「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第5部
火紅狐・訪南記 1
フォコの話、199話目。
サムライの訪問。
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1.
フォコたちが政治と経済、戦略と謀略、エゴと裏切りに満ちた毎日を送っていたその頃、ランドたちもまた、戦いの日々を過ごしていた。
すべてのきっかけは、双月歴309年の中頃、北方ジーン王国では短い夏が満喫されている時だった。
「支援要請?」
「ああ、……何度か断っているのだが、もう四度目になる」
ジーン王国へ、軍による支援をしつこく要請してくる者が現れた。
「何故僕にその話を?」
ランドに尋ねられた若き国王クラウスは、肩をすくめるばかりである。
「何を言っても『そこを何とか』で通そうとしてくるのだ。いい加減、外務院も対応に困っていてな。
そこでファスタ卿に何とか、もう来ないように言いくるめてもらえないものか、と」
「はあ」
国王直々にお願いされては、嫌とも言えない。
ランドはとりあえず、応接間に待たされていた相手と面会することにした。
「どうも。ジーン王国、政務顧問、兼、戦略研究室長のランド・ファスタです」
そう紹介したところで、相手の短耳は顔をしかめた。
「拙者は嫌われておるようだな」
「はい?」
「これで四度、お主らを訪ねた。
最初は外務室の官僚を名乗る者が応対した。次も同輩の官僚が。三度目も官僚であった。そして四度目が、最早どこの所属かも分からぬ馬の骨。
一向に拙者は、大臣にも国王にも会っておらぬ。それどころか、適当な者であしらおうとする始末。ジーン王国の無礼な態度、拙者はよく味わった。
もう結構。拙者はこれにて失敬する」
「ちょっと」
この時、彼をそのまま放っておけば、この後に起こる騒動には巻き込まれずに済んだのかもしれない。
だが会うなり罵倒されては、ランドも黙ってはいられなかった。
「軍人の方であれば、私の話を聞いておいた方がよろしいかと思われますよ」
「なに?」
「戦略研究室と言うのは、今年王国軍本営に設立された部署です。戦争行為に関する、あらゆる研究を行っているところです」
「つまり、如何にして戦えば勝利するか、と言うことを論ずるところであると言うことか?」
「あー、……まあ、そう考えていただいて結構です。
支援を要請、と言うことでしたので、こうして戦術、戦略の専門家である私が応対した方が適切ではないか、と国王陛下より命を受け、こうしてお会いした次第です」
「なるほど。国王直々の命であれば、拙者も異存はなし」
男は頭を下げ、こう名乗った。
「申し遅れた。拙者、央南は紅州、湯嶺(とうりょう)に本拠を構える清朝反乱軍の長、穂村玄蔵と申す。階級は少佐にござる。
以後お見知りおきを、ファスタ殿」
このいかめしい態度を執る、古風な軍人との出会いにより、ランドもまた、フォコが巻き込まれていた戦い――ケネスおよび、その腹心たちとの戦い、そして世界の覇権をめぐる戦いに、想定していたより早く、身を投じることとなった。
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第5部開始です。
今回、フォコ君は最後の方まで出てきません。
ずっとランドのターン。
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サムライの訪問。
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1.
フォコたちが政治と経済、戦略と謀略、エゴと裏切りに満ちた毎日を送っていたその頃、ランドたちもまた、戦いの日々を過ごしていた。
すべてのきっかけは、双月歴309年の中頃、北方ジーン王国では短い夏が満喫されている時だった。
「支援要請?」
「ああ、……何度か断っているのだが、もう四度目になる」
ジーン王国へ、軍による支援をしつこく要請してくる者が現れた。
「何故僕にその話を?」
ランドに尋ねられた若き国王クラウスは、肩をすくめるばかりである。
「何を言っても『そこを何とか』で通そうとしてくるのだ。いい加減、外務院も対応に困っていてな。
そこでファスタ卿に何とか、もう来ないように言いくるめてもらえないものか、と」
「はあ」
国王直々にお願いされては、嫌とも言えない。
ランドはとりあえず、応接間に待たされていた相手と面会することにした。
「どうも。ジーン王国、政務顧問、兼、戦略研究室長のランド・ファスタです」
そう紹介したところで、相手の短耳は顔をしかめた。
「拙者は嫌われておるようだな」
「はい?」
「これで四度、お主らを訪ねた。
最初は外務室の官僚を名乗る者が応対した。次も同輩の官僚が。三度目も官僚であった。そして四度目が、最早どこの所属かも分からぬ馬の骨。
一向に拙者は、大臣にも国王にも会っておらぬ。それどころか、適当な者であしらおうとする始末。ジーン王国の無礼な態度、拙者はよく味わった。
もう結構。拙者はこれにて失敬する」
「ちょっと」
この時、彼をそのまま放っておけば、この後に起こる騒動には巻き込まれずに済んだのかもしれない。
だが会うなり罵倒されては、ランドも黙ってはいられなかった。
「軍人の方であれば、私の話を聞いておいた方がよろしいかと思われますよ」
「なに?」
「戦略研究室と言うのは、今年王国軍本営に設立された部署です。戦争行為に関する、あらゆる研究を行っているところです」
「つまり、如何にして戦えば勝利するか、と言うことを論ずるところであると言うことか?」
「あー、……まあ、そう考えていただいて結構です。
支援を要請、と言うことでしたので、こうして戦術、戦略の専門家である私が応対した方が適切ではないか、と国王陛下より命を受け、こうしてお会いした次第です」
「なるほど。国王直々の命であれば、拙者も異存はなし」
男は頭を下げ、こう名乗った。
「申し遅れた。拙者、央南は紅州、湯嶺(とうりょう)に本拠を構える清朝反乱軍の長、穂村玄蔵と申す。階級は少佐にござる。
以後お見知りおきを、ファスタ殿」
このいかめしい態度を執る、古風な軍人との出会いにより、ランドもまた、フォコが巻き込まれていた戦い――ケネスおよび、その腹心たちとの戦い、そして世界の覇権をめぐる戦いに、想定していたより早く、身を投じることとなった。
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今回、フォコ君は最後の方まで出てきません。
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