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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第4部

    火紅狐・四壊記 1

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    フォコの話、170話目。
    消えたフォコ。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    「ホコウが、いない!?」
     報せを受けた一同は、顔を見合わせた。
    「はい。朝食のお時間になっても姿が見えず、寝室に向かったところで、不在が発覚致しまして……」
    「そうか……ううむ……」
     いつも堂々と振る舞うメフルも、予想外の事態に遭い、動揺しているらしい。むすっとした顔で押し黙り、部屋をうろうろと歩き回るばかりである。
     そこでいち早く冷静さを取り戻したマフスが、事態の収拾に当たろうと案を出した。
    「とにかく皆さん、手分けしてホコウさんを探しましょう。その……、もしかしたら、どこかで倒れていたり、あるいは、単に寝ぼけて変なところで眠り込んでいるかも知れませんし」
    「そう、だな。……よし、皆の者! 人手を集めてくれ! 集まり次第、城の内外、周辺を捜索し、ホコウを見つけ出すのだ!」
     慌ただしくなる室内を一瞥し、メフルは近くの椅子に腰かけた。
    「……人騒がせな奴め! 良く分からん戦略、良く分からん作戦の次は、己の存在まで分からなくするか」
    「自分でそれをやったなら、問題ないんだけどな」
     そうつぶやいたアミルに、メフルは視線を向けた。
    「どう言うことだ?」
    「さらわれたかも知れない、ってことですよ」
    「何?」
     アミルの言葉に、メフルの顔は真っ青になる。
    「さらわれた、……だと? ま、……まさか!」
     メフルはゴリゴリと猫耳をかきながら、それに反論しようとした。
    「さらわれた、とするならば、実行犯がいることになる、そうだな?
     だが、今や完全にベール軍が掌握したこの街において、そんな犯罪を犯す人間がいるものか、いいや、いてたまるものか!」
    「軍は神様でも千里眼の持ち主でもないんですよ。どこにでもそんな奴ら、隠れられます」
    「馬鹿を言うな! いや、仮にいたとして、ホコウをどこで拉致したと言うのか!? まさかこの宮殿においてか!?」
    「ホコウが勝手に外に出て、そこで捕まった可能性もあるでしょう。
     ……落ち着いてくださいよ、殿下。言ってること、無茶苦茶ですよ」
     メフルの発言はどれも思慮に欠けたものであり、どう聞いても狼狽しているのが明らかだった。
    「……あ、う、うむ。……そうだな、私が落ち着かないでどうするか」
    「今までは、それでも良かったのですけれど」
     と、部屋の隅で本を読んでいたマフスが顔を挙げた。
    「わたしたちは今まで、ホコウさんの指示を仰いで行動してきました。
     多少のわだかまりや疑念はあったものの、それでも従ってきたのは、あの方の指示には納得の行く理由と、確固たる信念があったからこそ。
     その理由と信念こそ、あの方を我々の総大将と仰いでこれた何よりの根拠であり、……同時に、わたしたちがそれほど思案しなくとも戦況を有利に進めることができた理由でもあります。
     ……今、本当にホコウさんがいなくなったら。わたしたちは一体、誰を参謀、総大将と仰げばいいのでしょう?」
    「……む……」
     妹の言葉に、メフルは渋い顔をした。
    「私を総大将と、……と言うのは角が立つか。ロクシルム側には、いい顔をしない者も少なくないだろうな」
    「いや、そんなことは」
     謙遜しかけるアミルに対し、マフスがメフルの言葉を継ぐ。
    「逆の場合も然りでしょうね。
     シルム代表やロックス代表がトップになったとして、我々ベールの側にも『商人風情に我々を率いる資格なぞ』と反目する人間も、きっと……」
     そこまで言いかけて、マフスはアミルが憮然とした顔をしていることに気付き、撤回しようとした。
    「あ、……いえ、他意はないんです。あくまで皆さんの意見と言うだけで」
    「ああそうだな。そんな風に言われちゃ、俺たちの側にもそう考える奴は出るだろうよ」
     アミルのむすっとした顔から放たれた返答に、マフスは慌てて弁解する。
    「すみません、その、別にあなた方に資格が無いと言うようなことを言ったつもりでは」「いいよ別に。ついうっかりポンと出た言葉が、あんたらの本心だなんて思っちゃいないし、別にいいさ」
     そう返したものの、アミルの目には明らかに侮蔑の色が浮かんでいた。
    「……」「……」「……」
     場に険悪な雰囲気が流れ、捜索の人員が集まるまで、それきり誰も口を開こうとはしなくなった。
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