身内と味方に対しては非常に優しい人物であったために、アロイも少なからず彼女を慕い、頼ったのである。

     そのこともあって、彼女の仕事は年を経るごとに増える一方だった。元より未曾有の大天才、並ぶ者のいない女傑である。彼女の仕事を丸ごとそっくり継げるだけの人材がいなかったこともあり、あの特徴的な金と赤の毛並みにも白いものが大分混じり、老境に達したはずの彼女は、相変わらず多忙に過ごし、第一線で働いていた。
    「よっこいしょー、……っと」
     杖を突きながら船の甲板に現れた彼女を見て、虎耳の青年が声を上げる。
    「あっ、女将さん! もう大丈夫なんスか!?」
    「大丈夫やって、もう。シェリコくんは心配性やね、ホンマに」
    「心配にもなりますって。昨日まで寝込んでたやないっスか」
    「ちょと船酔いしただけや。ほれ、もうこんな元気やで、……げっほ、げほっ」
     魔杖を振り上げ、両腕を上げようとした途端、エリザは咳き込んだ。
    「……今のナシな」
    「ナシにできませんって。今ココで死なれたりなんかしたら、俺、母ちゃんにめっちゃめちゃ怒られるっスわ」
    「大丈夫やって。リディアちゃんにはちゃんと、アンタがよおやってくれたって自分で言うたるから。……あー、と」
     エリザは羽織っていたケープの懐を探り、苦笑する。
    「……煙草持ってへん? 煙管置いてきてしもた」
    「俺、吸わないっス。エルモかゼラナたちなら持ってるかもですけど。ってか悪いっスよ、体に」
    「吸うた方が体にええねん、アタシの場合は」
    「マジですか、もう……。じゃあ俺、エルモに聞いて来ますわ。さっき見かけたんで」
    「ん、よろしゅ」
     と、シェリコが踵を返しかけたところで、エリザが「あ、ちょい」と呼び止めた。
    「何スか?」
    「ゴメン、あったわ。服ん中に落ちとった」
    「何スか、ソレ……。まあ、いいっスけど。火、いります?」
     そう言って、シェリコは魔術で指先に火を灯す。
    「お、ありがとさん」
     エリザは煙管をくわえ、シェリコから火を借りて一息吸う。
    「ふー……。ん、頭シャッキリして来たわ。今、どの辺や?」
    「6個目の島まで後30キロかなってトコっス。1時間弱で着くと思いますわ」
    「さよか。ほなソレまで、船ん中ぐるーっと見て回ろかな。一回りしとったら丁度ええくらいやろ」
    「お供します」
    「ありがとな」
     シェリコに手を引かれ、エリザはふたたび船の中に戻る。
    「おーぉ、目がクラクラ来よるわ」
    「俺もっス」
    「ホンマ、この辺りは日差しがえげつないなぁ。央中も結構や思てたけども、こっちはもっとやで」
    「そっスねぇ。俺も全然、汗が引かないっスよ」
     世間話に興じつつ、二人は船内を回る。
    「ほんで、どないや?」
    「どないって、何がっスか?」
     きょとんとするシェリコに、エリザはニヤニヤと笑みを向ける。
    「プリムちゃんとや」
     言われた途端、シェリコの尻尾がぶわっと毛羽立つ。
    「な、何のコトっスか」「とぼけんでええ」
     エリザは煙管をくわえたまま、シェリコに耳打ちする。
    「一昨日やったかもいっこ前やったか、アンタ、プリムちゃんの部屋から出て来たやろ。しかも出る前にちゅっちゅしとったし」
    「いやいやいや、チューまではしてねえっスよ俺たち!?」「お、やっぱりか」
     そう返され、シェリコは「あっ」と声を上げる。
    「か、カマかけたんスか?」
    「アンタ、ちょろいなぁ。そう言うトコ、お父さんとそっくりやで」
    「どっちのっスか」
    「どっちともや」
    「あーっ……、もう!」
     シェリコは虎耳の内側まで顔を真っ赤にしながら、ぼそっとつぶやいた。
    「本当、女将さんには敵いませんわ」
    「まだまだ若い子には負けへんで、アッハッハ……」

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    2020年10月携帯待受

    携帯待受

    chevrolet impala

    chevrolet impala

    chevrolet impala  chevrolet impala

    2020年10月の携帯待受。
    シボレーのインパラ。

    今年の10月は祝日、無いんですね。
    体育の日(今年よりスポーツの日に改称)がオリンピック開催に伴い、
    開催(予定)日である7月23日に変更されたためですが、
    しかし今年のオリンピックは延期。
    必然的に来年の10月も、祝日はありません……。



    日本の話題は置いといて、アメ車の話題。
    以前に「アメ車にはツノのあるどうぶつが似合う」と言っていましたが、
    インパラはその極致と言えるでしょう。
    名前がそのまんま偶蹄類ですもん。

    クルマにどうぶつの名前を付ける事例はわりと多く、
    同じアメ車ではフォードのマスタングが有名。
    他にもポルシェのケイマンやフィアットのパンダ、VWのビートルなど。
    あと日本車で言えば、スズキのラパンなんかも。



    次回もグラデーションの組み合わせについて、twitterにてアンケートを行う予定です。
    ブログトップページ、もしくはこちらから、私、黄輪のTLに飛ぶことができます。
    よろしければご参加下さい。

    Calender picture application by Henry Le Chatelier

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    琥珀暁番外編 その2

    双月千年世界 短編・掌編

    神様、……から裏切られた女の話。
    ある口伝。

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    琥珀暁番外編 その2
     かつて央北と央中に棲息していたように、バケモノは央南にも、その姿が確認されていた。しかし前二地域でそうであったように、能動的に人を襲うような性質も、人の生息圏に現れるような性質も持っておらず、どうやら作った人間は別なようだった。

     それでも襲われればひとたまりも無いのは同様であり――。
    「ひっ、ひっ、ひいっ……」
     腰に提げた袋からボトボトと、山菜や野鳥を落としながら、男は山道を転がるように走っている。
    「ヤバいってヤバいってマジで……ッ!」
     男は叫び、喚き散らしながら全力疾走していた。そうしなければ、死ぬのは明らかだったからだ。
     男の背後には、異形の獣が迫っていた。一見、狼にも見えるその姿は、良く確認すればあちこちに、奇形じみた特徴が見られる。口に収まりきらぬ牙、明らかに脚先より長い爪、そして他の動物にはまず見られない、燃えるように赤く光る尻尾――それは正に、「バケモノ」と呼ぶにふさわしい、恐るべき獣だった。
    「助けてくれーッ! だっ、誰かあああ……ッ!」
     そう叫んでも何の助けも来ないことは、明らかであるように思えた。

     その時だった。
    「えやあああッ!」
     女性の猛々しい声が響き渡り、狼の首に槍が突き刺さる。
    「グヒュ……ッ」
     空気が漏れたような叫び声を上げ、バケモノは二歩、三歩と斜めによろける。その隙を突いて、新たに二人、剣を振り上げながら現れる。
    「……お、……え、……な、何?」
     来ないはずの助けをうっすら期待しつつ逃げ回っていた男も、そんな光景が実際に繰り広げられるとは想像しておらず、思わず足を止める。
    「助けに来ました! 大丈夫ですか!?」
     と、最初に聞こえたものとは別の女性の声がかけられ、男はわけも分からないままうなずく。
    「はっ、はい」
    「物陰に隠れていて下さい! わたしたちが何とかします!」
    「わ、分かりましたっ」
     言われた通りに木の陰に隠れ、男は戦いを見守る。
    「尉官! 脚、仕留めました!」
    「とどめお願いします!」
    「はーい、……よッ!」
     両前足を絶たれ、動けなくなった狼の頭に向かって、猫耳の女性が自分の身長ほどもある槍を投げる。
    「ガッ……」
     眉間に深々と槍が突き刺さった途端、狼はその場にうずくまり、そのまま動かなくなった。
    「敵、沈黙を確認!」
    「討伐完了です!」
     前脚を斬った男たちが「猫」に向かって敬礼したところで、男は恐る恐る、彼女たちのそばに寄った。
    「あ、あの、あなた方は……?」
    「ご無事ですか?」
     と、先程声をかけてきたらしい、短耳の女性もやって来る。
    「は、はい、何とか」
    「良かったです」
     にこ、と短耳に微笑まれ、ようやく男はほっとため息を付いた。
    「ど、どうも」
    「メリー、誘導ありがとね」
     と、狼の頭から槍を引き抜きながら、「猫」が彼女に声を掛けた。
    「おかげで助けられたし。……あなた、どこの人?」
    「あ、えっと、ふもとの村の、あの、田貫ってとこ、です、はい」
    「そう。……あの、こんなこと頼んだらちょっと図々しいかもなんだけどさ」
     そう前置きしたところで――猫獣人の腹が、ぐう、と鳴った。
    「……ってわけで、あたしたちのご飯と寝るところが欲しいんだけど、頼める?」
    「ふへっ? ……あ、あは、ははは」
     途端におかしくなり、男は大笑いした。
    「は、はい、それくらい、全然、ええ」
    「あー、良かったぁ」
     猫獣人はにこ、と笑い、自己紹介した。
    「あたしとこいつらは、バケモノ退治の旅をしてるの。こっちはまだまだバケモノ、多いみたいだしさ」
    「そ、そうなんですか? 何でわざわざ、そんな危ないことを……?」
     男が尋ねた途端、彼女は苦い顔をした。
    「罪滅ぼしが半分。後は……、あたしたちの自己満足かしらね。全部かも知れないけど」
    「はあ……?」
     男はこの、風変わりな見た目と顔立ちをした4人を、自分の村へと案内した。



     双月暦1世紀頃、央南地域が天帝ゼロ・タイムズの侵略を受けてまもない時期に、各地を回る「バケモノ退治屋」のうわさが広まった。猫獣人の女を筆頭とするその4人は、かすかにではあるが、人々の記憶と口伝に残った。
     その勇ましい戦い方と、そしてどこか悲しげな様子と共に。

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    琥珀暁・天帝伝 5

    琥珀暁 第6部

    神様たちの話、第354話。
    天帝教のはじまり。

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    5.
    「ゼロがバケモノにすり替わっていた」と言うショッキングな事件は、瞬く間にゼロの支配圏全域に拡がった。と同時に、そのバケモノをゲート将軍とアロイ皇太子が討ったことも併せて伝えられ、二人は反逆者から一転、英雄として持てはやされた。

    「それでは緊急閣議を始めます」
     その成果もあって、アロイはゼロの後継者として、暫定的に認められることとなった。そしてこの閣議によって――。
    「まず第一に、先日崩御されていたことが発覚したゼロ・タイムズについて、その後継者を誰にするかを考えなければなりませんが……」
    「言うまでもないでしょう。アロイ皇太子、あなたしかございません」
    「タイムズ様のご長子であり、見事にお父様の仇を討たれたのです。あなた以外の誰が、その座に着くと言うのですか」
    「右に同じです」
     正式に後継者となることを満場一致で推挙され、アロイは深々と頭を下げた。
    「承知いたしました。では若輩者ながらこの私、アロイ・タイムズが、先王の、……いや、先帝の座を継承いたします」
    「先『帝』?」
     尋ねられ、アロイはこう答えた。
    「父が生前成した偉業はいずれも並々ならぬものであり、到底、人の為せる業ではありません。その彼を他の者と同列に置くようなことは、民は誰一人として納得しないでしょう。この私自身も、父はただの人では無い、もっと神に、天に近しき者であったと、堅く信じています。であればただの人として扱い、葬ることは不敬であるはず。
     そこで私は父に『帝』の号を諡(おく)り、以後永年に渡って我らが主神として祀ることを提案します」
    「帝(みかど)……!」
     その言葉に、閣僚たちは感嘆の声を上げた。
    「そうですな、確かに祀り上げてしかるべきお方です」
    「異論は無し。是非、そうすべきだ」
    「いっこいいか?」
     と、閣議に復帰することができたゲートが手を挙げる。
    「単に帝ってだけじゃ、北にいたって言う皇帝と被らないか?」
    「ふむ、確かに」
    「いいや、陛下はもっと格上の存在だ!」
    「そうだ。そんなものと一緒にされるのは敵わんな」
    「だろう? だから俺はもういっこ、その諡号に付け加えたい。例えばさ、『天帝』ってのはどうだ? 今アロイが『天に近しい』って言ってたんで思い付いたんだが」
     ゲートの案を聞いて、アロイは嬉しそうな顔で立ち上がり、拍手した。
    「ええ、それは非常に良い響きです。是非そうしましょう。
     では皆さん、これよりゼロ・タイムズは『天帝』と呼び、神として祀ることとします」
    「賛成であります」
    「承知いたしました」



     こうして双月暦38年、ゼロ・タイムズを主神とする宗教、「天帝教」が誕生した。
     アロイは「第二代天帝教教皇」を名乗り、10年近い歳月をかけて、父の遺した言葉や教訓、そしてゲートをはじめとする友人たちからの伝聞をまとめ、数冊の本にした。これが天帝教における聖書となり、以降数百年に渡って、中央大陸の人々の拠り所となったのである。

     こうして生まれた宗教的結束はそのまま政治的結束へと置き換わり、中央大陸を統治する政府――「中央政府」が成立。以後、双月暦314年にファスタ卿らによって滅ぼされるまでの約2世紀半もの間、中央政府と、そしてその中核に鎮座するタイムズ一族は、双月世界の頂点に君臨し続けたのである。



    「その方の名は、あらゆるものの始まりである。
     その方の名は、あらゆるものの原点である。
     その方の名は、無から有を生じさせるものである。

     その方の名は、ゼロである。

    (『降臨記』 第1章 第1節 第4項と第5項を抜粋)」

    琥珀暁・天帝伝 終

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    琥珀暁・天帝伝 4

    琥珀暁 第6部

    神様たちの話、第353話。
    ゲートとアロイの「バケモノ退治」。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    4.
    「解決? どうやって?」
     尋ねたゲートに、モールは玉座の背後に回り込みながら答えた。
    「例えばさ、ヒトに姿を変えられるバケモノがいたとして、ソイツが7年前から、ゼロにすり替わっていたとしたらどうよ?」
    「……なるほど」
     ゲートは苦笑いし、その提案を吟味する。
    「そうなりゃ南への無茶な遠征も、遠征隊へ下したひでえ命令も全部、そのバケモノがやったって話にできるってわけか。で、その事実に気付いた俺とゲートが、ゼロの姿をしたバケモノを討った、と。確かにいい話に変わるな。ちょっとした英雄譚だ。
     だがちょっと、強引過ぎやしないか? 大体、バケモノなんて話したって、絶滅しちまった今となっちゃ、嘘にしか聞こえんし」
    「証拠がありゃいい。実際バケモノがいるってんなら、みんな信じるね」
     そう言って、モールは肩に掛けていたかばんから、紫色に光る金属板を取り出した。
    「コイツを刺せば、バケモノに変わる。変わったところで、討ち取りゃいいね」
    「用意がいいな、あんた。まるで最初からこうしようと思ってたみたいだな」
     ゲートの言葉に、モールはニヤリと口角を上げた。
    「コイツが自分で勝手に死んだってコト以外は、大体計画通りさ。ソレ以外に、コイツの暴走を止める手は無かったね。例えば君、コイツと真正面からぶつかって、まともに話ができると思ってたね?」
    「いや、……正直どうしようかなーとは思ってたところだった」
    「えっ!?」
     アロイが目を丸くし、ゲートの顔を見る。
    「で、ではゲートさん、あなた、何も考えずにここまで来たのですか!?」
    「そうなる。いやー、まいったぜマジで」
     そう言ってゲラゲラ笑うゲートに、モールも噴き出す。
    「ふっふ……、エリザの言った通りのヤツだねぇ、君は。度胸一発、出たトコ勝負の熱血漢。ま、そんだけ潔いバカなら私ゃ、むしろ嫌いじゃないね」
    「なーるほど、エリちゃんも最初から一枚噛んでたのか。道理で覚悟決めたツラ作って俺に手ぇ貸してたワケだ。普通はあんな顔しないからな、あの娘は」
    「さっすがぁ。……っと、話し込みたいのは山々だけど、手早く済まさなきゃ、いい加減みんなが様子見に来ちゃうだろうしね」
     モールはゼロの背中に、金属板を差し込んだ。途端にゼロの姿が変形し始め、着ていた服がびりびりと破け始める。
     と、そこでゲートが剣を抜き、モールに向けた。
    「何だよ? 早いトコ始末しなって」
    「いっこだけ聞きたいことがある。あんた、そうやって簡単に人をバケモノに変えたが――まさかあんたは30年前にも、同じことをやってたんじゃないだろうな?」
    「はっは」
     モールはゼロだったものから離れ、ゲートの横に立った。
    「コレは『リバースエンジニアリング』ってヤツさね。既にはびこってたバケモノたちを研究する過程で出来ちゃった、副産物みたいなもんさ。犯人だと思ってんなら人違いだね」
    「……嘘じゃないんだろうな、その口ぶりだと」
    「私がやるんならもっと要領良くやるさ。あんなクッソ回りくどいプロトコルなんか組んだりせずにね。……さ、来るよ」

     10分後、ゲートとアロイは謁見の間に皆を集め、事の次第を「説明」した。
    「……ってわけで、バケモノは俺とアロイが何とかやっつけた。死体はまだ、中にある」
    「な、なんと……!?」
     閣僚たちが恐る恐る中を確かめ、口々に悲鳴を上げる。
    「ひえっ……」
    「た、確かにあれは、……どうもバケモノらしい」
    「しかしよもや、陛下がバケモノに成り変わられていたとは……」
    「道理でなぁ……。確かに最近のあいつは、何かヤバいと思ってたけど」
    「……では、本物の陛下は今、どちらに?」
     問われて――これもモールに用意してもらった通りに――ゲートが答える。
    「恐らくはあのバケモノに食われたんだろう。でなきゃいない理由が付かない。そうだろう?」
    「むう……何と言うことだ」
     騒然としている閣僚たちから距離を取り、ゲートとアロイは目配せし合った。
    (ってことで、後は……)
    (ええ。合わせます)

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