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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・来帝記 3

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    フォコの話、219話目。
    克一門。

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    3.
     イールが慌てふためいている一方で、少佐はまた、大火と話をしていた。
    「なあ、克」
    「うん?」
    「あの術……、拙者も自分なりに学んではいるのだが、どうも魔術が刃に宿るところまで行かん。何かコツのようなものは無いのか?」
     そう問われ、大火は「ふむ……」と短くうなり、腕を組んで思案する仕草を見せた。
    「そうだな……。詳しく聞けば問題点も見えてくるだろうが、今はそうも行くまい」
    「……確かに。まさかこんな小さい舟の上で刀を振り回すわけにも行かんし、理論も口だけでの説明は難しい。
     ……とは言え、他にやることもない。何か話でも、と思ったのだが」
    「釣りでもしていればどうだ、あの二人のように」
     そう言って大火は顎でイールとレブを指し示すが、少佐は苦笑いを返す。
    「いや……、恥ずかしながら拙者、釣りは苦手でな。生まれてこの方、一匹も釣れた試しがない」
    「そうか」
     短く答え、話を切り上げようとする大火に対し、少佐は食い下がる。
    「と、と。そんな邪険にするな、克」
    「……」
    「ほら、そうだ。お主、弟子がいると言っていたな?」
    「ああ」
     面倒臭そうな目を向けてくる大火にめげず、少佐は質問を重ねる。
    「何人ほど?」
     大火は少佐の方を向こうとはせず、うざったそうに返してきた。
    「……今は、一人もいない。皆、俺を裏切るか、眠るかした」「う」
     地雷に触れてしまい、少佐は一瞬、口をつぐんでしまう。
    「……ま、まあ、……その、済まなんだ。……では、話を少し変えよう。
     その……、その弟子と言うのも皆、魔術師だったのか? 先日聞いた限りでは、どうも鍛冶師だったり剣士だったり、はたまた占い師だったりと、あまりに職がバラバラなような気がするのだが」
    「……ふむ」
     そこでようやく、大火が顔を向けてきた。
    「確かにそれぞれの就いた職は、様々だ。元から就いていた経歴もある。
     平たく言ってしまえば俺の弟子、『克一門』の定義とは、単に俺から魔術なり剣術なりの話を聞いた、と言うことになるな。
     まあ、それに」
     と――大火は珍しく、どこか寂しげな表情を浮かべた。
    「師匠・弟子の関係と言うよりは、同胞・同志としての関係の方が強かった。そもそも俺が奴らを弟子に取った、その基準と言うものも、授受の関係だ」
    「授受の?」
    「中央風に言えば、ギブ・アンド・テイク。奴らが俺を助け、俺が奴らを教え、……そう言う関係だった。
     だが――残念ながら、結果としては、奴らは俺とことごとく決別し、俺に刃向った。俺に与するなら、俺は助ける義理もあろう。だが刃向うのなら……」
    「……目には目を、か。……烏滸がましい意見ではあろうが」
     少佐は深いため息とともに、大火にこう返した。
    「お主が魔界に踏み込んだような目をするようになった原因が、分かったような気がする。かつての弟子、仲間をその手にかけたと言うなら、そんな目にもなろう」
    「……ク、クッ」
     ところが、大火はまるで鴉の鳴き声のような笑いで、それに応じた。
    「烏滸がましいな、確かに。
     ……確かにそれは一因ではある。だが、それだけではない、な」
    「……やはり読めぬな、お主と言う男は」
    「それが理解されれば、俺には十分だ」



     やがて夜になり、待垣島にわずかながら光が明滅しているのが確認できた。
    「軍備を運んでるみたいだな」
    「そのようだ。そろそろ、上陸しよう」
    「ええ」
     一行は静かに舟を進め、軍備が運び込まれている海岸とは反対の方角、島の南岸へ向かう。
    「敵の姿は……、無さそうだ」
    「あそこから上陸できそうだな。よし……」
     慎重に舟を海岸に寄せ、まずレブが島に乗り込んだ。
    「……、よし。こっちはガラ空きみたいだ」
    「じゃ、あたしも……」
     続いて、イールも上陸する。さらに少佐も乗り込み、大火が最後に舟から降りようと――して、挙げかけた足を止めた。
    「……どうした、克?」
    「しゃがめ」
    「え?」
     きょとんとする少佐に対し、イールとレブは大火が執る行動を察知し、少佐の襟を引っ張っりながら伏せた。
    「『一閃』」
     次の瞬間、パシュ、と短く鋭い音が飛び、一行の前に並んでいた松の一つが、バッサリと枝を切り落とされる。
    「うおぉ!?」「わあっ!?」
     直後、その松の裏手から驚いたような声が上がった。
    「な……、んと、兵が潜んでいたか!」
     襟元を正しながら目を白黒させる少佐に構わず、イールたち三人は武器を手に取る。
    「敵襲! 敵襲!」
    「南岸から上陸された!」
    「出会え、出会えッ!」
     島の奥から、ドタドタと足音が聞こえてくる。
    「くそ、見つかっちまったか……!」
    「やるしかないわね!」
     イールとレブは武器を構え、やってくる敵を迎え撃とうとした。
     ところが――。
    「相待たれよ、皆の者!」
     少佐が突然、大声で叫んだ。
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