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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・発火記 1

     ←「火紅狐」イラスト ~ フォコ君(夜市さんより)、フォコくん&ランニャちゃん(とにもとさんより) →火紅狐・発火記 2
    フォコの話、224話目。
    小悪党商人の帰還。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    「追放は、やむなしか」
    「はい……」
     白京、清王朝宮殿。
     国王、清一富と家臣たちが集まり、中央政府との関係修復のための会議を行っていた。とは言え――。
    「大量の軍備、そして内情を知る兵士たちからの証言。それを突きつけられては、なだめすかし、ごまかそうとしても無駄でしょう」
    「ううむ……」
     中央政府からはすぐにでも、正式に「名代職追放」の辞令が下りかねない状況にあり、さらには制圧に出ようかと言う気配も濃いとみられている。
     交渉を誤れば即、大量の中央軍が攻めてくるのは明らかだった。
    「……戦うしかないのか、最早?」
    「なりません!」
     開き直って交戦を提案した一富王に、家臣たちからは反対が相次ぐ。
    「いくら軍備を蓄えたとて、人・設備・戦略性、さらには道義的にまで、我々は著しく劣っております!」
    「戦えばほぼ間違いなく敗北するでしょう。よしんば、奇跡的に中央軍に勝ったとしても、それで中央政府が潰れるわけもなく」
    「勝っても負けても、我々は非難の的にされるでしょう。言わば戦った瞬間、我々は潰されます。戦争の面でも、国際社会的にも」
    「……ぬう」
     一富王は頭を抱え、自分たちの行動を後悔していた。
    「わしがあの男の言うことを聞いたりしなければ、こんな結果にはならなかった。悔やみきれん……!」
    「陛下……」
     家臣たちは、この恰幅の良い国王が、これほどまでに縮こまる様を目にし、胸を痛めた。

     と――。
    「お邪魔します」
     扉を静かに開け、会議の場に『あの男』――この騒動の張本人、サザリーが割って入ってきた。
    「……貴様……!」
     沈んでいた一富王は、サザリーを見るなり立ち上がり、傍らの薙刀を手に取る。
    「へ、陛下!」
    「お、お収め下さい!」
     ざわめく家臣たちに耳を貸さず、一富王は薙刀を構えたまま、ドスドスと足音を立ててサザリーの方へと向かう。
    「わ、わわわっ、ちょ、陛下、陛下、陛下! 落ち着いて下さい、陛下ってば!」
     サザリーは顔を青ざめさせ、王から逃げ回る。
    「うるさい! 貴様のせいで、我々は……!」
    「その件なんです! その件で、一通り話をまとめてきまして!」
     その一言に、一富王の足が止まる。
    「まと……、めた?」
    「は、はい! 僕のツテを使ってですね、あの、中央の方を、はい、それなりに諌めてもらってですね、現状は何とか、様子見と言う段階まで、向こうの警戒を解かせました!」
    「……詳しく、説明してみろ」

     にらみつけてくる国王・家臣・将軍たちに囲まれ、サザリーはしどろもどろながらも説明した。
    「えーとですね、まあ、……ともかく、追って説明するとですね。
     中央政府がまず下そうとした、この国に対する措置って言うのが、『名代職追放、及び敵対組織への積極的防衛』だったんです。
     これはですね、造反・謀反を起こした親中央政府国・組織に対して、最も重い類の措置になります。一つの国の中で例えるなら、これは重反逆罪とか国家転覆罪に当たりますね。下されれば確実に、中央軍が大挙して押しかけ、央南は一掃されたでしょう。
     ただ、まあ、この処置を決定しようとした天帝も、そんな理由では軍を動かせないわけで」
    「何故だ? 中央政府の全権限を有しているだろう?」
    「それなんですが、まあ、確かに、全権を握っているのは握ってるんです。
     でも『名代職』って言うのは、初代の天帝であるゼロ・タイムズ帝が命じたもの、つまり天帝教の主神が自ら命じたものなんです。
     自分たちの神を否定するようなことは、天帝教の教皇、即ち当代の天帝であるが故に、できるはずがないんですよ。もしそれを強行しようものなら、それはもう、天帝と呼べません」
    「ふむ……」
    「僕のツテがそう説得して、何とか軍が動くのは止めさせたんです。
     後、名代職の追放って言う処分を『権限の停止』、つまり名目上は名代職のまま、その権力の行使だけは禁止するってレベルにまで、処分を軽くすることはできました。
     だけども、やはり今のところは、それ以上には覆すことができませんでした。何と言っても、実際に軍備を用意していたわけですし、兵士たちからの情報もあったわけですから。
     でもですね、……そう、ここなんです。ここが、重要なんですが」
     そう言って、サザリーは不気味な笑みを浮かべた。
    「ここにいらっしゃる、まさに『清王朝の中心』の皆さんの誰が、正式に、公然と、『中央政府を攻撃する』と言いましたか?」
    「……!」
    「そう、軍備と兵士の証言から、こちらに叛意があると解釈されただけです。まだここにいらっしゃる誰も、それを認めていない。
     だから今後は、その軍備が中央政府を攻撃するために用意されたものではなく、また、兵士たちの証言に関しても、彼らの現場判断、状況認識能力の甘さから、清朝軍の本意と離れた解釈をしていた、と広く説明するんです。
     まあ、それでも、口だけじゃ納得はしていただけないでしょう。ですから、軍備を実際に使うんです。中央政府へ、じゃなく、頭を悩ませているもう一つの要因、反乱軍へと。
     それで全ての辻褄が合わせられます。元々、中央政府に応援要請したのだって、反乱軍を潰すためだったんですし。軍備を反乱軍へ向けて使えば、信じてもらえるでしょう。
     あと、まあ、央中からツケをどうのこうの言ってきてますが、これについても、僕がツテの力を借りて、何とかしますので」
    「……いいだろう。今一度、信用してやろう」
     ずっとサザリーをにらみつけていた一富王は、ようやく納得してくれた。
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