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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・荷移記 5

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    フォコの話、215話目。
    軍備の行先。

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    5.
     翌日。
    「昨日尋ねられた件であるが、東部では三岬(サンザキ)、西部では黄海(コウカイ)、そして中部では京谷(ケイコク)が、軍事物資の隠し場所、持ち出し場所に最も適しているだろう」
     少佐から軍備移送先の見当を伝えられ、ランドは小さくうなずいた。
    「根拠をお尋ねしても?」
    「うむ。三岬は青江、大月の両都市に近く、港がある。とっさに軍備を持ち出して海や離れ小島へ逃れ、査察の目をごまかす、……と言う手も、容易に取れる」
    「確かに、考えられる手ですね。となると、このコウカイと言う街も?」
    「その通り。こちらにも大規模な港があり、いざとなれば他の港町へも逃げやすい。
     とは言え京谷については、この通りではない。港町どころか、陸のど真ん中だ」
    「では、何故ここだと?」
    「一つは、白京と天玄の丁度中間にあるためだ。そしてもう一つ、ここには大規模な農耕地帯が存在し、そのための倉庫や用地が数多く存在する。
     物を隠すのに適していると、拙者は思うのだが」
    「なるほど。確かに畑であれば、土を掘り返していても不自然ではないですね。それに、首都のハクケイが近い。考えられなくはない」
    「では、そちらを……」
     ところが意気込む少佐に対し、ランドはさらりと流した。
    「いえ。
     それから少佐、海へ逃れた場合ですが。具体的に、どの島へ運ぶと見当を付けていますか?」
    「……京谷ではないと?」
    「考えにくいですね」
     少佐の予想を、ランドはばっさり斬り捨てた。
    「少佐の仰った通り、ケイコクは陸の真ん中、言い換えれば逃走経路、輸送経路を限定されやすい街です。あらゆる街道から多方面に渡って捜索された場合、逃げ場が無いわけです。
     これが港町の場合、どう頑張っても、港から出る経路を全て押さえる、と言うことは不可能に近い。明確な道が無い分、いくらでも抜け道が作り出せる。調査が入る前に運び出されてしまえば、港町で調査を行う視察団がその後を追うことは、まず不可能でしょう。
     よって、陸路しか輸送手段の無い都市は、除外せざるを得ません。また、重ねて言いますが、海路を使用された場合、その痕跡を辿るのは不可能。後を追うよりも、先回りする方が賢明と言えます。
     ですから僕はその先、運んだ先を伺っているわけです」
    「むう……」
     少佐は眉を曇らせ、困ったように資料をペラペラとめくり始めた。
    「その……、もう少し……調べを……」
     ランドはため息をつき、資料に手を伸ばした。
    「見せてください」
    「……うむ」

     少佐と共に調べ、ランドは次の島にあたりを付けた。
     白京から南南東へ80キロほど離れた無人島、待垣島(まつがきじま)。島全体に青々とした松が生い茂り、かつ、海抜10メートルにも満たない、背の低い島であるため、目視で白京からその姿を確認できることは、まず無い。
     さらには国際的な航路からも離れており、少なくとも白京に住んでいない者、即ち央北からの人間で構成される天帝視察団には、その存在すら気付くはずも無い場所である。
    「なるほど。確かに、こんな島があったような覚えがある。好都合な隠し場所であるな」
    「視察団到着の日がそう遠くない現在、ハクケイからこちらに物資が運ばれている可能性は、非常に高いです。
     なので、すぐにこの島へ忍び込み、裏付け調査を行いましょう。そして確固たる証拠をつかめたら、訪れた視察団に島の存在を密告します」
    「うまく事が運べば、後は当初の目論見通り、中央政府は央南から手を引く、あるいは刃を向ける、……と言うわけだな」
    「はい。……ただ、向こうとしては何が何でも、ばれては困るわけです。恐らく島には多数の兵士が配備され、守りを固めているはずです」
    「忍び込むには相当の手練が必要、と言うことか」
    「それについてはご安心を。イール、レブ、そしてタイカに行ってもらう予定です」
     それを聞いて、少佐は首をかしげる。
    「お主は?」
    「何故僕が?」
    「何……? 人任せにするのか、お主は?」
     憤りかけた少佐に対し、ランドは淡々と述べた。
    「僕の行うべきは、今後の戦いに備えての調査と検討、立案です。荒事には向いていません。
     彼ら三人に頼むのは、そうした仕事において十二分な能力と経験を有しているからこそです。
     然るべき人材は然るべき場所へと置く。でなければ、どんな精鋭も烏合の衆となって瓦解するでしょう」
    「……なるほど」
     徹頭徹尾に渡って言い負かされ、少佐は口をつぐむしかなかった。
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