「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第4部
火紅狐・四壊記 2
フォコの話、171話目。
角が擦れ合う三人。
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2.
アミルたちロクシルム―ベール幹部たちの険悪な雰囲気は、フォコの捜索が始まっても解消されなかった。
「……それでは、わたしたちの隊は港周辺を捜します」
「ああ」
アミルはメフルたちに目を合わせようとはせず、隊の皆に「付いて来い」とだけ言ってその場を離れていった。
「……失言だったな」
「ええ……。もう少し、言い方を考えるべきでした」
「まあ、一度口から放たれた言葉は直しようがない。……ホコウが戻ってきたら、仲を取り成してもらわねばな」
「……お兄様。もし、……もしもですよ」
マフスは兄に対し、がっかりした目を向ける。
「ホコウさんが亡くなっていたら、どうするおつもりなの?」
「む……」
「戦争が始まってから、いつもそう。うるさくがなり立てるばかりで、ご自分では何も考えていないではないですか。
この戦争で幾度も戦果を収めたお兄様は既に次代の国王か、もしくはセノク叔父様のように、護国卿となれるかも知れない身だと言うのに、……いいえ、今ホコウさんがいないと言うこの時だからこそ、毅然とした態度を執っていただかないと……」
「……お前こそ」
説教じみた妹の言葉に反発し、メフルが声を荒げる。
「いつも嫌味なところで口を挟み、場を濁らせるばかりではないか。此度の件にしても、お前があんな風に言わなければ、シルム代表の機嫌を損ねることは無かったはずだ。
私は行動が粗暴かも知れんが、お前は口が粗暴だな」
「……」
兄妹の雰囲気も険悪になったところで、メフルはぷい、と踵を返して隊を動かした。
「私が港を捜索する。お前は他のところへ行け」
「……ええ、そうします」
結局、1週間にわたってベール島を捜索しても、フォコの行方は判明しなかった。
これだけでもロクシルム―ベール連合にとってはブレーンを失う大きな痛手となったが、幹部たちの仲違いがその危機に拍車をかけた。
「ど、どうしたんだよ、二人とも!? 何やって……」
ベール宮殿において、アミル、メフルの両名が口論の果てに、殴り合いのケンカを起こしたのだ。
慌ててランニャが仲裁に入り、その場は収まったものの――。
「……もう沢山だ! 俺は勝手にやるぞ」
顔に青あざを付けられたアミルは、メフルたちに向かって指を下に向けて見せる。
これは南海における挑発のサインであり、当然、プライドの高いメフルは怒り出す。
「勝手にするがいい! もう金輪際、お前なぞに頼るものか!」
「ちょ、ちょっと! そりゃまずいって、二人とも!」
ランニャは反目する二人をなだめようと、懸命に説得する。
「フォコくんも言ってたじゃないか、ロクシルムの商業網とベールの政治力を合わせることで、レヴィアに対抗できる力が生まれるって!
それが今バラバラになっちゃったら、勝てる戦いも勝てなくなっちゃうよ!?」
「レヴィアだと? 知ったことか! もう気息奄々、何か月もすれば自滅するような相手に、何を恐れることがある!?
それよりも今後のことを考えておかねばな――これ以上こいつらに寄生されていては、我がベール王国が食い潰されるのは明らかだ。今ここで、きっちりとどちらが南海の覇者であるか分からせておかねばなるまい」
「それはこっちの台詞だ! 何が南海の覇者だ、まるでレヴィアのバカどもの言ってること、そのまんまじゃねーか! どっちが侵略者だか、分かったもんじゃねーな!?
お前らみたいな権力の亡者、俺たちが成敗してやる! その首洗って待っていやがれ!」
こうしてアミル、メフルの二人の反目を皮切りに、ロクシルム―ベールの内反が勃発した。
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角が擦れ合う三人。
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アミルたちロクシルム―ベール幹部たちの険悪な雰囲気は、フォコの捜索が始まっても解消されなかった。
「……それでは、わたしたちの隊は港周辺を捜します」
「ああ」
アミルはメフルたちに目を合わせようとはせず、隊の皆に「付いて来い」とだけ言ってその場を離れていった。
「……失言だったな」
「ええ……。もう少し、言い方を考えるべきでした」
「まあ、一度口から放たれた言葉は直しようがない。……ホコウが戻ってきたら、仲を取り成してもらわねばな」
「……お兄様。もし、……もしもですよ」
マフスは兄に対し、がっかりした目を向ける。
「ホコウさんが亡くなっていたら、どうするおつもりなの?」
「む……」
「戦争が始まってから、いつもそう。うるさくがなり立てるばかりで、ご自分では何も考えていないではないですか。
この戦争で幾度も戦果を収めたお兄様は既に次代の国王か、もしくはセノク叔父様のように、護国卿となれるかも知れない身だと言うのに、……いいえ、今ホコウさんがいないと言うこの時だからこそ、毅然とした態度を執っていただかないと……」
「……お前こそ」
説教じみた妹の言葉に反発し、メフルが声を荒げる。
「いつも嫌味なところで口を挟み、場を濁らせるばかりではないか。此度の件にしても、お前があんな風に言わなければ、シルム代表の機嫌を損ねることは無かったはずだ。
私は行動が粗暴かも知れんが、お前は口が粗暴だな」
「……」
兄妹の雰囲気も険悪になったところで、メフルはぷい、と踵を返して隊を動かした。
「私が港を捜索する。お前は他のところへ行け」
「……ええ、そうします」
結局、1週間にわたってベール島を捜索しても、フォコの行方は判明しなかった。
これだけでもロクシルム―ベール連合にとってはブレーンを失う大きな痛手となったが、幹部たちの仲違いがその危機に拍車をかけた。
「ど、どうしたんだよ、二人とも!? 何やって……」
ベール宮殿において、アミル、メフルの両名が口論の果てに、殴り合いのケンカを起こしたのだ。
慌ててランニャが仲裁に入り、その場は収まったものの――。
「……もう沢山だ! 俺は勝手にやるぞ」
顔に青あざを付けられたアミルは、メフルたちに向かって指を下に向けて見せる。
これは南海における挑発のサインであり、当然、プライドの高いメフルは怒り出す。
「勝手にするがいい! もう金輪際、お前なぞに頼るものか!」
「ちょ、ちょっと! そりゃまずいって、二人とも!」
ランニャは反目する二人をなだめようと、懸命に説得する。
「フォコくんも言ってたじゃないか、ロクシルムの商業網とベールの政治力を合わせることで、レヴィアに対抗できる力が生まれるって!
それが今バラバラになっちゃったら、勝てる戦いも勝てなくなっちゃうよ!?」
「レヴィアだと? 知ったことか! もう気息奄々、何か月もすれば自滅するような相手に、何を恐れることがある!?
それよりも今後のことを考えておかねばな――これ以上こいつらに寄生されていては、我がベール王国が食い潰されるのは明らかだ。今ここで、きっちりとどちらが南海の覇者であるか分からせておかねばなるまい」
「それはこっちの台詞だ! 何が南海の覇者だ、まるでレヴィアのバカどもの言ってること、そのまんまじゃねーか! どっちが侵略者だか、分かったもんじゃねーな!?
お前らみたいな権力の亡者、俺たちが成敗してやる! その首洗って待っていやがれ!」
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