「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第4部
火紅狐・離海記 5
フォコの話、197話目。
悪魔と賢者の邂逅。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
と――マフスが去ったところで、モールが何かに気付く。
「……誰だ、お前」
その声に、フォコも振り返る。だが、誰もいるようには見えない。
いや、確かに、そこに人はいた。モール以外の誰も、気付かなかっただけだったのだ。
「やるな。俺の気配を見抜くとは」
声が返ってきたところで、フォコもようやく、その人物の存在を認識できた。
「た、……タイカさん!?」
「大火? けったいな名前だね。……で、火紅。コイツを知ってるね?」
「え、ええ。北方で、一緒に仕事を」
モールは三角帽子のつばを上げ、大火と対峙する。
「……相当な魔力と腕の持ち主だね。見ただけで分かるね」
「お前の方も、な。……今まで見た中で、五指に入るオーラの持ち主だ」
双方そう評するものの、フォコには何が何だか分からない。とりあえず、フォコは大火に話を聞くことにした。
「あのー」
「うん?」「どうしたね?」
「タイカさんは、どうしてここに?」
「ああ」
大火は二人に歩み寄りながら、訪れた理由を説明する。
「お前が去った直後、ジーン王国へある男が訪ねてきた。央南の元軍人、焔と言う男だ。
そいつは央南全土を支配していた中央政府の名代(みょうだい)、清家を打倒するため反乱軍を結成し、王国に兵力と資金を貸してもらうよう要請したが、まだ政情の安定しきっていない王国側は、それを拒否した。
それでも何度も、しつこく要請してきたため、やむなくランドとイール、レブ、そして俺の4名が央南へ渡り、戦術・戦略の指南と、実戦での手助けをすることとなった。
結果は上々――清王朝は崩壊。焔軍が首都・白京を占領し、今後は焔軍による統治がされよう、と言うところまで来ている。
だが、問題が残っている。その解決に、お前が必要だ」
「僕が?」
大火はモールの姿をチラ、と一瞥し、話を続ける。
「清家に資金と軍備を提供していたサザリー・エールと言う兎獣人が、故郷かつ本拠地である西方へ逃げた。清家の人間と共に、な」
「って言うと、……つまり?」
「清王朝が倒れたと中央政府が認める前に、清家が逃げてしまったからな。
ランドによれば、『世界平定憲法上では、まだ央南は清家が支配してることになる。彼らが正式に、自分たちの王位を廃すると宣言してもらわないといけない』とのことだ」
「あー……、そう言うもんなんですか」
「清家は央北の中央政府より天帝の名代を任ぜられ、その権力を以て君臨してきた家柄だそうだ。
天帝からの勅令で廃位させられるか、自ら廃位しなければ、いつまでも央南の支配権は清家にあるまま、と言うことだ」
「……めんどくさい話ですねぇ。そう言えば、央中ってどうなんでしょうね、その辺」
何となく尋ねてみたが、大火は首を振る。
「知らんな」
「有って無きが如し、だね」
代わりに、モールが答えてくれた。
「確か中央政府、および央北天帝教としての名代はいたはずだけど、央中でのメジャーどころは央中天帝教と、ゴールドマン・ネール両家だろ?
経済にも宗教にも関与できないってんなら、マトモに政治力を発揮できるワケがないね。実質、いてもいなくてもって位置にあるね」
「へぇ。……あ、と。話、戻しますけど。
ほんならランドさんたちは、西方へその、サザリーって奴を追いかけに行っとるっちゅうことですか?」
「そうだ。手が空いていれば、お前も西方へ来てほしい。相手は商人だからな、同じ商人のお前がいれば何かと助かる」
「……ちょっと待ってください」
フォコはモールに向き直り、自分の頭を整理しようと口を開く。
「えーと、まあ、……西方には行こうと思てましたし、それは渡りに船ですわ。まあ、しかし、もうちょい人手がほしいなーとか思てましたけど、……それも十分ですな」
「そのランドだかって奴らも一緒なら、私と火紅とこいつとで、……6人か」
「それに、現地の方にも知り合いがいるはずですし、それでどうにかなるかも」
「なら決まりだね。行こう」
「話が早くて助かる」
さっくりと話がまとまり、大火はこう告げた。
「身辺整理の時間がいるだろう。
3日後の正午、ここで待っているぞ」
「分かりました」
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悪魔と賢者の邂逅。
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と――マフスが去ったところで、モールが何かに気付く。
「……誰だ、お前」
その声に、フォコも振り返る。だが、誰もいるようには見えない。
いや、確かに、そこに人はいた。モール以外の誰も、気付かなかっただけだったのだ。
「やるな。俺の気配を見抜くとは」
声が返ってきたところで、フォコもようやく、その人物の存在を認識できた。
「た、……タイカさん!?」
「大火? けったいな名前だね。……で、火紅。コイツを知ってるね?」
「え、ええ。北方で、一緒に仕事を」
モールは三角帽子のつばを上げ、大火と対峙する。
「……相当な魔力と腕の持ち主だね。見ただけで分かるね」
「お前の方も、な。……今まで見た中で、五指に入るオーラの持ち主だ」
双方そう評するものの、フォコには何が何だか分からない。とりあえず、フォコは大火に話を聞くことにした。
「あのー」
「うん?」「どうしたね?」
「タイカさんは、どうしてここに?」
「ああ」
大火は二人に歩み寄りながら、訪れた理由を説明する。
「お前が去った直後、ジーン王国へある男が訪ねてきた。央南の元軍人、焔と言う男だ。
そいつは央南全土を支配していた中央政府の名代(みょうだい)、清家を打倒するため反乱軍を結成し、王国に兵力と資金を貸してもらうよう要請したが、まだ政情の安定しきっていない王国側は、それを拒否した。
それでも何度も、しつこく要請してきたため、やむなくランドとイール、レブ、そして俺の4名が央南へ渡り、戦術・戦略の指南と、実戦での手助けをすることとなった。
結果は上々――清王朝は崩壊。焔軍が首都・白京を占領し、今後は焔軍による統治がされよう、と言うところまで来ている。
だが、問題が残っている。その解決に、お前が必要だ」
「僕が?」
大火はモールの姿をチラ、と一瞥し、話を続ける。
「清家に資金と軍備を提供していたサザリー・エールと言う兎獣人が、故郷かつ本拠地である西方へ逃げた。清家の人間と共に、な」
「って言うと、……つまり?」
「清王朝が倒れたと中央政府が認める前に、清家が逃げてしまったからな。
ランドによれば、『世界平定憲法上では、まだ央南は清家が支配してることになる。彼らが正式に、自分たちの王位を廃すると宣言してもらわないといけない』とのことだ」
「あー……、そう言うもんなんですか」
「清家は央北の中央政府より天帝の名代を任ぜられ、その権力を以て君臨してきた家柄だそうだ。
天帝からの勅令で廃位させられるか、自ら廃位しなければ、いつまでも央南の支配権は清家にあるまま、と言うことだ」
「……めんどくさい話ですねぇ。そう言えば、央中ってどうなんでしょうね、その辺」
何となく尋ねてみたが、大火は首を振る。
「知らんな」
「有って無きが如し、だね」
代わりに、モールが答えてくれた。
「確か中央政府、および央北天帝教としての名代はいたはずだけど、央中でのメジャーどころは央中天帝教と、ゴールドマン・ネール両家だろ?
経済にも宗教にも関与できないってんなら、マトモに政治力を発揮できるワケがないね。実質、いてもいなくてもって位置にあるね」
「へぇ。……あ、と。話、戻しますけど。
ほんならランドさんたちは、西方へその、サザリーって奴を追いかけに行っとるっちゅうことですか?」
「そうだ。手が空いていれば、お前も西方へ来てほしい。相手は商人だからな、同じ商人のお前がいれば何かと助かる」
「……ちょっと待ってください」
フォコはモールに向き直り、自分の頭を整理しようと口を開く。
「えーと、まあ、……西方には行こうと思てましたし、それは渡りに船ですわ。まあ、しかし、もうちょい人手がほしいなーとか思てましたけど、……それも十分ですな」
「そのランドだかって奴らも一緒なら、私と火紅とこいつとで、……6人か」
「それに、現地の方にも知り合いがいるはずですし、それでどうにかなるかも」
「なら決まりだね。行こう」
「話が早くて助かる」
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「身辺整理の時間がいるだろう。
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