「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第5部
火紅狐・訪南記 3
フォコの話、201話目。
非公式援助。
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3.
ランドは頭の中で、返すべき返事と、その後の展開を素早く想定する。
(返事は3つのうちどれかだな。ジーン王国を挙げて全面協力するか。それとも非公式に協力するか。それとも、協力しないか。
3つ目は論外だな。放っておいたら、……まあ、少佐は自力で戦わないといけなくなるし、そうなれば清王朝プラス中央軍なんていう大軍に敵うわけがない。
反乱軍が負けたらその後、清王朝は当初の目的通り、中央政府を相手に戦うことになる。そしてその結果、少佐の唱える通り、央南は壊滅するだろう。
そのサザリーって商人の狙いはむしろ、それだろうな。政治機能が壊滅した国は、大資本を持った商人の餌食だ。法の網や軍・警察組織がまったく機能しないから、金に飽かせて勝手気ままに人やモノを売り買いできるからだ。
そうなれば央南は早晩、サザリーのものになるだろうな。僕が目指すのは、世界の政治腐敗を糺すことだ。そんな欲まみれの独裁状態なんて、認められない。
としても、1つ目も難しい。ジーン王国が反乱軍に加担する、つまり中央政府の名代に反旗を翻す組織に全面協力すると言うことは、そのまま中央政府に楯突くことになる。そうなれば中央は僕たちをも、攻撃の対象にするだろう。
まだ北方の政治・経済基盤が安定しきらない今、中央との直接対決なんてことになれば、確実に北方は――勝つか負けるかは別として――大きく揺らぐことになる。中央との対決はいつかしなきゃいけないことではあるけども、今やってはいけないことだ。
1つ目、3つ目は駄目だ。……じゃあ、2つ目になるな)
ランドは穂村少佐にこう告げ、席を立った。
「陛下と有識者を呼んでまいります。私一人で即決できる問題ではありません」
「そうか。四度目でようやく、国王陛下にお目見えできるとは。……今度こそは、いい返事が期待できそうだな」
「ええ、ご安心を」
30分後、ランドはクラウスとキルシュ卿、そして大火を伴って戻ってきた。
「お待たせしました。こちらが国王、クラウス・ジーン陛下です。隣の者は、クラウス陛下の父君で財政大臣の、エルネスト・キルシュ卿。
そして私の後ろにいるのが……」
「克大火だ。ランドの警護、と思ってくれればいい」
大火を目にした穂村少佐は、表情を険しくした。
「俺の顔に何か付いているか?」
そう尋ねた大火に対し、穂村少佐はこう述べた。
「お主……、相当の手練だな。人を何人も斬った目をしている。……いや、それ以上に、何か並々ならぬ経験をいくつも経た目だ。
人の領域ならざる、まるで魔界に踏み込んだ者のような目をしている」
「だから何だ?」
大火にそう返され、穂村少佐は表情を崩した。
「……いや、それだけだ。失礼した」
「え、と。先程のお話を、再開しますね」
ランドたちは席に着き、対応を協議することにした。
「まず、初めに申しあげておきますが、ジーン王国政府があなた方反乱軍に、正式な支援を行うことは、政治的に不可能です」
「む、う」
この返答に、穂村少佐の顔が曇る。
「しかしながら、このままお帰りいただく、と言うのも、世界の平和を思えば心苦しい。そこで非公式に、支援を行いたいと考えています」
「……と言うと、具体的には?」
この問いに、クラウスとキルシュ卿が回答した。
「私の臣下から、優秀な人材を秘密裏に出向させよう。ここにいるファスタ卿を初めとして、軍略や戦闘に長けた人材を」
「それに加え、多少ながら資金も融通しましょう。ただし、3年後に利子を付けて返済、と言う形になりますが」
「ふむ、悪くない話ですな。ではその条件で、よろしくお頼み申します」
この後、四者で協議を行い、現地へ向かう人間は次の4人に決定した。
まず前述の通り、戦略・戦術に長じているランドと、その護衛として大火が。そして戦闘に関してのサポート役として、イールとレブが同行することとなった。
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3.
ランドは頭の中で、返すべき返事と、その後の展開を素早く想定する。
(返事は3つのうちどれかだな。ジーン王国を挙げて全面協力するか。それとも非公式に協力するか。それとも、協力しないか。
3つ目は論外だな。放っておいたら、……まあ、少佐は自力で戦わないといけなくなるし、そうなれば清王朝プラス中央軍なんていう大軍に敵うわけがない。
反乱軍が負けたらその後、清王朝は当初の目的通り、中央政府を相手に戦うことになる。そしてその結果、少佐の唱える通り、央南は壊滅するだろう。
そのサザリーって商人の狙いはむしろ、それだろうな。政治機能が壊滅した国は、大資本を持った商人の餌食だ。法の網や軍・警察組織がまったく機能しないから、金に飽かせて勝手気ままに人やモノを売り買いできるからだ。
そうなれば央南は早晩、サザリーのものになるだろうな。僕が目指すのは、世界の政治腐敗を糺すことだ。そんな欲まみれの独裁状態なんて、認められない。
としても、1つ目も難しい。ジーン王国が反乱軍に加担する、つまり中央政府の名代に反旗を翻す組織に全面協力すると言うことは、そのまま中央政府に楯突くことになる。そうなれば中央は僕たちをも、攻撃の対象にするだろう。
まだ北方の政治・経済基盤が安定しきらない今、中央との直接対決なんてことになれば、確実に北方は――勝つか負けるかは別として――大きく揺らぐことになる。中央との対決はいつかしなきゃいけないことではあるけども、今やってはいけないことだ。
1つ目、3つ目は駄目だ。……じゃあ、2つ目になるな)
ランドは穂村少佐にこう告げ、席を立った。
「陛下と有識者を呼んでまいります。私一人で即決できる問題ではありません」
「そうか。四度目でようやく、国王陛下にお目見えできるとは。……今度こそは、いい返事が期待できそうだな」
「ええ、ご安心を」
30分後、ランドはクラウスとキルシュ卿、そして大火を伴って戻ってきた。
「お待たせしました。こちらが国王、クラウス・ジーン陛下です。隣の者は、クラウス陛下の父君で財政大臣の、エルネスト・キルシュ卿。
そして私の後ろにいるのが……」
「克大火だ。ランドの警護、と思ってくれればいい」
大火を目にした穂村少佐は、表情を険しくした。
「俺の顔に何か付いているか?」
そう尋ねた大火に対し、穂村少佐はこう述べた。
「お主……、相当の手練だな。人を何人も斬った目をしている。……いや、それ以上に、何か並々ならぬ経験をいくつも経た目だ。
人の領域ならざる、まるで魔界に踏み込んだ者のような目をしている」
「だから何だ?」
大火にそう返され、穂村少佐は表情を崩した。
「……いや、それだけだ。失礼した」
「え、と。先程のお話を、再開しますね」
ランドたちは席に着き、対応を協議することにした。
「まず、初めに申しあげておきますが、ジーン王国政府があなた方反乱軍に、正式な支援を行うことは、政治的に不可能です」
「む、う」
この返答に、穂村少佐の顔が曇る。
「しかしながら、このままお帰りいただく、と言うのも、世界の平和を思えば心苦しい。そこで非公式に、支援を行いたいと考えています」
「……と言うと、具体的には?」
この問いに、クラウスとキルシュ卿が回答した。
「私の臣下から、優秀な人材を秘密裏に出向させよう。ここにいるファスタ卿を初めとして、軍略や戦闘に長けた人材を」
「それに加え、多少ながら資金も融通しましょう。ただし、3年後に利子を付けて返済、と言う形になりますが」
「ふむ、悪くない話ですな。ではその条件で、よろしくお頼み申します」
この後、四者で協議を行い、現地へ向かう人間は次の4人に決定した。
まず前述の通り、戦略・戦術に長じているランドと、その護衛として大火が。そして戦闘に関してのサポート役として、イールとレブが同行することとなった。
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