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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・来帝記 2

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    フォコの話、218話目。
    自分の気持ちに気付いて。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
     視察団が到着する、その一週間前。
    「あれがマツガキ島?」
    「そうだ」
     ランドに命じられ、イールたちは小舟で待垣島へと向かっていた。
    「ホント、ぺたんこな島ね。高波が来たら、沈んじゃうんじゃない?」
    「ああ。それ故、人が住んでおらぬ」
    「なるほどね」
     イールたちの他に、穂村少佐も舟に乗り込んでいた。
     ランドからは「上には上の役目がある。みだりに動き回るのは感心しない」と諌められていたものの、少佐の性格としては、その意見に納得することなどできない。
     そのため無理矢理に頼み込み、少佐もイールたちに付いてきたのだ。
    「とは言え、……ふむ」
    「どうかしたのか?」
     単眼鏡を覗きながら、渋い顔で短くうなる少佐に、レブが声をかける。
    「いや、かつてあの島を漁業関係の基地にしようと、石垣を作りかけたことがあってな。
     結局は、あまり漁業には有効利用できそうにないと言うことで、中途半端なままで止まっていたはずなのだが……」
     そう言って、少佐はレブに単眼鏡を渡した。受け取ったレブは単眼鏡で島を確認し、少佐と同様に渋い顔をした。
    「……半端、って感じじゃないな。完成してるぜ」
    「ああ。どうやら此度の軍備移送に備え、石垣を完成させたらしい。あれだけ固めていれば、少々の高波で軍備が濡れることはあるまい」
    「ランドの予想通り、あの島を隠し場所にするようだ、な」
     一人離れ、海を眺めていた大火のつぶやきに、イールは深くうなずいた。
    「そうね。後はあの島に忍び込んで……」
    「清王朝の指示により軍備が送られている証拠をつかみ、その事実を視察団に伝える、……と」

     一行はそのまま沖で待機し、夜を待って忍び込むことにした。
    「流石に央南とは言え、冬は寒いな」
    「そうね」
     じっと待つのも退屈なので、イールとレブは釣りに興じている。
    「ってか、もう三ヶ月もこっちにいるんだよな。もう割と、こっちの気候に慣れてきた気がするぜ」
    「あー、そう言われるとそうかも」
    「少佐から聞いたんだけどよ、央南は春夏秋冬、四季の間隔が全部同じくらいらしい」
    「そうなの?」
    「だから単純に4で割って、一季節が大体三ヶ月くらいになるんだってさ。つーことは、央南の秋を丸々過ごしたってことになるんだよな、俺たち」
    「へぇ……」
     と、話しているうちに、イールの釣竿に当たりが来る。
    「よ、っと」
    「……うまいなぁ、お前」
    「ま、セイコウでずーっとランドと一緒に釣りしてたし」
    「そっか、そうだったよな。
     ……なあ、イール」
     釣った魚を一緒に魚籠に入れながら、レブが尋ねてくる。
    「なに?」
    「お前さ、ランドとよく一緒に居るけど」
    「そう、かな?」
    「そうだよ。んでさ、だから聞くけど」
    「うん」
    「あいつのこと、好きなのか?」
     そう問われ、イールの手が止まった。
    「え……、と?」
    「いや、違うなら何でもないんだ。聞きたかっただけだし」
    「……あー」
     考えるうちに、イールはようやく、自分がここ三ヶ月抱いていた、不思議な感覚に思い当たった。
    (あーそっか、そーだったのね)
    「……イール?」
    「あ、うん、……うん、今気付いたわ、ソレ」
    「はぁ?」
    「……どうしよう、レブ」
     問い返され、今度はレブの動きが止まる。
    「……何を?」
    「今気付いちゃったのよ」
    「今聞いたよ」
    「どうしよう? どうしたらいいかな?」
    「だから何を」
    「だってさ、そんなコト思ったの、初めてなんだもん」
    「……マジで?」
    「超マジ」
    「おっせえ初恋だなぁ」
     呆れるレブに、イールは顔を真っ赤にしながら弁解する。
    「だって、全然あたし、そんなコトになる機会無かったのよ。小っちゃい頃からアレコレやらされてたし」
    「そっか、そう言やお前が『猫姫』って恐れられてたのって、大分昔っからだもんな。
     ……じゃあお前、今までずーっと気付かずにランドと遊んでたのか」
    「……うん」
     猫耳の先まで真っ赤にして黙り込むイールを見て、レブは笑い出した。
    「……はは、はははっ」
    「な、何で笑うのよ」
    「いや、改めてお前、面白い奴だなぁと思って」
    「うー……」
     と、レブはうつむいたイールの肩をポンポンと叩き、優しく声をかける。
    「まあ、いいんじゃないか? あいつは悪い奴じゃないし、まあまあ顔もいいし。今回の作戦が終わったら、改めて『付き合ってください』って言ってみればどうだ?」
    「……いや、でも、いきなり……そんな……うー……」
     結局、とても釣りができるような状況ではなくなり、この後夜になるまで、レブはイールを落ち着かせようと、温かく声をかけ続けた。
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