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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・破鎧記 2

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    フォコの話、207話目。
    下品な兎獣人。

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    2.
     央中、イエローコースト。
     落成して間も無い金火狐の屋敷を、一人の兎獣人が訪れていた。

     兎獣人と言うのは一般的に、「おしゃれで美しい種族」と評されている。
     事実、例えばフォコの知っている兎獣人――ルーテシアは、多少ふくよか目ではあったが、それを踏まえても非常に美人であったし、服や料理のセンスも抜群と言えた。
     その娘たちにも、彼女の美貌とセンスはちゃんと遺伝されていたし、それだけを見れば、評判通りと言える。

     だが、この兎獣人は――。
    「どうもどうも、ケネス総帥殿。儲かってますか、えへへ」
     話し方や笑いに品が無い。
    「上々、と言うところだ。……それよりもサザリー君、私は執務の真っ最中であったのだが」
     場の空気が読めない。
    「ああ、すみませんすみません、こっちもちょいと、急ぎだったもので、へっへへ」
     自分の都合を優先する。
    「それで、何かね? わざわざこの私の手を止めさせるような、大事な案件を持って来たのか?」
    「ああ、まあ、そこまで大事では無いですが、まあ、大事と言えば大事と言えるかも知れません。まあ、お金の話ですから御大には重要ですし、重要かなーなんて」「話したまえ」
     何より、フォコ以上に、いや、どの誰よりも、服にセンスの欠片もない、不気味なほどにひょろひょろとした、背と目の大きな男だった。
    「ああ、はいはい。まあ、そのですね。僕が管轄しております、央南の話なんですけれども。
     総帥殿に言い付けられた通り、バカ殿を唆して順調に、央中と央北の商品を買わせまくっております。それでですね、その額がそろそろ、国庫の倍ほどになってましてね、新たにそのー、ほら、あれを、……あれしてですね、ほしいんですが、……ね?」
     チラ、チラと不気味な目を上目遣いに向けてくるサザリーに嫌悪感を感じつつ、ケネスは尋ねる。
    「負債額はいくらだ? 正確に言いたまえ」
    「あ、はいはい。えーと、確か」「『確か』? 正確に覚えていないのか?」
     にらみつけたケネスに、サザリーはヘラヘラと笑いながらごまかそうとした。
    「いやあの、へへへ、そんな、別に答えられないってことは無いんですよ、無いんですけども、ほら、細かいところまでどうかって言われたら、ちょっと覚えられないなって、へへ、ほら、僕も忙しいので」「忙しい? それで覚えられないと?」
     ケネスはフンと鼻を鳴らし、こう返した。
    「私は君などより何倍も忙しく過ごしているが、それでも私の持つ店が、それぞれどれほどの利益を上げているか、そらんじることができるぞ。
     覚えていないのは、君がまったく関心を持っていないからだ。いくら祖国から遠く離れた辺境、僻地といえど、君が責任を持って受け持った仕事だろう? それを『覚えていない』と言うのか、君は?」
    「……いや、へへへ」
    「まったく……! 名門商家の人間とは思えんな。本当にエール家の人間なのか?」
    「いや、それは本当に、僕はそこの出です。それは疑ってもらっては、困ると言うか」
    「ならば見せてもらいたいものだな。まともな商人として、その卑屈な愛想笑いだけではなく、きちんとした数字を」
    「……はい」

     その後、サザリーからしどろもどろながらも報告を受け、ケネスはまた、不満げに鼻を鳴らした。
    「想定では309年の現在、負債額は20億に達せさせるはずだったな。税収や国債発行では立ち行かなくなる額に追い込む、そうだったな?」
    「まあ、その、はい」
    「それで君、もう一度答えてくれるかね? 現時点の負債は、いくらになったと?」
    「ですから、そのー、13億くらい」
    「7億足りないようだが、それは何故だ?」
    「えっと、それは、えー」
    「答えられないのかね?」
    「いや、多分なんですけども、きっと、大臣級の奴らが、これ以上負債を負わせまいとしてるんじゃないかなー、とか、なんて」
    「サザリー君」
     ケネスは机の上に置いてある墨壷を手に取り、席を立つ。
    「もう一度言うが、君は関心を持ってこの仕事に当たっているのか?」
    「も、勿論です、はい」
    「本当だな?」
     ケネスは背の高いサザリーの襟をつかんで引っ張り、無理矢理頭を下げさせた。
    「ならば何故、計画が進行していない? 進行しない、その理由を説明できないのだ!?
     まともに業務へ当たっていないから、まともな説明ができないのだ! ろくに仕事もしていない、何よりの証拠だろうがッ!」
     ケネスは持っていた墨壷を、サザリーの頭にぶちまけた。
    「いたぁ……っ!」
    「この無能め! 商売のろくにできぬ、ごく潰しめがッ!」
    「いた、た、たたた……」
     サザリーは床に倒れこみ、頭からインクと血をボタボタたらしている。ケネスはその頭に割れた墨壷の欠片を押し付け、さらに血を流させる。
    「ひ、っ、何を」
    「いいか、良く覚えておけ! この私の命令は、命を懸けて実行するのだ! でなければ次は、この程度では済まさんぞッ!」
     ケネスはインクと血まみれになったサザリーを蹴り付け、執務室から追い払った。

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