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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第4部

    火紅狐・猫金記 6

     ←火紅狐・猫金記 5 →キャラ紹介;セノク、アイシャ
    フォコの話、192話目。
    トロイの木馬。

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    6.
     フォコとイサンからの説明を受け、シャフルの顔が怒りで真っ赤に染まっていく。
    「あの……大バカ者め……!」
     そして同時に、ボタボタと涙を流し始めた。
    「何と言うことか……! あろうことか、同族同士で殺し合いなど!
     おお、マフス! 辛い思いをさせて済まなかった……! 私がセノクの言うことに惑わされなければ、メフルを死なせることなど無かったはずなのに!」
    「父上……」
     滂沱(ぼうだ)の涙を流すシャフルに、マフスも瞳を潤ませる。
     と、悲しみに暮れる父娘に、フォコは冷静な意見を述べた。
    「ともかく、このままセノク卿を放っておけば、事態は確実に、最悪の方向へ向かうでしょう。至急、打開かつ勝利する策を仕掛けなければなりません」
    「まだ、戦いを続けると言うのか、ホコウくん」
     シャフルに、涙ながらにそう尋ねられるが、フォコは強く推す。
    「ええ。例え我々の側が戦いをやめたとしても、セノク卿とレヴィア王国はやめないでしょう。それではメフラードさんの死が無駄になる。いいえ、それだけではない。
     今まで僕や、僕たちのために、危険を冒して働いてくれたロクシルムの皆さん、ベール軍の皆さんに、何の申し訳が立つでしょう?
     何より、今行動すれば――確約しますが――戦争を終わらせられます。これ以上の悲劇を生む前に、行動すべきだと僕は信じています。
     ご納得、ご理解、そう言う次元ではなく、陛下ご自身が心より良しとされるまで、僕は全力、全身全霊を以って、何度でも説明させていただく所存です」
     フォコの言葉に、シャフルは黙り込んだ。
    「……そうか」
     しばらく間を置いて、シャフルはぽつりとそう答えた。
    「そうであるな。これ以上の被害を増やし、延々と戦いを続けることは、私も御免こうむりたい。
     良かろう、君の言に従おう。私は、何をすれば良い?」
     フォコは深く頭を下げ、こう要請した。
    「ありがとうございます、国王陛下。
     ではまず、マフシード殿下の身柄を、セノク卿に知られないような、安全な場所へ。
     そして、兵士の中から精鋭4~50名を選抜し、秘密裏に集めてください」



     一方、モールとアミルの二人は、セノクの私有船を突き止め、内部へ忍び込んでいた。
    「ははあ……、金に換えたか。船荷にゃちょっと重たいけども、確実に価値のあるモノだからね。向こうでも現金化できるだろうねぇ」
    「で、こいつはどうするんだ? 偽物とすり替えるか?」
    「んなコトして何の意味があるね? キミはつくづくバカだね」
    「……チッ」
     と、悪態をつくアミルをよそに、モールはある案を閃いた。
    「……あー」
    「なんだよ」
    「訂正してやるね。そのアイデア、採用」
    「は?」
     モールは金塊を手に取り、ひょい、と自分の胸元に入れた。
    「お、おい」
    「何だよ、オンナのヒミツ見るのは初めて?」
    「ちげーよ、結婚してるっつの。何いきなり盗んでんだってことだよ」
    「いいじゃん。どうせ後2、3トンくらい盗むワケだし」
    「は……!?」
    「……んー」
     モールは胸元から金塊を取り出し、垢じみたローブのポケットに入れ直した。
    「ダメかぁ。谷間に隠せるのなんて、『この体』でも金貨一袋くらいが限度か。けっこーいい体つきしてた子だし、行けるかなーとか思ったんだけれっどもねぇ」
    「この体?」
     アミルの問いを、モールはしれっとかわす。
    「いやほらね、恐らくだけども、火紅くらいのアタマなら、私と同じコトを考えるはずさ。
     んで、私ならこう考える。1トンの金塊の代わりに、1トン分の兵士をここに潜めさせればどうかな、ってね」
    「……そうか! それなら、レヴィア王国に着いたところで」
    「奇襲できる、ってワケさ」



     フォコとモール、両者の企みは実を結んだ。
     セノクの船に積まれていた金塊5トンのうち3トンを、兵士30名およびフォコ、そしてモールと入れ替えたのだ。
     船倉には細工が施されており、少し調べたくらいでは、奥に兵士が潜んでいるなどと分からない。金塊にしても、船倉手前のものは本物の金塊のままだったため、奥に積まれた分がただの粘土に金を薄く塗りつけたものであるなど、気付くはずもない。
     セノクはまんまとだまされ、金塊2トンと粘土、そして3トン分の兵士をレヴィア王国本島まで運んでしまったのだ。

     レヴィア王国に到着し、1時間後。
    「……そろそろええやろ。みんな、出陣やッ!」
     モールに船倉を爆破してもらい、潜んでいた兵士たちを船の外へと誘導する。
    「これが最後の戦いや! ここで戦い抜き、女王とその一族を一網打尽にするんや!」
    「おうッ!」
     ベール軍から集められた精鋭30名の兵士たちは、勢いよくレヴィア王国の城下町を駆け抜ける。
     まさかの襲撃に、城下町にいたレヴィア軍の兵士は唖然とするしかない。
    「げっ、……げいっ、迎撃じゃ! 一人も城へ入れるでない!」
     ようやく事態を把握したアイシャは、全軍に迎撃の指示を出す。だが、精鋭30名に加え、全員が爆薬で武装している。
     奇襲と強力な突破力に、防御を整えきれないレヴィア軍は瓦解していく。あっさりと城門を破られ、30名とフォコたち全員が侵入した。
    「……ど、どう言うことじゃ、閣下!? これは何のつもりじゃ!?」
    「わ、私は知らない! 本当だ!」
     狼狽しつつも、セノクは提げていた曲刀を抜き、アイシャに背を向ける。
    「閣下?」
    「あ、あなたは……、私がお守りする! 信じてくれ!」
    「……あ、ああ」
     二人で部屋を抜け、逃げ道を探ろうとする。しかし――。
    「……く」「あ、ああああ……」
     火が木造家屋全体に回るほどの速さで、既に城内は占拠されてしまった。その上、混乱した島内を見計らうように、続々と南海各国の戦艦が港へと押し寄せてくる。
     セノクたちもあっと言う間に取り囲まれ、進退窮まった。
    「事前にロクシルム……、もとい、ロックス鉱業などへ伝達し、協力を要請していました。その皆さんが島内に上陸している現在、既にあなた方の逃げ場はないと言っていいでしょう。
     投降をお願いします、セノク・キアン・ベール閣下、そしてアイシャ・レヴィア女王陛下」
     陣頭に立ち、そう述べたフォコの姿を見て、セノクは深いため息をついた。
    「……海の果てへ追いやるだけでは不足だったか。やはり君は、殺しておくべきだった」
    「でしょうな。よく、そう言われます」



     こうして双月暦311年、温かい南海にようやく冬が訪れようかと言う頃。
     南海戦争が、そしてフォコの属していた「砂嵐」とレヴィア王国との因縁が、終息を迎えた。

    火紅狐・猫金記 終

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    パイライト(Pylite)……黄鉄鉱。
    鉄と硫黄で組成される、見た目は黄金にそっくりな鉱物。
    そのため、昔は黄金と間違えられることも多く、また、詐欺に使われることも多かった。
    別名「愚者の金」、または「猫の金」と呼ばれる。

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