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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第4部

    火紅狐・賭人記 2

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    フォコの話、176話目。
    賢者ギャンブラー。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
     フォコは「閣下」によって拉致されたのち、ここ、アリバラク王国へ売り飛ばされた。
     この国の主要産業は博打と、人身売買である。どこからかさらってきた人間に、到底人ひとりの値段と思えないほどの安値を付けて、下劣な貴族や商人に売り払っているのだ。
     フォコも「閣下」から王国に身柄を売り渡され、この「宮殿」でしばらく蹂躙され、人の心を失った後に、どこかへ転売されることになっていた。
    (……どうやって脱出すれば……)
     そんな状態になってしまえば、到底ケネスを倒すどころか、南海戦争に参加することもできない。
     乱雑に奴隷たちが詰められた、牢獄と言ってもいいような部屋の隅で、フォコは脱出の機会をうかがっていた。
     が、牢は非常に堅固なものであり、鍵も容易に開きそうにはない。ここから出られるのは「清掃」と称する、人間性と反抗心を失わせる洗脳作業の時だけであり、漏れなく手錠と足枷で動きを拘束されてしまう。
     そんな洗脳を受けた者ばかりなので、一致団結して反乱を起こそうにも、誰ひとり立ち上がろうとしない。
    (むー……。八方ふさがりっちゅうやつやな。
     まあ、こんな目には造船所ん時とか放浪してた時に嫌っちゅうほど遭っとるし、そこまで苦痛っちゅうほどでもないし、まだ正気は保ってられるけども。
     とは言えのんびりもしてられへんしな。僕がロクシルム―ベールから抜けたら十中八九、アミルさんとかメフルさんは仲違いしはるやろし)
     フォコの懸念通り、この時既に、ロクシルム―ベール内では反目騒ぎが起こっている。
    (アミルさん、割と自分勝手っちゅうか、我の強い性質やからな。口うるさいベール兄妹と一緒やと、爆発してしまうかも分からんし。
     もしそんなんなった時、話なんか聞かせられへんやろし、……一日でも早く、ここを脱出せなな)

     と、思案に明け暮れていたところで、隣に寝転んでいた者がむく、と起き上がった。
    「うるさいね……、何をブツブツ言ってるかね」
    「ん、……ああ、すんまへん。……あれ?」
     フォコはそこでようやく、隣で寝ていた赤毛の長耳が女性であることに気付いた。
    「珍しいなぁ……。こっちに女の人が入れられるとか」
    「ああ。ま、あのバカ殿がめんどくさかったんだよね。だもんで、バカの振りして『こいつにはお近付きになりたくない』って思わせて、こっちに入れてもらったんだよね」
    「はは……」
    「よっこら、……しょい、っと」
     と、起き上がった彼女の仕草に、フォコは違和感を覚える。
    「……あんた、何歳です?」
    「は?」
    「何て言うか、……じーさんばーさんみたいですで」
    「あははは、ばーさんと来たか。ま、外れちゃいないね。そうとも私ゃ、ばーさまさね」
    「はい?」
    「これでも大賢者、モール・リッチとは私のコトだね。……ま、ワケあってこんなところにいるけれっども」
    「……あ、そうでっか」
     フォコも彼女の言動に、胡散臭さと妄想じみたものを感じた。それを悟ったらしく、モールはフンと鼻を鳴らす。
    「信じてないね? ……じゃー証拠、見せてやろうかね」
     モールは牢の番人が居眠りしているのを確認しつつ、そっと出口へと近付く。
    「ほれ、君もこっち来なってね」
    「はあ……」
     仕方なく、フォコはモールの横に座る。
    「この通り、今は鍵がかかってるけども」
    「ええ、かかってますね」
     一応確認してみたが、やはり扉には鍵がかかっている。
    「んで、……ほい」
     モールは指先で、ちょんと鍵穴をつつく。すると、鍵穴からカチリ、と金属音が響いた。
    「……へ」
    「ほれ、開けてみ」
    「……ほんまかいな」
     先程までしっかりと鍵がかかっていたはずの扉は、すんなりと開いてしまった。
    「だけどもねー」
     と、モールはまた鍵に指先を当て、閉めてしまう。
    「私一人が出たところで、魔術以外に取柄は無し。すぐ捕まっちゃうのがオチなんだよね。取り返さなきゃいけないモノもあるし、警戒されるワケにゃ行かない」
    「取り返さなきゃいけないもの? なんです、それ?」
    「君に言わなくちゃいけない?」
    「……まあ、言う理由はないですけども。でもそれ言うてしもたら、言わない理由もないですやろ?」
    「……ん? 君、変なしゃべり方するね」
    「あんたに言われたないですよ」
    「うっさい。……んー?」
     モールはしげしげとフォコの顔を見つめながら、こう尋ねてきた。
    「君、私と会ったことないね? なーんか見覚えっつーか聞き覚えがあるんだけど」
    「……いえ?」
     記憶を掘り返してみるが、こんな剣呑な長耳女に遭った覚えはない。
    「そっか。……ま、なんだ。君の言う通りだね。言えない理由も特にない。
     実はね、ココで博打やって大負けしちゃってね、私の身柄と大事な杖を担保にしちゃったんだよね。んで、その杖を探してるのさ」
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