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琥珀暁 あとがき


    Index ~作品もくじ~

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    シュウ「あー、えっと、どーも。(……なんかもう、こっちだと違和感感じるようになってきちゃいましたよ)
    とゆーワケで『琥珀暁』も無事に終わりまして、恒例のあとがきインタビューのはじまりでーす。
    司会はいつものわたし、シュウ・メイスンでお送りいたしまーす」


    ――よろしくお願いします。

    シュウ「って言うかですね、わたしついさっきもエリザさんとお話してたんですよね。
    改まってあとがきとしてお話するのも、なんかピンと来ないって言うかなんですけど」


    ――ちゃんとやらないと次回作が出ませんし、次回作に出られませんよ。

    シュウ「誰がですか?」

    ――シュウが。

    シュウ「わたし? ……わたしですか!?

    ――フォントでかくしなくったって聞こえてます。君です。

    シュウ「……本当に?」

    ――本当に。

    シュウ「……ぃやったあああああ! うわああい出られるー! ほんぺーん! わっほい!」

    ――うわあ、今まで見たことも無いような喜び方だ。

    シュウ「さーと言うワケで、あとがき始めてまいりましょーかっ!
    本日のゲストは全編を通してキーパーソンとなった、ちょっとウラあり熱血漢! ゲート・シモンさんです!」


    ゲート「おう。よろしくな」

    シュウ「ゲートさんは第1部からゼロさんの親友だったり、第3部以降の中心人物であるハンさんの父親だったり、
    はたまたエリザさんの内縁の夫だったりと、あっちこっちで顔や名前を目にする、
    影の主役とも言える活躍をして下さいました」


    ゲート「終わったからいいんだけどよ、最後のいっこは、いじるの勘弁な」

    ――まず、今作のテーマは「聖書を作る」でした。
    これは言い換えれば宗教を作る、神様を作ると言う話でもあります。
    熱心な方からは少なからずお叱りを受けそうな表現ではありますが、
    現在世界に数多ある宗教も、そしてその聖書も、「人間の創作物」です。

    シュウ「ちょっと黄輪さん、そう言い切っちゃうのはまずいんじゃないですか?」

    ――勘違いしないでもらいたいのは、聖書の中に書かれている「神様」も創作物、
    架空の存在であると断言したいわけではありません。
    本当に何百年、何千年も昔に神様なり天使なりが人々の前に降臨したのかも知れませんし、
    その奇跡を否定する材料を、僕は持ち得ていません。
    いたら素敵であるとも思ってますし、まあまあ信じてる方です。
    ですがその神様「について記された書物」は、神様自らが執筆したものでしょうか?
    僕が論じたいのはその点です。

    シュウ「なるほど。キリスト教の新約聖書も、『マタイによる福音書』であるとか、
    『ローマの使徒への手紙』だとか、書いたのはキリストのお弟子さんたちですね」


    ――「神のみことば」と言うその表現でさえ、神様の放った音声が直に紙や石版に印字されたものではなく、
    人の手を介して記されています。である以上、「聖書は人間の創作物」に他ならないと言うことになります。

    ゲート「もしかしたら書き写す時、何かしら余計なもんを付け加えてるかも知れんしな。
    アロイはやらんと思うが、周りから話聞く時、妙な脚色入れてくるようなヤツが確実にいるだろうし」


    シュウ「ソレって何だか冒涜的な気もします。ありのままじゃなくなりますよね」

    ――聖書が人間の創作物である以上、何らかの意味を持って(あるいは持たせようとして)制作されているはずです。
    純粋に宗教的・神学的な欲求なのか、それとも政治的・文化的なものに変化させたいと言う企みがあるのか、
    それは分かりませんが、いずれにせよ、そうした意味を持たせようとした瞬間から、
    聖書も、宗教も、いわゆる「神の思し召し」を離れた「人工物」になる。
    個人的意見ですが、僕の聖書と宗教に対する考え方はこんなところですね。
    ……と、話がそれましたが、今作にて神様作りました。しかも二柱。ただしスタンスは、大きく異なります。

    シュウ「これまでの作品においても、ゼロさんを主神とする方が『央北天帝教』、
    エリザさんの方が『央中天帝教』と、分かれてますよね」


    ――そしてそのスタンスに関しても、これまで紹介して来ました。
    まず央北の方が先にあり、これが中央政府の中核にあった、と。
    その内に中央政府が神の威光を笠に着て無茶振りし始めたので、央中の人たちが神話の中で、
    ゼロと同じような立ち位置にあったエリザを祀り上げてもう一つ新しい宗教を作った。
    これが央中天帝教ですね。

    ゲート「何つーか、『親は子に似る』って言うが、晩年メチャクチャしだしたゼロと似てるなぁ、その流れ」

    シュウ「そしてその暴走を止めてきたのもエリザさんであり、央中天帝教である。
    そう考えてみると『火紅狐』のお話って、ゼロさんとエリザさんの代理戦争みたいなものにも思えてきますね。
    すごい奥さん持っちゃいましたね、ゲートさんは」


    ゲート「無理矢理こっちに話題振ろうとすんなよ……(苦笑い)」

    ――これで「双月千年世界」における精神的支柱、
    あるいは文明・文化の根源となる「宗教」と「聖書」を作ることができました。
    こうした下書き、基礎構造がキッチリ構築できたことに、我ながら満足しています。
    次回作以降は、この「基礎」を基にして、今までより滑らかに物語を動かせるようになるんじゃないかな、と。

    シュウ「念入りに作ってますね、本当。その努力が実ればいいんですけどねー。
    と言うワケで今回はココまで! また次回、よろしくですー」
    「琥珀暁」あとがき ①二柱の神様
    »»  2020.09.22.
    シュウ「はい、今回もあとがきインタビューはじめまーす。
    今回のゲストはこの方! 腕一本で想い人の側近になった男!
    でもソレ報われたのか報われてないのか、ロウ・ルッジさんでーす!」


    ロウ「なーんか紹介の仕方が引っ掛かんなぁ……。ま、よろしく頼むわ」

    シュウ「さて黄輪さん、今回のテーマは?」

    ――今作において一番好き勝手しておいて、でも結局「いい人」みたいに扱われてるエリザ。
    彼女の半生を振り返るに、結構なダークゾーン、グレーゾーンがあっちこっちに存在します。
    果たしてゼロが言ったように、彼女は悪人だったのか? それを検証したいと思います。

    ロウ「んなもん、いい人に決まってんだろーがよ。大体、自分の仕事置いといて北に3年いたんだぜ?
    よっぽどのお人好しじゃなきゃ、んなことやるわけねーだろーが」


    シュウ「でもその遠征って、ゼロさんがほとんどおカネとヒトを出したって話ですよね」

    ――しかも遠征後に出た利益はほぼエリザが取った形。流石にゼロも頭に来たでしょうね。

    ロウ「いや、でも他にもさー……」

    シュウ「他には第2部では討伐隊50人を引き抜いたり奥さんいる人を口説き落としたり。
    第4部ではシェロさんを罠にはめ、第6部ではものっすごい嘘付いてましたし、
    ……客観的に見ると結構えぐいコトしてません?」


    ロウ「いや……でもさー……ううっ……」

    ――ピカレスクロマンは金火狐のDNAに刻まれてるんでしょうね。子孫のフォコの話と言い。
    ……と、これだけだと単純に悪いことしか列記していないので、いい面も挙げないとフェアじゃないですね。

    ロウ「頼むわ。もう俺めげそうだよ……」

    シュウ「まず、先程ロウさんが言っていた通り、自分のお仕事を放っぽって遠征隊に参加、
    と言うのはなかなかできるコトではないですね。後に利益が出たコトはともかくとして、
    基本的に無給・無報酬で3年間誰も行ったコトの無い国に海外出張って、
    そんな条件で行ってくれる人なんて、よっぽどのお人好しですよね」


    ロウ「だ、だろ、だろ!?」

    ――まあ、報酬云々については、既に大富豪だったので給与をもらう必要が無かっただけですが、
    それでも自分の稼業を3年放置するのは、相当勇気がいることです。
    恐らく僕自身、3年小説書かなかったら確実に全キャラの設定を忘れますし、書き方も分からなくなる。
    もうどの小説も、続きは書けなくなるでしょう。
    (こないだ旅岡さんの話に13年前のキャラ出そうとして、どんなキャラ付けしてたかすっかり忘れてて焦りました)
    それを考えれば、これは下手すると自分の事業、ひいては自分の資産・財産を丸ごと手放すも同然の行為。
    ただ打算的・利己的な人であったなら、絶対にやろうなんて思わないでしょう。
    それにゼロが得るはずだった利益をエリザが奪ったと言うような発言が度々ゼロからされていますが、
    エリザが築いた流通・交通ルート、それに商品・産品は、ゼロ側も使っているはずです。
    ゼロが出資したにせよ、それを使ってエリザがもたらしてくれた恩恵を、ゼロも受けているのは間違いありません。
    その上で非難するのは、一体どっちが盗っ人猛々しいかって話になってくるでしょう。

    シュウ「例えるなら、ゼロさんが採ったリンゴをエリザさんが持ってっちゃって、
    でもその後エリザさんが美味しいアップルパイにして(ゼロさんを含む)みんなに配ったのに、
    ゼロさんが『僕のリンゴを勝手に使った』って怒り出したって話ですよね。そのパイ食べながら」


    ロウ「『じゃあ食ってんじゃねえよ』って言いたくなるよな、そりゃ」

    ――他にも第5部で放浪者同然だったシェロたちを助けたり、第6部で身寄りの無くなったリディアを引き取ったりと、
    必ずしも悪人とは判断しがたい行動も、少なからず取っています。
    これは「白猫夢」で言及したことですが、結局は「利益くれる人は善人、迷惑かける人は悪人」なんです。
    ゼロにしてみれば、自分が受けるはずだった利益、いや、称賛を奪うエリザは、どうやったって悪人にしか見えない。
    そう言うことです。

    シュウ「『絶対悪』なんてまず存在しない、って話ですよね。
    ……っと、今回はこの辺ですね。また次回!」
    「琥珀暁」あとがき ②エリザは悪人だったのか?
    »»  2020.09.23.
    シュウ「さあ、あとがきインタビュー第3回です。ゲストはこの方!
    今作の可愛い方のヒロイン! 双月世界の元祖お嬢様! クラム・タイムズさんです!」


    クー「よろしくお願いいたします。ところで『可愛い方の』と仰いましたが、
    それは可愛くない方がいらっしゃる、と仰りたいのかしら?」


    ――ではなくて、今作可愛いのと格好良いのと綺麗なのがいるってことです。
    まあ、ヒロインの多さは今作に限りませんが。

    クー「誰が誰であるとは、言及いたせるのかしら」

    ――してもいいですが、今日の議題はそれじゃないので割愛です。
    前回エリザがどうなのって話をしたので、今回はもう一柱の神様、ゼロについて話します。

    シュウ「第1部では裏表の無い善人、誰もが敬愛するヒーローって立ち位置でしたが、
    第3部辺りから猜疑心と名誉欲の強さが鼻に付くようになっちゃいましたよね。
    そして第6部ではマリアさんをはじめ、大勢の兵士を見殺しにするような暴挙に。
    一体何でこんなに人間性がねじ曲がっちゃったのか? ソレを考察したいと思います」


    クー「そのお話を、当事者の娘の前でされるのかしら。随分とご趣味のよろしいこと」

    シュウ「やんわりした口調ながらトゲがすごい」

    ――ご批判はごもっともですが、話を進めます。
      まず大前提ですが、僕個人の趣味・嗜好としていわゆる「最強チート系主人公による無双モノ」
    が大嫌いと言う話は何度かしていますが、ゼロはほぼほぼこれに当てはまると思います。

    シュウ「言われてみれば無明の何にも無いって世界、文明も文化も大きく立ち遅れた異世界に来て、
    魔術をはじめとする色んな技術をどっさり持ち込んで、ソコにはびこる凶悪なはずの敵たちをあっさり蹴散らしちゃう、
    ……ってまさに無双モノの王道パターンですよね。
    でも何で嫌いだって言ってるのに、そんなキャラを登場させたんですか?」


    ――嫌いである理由は3つあって、1つは安易・安直であること。
    2つ目は主人公が優遇され過ぎなこと。そして最後に、リアリティに乏しいことです。
    「才能と実力にあふれた正義漢が神や天を味方に付けて悪から世界を救いました、おしまい」
    ……で終わる物語など、嘘臭さとご都合主義の塊です。
    正義は勝つ、正義だから勝つなどと言うお話は、
    勝った側が自分を良く見せたいだけの欺瞞と自己弁護に過ぎません。
    本当の戦争とは、勝利のその裏で、勝つために努力と苦心、策略を巡らせていないはずがないのです。
    数多の戦記と戦術書が、それを証明していると言っていいでしょう。
    むしろその要素が一切無いにもかかわらず、来た、見た、勝ったなどと豪語したところで、
    そこに本物らしさなどどこにも感じられない。そんなご都合主義の塊に、リアリティは欠片も無いのです。
    安っぽい英雄譚を紐解けば、すぐ「神様が助けてくれる」「神様が知恵を授けてくれる」「神様が武器をくれる」、
    そんな展開ばかりです。ちょっとは自分でどうにかしようと思わないのか、と。
    なのでまず、第1部において、ゼロには神の御加護と言うような奇跡や都合のいい偶然などと言うものは
    一切起こさせませんでしたし、とことん厳しい状況に置き続けました。それが僕の書く無双モノです。
    「無敵の能力がある? 超絶実力者? それじゃノーマルモードなんかやらせてたまるか。
    イージーなんかもってのほかだ。ハードだって生ぬるい。お前はルナティックモードだ!」
    と艱難辛苦に放り込むスタイルです。

    クー「ひどいお方ですわね」

    ――無双チーターなんだからそれくらいで丁度いいんです。
    実力のある人間には、それ相応の苦難を与えないと話になりませんし。
    それにこんだけ窮地に追いやっても結局、「僕つえーwwwww」となっちゃったんですから。

    シュウ「第6部で言及されてたコトですね。確かに相手をなめてかかってなきゃ、敵陣上陸はしませんよね、普通」

    ――人間である以上、他人より強い力を得れば増長するものです。
    謙虚な強者など、それこそファンタジーやメルヘン、弱者の自分勝手な理想と言うもの。
    どこの世界に「自家用ヘリや高級車を持ってるのにわざわざ普通の満員電車に乗る大富豪」がいますか。
    仮に使わない者がいるとすれば、それは遠慮や謙遜から来る行動ではなく、単なる趣味でしょう。
    話を戻しますが、「琥珀暁」後半における偏執と暴走は、長年優位に立ってきた故の増長に加え、
    その優位を脅かす存在が現れたことも一因です。

    クー「エリザさんのことかしら」

    シュウ「本人自体が優秀な上、ゼロさんの親友が指導したワケですからね。
    自分と互角か、あるいはソレ以上の力量を持ってると感じたのも無理からぬ話ですね」


    ――人間、一度得たモノを手放すのは惜しいと思うもの。
    ましてや多大な苦労や犠牲と引き換えにして、となればなおさらです。
    「いつかエリザが自分の築き上げたモノをすべて奪ってしまうかも知れない」と言う恐怖は、
    恐らく僕たちが想像している以上に感じていたのかも知れません。
    世界を手に入れた男なのですから。

    クー「それを顧みれば、やはりあなたは過酷な運命に導いているように存じますわ。
    普段からあなた、『物語はハッピーエンドじゃないと嫌だ』と仰っているのでしょう?
    もっと幸せな結末を、皆に与えられたのではございませんこと?」


    ――それに関しては、自分の構成力不足であることは否めません。
    ハッピーエンドにしようとなると、ものすごく安易にまとめるか、
    ものすごくシナリオを練りに練らないと到達しにくいものでして。
    もう10年悩んだらもっと改善したのかも知れませんが、
    今作の元となった作品を書いたのが、その10年よりも前のこと。
    元作品よりは格段に面白くなったことは間違い無いと思いますが、
    それでも現時点ではこのクオリティが精一杯でした。
    この期に及んでさらに10年待たせるわけには行かないので、今作はこの出来で勘弁して下さい。

    クー「そんな殊勝を装ったような言葉でごまかされると……」

    シュウ「でもクーさんは幸せになりましたよね」

    クー「んっ、……ええまあ」

    シュウ「結局お父さんも絶頂にいたまま、名誉が傷付かない形で自然に亡くなったワケですから、
    まあまあ良いんじゃないですか?
    もっとひどい死に方した人は大勢いるワケですし」


    クー「……そうですわね、仰る通りと存じますわ。いいでしょう、溜飲を下げておきますわ」

    シュウ(コレ以上難癖付けられると、インタビューがいつまで経っても終わりませんからね)

    クー「何か申されましたかしら」

    シュウ「イエイエナンデモナイデスヨー。……ソレじゃ今日はこの辺でっ!」
    「琥珀暁」あとがき ③ゼロの変遷と変質
    »»  2020.09.24.
    シュウ「はーい、あとがきインタビュー第4回、始まりますよー。
    今回のゲストはこの方! 大食いする方のヒロイン!
    双月世界のハラペ虎(こ)娘の歴史は彼女が作った! リディア・ミェーチさんです!」


    リディア「は、恥ずかしいです、何だか……」

    シュウ「っと、ソレで質問なんですが、『蒼天剣』にもハラペ虎キャラがいましたよね。
    お二人に関連性はあるんですか? 『琥珀暁』の終盤でリディアさんは央中に移りましたし、
    お子さんもエリザさんのトコに馴染んでたみたいですし」


    ――朱海やシリンはもしかしたら彼女の子孫かも分かりませんし、
    他の移民からつながっているかも知れません。
    どちらにせよ北方遠征の後に移民した人は、相当数あったと思います。
    北方の人たちにとってみれば中央はあったかいし、ご飯はいっぱいあるし、
    ゼロやエリザが優秀なおかげで仕事も事欠かないし。
    逆に、ハンとクーが大使になったことで、追従して中央から北方に渡った人間も少なからずいたはず。
    その人たちも北方で親密な人間関係や家庭を築いたでしょうし、
    何割かはハンたちの任期終了後も現地に残ることを選んだであろうことは、想像に難くないでしょう。

    シュウ「双月暦1世紀から『虎』さんや『熊』さんが渡ってたとしたら、
    そりゃ500年後の『蒼天剣』の時代には中央のあっちこっちにいてもおかしくありませんよね。
    すっかり現地民になって、央中の人たちの中にはエリザさんと同じよーな言葉遣いしてる人もいて」


    リディア「うちの子たちはすっかりそうなってましたね。
    多分もう、北方のことばは話せないんじゃないかしら」


    ――ただ、「カルタ」や「コンペイトウ」がいつの間にか日本語になったように、
    あるいは日本語の「津波」が英語の「Tsunami」として広まったように、
    北方から中央に、あるいは中央から北方に渡った文化もいっぱいあるでしょう。
    そしてそれは恐らく、第6部で侵攻した央南でも同じかも知れません。

    シュウ「『蒼天剣』の第2話で『エルフは央北系だ』みたいなコト言ってましたもんね」

    ――そう言えば
    小鈴は央中からの移民4世ですが、お兄さんや従姉妹は「虎」ですから、
    その遠いご先祖様はきっと北方からの移民。彼女の中には色んな地域の血が混じってるんでしょうね。

    シュウ「だからあんなに美人さんなんですかね? ……もしかしたらわたしも?」

    ――名前からしてハーフみたいですもんね、シュウ・メイスンって。

    シュウ「じゃ、わたし美人さんですか? カワイイ系ですか?」

    ――ちなみに「火紅狐」以降、北方の地名の多くは英語的表記になっていますが、
    これは中央からの文化の影響、と言うことにしています。
    あるいは北方大使になったクーが変えたって可能性もありますが。

    シュウ「しれっと話題変えられたぁー!?」

    リディア「あ、あの、わたしは可愛い方だと思いますよ」

    ――それは可愛い「かた」か「ほう」なのか。

    シュウ「うわーん!」

    ――美人かどうかって本人の前で言及するのもどうかと思いますし、
    婉曲的に言うとすれば、基本的に僕が嫌いなキャラはブスです。
    作中のキャラで僕が一番大嫌いだと言っている克麒麟も「中性的な魅力が」
    とかどっかで言及してた覚えがありますが、イコール容姿の美麗さってわけではありません。
    あと、今作で言うならエマ(乗っ取り前)も割とそっち側。
    性格の意地汚さが外面に現れたような容姿をしていた、と言っておきます。
    その前提で言うとすれば、シュウは僕の中では、旅岡さんと同じくらいのグレードにいますね。

    シュウ「じゃ、……えーと、……えーとー……? き、基準がさっぱり分かんないです」

    ――その辺りに普通にいそうってことです。夕方6時半くらいに駅に行ったら、
    改札の向こうから女子高生やOLさんとかと一緒に出てきそうなくらいの顔立ち。

    シュウ「……はあ……えっと……うーん……その例え全然分かりませんよー……」

    ――シュウが宇宙猫みたいな顔し始めたのでちゃんと言ってあげますが、
    シュウは可愛いです。安心して下さい。

    シュウ「……確かにまあ、面と向かってそんなコト言われたら、ソレはソレで恥ずかしいんですけど」

    リディア「でも良かったじゃないですか! これで可愛いと言うことは確定されたのですし。ねっ?」

    ――ただし。

    シュウ「ただし?」

    ――前述の通り、僕の作品では性格の良し悪しは顔に出ます。
    シュウはまだキャラを固め切っていないので、文句無し、掛け値無しに美人であるかまでは、
    現時点でははっきり言えません。
    無論お気に入りの看板娘ですので、いい娘にしてあげたいとは考えているところですが、
    状況如何では性格が歪む可能性もあるので、今の段階では明言できないところです。

    シュウ「絶対美人にして下さい。マジで頼みます」

    ――精一杯努力します。……と、明日はあとがき最終回です。お楽しみに。

    シュウ「お楽しみに! ……頼みますよ? マ・ジ・で」

    リディア「め、目が怖い……」
    「琥珀暁」あとがき ④双月世界の移民史
    »»  2020.09.25.
    シュウ「あとがきインタビューも今回が最終回! 今回のゲストは、……げっ」

    モール「なーにが『げっ』だ。失礼だね、君」

    ――今作でも結構えぐい活躍した人間ですからね。そりゃ警戒もされます。

    モール「何だかんだでこうやって会うの4回目だろ? もうちょい慣れろってね」

    シュウ「し、失礼しました。……改めましてご紹介します!
    今回のゲストは神に並ぶ大魔法使い! 賢者モールさんです!」


    モール「んで、今回私を呼んだ理由って?」

    ――前作「白猫夢」辺りから、双月世界が成立する以前に存在していたとされる「旧世界」
    の話が少しずつ開示されてきています。これを全て詳らかにするのはもっと後の予定ですが、
    現時点で明らかにできる要素について今一度、触れておこうかと。

    シュウ「ソコで、今作の登場人物の中で最もその事情に詳しいであろうモールさんに、お話を伺おうかと」

    モール「他に詳しそうなのいっぱいいるじゃないね。ゼロとか鳳凰とか」

    ――作中における登場回数の結果と、前々回取り上げたように、
    前半と後半でゼロの性格がねじ曲がりすぎてて、ここに呼ぶには具合が悪いってこともありますので。

    シュウ「その点、モールさんは性格が全っ然変わってないので、話しやすいってコトですね」

    モール「ケッ」

    ――本題に入りますが、今作は双月世界としての文明・文化の黎明期、はじまりに当たります。
    そのため旧世界の名残がチラホラ散見されるところがあります。

    モール「私とエリザが修行した山だとか、第6部の南海だとかだね」

    シュウ「あと、克一門の名前が旧世界で既に存在してたってコトもその一つですね。
    と言うコトは、もしかしたらモールさんは旧世界で大火さんと会ってたって可能性も?」


    ――これは後々の話につながってくることなので明言はできませんが、
    その可能性は無いものとして考えています。
    モールと克一門は、少なくとも旧世界ではほぼ無関係です。
    克一門の一人と個人的に親交があった程度ですね。
    と言うかそもそも、モールは厳密には旧世界には……。

    モール「君、ソレは次回作で話す内容だろ?」

    ――ええ。ですのでこれ以上は話しません。
    設定ばっかり先にこんなところでダラダラ垂れ流しにするくらいなら、ちゃんと物語書きます。

    シュウ「で、その物語とは……? わたしもちゃんと出るんですよね?」

    ――心配しなくてもちゃんと出します。舞台は8世紀、「白猫夢」から百年以上後の世界が舞台です。
    「白猫夢」が現実世界で言う20世紀半ばくらいの時代だったので、次回は現代~近未来くらいの世界観になります。

    シュウ「と言うコトはスマホやWi-Fiやドローンがあっちこっちにあるよーな……?」

    ――そーゆー世界です。そしてこの物語には、モールがものすごく重要な存在として現れます。
    彼だか彼女だか、このあやふやな存在が如何にして出来上がったのか、それが明らかになる予定です。

    シュウ「楽しみです。ちょー楽しみ!」

    ――シュウが世に出て丸10年、ようやくの本編登場となります。僕も書くのが楽しみです。

    シュウ「ちなみにタイトルは?」

    ――「緑綺星 -Hidden and Missing Stars-」の予定です。蒼、紅、白、琥珀と来て、第5弾は緑ですね。



    シュウ「ソレでは最後に恒例の、スペシャルサンクス紹介です!」

    ――まずはいつもの。「
    クリスタルの断章」のポール・ブリッツさん。
    度々込み入ったご意見をいただき、衝突したこともありましたが、
    いつも絡んでいただけること、少なからず感謝しております。

    そして、双月世界関連ではほとんど絡みはありませんが、「妄想の荒野」の矢端想さん。
    ツイッターでは度々ご紹介いただき、誠に感謝しております。
    天狐ちゃんを描いていただけたのは、本当にありがたかったです。

    また、ツイッターと言えば、野川真実さんには大変お世話になりました。
    エリザやら小鈴やら、双月世界のキャラを何度も描いていただき、嬉しい限りです。

    その他、当ブログ「黄輪雑貨本店 新館」にお越しいただいた皆様、
    小説をご笑覧いただいた皆様、ありがとうございました!

    シュウ「ありがとうございましたー!」
    「琥珀暁」あとがき ⑤過去と未来
    »»  2020.09.26.

    シュウ「あー、えっと、どーも。(……なんかもう、こっちだと違和感感じるようになってきちゃいましたよ)
    とゆーワケで『琥珀暁』も無事に終わりまして、恒例のあとがきインタビューのはじまりでーす。
    司会はいつものわたし、シュウ・メイスンでお送りいたしまーす」


    ――よろしくお願いします。

    シュウ「って言うかですね、わたしついさっきもエリザさんとお話してたんですよね。
    改まってあとがきとしてお話するのも、なんかピンと来ないって言うかなんですけど」


    ――ちゃんとやらないと次回作が出ませんし、次回作に出られませんよ。

    シュウ「誰がですか?」

    ――シュウが。

    シュウ「わたし? ……わたしですか!?

    ――フォントでかくしなくったって聞こえてます。君です。

    シュウ「……本当に?」

    ――本当に。

    シュウ「……ぃやったあああああ! うわああい出られるー! ほんぺーん! わっほい!」

    ――うわあ、今まで見たことも無いような喜び方だ。

    シュウ「さーと言うワケで、あとがき始めてまいりましょーかっ!
    本日のゲストは全編を通してキーパーソンとなった、ちょっとウラあり熱血漢! ゲート・シモンさんです!」


    ゲート「おう。よろしくな」

    シュウ「ゲートさんは第1部からゼロさんの親友だったり、第3部以降の中心人物であるハンさんの父親だったり、
    はたまたエリザさんの内縁の夫だったりと、あっちこっちで顔や名前を目にする、
    影の主役とも言える活躍をして下さいました」


    ゲート「終わったからいいんだけどよ、最後のいっこは、いじるの勘弁な」

    ――まず、今作のテーマは「聖書を作る」でした。
    これは言い換えれば宗教を作る、神様を作ると言う話でもあります。
    熱心な方からは少なからずお叱りを受けそうな表現ではありますが、
    現在世界に数多ある宗教も、そしてその聖書も、「人間の創作物」です。

    シュウ「ちょっと黄輪さん、そう言い切っちゃうのはまずいんじゃないですか?」

    ――勘違いしないでもらいたいのは、聖書の中に書かれている「神様」も創作物、
    架空の存在であると断言したいわけではありません。
    本当に何百年、何千年も昔に神様なり天使なりが人々の前に降臨したのかも知れませんし、
    その奇跡を否定する材料を、僕は持ち得ていません。
    いたら素敵であるとも思ってますし、まあまあ信じてる方です。
    ですがその神様「について記された書物」は、神様自らが執筆したものでしょうか?
    僕が論じたいのはその点です。

    シュウ「なるほど。キリスト教の新約聖書も、『マタイによる福音書』であるとか、
    『ローマの使徒への手紙』だとか、書いたのはキリストのお弟子さんたちですね」


    ――「神のみことば」と言うその表現でさえ、神様の放った音声が直に紙や石版に印字されたものではなく、
    人の手を介して記されています。である以上、「聖書は人間の創作物」に他ならないと言うことになります。

    ゲート「もしかしたら書き写す時、何かしら余計なもんを付け加えてるかも知れんしな。
    アロイはやらんと思うが、周りから話聞く時、妙な脚色入れてくるようなヤツが確実にいるだろうし」


    シュウ「ソレって何だか冒涜的な気もします。ありのままじゃなくなりますよね」

    ――聖書が人間の創作物である以上、何らかの意味を持って(あるいは持たせようとして)制作されているはずです。
    純粋に宗教的・神学的な欲求なのか、それとも政治的・文化的なものに変化させたいと言う企みがあるのか、
    それは分かりませんが、いずれにせよ、そうした意味を持たせようとした瞬間から、
    聖書も、宗教も、いわゆる「神の思し召し」を離れた「人工物」になる。
    個人的意見ですが、僕の聖書と宗教に対する考え方はこんなところですね。
    ……と、話がそれましたが、今作にて神様作りました。しかも二柱。ただしスタンスは、大きく異なります。

    シュウ「これまでの作品においても、ゼロさんを主神とする方が『央北天帝教』、
    エリザさんの方が『央中天帝教』と、分かれてますよね」


    ――そしてそのスタンスに関しても、これまで紹介して来ました。
    まず央北の方が先にあり、これが中央政府の中核にあった、と。
    その内に中央政府が神の威光を笠に着て無茶振りし始めたので、央中の人たちが神話の中で、
    ゼロと同じような立ち位置にあったエリザを祀り上げてもう一つ新しい宗教を作った。
    これが央中天帝教ですね。

    ゲート「何つーか、『親は子に似る』って言うが、晩年メチャクチャしだしたゼロと似てるなぁ、その流れ」

    シュウ「そしてその暴走を止めてきたのもエリザさんであり、央中天帝教である。
    そう考えてみると『火紅狐』のお話って、ゼロさんとエリザさんの代理戦争みたいなものにも思えてきますね。
    すごい奥さん持っちゃいましたね、ゲートさんは」


    ゲート「無理矢理こっちに話題振ろうとすんなよ……(苦笑い)」

    ――これで「双月千年世界」における精神的支柱、
    あるいは文明・文化の根源となる「宗教」と「聖書」を作ることができました。
    こうした下書き、基礎構造がキッチリ構築できたことに、我ながら満足しています。
    次回作以降は、この「基礎」を基にして、今までより滑らかに物語を動かせるようになるんじゃないかな、と。

    シュウ「念入りに作ってますね、本当。その努力が実ればいいんですけどねー。
    と言うワケで今回はココまで! また次回、よろしくですー」

    「琥珀暁」あとがき ①二柱の神様

    2020.09.22.[Edit]
    シュウ「あー、えっと、どーも。(……なんかもう、こっちだと違和感感じるようになってきちゃいましたよ)とゆーワケで『琥珀暁』も無事に終わりまして、恒例のあとがきインタビューのはじまりでーす。司会はいつものわたし、シュウ・メイスンでお送りいたしまーす」――よろしくお願いします。シュウ「って言うかですね、わたしついさっきもエリザさんとお話してたんですよね。改まってあとがきとしてお話するのも、なんかピンと来な...

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    シュウ「はい、今回もあとがきインタビューはじめまーす。
    今回のゲストはこの方! 腕一本で想い人の側近になった男!
    でもソレ報われたのか報われてないのか、ロウ・ルッジさんでーす!」


    ロウ「なーんか紹介の仕方が引っ掛かんなぁ……。ま、よろしく頼むわ」

    シュウ「さて黄輪さん、今回のテーマは?」

    ――今作において一番好き勝手しておいて、でも結局「いい人」みたいに扱われてるエリザ。
    彼女の半生を振り返るに、結構なダークゾーン、グレーゾーンがあっちこっちに存在します。
    果たしてゼロが言ったように、彼女は悪人だったのか? それを検証したいと思います。

    ロウ「んなもん、いい人に決まってんだろーがよ。大体、自分の仕事置いといて北に3年いたんだぜ?
    よっぽどのお人好しじゃなきゃ、んなことやるわけねーだろーが」


    シュウ「でもその遠征って、ゼロさんがほとんどおカネとヒトを出したって話ですよね」

    ――しかも遠征後に出た利益はほぼエリザが取った形。流石にゼロも頭に来たでしょうね。

    ロウ「いや、でも他にもさー……」

    シュウ「他には第2部では討伐隊50人を引き抜いたり奥さんいる人を口説き落としたり。
    第4部ではシェロさんを罠にはめ、第6部ではものっすごい嘘付いてましたし、
    ……客観的に見ると結構えぐいコトしてません?」


    ロウ「いや……でもさー……ううっ……」

    ――ピカレスクロマンは金火狐のDNAに刻まれてるんでしょうね。子孫のフォコの話と言い。
    ……と、これだけだと単純に悪いことしか列記していないので、いい面も挙げないとフェアじゃないですね。

    ロウ「頼むわ。もう俺めげそうだよ……」

    シュウ「まず、先程ロウさんが言っていた通り、自分のお仕事を放っぽって遠征隊に参加、
    と言うのはなかなかできるコトではないですね。後に利益が出たコトはともかくとして、
    基本的に無給・無報酬で3年間誰も行ったコトの無い国に海外出張って、
    そんな条件で行ってくれる人なんて、よっぽどのお人好しですよね」


    ロウ「だ、だろ、だろ!?」

    ――まあ、報酬云々については、既に大富豪だったので給与をもらう必要が無かっただけですが、
    それでも自分の稼業を3年放置するのは、相当勇気がいることです。
    恐らく僕自身、3年小説書かなかったら確実に全キャラの設定を忘れますし、書き方も分からなくなる。
    もうどの小説も、続きは書けなくなるでしょう。
    (こないだ旅岡さんの話に13年前のキャラ出そうとして、どんなキャラ付けしてたかすっかり忘れてて焦りました)
    それを考えれば、これは下手すると自分の事業、ひいては自分の資産・財産を丸ごと手放すも同然の行為。
    ただ打算的・利己的な人であったなら、絶対にやろうなんて思わないでしょう。
    それにゼロが得るはずだった利益をエリザが奪ったと言うような発言が度々ゼロからされていますが、
    エリザが築いた流通・交通ルート、それに商品・産品は、ゼロ側も使っているはずです。
    ゼロが出資したにせよ、それを使ってエリザがもたらしてくれた恩恵を、ゼロも受けているのは間違いありません。
    その上で非難するのは、一体どっちが盗っ人猛々しいかって話になってくるでしょう。

    シュウ「例えるなら、ゼロさんが採ったリンゴをエリザさんが持ってっちゃって、
    でもその後エリザさんが美味しいアップルパイにして(ゼロさんを含む)みんなに配ったのに、
    ゼロさんが『僕のリンゴを勝手に使った』って怒り出したって話ですよね。そのパイ食べながら」


    ロウ「『じゃあ食ってんじゃねえよ』って言いたくなるよな、そりゃ」

    ――他にも第5部で放浪者同然だったシェロたちを助けたり、第6部で身寄りの無くなったリディアを引き取ったりと、
    必ずしも悪人とは判断しがたい行動も、少なからず取っています。
    これは「白猫夢」で言及したことですが、結局は「利益くれる人は善人、迷惑かける人は悪人」なんです。
    ゼロにしてみれば、自分が受けるはずだった利益、いや、称賛を奪うエリザは、どうやったって悪人にしか見えない。
    そう言うことです。

    シュウ「『絶対悪』なんてまず存在しない、って話ですよね。
    ……っと、今回はこの辺ですね。また次回!」

    「琥珀暁」あとがき ②エリザは悪人だったのか?

    2020.09.23.[Edit]
    シュウ「はい、今回もあとがきインタビューはじめまーす。今回のゲストはこの方! 腕一本で想い人の側近になった男!でもソレ報われたのか報われてないのか、ロウ・ルッジさんでーす!」ロウ「なーんか紹介の仕方が引っ掛かんなぁ……。ま、よろしく頼むわ」シュウ「さて黄輪さん、今回のテーマは?」――今作において一番好き勝手しておいて、でも結局「いい人」みたいに扱われてるエリザ。彼女の半生を振り返るに、結構なダークゾー...

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    シュウ「さあ、あとがきインタビュー第3回です。ゲストはこの方!
    今作の可愛い方のヒロイン! 双月世界の元祖お嬢様! クラム・タイムズさんです!」


    クー「よろしくお願いいたします。ところで『可愛い方の』と仰いましたが、
    それは可愛くない方がいらっしゃる、と仰りたいのかしら?」


    ――ではなくて、今作可愛いのと格好良いのと綺麗なのがいるってことです。
    まあ、ヒロインの多さは今作に限りませんが。

    クー「誰が誰であるとは、言及いたせるのかしら」

    ――してもいいですが、今日の議題はそれじゃないので割愛です。
    前回エリザがどうなのって話をしたので、今回はもう一柱の神様、ゼロについて話します。

    シュウ「第1部では裏表の無い善人、誰もが敬愛するヒーローって立ち位置でしたが、
    第3部辺りから猜疑心と名誉欲の強さが鼻に付くようになっちゃいましたよね。
    そして第6部ではマリアさんをはじめ、大勢の兵士を見殺しにするような暴挙に。
    一体何でこんなに人間性がねじ曲がっちゃったのか? ソレを考察したいと思います」


    クー「そのお話を、当事者の娘の前でされるのかしら。随分とご趣味のよろしいこと」

    シュウ「やんわりした口調ながらトゲがすごい」

    ――ご批判はごもっともですが、話を進めます。
      まず大前提ですが、僕個人の趣味・嗜好としていわゆる「最強チート系主人公による無双モノ」
    が大嫌いと言う話は何度かしていますが、ゼロはほぼほぼこれに当てはまると思います。

    シュウ「言われてみれば無明の何にも無いって世界、文明も文化も大きく立ち遅れた異世界に来て、
    魔術をはじめとする色んな技術をどっさり持ち込んで、ソコにはびこる凶悪なはずの敵たちをあっさり蹴散らしちゃう、
    ……ってまさに無双モノの王道パターンですよね。
    でも何で嫌いだって言ってるのに、そんなキャラを登場させたんですか?」


    ――嫌いである理由は3つあって、1つは安易・安直であること。
    2つ目は主人公が優遇され過ぎなこと。そして最後に、リアリティに乏しいことです。
    「才能と実力にあふれた正義漢が神や天を味方に付けて悪から世界を救いました、おしまい」
    ……で終わる物語など、嘘臭さとご都合主義の塊です。
    正義は勝つ、正義だから勝つなどと言うお話は、
    勝った側が自分を良く見せたいだけの欺瞞と自己弁護に過ぎません。
    本当の戦争とは、勝利のその裏で、勝つために努力と苦心、策略を巡らせていないはずがないのです。
    数多の戦記と戦術書が、それを証明していると言っていいでしょう。
    むしろその要素が一切無いにもかかわらず、来た、見た、勝ったなどと豪語したところで、
    そこに本物らしさなどどこにも感じられない。そんなご都合主義の塊に、リアリティは欠片も無いのです。
    安っぽい英雄譚を紐解けば、すぐ「神様が助けてくれる」「神様が知恵を授けてくれる」「神様が武器をくれる」、
    そんな展開ばかりです。ちょっとは自分でどうにかしようと思わないのか、と。
    なのでまず、第1部において、ゼロには神の御加護と言うような奇跡や都合のいい偶然などと言うものは
    一切起こさせませんでしたし、とことん厳しい状況に置き続けました。それが僕の書く無双モノです。
    「無敵の能力がある? 超絶実力者? それじゃノーマルモードなんかやらせてたまるか。
    イージーなんかもってのほかだ。ハードだって生ぬるい。お前はルナティックモードだ!」
    と艱難辛苦に放り込むスタイルです。

    クー「ひどいお方ですわね」

    ――無双チーターなんだからそれくらいで丁度いいんです。
    実力のある人間には、それ相応の苦難を与えないと話になりませんし。
    それにこんだけ窮地に追いやっても結局、「僕つえーwwwww」となっちゃったんですから。

    シュウ「第6部で言及されてたコトですね。確かに相手をなめてかかってなきゃ、敵陣上陸はしませんよね、普通」

    ――人間である以上、他人より強い力を得れば増長するものです。
    謙虚な強者など、それこそファンタジーやメルヘン、弱者の自分勝手な理想と言うもの。
    どこの世界に「自家用ヘリや高級車を持ってるのにわざわざ普通の満員電車に乗る大富豪」がいますか。
    仮に使わない者がいるとすれば、それは遠慮や謙遜から来る行動ではなく、単なる趣味でしょう。
    話を戻しますが、「琥珀暁」後半における偏執と暴走は、長年優位に立ってきた故の増長に加え、
    その優位を脅かす存在が現れたことも一因です。

    クー「エリザさんのことかしら」

    シュウ「本人自体が優秀な上、ゼロさんの親友が指導したワケですからね。
    自分と互角か、あるいはソレ以上の力量を持ってると感じたのも無理からぬ話ですね」


    ――人間、一度得たモノを手放すのは惜しいと思うもの。
    ましてや多大な苦労や犠牲と引き換えにして、となればなおさらです。
    「いつかエリザが自分の築き上げたモノをすべて奪ってしまうかも知れない」と言う恐怖は、
    恐らく僕たちが想像している以上に感じていたのかも知れません。
    世界を手に入れた男なのですから。

    クー「それを顧みれば、やはりあなたは過酷な運命に導いているように存じますわ。
    普段からあなた、『物語はハッピーエンドじゃないと嫌だ』と仰っているのでしょう?
    もっと幸せな結末を、皆に与えられたのではございませんこと?」


    ――それに関しては、自分の構成力不足であることは否めません。
    ハッピーエンドにしようとなると、ものすごく安易にまとめるか、
    ものすごくシナリオを練りに練らないと到達しにくいものでして。
    もう10年悩んだらもっと改善したのかも知れませんが、
    今作の元となった作品を書いたのが、その10年よりも前のこと。
    元作品よりは格段に面白くなったことは間違い無いと思いますが、
    それでも現時点ではこのクオリティが精一杯でした。
    この期に及んでさらに10年待たせるわけには行かないので、今作はこの出来で勘弁して下さい。

    クー「そんな殊勝を装ったような言葉でごまかされると……」

    シュウ「でもクーさんは幸せになりましたよね」

    クー「んっ、……ええまあ」

    シュウ「結局お父さんも絶頂にいたまま、名誉が傷付かない形で自然に亡くなったワケですから、
    まあまあ良いんじゃないですか?
    もっとひどい死に方した人は大勢いるワケですし」


    クー「……そうですわね、仰る通りと存じますわ。いいでしょう、溜飲を下げておきますわ」

    シュウ(コレ以上難癖付けられると、インタビューがいつまで経っても終わりませんからね)

    クー「何か申されましたかしら」

    シュウ「イエイエナンデモナイデスヨー。……ソレじゃ今日はこの辺でっ!」

    「琥珀暁」あとがき ③ゼロの変遷と変質

    2020.09.24.[Edit]
    シュウ「さあ、あとがきインタビュー第3回です。ゲストはこの方!今作の可愛い方のヒロイン! 双月世界の元祖お嬢様! クラム・タイムズさんです!」クー「よろしくお願いいたします。ところで『可愛い方の』と仰いましたが、それは可愛くない方がいらっしゃる、と仰りたいのかしら?」――ではなくて、今作可愛いのと格好良いのと綺麗なのがいるってことです。まあ、ヒロインの多さは今作に限りませんが。クー「誰が誰であるとは...

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    シュウ「はーい、あとがきインタビュー第4回、始まりますよー。
    今回のゲストはこの方! 大食いする方のヒロイン!
    双月世界のハラペ虎(こ)娘の歴史は彼女が作った! リディア・ミェーチさんです!」


    リディア「は、恥ずかしいです、何だか……」

    シュウ「っと、ソレで質問なんですが、『蒼天剣』にもハラペ虎キャラがいましたよね。
    お二人に関連性はあるんですか? 『琥珀暁』の終盤でリディアさんは央中に移りましたし、
    お子さんもエリザさんのトコに馴染んでたみたいですし」


    ――朱海やシリンはもしかしたら彼女の子孫かも分かりませんし、
    他の移民からつながっているかも知れません。
    どちらにせよ北方遠征の後に移民した人は、相当数あったと思います。
    北方の人たちにとってみれば中央はあったかいし、ご飯はいっぱいあるし、
    ゼロやエリザが優秀なおかげで仕事も事欠かないし。
    逆に、ハンとクーが大使になったことで、追従して中央から北方に渡った人間も少なからずいたはず。
    その人たちも北方で親密な人間関係や家庭を築いたでしょうし、
    何割かはハンたちの任期終了後も現地に残ることを選んだであろうことは、想像に難くないでしょう。

    シュウ「双月暦1世紀から『虎』さんや『熊』さんが渡ってたとしたら、
    そりゃ500年後の『蒼天剣』の時代には中央のあっちこっちにいてもおかしくありませんよね。
    すっかり現地民になって、央中の人たちの中にはエリザさんと同じよーな言葉遣いしてる人もいて」


    リディア「うちの子たちはすっかりそうなってましたね。
    多分もう、北方のことばは話せないんじゃないかしら」


    ――ただ、「カルタ」や「コンペイトウ」がいつの間にか日本語になったように、
    あるいは日本語の「津波」が英語の「Tsunami」として広まったように、
    北方から中央に、あるいは中央から北方に渡った文化もいっぱいあるでしょう。
    そしてそれは恐らく、第6部で侵攻した央南でも同じかも知れません。

    シュウ「『蒼天剣』の第2話で『エルフは央北系だ』みたいなコト言ってましたもんね」

    ――そう言えば
    小鈴は央中からの移民4世ですが、お兄さんや従姉妹は「虎」ですから、
    その遠いご先祖様はきっと北方からの移民。彼女の中には色んな地域の血が混じってるんでしょうね。

    シュウ「だからあんなに美人さんなんですかね? ……もしかしたらわたしも?」

    ――名前からしてハーフみたいですもんね、シュウ・メイスンって。

    シュウ「じゃ、わたし美人さんですか? カワイイ系ですか?」

    ――ちなみに「火紅狐」以降、北方の地名の多くは英語的表記になっていますが、
    これは中央からの文化の影響、と言うことにしています。
    あるいは北方大使になったクーが変えたって可能性もありますが。

    シュウ「しれっと話題変えられたぁー!?」

    リディア「あ、あの、わたしは可愛い方だと思いますよ」

    ――それは可愛い「かた」か「ほう」なのか。

    シュウ「うわーん!」

    ――美人かどうかって本人の前で言及するのもどうかと思いますし、
    婉曲的に言うとすれば、基本的に僕が嫌いなキャラはブスです。
    作中のキャラで僕が一番大嫌いだと言っている克麒麟も「中性的な魅力が」
    とかどっかで言及してた覚えがありますが、イコール容姿の美麗さってわけではありません。
    あと、今作で言うならエマ(乗っ取り前)も割とそっち側。
    性格の意地汚さが外面に現れたような容姿をしていた、と言っておきます。
    その前提で言うとすれば、シュウは僕の中では、旅岡さんと同じくらいのグレードにいますね。

    シュウ「じゃ、……えーと、……えーとー……? き、基準がさっぱり分かんないです」

    ――その辺りに普通にいそうってことです。夕方6時半くらいに駅に行ったら、
    改札の向こうから女子高生やOLさんとかと一緒に出てきそうなくらいの顔立ち。

    シュウ「……はあ……えっと……うーん……その例え全然分かりませんよー……」

    ――シュウが宇宙猫みたいな顔し始めたのでちゃんと言ってあげますが、
    シュウは可愛いです。安心して下さい。

    シュウ「……確かにまあ、面と向かってそんなコト言われたら、ソレはソレで恥ずかしいんですけど」

    リディア「でも良かったじゃないですか! これで可愛いと言うことは確定されたのですし。ねっ?」

    ――ただし。

    シュウ「ただし?」

    ――前述の通り、僕の作品では性格の良し悪しは顔に出ます。
    シュウはまだキャラを固め切っていないので、文句無し、掛け値無しに美人であるかまでは、
    現時点でははっきり言えません。
    無論お気に入りの看板娘ですので、いい娘にしてあげたいとは考えているところですが、
    状況如何では性格が歪む可能性もあるので、今の段階では明言できないところです。

    シュウ「絶対美人にして下さい。マジで頼みます」

    ――精一杯努力します。……と、明日はあとがき最終回です。お楽しみに。

    シュウ「お楽しみに! ……頼みますよ? マ・ジ・で」

    リディア「め、目が怖い……」

    「琥珀暁」あとがき ④双月世界の移民史

    2020.09.25.[Edit]
    シュウ「はーい、あとがきインタビュー第4回、始まりますよー。今回のゲストはこの方! 大食いする方のヒロイン!双月世界のハラペ虎(こ)娘の歴史は彼女が作った! リディア・ミェーチさんです!」リディア「は、恥ずかしいです、何だか……」シュウ「っと、ソレで質問なんですが、『蒼天剣』にもハラペ虎キャラがいましたよね。お二人に関連性はあるんですか? 『琥珀暁』の終盤でリディアさんは央中に移りましたし、お子さん...

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    シュウ「あとがきインタビューも今回が最終回! 今回のゲストは、……げっ」

    モール「なーにが『げっ』だ。失礼だね、君」

    ――今作でも結構えぐい活躍した人間ですからね。そりゃ警戒もされます。

    モール「何だかんだでこうやって会うの4回目だろ? もうちょい慣れろってね」

    シュウ「し、失礼しました。……改めましてご紹介します!
    今回のゲストは神に並ぶ大魔法使い! 賢者モールさんです!」


    モール「んで、今回私を呼んだ理由って?」

    ――前作「白猫夢」辺りから、双月世界が成立する以前に存在していたとされる「旧世界」
    の話が少しずつ開示されてきています。これを全て詳らかにするのはもっと後の予定ですが、
    現時点で明らかにできる要素について今一度、触れておこうかと。

    シュウ「ソコで、今作の登場人物の中で最もその事情に詳しいであろうモールさんに、お話を伺おうかと」

    モール「他に詳しそうなのいっぱいいるじゃないね。ゼロとか鳳凰とか」

    ――作中における登場回数の結果と、前々回取り上げたように、
    前半と後半でゼロの性格がねじ曲がりすぎてて、ここに呼ぶには具合が悪いってこともありますので。

    シュウ「その点、モールさんは性格が全っ然変わってないので、話しやすいってコトですね」

    モール「ケッ」

    ――本題に入りますが、今作は双月世界としての文明・文化の黎明期、はじまりに当たります。
    そのため旧世界の名残がチラホラ散見されるところがあります。

    モール「私とエリザが修行した山だとか、第6部の南海だとかだね」

    シュウ「あと、克一門の名前が旧世界で既に存在してたってコトもその一つですね。
    と言うコトは、もしかしたらモールさんは旧世界で大火さんと会ってたって可能性も?」


    ――これは後々の話につながってくることなので明言はできませんが、
    その可能性は無いものとして考えています。
    モールと克一門は、少なくとも旧世界ではほぼ無関係です。
    克一門の一人と個人的に親交があった程度ですね。
    と言うかそもそも、モールは厳密には旧世界には……。

    モール「君、ソレは次回作で話す内容だろ?」

    ――ええ。ですのでこれ以上は話しません。
    設定ばっかり先にこんなところでダラダラ垂れ流しにするくらいなら、ちゃんと物語書きます。

    シュウ「で、その物語とは……? わたしもちゃんと出るんですよね?」

    ――心配しなくてもちゃんと出します。舞台は8世紀、「白猫夢」から百年以上後の世界が舞台です。
    「白猫夢」が現実世界で言う20世紀半ばくらいの時代だったので、次回は現代~近未来くらいの世界観になります。

    シュウ「と言うコトはスマホやWi-Fiやドローンがあっちこっちにあるよーな……?」

    ――そーゆー世界です。そしてこの物語には、モールがものすごく重要な存在として現れます。
    彼だか彼女だか、このあやふやな存在が如何にして出来上がったのか、それが明らかになる予定です。

    シュウ「楽しみです。ちょー楽しみ!」

    ――シュウが世に出て丸10年、ようやくの本編登場となります。僕も書くのが楽しみです。

    シュウ「ちなみにタイトルは?」

    ――「緑綺星 -Hidden and Missing Stars-」の予定です。蒼、紅、白、琥珀と来て、第5弾は緑ですね。



    シュウ「ソレでは最後に恒例の、スペシャルサンクス紹介です!」

    ――まずはいつもの。「
    クリスタルの断章」のポール・ブリッツさん。
    度々込み入ったご意見をいただき、衝突したこともありましたが、
    いつも絡んでいただけること、少なからず感謝しております。

    そして、双月世界関連ではほとんど絡みはありませんが、「妄想の荒野」の矢端想さん。
    ツイッターでは度々ご紹介いただき、誠に感謝しております。
    天狐ちゃんを描いていただけたのは、本当にありがたかったです。

    また、ツイッターと言えば、野川真実さんには大変お世話になりました。
    エリザやら小鈴やら、双月世界のキャラを何度も描いていただき、嬉しい限りです。

    その他、当ブログ「黄輪雑貨本店 新館」にお越しいただいた皆様、
    小説をご笑覧いただいた皆様、ありがとうございました!

    シュウ「ありがとうございましたー!」

    「琥珀暁」あとがき ⑤過去と未来

    2020.09.26.[Edit]
    シュウ「あとがきインタビューも今回が最終回! 今回のゲストは、……げっ」モール「なーにが『げっ』だ。失礼だね、君」――今作でも結構えぐい活躍した人間ですからね。そりゃ警戒もされます。モール「何だかんだでこうやって会うの4回目だろ? もうちょい慣れろってね」シュウ「し、失礼しました。……改めましてご紹介します!今回のゲストは神に並ぶ大魔法使い! 賢者モールさんです!」モール「んで、今回私を呼んだ理由って?...

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