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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第4部

    火紅狐・離海記 1

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    フォコの話、193話目。
    裏切りへの制裁。

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    1.
     南海戦争の終結により、様々な賞罰、損益、利権が確定した。

     まず、レヴィア王国の国庫や領地、権利はすべてベール王国のものとなった。また、レヴィアが抱えていた、戦時国債を含む500億近い負債のほとんどは反故にされた。
     これによりゴールドマン商会は南海に関する利権と莫大な額の金を失い、フォコは結果的に、ケネスに対し大きな一撃を与えることができた。
     一方、ベール王国に協力していた各国や商会は多大な恩賞を受け、その反対に、ベール側へ仇成した者には――。



    「……で……ええ……」
    「……そうか……なら上々……」
     フォコとイサンが話しているところに、アミルが出くわした。
    「あ」
    「よお」
     アミルは気楽に声をかけるが、フォコたちは若干表情を硬くする。
    「……ど、どうした?」
    「あー……、いや」
     フォコはにこやかに笑いかけ、アミルにこう告げた。
    「ちょっと、一緒に来てもろてええ?」
    「なんだ?」
    「いや、……まあ、僕が潰したアリバラク王国やけども、今後の活用方法をイサンと話しとったんよ。
     とりあえず、これから現地へ行くし、詳しい話はそこでしよか」
    「おう」

     元・アリバラク王国に到着したところで、フォコは本題を切り出す。
    「僕が乗っ取るまで、ここは人身売買と賭博の市場があったんやけども、はっきり言うてそんなえげつない商売、僕の仕切っとる中ではしてもらいたくないねん。
     ほんでも、ここの施設を全面壊して新しく……、っちゅうのんも、もったいない。工事費もかかるし、『人を逃がさない』っちゅうシステムの面で言えば、かなり優秀な造りやしな」
    「へへへ……」
     照れるイサンをよそに、フォコは話を続ける。
    「ほんで、アミルにもその内部を視察してもらおか思てな」
    「そ、そっか」
     フォコの話振りに、アミルは安心する。
    (俺、散々自分勝手なことしたからな……。ホコウに呆れられたと思ってたけど、こうして商売の話を振るってことは、まだ俺にチャンスをくれるつもりなんだろうな)
     話をするうちに、一行は城の地下、牢獄が並ぶ区画へと入る。
    「この壁、何気に最高級の石材使てるんよ。ちょっと来てみ」
     フォコは鍵の開いた牢に入り、アミルを手招きする。
    「百年経とうが、苔一つ生えへんくらいの硬さなんやって」
    「へえ……?」
     アミルもフォコに続き、牢へ入る。
     と、アミルが石の壁に気を取られた隙に、フォコはそっと牢から出て、イサンに目配せする。
    「了解」
     イサンが素早く、アミルの残る牢に鍵をかけた。

    「……へ?」
     唖然とするアミルに、フォコは説明を続ける。
    「ここの鉄格子も一級品やねんな、イサン」
    「おう。力自慢の熊獣人5、6人がかりで蹴りつけても曲がらねえ。地中深くに埋め込んであるし、持ち上げてひっぺがすなんてのもできねえ。
     後、ヤスリ使ってもな、ヤスリの方が根負けしてつるっつるになるくらい、『削れ』にも強えーからな」
    「ちゅうわけや。あ、そうそう」
     フォコは鉄格子越しに、アミルに言い渡した。
    「イサンを所長にして、ここは南海全域向けの刑務所にするねん。主に凶悪犯用のな。
     例えば人の話をガン無視し、人殺しを正当化して、自分の欲しか追わへんような、どうしようもない奴とかな」
    「……待てよ」
     アミルは鉄格子をつかみ、フォコに怒鳴る。
    「俺を牢にブチ込むってのか!? 散々、お前に尽くしてきたってのに!」「あ?」
     アミルの言葉を受け、フォコは傍らのイサンに尋ねる。
    「こいつ、僕に何て言うてたっけ」
    「あー、と。確か『俺が上なんだ! お前なんざ、知ったこっちゃねえ!』とか何とか。尽くす奴のセリフじゃねえな」
    「せやな」
     これを聞いて、アミルの顔が蒼ざめる。
    「いや、俺が悪かったって! 反省してるんだ、本当!」
    「反省? 反省なぁ……? イサン、こいつ昔、何しとったか知っとるか?」
    「おう。少し前、海賊として指名手配されてたよな」
    「その時のこともきっちり反省したじゃねえか! な、な、この通りだ! もう一回、俺を信じて……!」「やかましわッ!」
     ガン、とフォコが鉄格子を蹴りつけ、アミルの弁明を遮る。
    「一回信じてみたらこの有様や! お前みたいな奴に、二回もチャンスなんか無いッ! 甘ったれるんも大概にせえッ!」
    「……じゃあ、いいのかよ」
     アミルは、今度は泣き落としに出ようとした。
    「俺がいなくなったら、マナや子供たち、部下がどんなに……」
    「気にしてへんよ。
     お前の部下は全員、『もう付いてけへん』言うて、僕のところへ駆け込んできた。ロックスさんのところへ戻れるように便宜図っといたし、お前のことなんて忘れてるやろな。
     あとお前、マナさんとロックスさんの前で、アホなこと怒鳴ったやろ? それでマナさん、愛想尽かしてな。マナさん、『あんなバカ、もう知らない。こっちから縁切ってやる』って言うてたで」
    「……ん……な……」
     それを聞いたアミルは、言葉を失う。
     フォコとイサンは、鉄格子にへばりつくようにずるずるとへたり込むアミルに背を向け、これだけ言い残して地下牢から去って行った。
    「もうお前に期待するもんは、誰もおらん。勝手にせえ」

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    2011年4月18日22時現在、ブログランキング「にほんブログ村」ファンタジー小説部門にて、当ブログが第3位にランクインしていることを確認しました!

    ついにベスト3来ちゃいましたね。
    いつかは天下、獲りたいなぁ。
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