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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・荷移記 1

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    フォコの話、211話目。
    三流、三流を嘲笑う。

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    1.
     オーヴェル帝が現地視察に来るとケネスに聞かされ、サザリーは慌てふためいた。
    「そ、それって、その、あれですよ、あの、まずいってことになるんじゃ」
    「そうだ」
     おろおろとしているサザリーを机越しに眺めつつ、ケネスは落ち着くよう促す。
    「まず、座りたまえ。私の話を聞くんだ」
    「あ、はい、えっと、……じゃあ、はい」
     ガタガタと音を立てて椅子を引きずるサザリーに、ケネスは苦い顔を向ける。
    「サザリー君。屋敷はまだ、建てて一年経つか経たないかだ。あまり傷を付けないでくれたまえ」
    「あ、す、すみません」
     ようやく座ったサザリーに、ケネスは今後の対応を伝えた。
    「視察団が到着するのは10月の末になる。双月節に行われる天帝教の式事を考えれば、滞在は恐らく11月の半ば、長くても11月の末までだろう。
     つまり半月から一月は、天帝は央南に留まることになる」
    「はあ」
    「その前後……、そうだな、今から12月に入るまで、予定されていた取引はすべて保留、延期するよう手配してくれ。
     取引が行われていることが発覚し、その先を探られ、万が一にでも我々の計画が発覚すれば、私も君も、ただでは済まないことになる」
    「で、ですよね」
    「後は、……そうだな、セイコウ、ダイゲツ、テンゲン、コゲン、そして首都ハクケイに、大規模な軍事物資の備蓄基地があったな?」
    「え、ええ。良く覚えておいでですね」
    「当たり前だ。
     その5ヶ所に収められている軍備を、どこか他の場所に移せ。それぞれ半分程度で構わん」
    「半分、……ですか? でも、それでもかなりの量に……」
    「そんなことは分かっている。だからこそ、隠せと言っているのだ。
     今挙げた五ヶ所は、中央政府軍側でも有用な基地として扱われている。『中央軍指定軍備供与基地』として有事、中央軍が駐留した際に使用できるよう、協定が結ばれているのだ。
     それゆえこの五ヶ所は、中央政府側が『見せろ』と言えば、清王朝側は見せざるを得ん」
    「なるほど、事前に掃除しておいて、いくら調査を受けても大丈夫なように、ってことですね」
    「そう言うことだ。
     それから、これからしばらく先についてのことだが」
     ケネスは眼鏡を外し、裸眼でサザリーを眺めつつ、こうも指示を下した。
    「来年の、……そうだな、2月頃まで、私とは会うな」
    「えっ……?」
    「計画露見のあらゆる可能性、及び関連性を断つためだ。
     例えば君が央南における取引について証人喚問を受け、そこから私との取引について問いただされた場合。君と私とが密接に、こうして人払いをしたうえで商談をしている事実を、何ら黒い印象無しに、説明できるだろうか?」
    「それは、まあ、僕の方からは、その、言うようなことは無いはずです」
    「そうだろうとも。君の弁舌、交渉術を以ってすれば、それは起こり得まい。
     だが、君だけが喚問されるわけではない。他にも、取引に関わってきた人間が多数、審議の場に集められるはずだ。
     その中で、君と私との関係を黒く色付けする輩が、居ないと思うか?」
    「……断言は、できないですね、確かに」
     ケネスは眼鏡の汚れを拭き取りつつ、話を続ける。
    「それを懸念しての措置だ。……問題は、無かろうな?」
    「も、勿論。取引は止まるんですから、総帥のご意見を伺うようなことは、無いんじゃないかなーと」
    「ああ。……まあ、それにだ」
     綺麗に拭いた眼鏡をかけ直し、ケネスはこう続けた。
    「南海の方で、ゴタゴタが起こっていると言う話を聞きつけた。何でも、スパス産業の配下にある商店が軒並み、売り上げを落としているそうだ。
     現状を打開してほしい、何か策を授けてほしいと、奴から手紙が届いたのだ。事態の収拾のため、私はしばらく南海へ向かう予定だ。
     どちらにせよ、屋敷に来られても応対はできん」
    「スパス産業って……、ああ、はいはい。うちの『当て馬』の、アバント・スパス君のことですか」
    「そうだ。……まったく、まともには使えん男だよ」
     ケネスの言葉に、サザリーはクス、と鼻で笑った。
    「確かに。彼は職人上がりですからね。金勘定や商売の機微なんか、ろくに分かるわけが無い。でも、彼を総裁に仕立てたのって……」
    「確かに私だ。まあ、君の言うように彼は『当て馬』だな」
    「良く言いますもんね、『バカとハサミは使いよう』って。
     愚図は愚図なりに、金を生ませるための使い捨て方はある、……そう言う腹積もりでしょ?」
    「くっく……」
     サザリーの言葉に、ケネスは短く笑った。
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