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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第4部

    火紅狐・賭人記 5

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    フォコの話、179話目。
    カブ(9)。

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    5.
     フォコとモール、イサンの三名は屋敷の広間中央に、賭けの卓を作っていた。
     ちなみに、屋敷の騒ぎにようやく気付いた兵士たちが現在、屋敷の周辺に続々と集まっている。フォコが賭けに負けた瞬間、全員を一網打尽にする手配を整えているのだ。
     しかしそれは同時に、イサンが負けた瞬間に兵士と奴隷、両者の立場が入れ替わることを意味している。
     何故ならイサンが用意したチップも人間――彼が召し抱える兵士たちと、自分自身だからだ。
    「よし、卓はできたね。勿論、イカサマも仕掛けてない。アンタも確認済みだよね?」
     モールがイサンに同意を求め、イサンは素直にうなずく。
    「ああ、俺自身も用意したからな。当然、お前らも仕掛けてない、……よな?」
    「ええ」
     フォコとイサンは同時に卓へ着き、その上に乗ったカードを互いに確認し合う。
    「使うカードは『56枚式』、枚数にも内容にも違いは無い。六属性1~9の9枚ずつに、『天』と『冥』」
    「準備はよろしいですな。で、勝負は何にしましょ」
    「俺の国で最も打たれてる博打にしよう。『ティーサ』ってやつだ」
     そう提案され、フォコは一瞬黙り込んだ。
    (えー、と。昔、おやっさんに教えてもろたよな。
     確か、2枚ずつのカードを4組作って、そん中からカードの数を合計したのんが、より9に近いのんを選んだ方が勝ち、っちゅうルールやったな)
     大まかなルールを頭の中で確認し、フォコはうなずく。
    「分かりました。……確認ですけども、『天』と『冥』はどう扱います?」
    「0扱いだ。0と9の組み合わせなら、そのまま9になる。
     あと、倍付けルールだ。2枚のカード、この属性が対になってたら、二倍付け。属性が被ったら、三倍付け。そして、『天』と『冥』が被ったら四倍付け。数は0だが、これは張った奴の勝ちになる。
     それでいいな?」
    「ええ。……それじゃモールさん、ディーラー役をお願いします」
    「いいとも」
     モールはそう答えたが、イサンは納得しない。
    「待て。お前側の奴、しかも魔術を使うような奴にディーラーを任せられるか」
    「……ほな、どうします?」
    「変則ルールだ。俺とお前とで、伏せた状態で4枚ずつ出す」
    「で、カード2枚を4組作って、その中から選ぶ、と」
    「そうだ。俺とお前で56枚の中から、4枚ずつカードを引いて出す。カードの追加は無しだ。2枚の状態で、勝負を付ける」
    「分かりました。……勝負は自分の持っとるチップが無くなるまで。それで、ええですな」
    「おう」
     フォコは54枚、イサンは189枚――自分が擁する人間と同じ数のチップを卓の手前に置き、カードをそれぞれ手に取った。

     フォコは自分の手にしたカードを一瞥し、戦略を立てる。
    (適当に、……は厳禁やな。人の人生、54人分かかっとるし。向こうは3倍以上の余裕があるやろから、初手から攻めるのが吉やろな)
     フォコが引いたのは、「火の3」「火の4」「水の2」「雷の9」。
    (……ほな、『2』に賭けよか。
     これやったら1~9の平均、5より下になる組み合わせ――つまり、負けやすくなる組み合わせは、8、9、0、1、2の5種。
     僕が2と9を1枚持っとるから、残りの枚数は24枚、全体の半分以下。相手のカードとの組み合わせで5未満になる確率は、一番低くなる)
     フォコはざっと検討を付け、カードを伏せて卓に置いた。ほぼ同時に、イサンもカードを並べる。
    「俺は端のこれに、チップ5枚だ」
    「ほな、僕はこっちに3枚」
     フォコは自分が「2」を置いた組に、チップを載せる。
    「さあ、どうだ……っ!」
     フォコとイサンは同時に、自分が賭けたカードをめくって見せた。
    「……う」「へへ、まずは1勝か」
     イサンが並べていたカードは、どれも「9」だった。

     フォコの立てた戦略を押し潰すように、イサンは連勝を重ねた。
    「どうした、さっきの威勢は? ……ひひひ」
     6連敗を喫し、フォコの手持ちチップは11枚になってしまった。
    「君、……やばいって」
     見守っていたモールの顔色も悪い。
    「……」
     しかし、フォコは残ったわずかなチップにも、イサンの得意げな、下卑た笑顔にも怯まない。
    「どうする? 今なら俺の機嫌もすこぶるいい。這いつくばって俺の足をなめれば、お前だけは助けてやらなくもないがな」
    「……」
    「声も出ねえか? ひひっ、そうだろうな。ここまでボコボコにされたらなぁ……!」
    「……」
    「ほれ、そろそろ覚悟決めて、よ?」
     そう言ってイサンは、汚いサンダルを履いた右足をフォコに向かって挙げた。
     だが、フォコは――。
    「……フン」
     そのサンダルに向かってペッと、唾を吐いてみせた。
    「……なっ、……てめえッ!」
     イサンはフォコの行動に激怒し、卓を横に蹴飛ばして、フォコへつかみかかる。しかし、フォコは全く動じず、こう返した。
    「卓を倒すっちゅうことは、負けを認めるんですな?」
    「何……?」
    「この先もう僕に勝たれへんと思たから、卓を倒して勝負を放棄した。ウチの家訓では、それは負け、降伏のサインなんですけどもな」
    「……?」
     この台詞にモールが反応したが、そのまま何も言わず、蹴倒された卓を立て直す。
    「ふざけんな、どう考えても俺の勝ち……」「せやったら」
     フォコは襟をつかまれたまま、さらに罵倒した。
    「最後まで卓に着いたらどないです? 腕っ節やなく、運の太さで僕を負かしてみたらよろしいやないですか」
    「……覚えていろよ。後で目一杯、そのなめた態度を執ったこと、後悔させてやるからな」
    「後悔すんのはどっちでしょうな……?」
     フォコは立て直された卓に着き直し、ダメ押しするようにまた、一言加えた。
    「今僕を殴り殺しとった方が、良かったかも知れませんで」
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