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    「双月千年世界 4;琥珀暁」
      琥珀暁 第1部  

    *  [Edit] 
                【 作品のご案内 】        2016.07.01 ~  執筆
    新連載。"He" has come to "our world"。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1.「はじめに、大地有りき。 その方は、大地を訪れた。 次に、人有りき。 その方は、人のうちの一つを訪ねた。 三に、言葉有りき。 その方は神の言葉で、人の一つに尋ねられた。 その方の名は、あらゆるものの始まりである。 その方の名は、あらゆるものの原点である。 その方の名は、無から有を生じさせるものである。 その方の名は、...

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    「双月千年世界 3;白猫夢」
      白猫夢 第1部  

    *  [Edit] 
                【 作品のご案内 】        2012.05.01 ~  執筆
    麒麟の話、第1話。克大火の弟子;未来を見つめる者。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1. 読めていたはずだ。「な……なんで……」 ボクには、すべてが読めていたはずだった。「なんで……こうなった……」 読めていたはずだったんだ! だけど何故、何故!?「思い知ったか、麒麟」「なにを、……何を、思い知れって言うんだッ!」 何故ボクは、このいけ好かない、真っ黒な、「己の身の程を、だ」「……ッ、そんなもの!」 魔術...

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    「双月千年世界 2;火紅狐」
      火紅狐 第1部  

    *  [Edit] 
                【 作品のご案内 】        2010.08.01 ~  執筆
    フォコの話、1話目。金と火の毛並み。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1. 双月暦287年、央中東部の鉱山都市、カレイドマイン。「う、産まれました? 産まれました!?」 その街の権力者一族、ゴールドマン家の宗主である狐獣人、レオン・ゴールドマン4世は、慌てて自分の屋敷に戻ってきた。 待望の、自分の子供が産まれたと言う連絡を受けたからである。「はい、旦那様。かわいい男の子でございますよ」 メイド...

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    「双月千年世界 1;蒼天剣」
      蒼天剣 第1部  

    *  [Edit] 
                【 作品のご案内 】        2008.10.06 ~  執筆
    晴奈の話、1話目。和風ファンタジー。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1. 時は双月暦506年。 夜道を駆ける、三毛耳の猫獣人の少女がいた。 名を、晴奈と言う。 央南地方で名を馳せる大商家の令嬢であったが、先刻その身分を自ら捨ててきた。 彼女には志ができたからだ――「あの人のように、強い剣士になりたい」と。 元々、彼女は何不自由なく育てられていた、箱入り娘であった。ゆくゆくは婿を取らせて家を継が...

     ▲PageTop 

    新連載。
    "He" has come to "our world"。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    「はじめに、大地有りき。
     その方は、大地を訪れた。

     次に、人有りき。
     その方は、人のうちの一つを訪ねた。

     三に、言葉有りき。
     その方は神の言葉で、人の一つに尋ねられた。

     その方の名は、あらゆるものの始まりである。
     その方の名は、あらゆるものの原点である。
     その方の名は、無から有を生じさせるものである。

     その方の名は、ゼロである。

     ゼロは初めて出会ったその人の手を握り、祝福した。

    (『降臨記』 第1章 第1節 第1項から第6項まで抜粋)」



     その土地は、古来より交易の要所であったと伝えられている。
     北と西に港があり、一方で東と南には牧草が生い茂っている。自然、農産物と海産物の輸送はそこで交わることとなり、自然に物々交換、即ち商売の元となる活動が生まれた。
     いつしか人は、その土地を交点の中心、「クロスセントラル」と呼ぶようになった。

     その日もいつもと変わらない、活気に満ちた一日であった。
     遠くから産品を持ってきた男たちが、それを掲げて大声を出し合っている。
    「いい鮭を持ってきてるぞー! 誰かいらんかー!」
    「羊肉と交換でどうだ!?」
    「羊はいらん!」
    「山羊ならあるが……」
    「野牛だ! 野牛の肉を寄越せ! じゃなきゃ交換しない!」
    「野牛なんてそんな……」
     しかし取引の大半が、上滑りしている。鮭を持ってきた男の要求に適うものを、誰も持ってきていないからだ。
     結局鮭を持ってきた狼獣人の男が折れ、要求を下げていく。
    「分かった! じゃあ水牛でもいい!」
    「ねーよ」
    「……豚」
    「ねーっつの」
    「チッ、仕方無えな。じゃあさっきの羊で……」「悪い、もう交換した」「何ぃ?」
     散々自分の要求を通そうとしていた狼獣人が憤り、羊を持ってきていた猫獣人の男に絡み出す。
    「なんで手放してんだよ、おい」
    「だって交換してくれないし」
    「今なら交換するつってんじゃねーか」
    「もう無いって」
    「ふざけんな! もうちょっとくらい待つって考えがねーのか?」
    「あ? 何でお前の都合で待ってなきゃいけないんだよ」
     狼獣人も猫獣人も互いに憤り、場は一触即発の様相を呈し始める。
     その隙に、何も持ってきていない男たちがそろそろと、鮭の詰まった樽に群がり始める。狼獣人の気が相手に向いているうちに、盗もうとしているのだ。
     その雑然とした状況を眺めながら、一人の短耳がぼそ、とつぶやいた。
    「……なんでこう、うまく行かないんだろうなぁ」

     と、その男の肩を、とんとんと叩く者が現れた。
    「ん?」
     振り向くと、そこには白髪の、しかしまだ顔立ちが若く、優しい目をした、ひげだらけの短耳の男の姿があった。
    「なんだ?」
     男が尋ねたが、白髪男はきょとんとする。
    「**?」
     白髪は何か言ったようだが、それは男が聞いたことも無い言葉だった。
    「なんだって?」
    「**? ……**、……***」
     白髪は困ったようにポリポリと頭をかいていたが、やがて何かを思い出したように、ポンと手を打ち、何かをつぶやきつつ、手を忙しなく組み合わせる。
    「『*********』、……通じる?」
    「ん? ああ、通じるが、今あんた、何て?」
    「あ、ちょっと魔術を使ったんだ。やっぱあいつの術は使い勝手いいねぇ。応用性と即効性が段違いだ。
     えーと、それでちょっと教えてほしいんだけど、……ここはどこ?」
    「クロスセントラルだ。あんた、どこから来たんだ?」
     男に尋ねられ、白髪は困った顔をした。
    「えーと、どう言ったらいいかな。********なんて言っても分かんないよね。まあいいや、遠くからってことにしといて」
    「ああ、うん……?」
     戸惑う男に構わず、白髪はこう続けた。
    「僕の名前はゼロって言うんだ。君は?」
    「え、ああ……、ゲートだ」
    「そっか。よろしく、ゲート」
     白髪――ゼロは嬉しそうに笑って、ゲートの手を握った。
    琥珀暁・彼訪伝 1
    »»  2016.07.01.
    琥珀暁 第1部
    * 
    麒麟の話、第1話。
    克大火の弟子;未来を見つめる者。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     読めていたはずだ。
    「な……なんで……」
     ボクには、すべてが読めていたはずだった。
    「なんで……こうなった……」
     読めていたはずだったんだ!

     だけど何故、何故!?
    「思い知ったか、麒麟」
    「なにを、……何を、思い知れって言うんだッ!」
     何故ボクは、このいけ好かない、真っ黒な、
    「己の身の程を、だ」
    「……ッ、そんなもの!」
     魔術と求道と、マコトさんのコトくらいしか考えてない、
    「分かり切ってるさ!
     分かり切ってる、ボクはアンタより魔力がある! アンタより魔術理論に長けている! その上、アンタには無い能力も持ってる!」
     ボクより弱いハズの、
    「アンタなんかより、ずっとずっと、ボクの方が強いんだってコトもだッ!」
    「ククク……」
     まるで鴉みたいな、クセの強い笑い方をする、
    「もう一度だ……! もう一度来い! 叩き伏せてやるッ!
     来いよ、タイカああああああッ!」
     この師匠に。

    「お前のことは、十分に理解していたと思っていたが」
     何故?
    「過大評価していたようだ」
     何故なんだ?
    「お前がこれほどの、愚にもつかぬ暴挙に出ようとは。そして」
     何故、ボクは。
    「己が負けたことも、理解しようとしないとは、な」
     何故負けたんだ……?



     ボクには、分かっていた。

     ボクには、お師匠のタイカさん――ボクが知る限り、ボクを除けば、世界一の魔術師である、彼にも無い能力を持っていた。
     そのチカラが有ったから、タイカさんはボクを弟子にした。
     そして弟子になり、修行と勉強を続け、ボクの魔力と知力はぐんぐんと伸び、タイカさんに並び、そしてついには追い抜いた。
     そして今、ボクはタイカさんを実際に超えようと、挑んだ。

     分かっていた。
     分かっていたはずなのに。

     ボクには、分かっていたはずだった。
     でも――結果は、違った。
     ボクが分かっていた結果とは、まるで違っていたんだ。



     でも――負けた瞬間に、また、あることが分かった。
    「……そんなコト、するの……」
    「何かは分からんが、……俺はお前にそうするのだろう、な」
    「一体、ボクはどうなるんだ」
    「『見れ』ばいい」
    「……そう……だね……」
     それ以上、ボクは何も言えなかった。

     タイカさんが「見ろ」と言った瞬間、ボクはまた、未来を見た。
     そこにいたボクは、……もう、人間じゃ無さそうだった。

     ボクは一体、何になったんだろう……?
    白猫夢・麒麟抄 1
    »»  2012.05.01.
    白猫夢 第1部
    * 
    フォコの話、1話目。
    金と火の毛並み。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     双月暦287年、央中東部の鉱山都市、カレイドマイン。
    「う、産まれました? 産まれました!?」
     その街の権力者一族、ゴールドマン家の宗主である狐獣人、レオン・ゴールドマン4世は、慌てて自分の屋敷に戻ってきた。
     待望の、自分の子供が産まれたと言う連絡を受けたからである。
    「はい、旦那様。かわいい男の子でございますよ」
     メイドたち数人が、レオンを妻の休む部屋へと案内しつつ、産まれた子供のことを話してくれた。
    「さすが、『金火狐』の血筋と言いますか」
    「まるで黄金のような毛並みでございますわ」
    「それに毛先はうっとりするくらい、綺麗な赤色をしていらっしゃいます」
     その説明に、レオンの顔は上気していく。
    「そうですか、そうですかぁ」
    「ささ、旦那様。奥様がお子様とお待ちでございますよ」
     メイドが部屋の扉を開け、レオンに入るよう促した。
    「は、入りますで、イデア」
     そっと中を覗き見ると、ベッドに横になっていた妻のイデアと目が合った。
    「……クスっ」
     あまりに夫の挙動がおかしかったためか、イデアは吹き出した。
    「あ、……あは、はは。体の方は、大丈夫ですか?」
    「ええ。疲れたけれど、元気よ。赤ちゃんも」
    「……そうですかぁ」
     レオンは嬉しそうに、部屋の中に入ってきた。
    「赤ちゃんは?」
    「こっちよ」
     イデアは自分のベッドの横に置かれた、乳児用のベッドを指差した。
    「……わ、あ」
     メイドたちが言っていた通り、その子の耳と尻尾は麦穂のように美しい金色の毛並みをしており、毛先は燃えるように赤い。
    「……うん、……僕そっくりですな、耳と尻尾は。顔は、君に似とりますね」
    「そうかしら? ……そうかもね」
    「名前は……、どうしましょう?」
     夫の問いに、イデアはにっこりと笑って答えた。
    「ニコル。ご先祖様のお名前を、いただきましょう。それと……」
    「それと?」
     イデアは子供の真っ赤な毛先をつい、と指先で撫でた。
    「火のように赤いから……」
    「フォコ?」
    「……あ、そうね。こっちの言葉だと、火(fire)はフォコ(fuoco)になるのよね。
     じゃあ、ニコル・フォコ・ゴールドマン。そう、名付けましょう」
    「……いいですな、うん」



     後に「ニコル3世」の名で知られる、英雄にして大商人。
     このフォコと呼ばれる子供こそ、そのニコル3世である。

     彼の波乱万丈の生涯は、ここから始まった。
    火紅狐・神代記 1
    »»  2010.08.01.
    火紅狐 第1部
    * 
    晴奈の話、1話目。
    和風ファンタジー。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     時は双月暦506年。

     夜道を駆ける、三毛耳の猫獣人の少女がいた。
     名を、晴奈と言う。
     央南地方で名を馳せる大商家の令嬢であったが、先刻その身分を自ら捨ててきた。
     彼女には志ができたからだ――「あの人のように、強い剣士になりたい」と。

     元々、彼女は何不自由なく育てられていた、箱入り娘であった。ゆくゆくは婿を取らせて家を継がせようと、親が決めていたのだ。
     だが晴奈には、それが何よりの不満になっていた。彼女は物心ついた時から、「自分の人生は自分で決める」「親でも自分を縛れない」と考えるようになっていた。
     そして今日、晴奈はある者との出会いで、その思いをより明確で、具体的なものにしたのだ。
     その結果として今、晴奈は夜道をひた走っていた。「その人」に、もう一度会うため。そして新たに抱いた彼女の志を、全うするために。

     彼女こそ、後に「蒼天剣」の異名を取った女武芸者、セイナ・コウ(黄晴奈)である。
     これより、その物語を――彼女が志を抱き、央南に一大勢力を築く剣術一派、焔流に入門するところから、述べることとする。
    蒼天剣・立志録 1
    »»  2008.10.06.
    蒼天剣 第1部
    * 

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    詳しくは作者ブログ 『イラストリスト(Illust List)の説明 』 と『ユーザータグ「Character」を設定して登場人物紹介ページにする』 をご参照ください。



    ※尚、ユーザー タ グ を設定するとこの説明文は表示されなくなります。
    新連載。
    "He" has come to "our world"。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    「はじめに、大地有りき。
     その方は、大地を訪れた。

     次に、人有りき。
     その方は、人のうちの一つを訪ねた。

     三に、言葉有りき。
     その方は神の言葉で、人の一つに尋ねられた。

     その方の名は、あらゆるものの始まりである。
     その方の名は、あらゆるものの原点である。
     その方の名は、無から有を生じさせるものである。

     その方の名は、ゼロである。

     ゼロは初めて出会ったその人の手を握り、祝福した。

    (『降臨記』 第1章 第1節 第1項から第6項まで抜粋)」



     その土地は、古来より交易の要所であったと伝えられている。
     北と西に港があり、一方で東と南には牧草が生い茂っている。自然、農産物と海産物の輸送はそこで交わることとなり、自然に物々交換、即ち商売の元となる活動が生まれた。
     いつしか人は、その土地を交点の中心、「クロスセントラル」と呼ぶようになった。

     その日もいつもと変わらない、活気に満ちた一日であった。
     遠くから産品を持ってきた男たちが、それを掲げて大声を出し合っている。
    「いい鮭を持ってきてるぞー! 誰かいらんかー!」
    「羊肉と交換でどうだ!?」
    「羊はいらん!」
    「山羊ならあるが……」
    「野牛だ! 野牛の肉を寄越せ! じゃなきゃ交換しない!」
    「野牛なんてそんな……」
     しかし取引の大半が、上滑りしている。鮭を持ってきた男の要求に適うものを、誰も持ってきていないからだ。
     結局鮭を持ってきた狼獣人の男が折れ、要求を下げていく。
    「分かった! じゃあ水牛でもいい!」
    「ねーよ」
    「……豚」
    「ねーっつの」
    「チッ、仕方無えな。じゃあさっきの羊で……」「悪い、もう交換した」「何ぃ?」
     散々自分の要求を通そうとしていた狼獣人が憤り、羊を持ってきていた猫獣人の男に絡み出す。
    「なんで手放してんだよ、おい」
    「だって交換してくれないし」
    「今なら交換するつってんじゃねーか」
    「もう無いって」
    「ふざけんな! もうちょっとくらい待つって考えがねーのか?」
    「あ? 何でお前の都合で待ってなきゃいけないんだよ」
     狼獣人も猫獣人も互いに憤り、場は一触即発の様相を呈し始める。
     その隙に、何も持ってきていない男たちがそろそろと、鮭の詰まった樽に群がり始める。狼獣人の気が相手に向いているうちに、盗もうとしているのだ。
     その雑然とした状況を眺めながら、一人の短耳がぼそ、とつぶやいた。
    「……なんでこう、うまく行かないんだろうなぁ」

     と、その男の肩を、とんとんと叩く者が現れた。
    「ん?」
     振り向くと、そこには白髪の、しかしまだ顔立ちが若く、優しい目をした、ひげだらけの短耳の男の姿があった。
    「なんだ?」
     男が尋ねたが、白髪男はきょとんとする。
    「**?」
     白髪は何か言ったようだが、それは男が聞いたことも無い言葉だった。
    「なんだって?」
    「**? ……**、……***」
     白髪は困ったようにポリポリと頭をかいていたが、やがて何かを思い出したように、ポンと手を打ち、何かをつぶやきつつ、手を忙しなく組み合わせる。
    「『*********』、……通じる?」
    「ん? ああ、通じるが、今あんた、何て?」
    「あ、ちょっと魔術を使ったんだ。やっぱあいつの術は使い勝手いいねぇ。応用性と即効性が段違いだ。
     えーと、それでちょっと教えてほしいんだけど、……ここはどこ?」
    「クロスセントラルだ。あんた、どこから来たんだ?」
     男に尋ねられ、白髪は困った顔をした。
    「えーと、どう言ったらいいかな。********なんて言っても分かんないよね。まあいいや、遠くからってことにしといて」
    「ああ、うん……?」
     戸惑う男に構わず、白髪はこう続けた。
    「僕の名前はゼロって言うんだ。君は?」
    「え、ああ……、ゲートだ」
    「そっか。よろしく、ゲート」
     白髪――ゼロは嬉しそうに笑って、ゲートの手を握った。

    琥珀暁・彼訪伝 1

    新連載。"He" has come to "our world"。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1.「はじめに、大地有りき。 その方は、大地を訪れた。 次に、人有りき。 その方は、人のうちの一つを訪ねた。 三に、言葉有りき。 その方は神の言葉で、人の一つに尋ねられた。 その方の名は、あらゆるものの始まりである。 その方の名は、あらゆるものの原点である。 その方の名は、無から有を生じさせるものである。 その方の名は、...

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    麒麟の話、第1話。
    克大火の弟子;未来を見つめる者。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     読めていたはずだ。
    「な……なんで……」
     ボクには、すべてが読めていたはずだった。
    「なんで……こうなった……」
     読めていたはずだったんだ!

     だけど何故、何故!?
    「思い知ったか、麒麟」
    「なにを、……何を、思い知れって言うんだッ!」
     何故ボクは、このいけ好かない、真っ黒な、
    「己の身の程を、だ」
    「……ッ、そんなもの!」
     魔術と求道と、マコトさんのコトくらいしか考えてない、
    「分かり切ってるさ!
     分かり切ってる、ボクはアンタより魔力がある! アンタより魔術理論に長けている! その上、アンタには無い能力も持ってる!」
     ボクより弱いハズの、
    「アンタなんかより、ずっとずっと、ボクの方が強いんだってコトもだッ!」
    「ククク……」
     まるで鴉みたいな、クセの強い笑い方をする、
    「もう一度だ……! もう一度来い! 叩き伏せてやるッ!
     来いよ、タイカああああああッ!」
     この師匠に。

    「お前のことは、十分に理解していたと思っていたが」
     何故?
    「過大評価していたようだ」
     何故なんだ?
    「お前がこれほどの、愚にもつかぬ暴挙に出ようとは。そして」
     何故、ボクは。
    「己が負けたことも、理解しようとしないとは、な」
     何故負けたんだ……?



     ボクには、分かっていた。

     ボクには、お師匠のタイカさん――ボクが知る限り、ボクを除けば、世界一の魔術師である、彼にも無い能力を持っていた。
     そのチカラが有ったから、タイカさんはボクを弟子にした。
     そして弟子になり、修行と勉強を続け、ボクの魔力と知力はぐんぐんと伸び、タイカさんに並び、そしてついには追い抜いた。
     そして今、ボクはタイカさんを実際に超えようと、挑んだ。

     分かっていた。
     分かっていたはずなのに。

     ボクには、分かっていたはずだった。
     でも――結果は、違った。
     ボクが分かっていた結果とは、まるで違っていたんだ。



     でも――負けた瞬間に、また、あることが分かった。
    「……そんなコト、するの……」
    「何かは分からんが、……俺はお前にそうするのだろう、な」
    「一体、ボクはどうなるんだ」
    「『見れ』ばいい」
    「……そう……だね……」
     それ以上、ボクは何も言えなかった。

     タイカさんが「見ろ」と言った瞬間、ボクはまた、未来を見た。
     そこにいたボクは、……もう、人間じゃ無さそうだった。

     ボクは一体、何になったんだろう……?

    白猫夢・麒麟抄 1

    麒麟の話、第1話。克大火の弟子;未来を見つめる者。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1. 読めていたはずだ。「な……なんで……」 ボクには、すべてが読めていたはずだった。「なんで……こうなった……」 読めていたはずだったんだ! だけど何故、何故!?「思い知ったか、麒麟」「なにを、……何を、思い知れって言うんだッ!」 何故ボクは、このいけ好かない、真っ黒な、「己の身の程を、だ」「……ッ、そんなもの!」 魔術...

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    フォコの話、1話目。
    金と火の毛並み。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     双月暦287年、央中東部の鉱山都市、カレイドマイン。
    「う、産まれました? 産まれました!?」
     その街の権力者一族、ゴールドマン家の宗主である狐獣人、レオン・ゴールドマン4世は、慌てて自分の屋敷に戻ってきた。
     待望の、自分の子供が産まれたと言う連絡を受けたからである。
    「はい、旦那様。かわいい男の子でございますよ」
     メイドたち数人が、レオンを妻の休む部屋へと案内しつつ、産まれた子供のことを話してくれた。
    「さすが、『金火狐』の血筋と言いますか」
    「まるで黄金のような毛並みでございますわ」
    「それに毛先はうっとりするくらい、綺麗な赤色をしていらっしゃいます」
     その説明に、レオンの顔は上気していく。
    「そうですか、そうですかぁ」
    「ささ、旦那様。奥様がお子様とお待ちでございますよ」
     メイドが部屋の扉を開け、レオンに入るよう促した。
    「は、入りますで、イデア」
     そっと中を覗き見ると、ベッドに横になっていた妻のイデアと目が合った。
    「……クスっ」
     あまりに夫の挙動がおかしかったためか、イデアは吹き出した。
    「あ、……あは、はは。体の方は、大丈夫ですか?」
    「ええ。疲れたけれど、元気よ。赤ちゃんも」
    「……そうですかぁ」
     レオンは嬉しそうに、部屋の中に入ってきた。
    「赤ちゃんは?」
    「こっちよ」
     イデアは自分のベッドの横に置かれた、乳児用のベッドを指差した。
    「……わ、あ」
     メイドたちが言っていた通り、その子の耳と尻尾は麦穂のように美しい金色の毛並みをしており、毛先は燃えるように赤い。
    「……うん、……僕そっくりですな、耳と尻尾は。顔は、君に似とりますね」
    「そうかしら? ……そうかもね」
    「名前は……、どうしましょう?」
     夫の問いに、イデアはにっこりと笑って答えた。
    「ニコル。ご先祖様のお名前を、いただきましょう。それと……」
    「それと?」
     イデアは子供の真っ赤な毛先をつい、と指先で撫でた。
    「火のように赤いから……」
    「フォコ?」
    「……あ、そうね。こっちの言葉だと、火(fire)はフォコ(fuoco)になるのよね。
     じゃあ、ニコル・フォコ・ゴールドマン。そう、名付けましょう」
    「……いいですな、うん」



     後に「ニコル3世」の名で知られる、英雄にして大商人。
     このフォコと呼ばれる子供こそ、そのニコル3世である。

     彼の波乱万丈の生涯は、ここから始まった。

    火紅狐・神代記 1

    フォコの話、1話目。金と火の毛並み。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1. 双月暦287年、央中東部の鉱山都市、カレイドマイン。「う、産まれました? 産まれました!?」 その街の権力者一族、ゴールドマン家の宗主である狐獣人、レオン・ゴールドマン4世は、慌てて自分の屋敷に戻ってきた。 待望の、自分の子供が産まれたと言う連絡を受けたからである。「はい、旦那様。かわいい男の子でございますよ」 メイド...

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    蒼天剣・立志録 1

    晴奈の話、1話目。和風ファンタジー。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1. 時は双月暦506年。 夜道を駆ける、三毛耳の猫獣人の少女がいた。 名を、晴奈と言う。 央南地方で名を馳せる大商家の令嬢であったが、先刻その身分を自ら捨ててきた。 彼女には志ができたからだ――「あの人のように、強い剣士になりたい」と。 元々、彼女は何不自由なく育てられていた、箱入り娘であった。ゆくゆくは婿を取らせて家を継が...

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