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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・荷移記 3

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    フォコの話、213話目。
    少佐の理由。

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    3.
     少佐の調べが済むまでの間、ランドは湯嶺を散策することにした。
    「……白いなぁ、視界が」
     眼鏡に張り付いた湯気を拭きつつ、ランドは街を眺める。
     この辺りは大きな源泉があるらしく、あちこちに温泉宿が構えている。そのため、人通りは割と多い。
    (少佐、故郷だからここに本拠を構えた、って言ってたけど。……危なっかしい人だなぁ)
     現政権に反旗を翻す組織なのだから、なるべく人の少ない土地に構えるのが常道なのだが、少佐の選択は――弧弦を攻めようとしたことと言い――ことごとく、その常道を外している。
    (どうやって少佐になれたんだろう、彼は……? いくらなんでも、戦下手すぎやしないかな。技術将校か何かだったんだろうか)
     と、向こうから知った顔がやってくる。
    「あ、イール」
    「あら、ランド。会議は?」
    「向こうの調査結果待ち。それまでやることが無いから、こうしてブラブラしてるってわけさ。
     君の方は?」
     そう尋ねてみると、イールは楽しそうに顔をほころばせた。
    「温泉っ。いやー、お肌スッベスベよ」
    「へぇ?」
     それを聞いて、ランドはひょいとイールの手に触れた。
    「ひぇ? ちょ、ランド?」
    「本当だ。肌に良いんだね、ここの温泉。僕も後で入ろうかな」
    「あ、ちょ、その、ちょっと」
    「どこの温泉?」
     やんわり尋ねるランドに対し、イールは顔を真っ赤にする。
    「え、あ、あの、……ソコ! ソコのっ!」
    「そこ、……って言われても」
     要領を得ない答えに、ランドは肩をすくめる。
    「何て店?」
    「あ、……あー、と、……何だったかしら」
    「良かったら、案内してくれる?」
    「……あ、うん、案内ね、うん、いいわよ」
    「ありがとう」
     にっこり笑うランドに対し、イールは終始バタバタした仕草で返していた。



    「ふう……」
     明日の会議に使う資料をまとめ終え、少佐も温泉へ向かっていた。
    (……しかし、つくづく思う)
     その道中、ランドとの会議を思い返し、自分の将としての、一家一城の主としての資質に疑問を抱く。
    (やはり義侠心や志の高さ、負けん気のみで進めていけるほど、戦は甘くない。ファスタ卿の意見を伺わずに進めていれば、拙者らは単なる賊軍として終わっていただろう)
     意気消沈しつつ、道を歩いていると――。
    「あ……、お主は」
    「む……?」
     ランドの側にいる侍、大火と出くわした。
    「失敬。克殿、だったか。お主も風呂へ?」
    「いや、散策していただけだ」
    「そうか。……どうだ、話がてら。一緒に湯を浴びんか?」
    「……ふむ。そうだな、付き合おう」
     共に温泉へ行くことになった大火に、少佐はあれこれと尋ねてみた。
    「お主、央南の者と見受けするが、どこの生まれだ?」
    「……」
    「答えられん、か?」
    「ああ。説明が難しい」
    「ふむ? ……まあ、いい。深い事情があるのなら、問わん。
     その刀、なかなかの業物と見えるが、どこで手に入れた?」
    「俺の弟子たちが打ってくれた」
    「弟子? お主、刀鍛冶か?」
    「本職ではない、が。それなりの技術はある」
    「ほう。では、本職は?」
     あれこれと尋ねる少佐に対し、大火はぶっきらぼうに返すばかりである。
    「魔術師だ」
    「魔術か。六属性の、どれを?」
    「基本は火の術だが、一通りは修めている」
    「一通り? 六属性、全てをか?」
    「ああ」
     それを聞いて、少佐は目を丸くする。
    「すごいな……! 拙者、火の術で精一杯だと言うのに」
    「ほう」
     ここでようやく、大火は少佐に興味を抱いたらしい。
    「いや、実のところ、拙者が少佐の位に成り上がれたのも、それが理由でな。清朝軍にて、火の術と剣術の教官を務めていた。
     その点では、お主と拙者は似ておるな」
    「……」
    「しかし拙者とお主の技量は、吊り合いそうには無いな。見たところ、拙者の方が歳を重ねてはいるが、技量では到底敵いそうには無い。
     拙者はしがない教官でしかないし、実戦経験など、鳥獣やしょぼくれた罪人を追いかけたくらいのもの。
     それに比べて、お主はその物腰と剣気だけでも、相当の経験を積んできたと悟らせる。いやまったく、真の剣士、侍とは、お主のような者のことを言うのだろうな」
    「……ふむ」
     こう評価された途端、大火の険が薄まった。
    「火術教官と言ったが、どの程度まで扱える?」
    「ん……? 拙者か? そうだな、どう説明すればよいか。
     中央軍から攻撃用魔術について5段階の策定・指定が成されており、清朝軍もそれに従っているのだが、拙者はその3段目、『単体高威力攻撃』に関して指導できる資格がある」
    「単体、高威力……、ふむ。『ファイアランス』が扱える程度か」
    「そうだ。他にも初等の治療術や幻惑術なども扱える」
    「……剣術の教官も兼ねていると言ったな?」
    「ああ、そうだ。……おっと、もう着いたか」
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