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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第4部

    火紅狐・離海記 6

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    フォコの話、198話目。
    因縁の海に別れを告げて。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    6.
     フォコとモールはベール宮殿へ戻り、シャフルたち王族数名とロクミンの幹部たちを集め、皆に西方へ向かう旨を伝えた。
    「ふむ、そうか……。貴君の大義を果たすためだ、止めはせぬ。我々でできることがあれば、何でも言ってくれ」
     シャフルは快く、フォコの旅立ちを応援してくれた。
    「西方へ、と言うならば、私も付いて行ってよろしいでしょうか?」
     一方、ファンは同行を申し出た。
    「しばらくは南海での商売も、順調に運びそうですし。一度故郷へ戻り、成果を宣伝すると共に、新しい商売のタネを探しておきたいと思っておりまして」
    「なるほど。僕も、向こうの事情に詳しい人がいれば、心強いです。一緒に行きましょう、ロックスさん」
    「ありがとうございます、ニコル卿」
     と、ベール側から手が挙がる。
    「ホコウさん!」
    「なんでしょ、マフスさん?」
    「わたしも、一緒に行きます!」
     これは予想しておらず、フォコは面食らう。
    「え、……なんでです?」
    「えっと、……その、……ずっと、そう、あなたには助けられっぱなしでしたし、恩を返したいのです! どうか、お願いします!」
     事前にモールから「来たいって言い出したら大事にしてやりな」と言われているし、マフスから深々と頭を下げられては、フォコもうなずくしかない。
    「……あー、分かりました。では、マフスさんも。
     それでは僕とモールさん、ロックスさん、そしてマフスさんの4名で、西方へ……」「ちょっと待ったーっ!」
     話をまとめかけたところで、バン、と議場の卓を叩く者がいる。ランニャである。
    「なんであたしを数に入れないのさ!?」
    「え、いや、……えー」
    「あたしがキライだっての?」
    「いや、そんなことあらへんよ」
    「……もしかしてアレか? 『あの人』に会えるかも知れないから、あたしを遠ざけたいとか思ってるんじゃないだろうな?」
    「ちゃうて」
     フォコは否定してみせたが、考えなかったわけではない。
    「……あー、もうええわ。付いてきたい言うんやったら付いてくればええわ、もう」
    「よし」
     ランニャはニッコリ笑い、マフスの背後に寄って、彼女の肩をポンポン叩く。
    「向こうでもよろしくな、マフス」
    「え、ええ」

     会議を斜に構えて眺めていたモールは、ランニャの言動にこっそり、「……うぜぇ」とつぶやいていた。



     そして大火との約束の日。
    「……俺を入れて6名か。面倒だな」
     ずらりと並んだフォコたちに、大火は苦い顔をした。それを見て、モールが提案する。
    「それじゃ、私が手伝おうか? 術を教えてくれれば……」
    「断る。俺の秘中の秘だ、簡単には教えられん」
    「……それもそうか。分かった、任しとくね」
     二人の様子を見ていたマフスが、こそっとフォコ、ランニャにつぶやく。
    「モールさん、あのタイカと言う方に、興味深々なご様子ですね」
    「みたいだね。カッコいいし」
    「……そんな感じ、せえへんけどなぁ」
     と、大火が刀を抜き、腕に縄をかける。
    「そろそろ行くぞ。縄をつかめ」
    「あ、はい」



     南海での2年半は、フォコにとって大きな経験となった。
     己の限界、人の明暗、そして組織の有り様を学んだフォコは、また一歩、大商人としての成長を遂げた。
     そして同時に、かつての仲間を失っていく苦しみ、悲しみも味わった。

     そしてまた――彼の生涯に渡る、一つの苦しみが、彼の向かう先へと待っている。

    火紅狐・離海記 終

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    第4部終了しました。
    また少し間を置いたり、もしかしたら短編を掲載したりしてから、第5部に移る予定。

    クルマのドット絵も描きたいなーと思ってるんですが、問題が発生。
    作成の資料にしているグランツーリスモ5が、PS3の故障により起動できないため、資料が集まりません(´・ω・)
    こちらはしばらくお休みすることになります。

    第5部の開始は5月1日にしようかと思っています。
    よろしくです。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    四部読了、ありがとうございます。

    ケネスがもし、この時点で何の制約もされていなければ、
    恐らくはそんな局面も有り得たと思います。
    しかしこの時、彼は軽くピンチでした。
    詳しくは第五部、第六部にて。

    セノクはケネスを軽く見ていたので(散々な目に遭わされたにもかかわらず)、
    単に呼びつけて暗殺しようと考えていました。
    あわよくばそのまま、彼の資産も奪おうとか何とかも考えていたようですが、
    現実はそこまで甘くなかった、ということで。

    NoTitle 

    第四部読了しました。

    悪辣なケネスのことだから、ナラン島を秘密工作員と特殊部隊で奇襲して、セノクとレヴィアを奪い、傀儡政権を樹立するくらいのことはしてくるような気がします。

    セノクさんには回想記を書くほうが似合っていると思いますが……ケネスを打倒するためにこの人が練っていた秘策ってなんだったんだろう。レヴィア軍とあの程度の軍資金ではおぼつかないだろうし……。いいとこ三すくみ?
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