「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第5部
火紅狐・連帯記 3
フォコの話、231話目。
青州併合作戦。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
双月暦311年4月の、終わり。
ランドは次の策として、青江、そしてそこを州都とする青州を陥落させることを提案した。
「ここはコウカイ、ハクケイに並ぶ海運の要所です。ここを陥とせば、清朝軍の機動力は大幅に落ちます。
既に今現在、陸における彼らの勢い、士気は大幅に低下しています。一向に、最初の防衛ラインを奪還するどころか、玄州がこちらに味方したことで、大幅な後退を余儀なくされたからです。
そこで海の主導権も奪ってしまえば、軍や臣民の大半が戦闘意欲を無くすのは確実。戦争を継続するのが困難になるでしょう」
「ふむ、実際に戦う以上に、大きな効果を挙げようと言うわけか」
ランドとの付き合いも2年近くに及び、元々教官になるくらいには頭の良い玄蔵も、戦略理論を多少は理解してきたらしい。
「そう言うことです。ただ、問題は2点。
現在、我々はテンゲンからここへ向かう直通路、青玄街道を北上しつつありますが、流石に守りが堅く、陸路からの攻略は非常に難しいこと。
もう一点は、戦争のために港が封鎖されてしまい、少数の軍艦以外には漁船、商船、連絡船、つまり一般の船も通行不可能になってしまっていること。
即ち、外から攻め込むことは非常に困難となっています」
「では、どうすれば陥落できると?」
「理屈は簡単、外から駄目なら中から、と言う手ですね。
密かに中へ入り、封鎖と防衛を指揮している清朝軍を御してしまえば、容易に陥とせるでしょう」
「なるほど。確かに理屈の上では、であるな。……実際にはどう考えている?」
玄蔵の問いに、ランドはチラ、と大火を見た。
「彼は『反則技』を持ってますからね。ここで使わなきゃ、いつ使うんだって話です」
「何?」
うざったそうに、細い目をさらに細める大火に構わず、ランドはこう命じた。
「タイカ、『テレポート』でここに侵入してくれ」
「簡単に頼むな」
大火は肩をすくめ、反論してきた。
「青江には少なくとも、3000ほどは兵力があったはずだ。それを俺一人で相手など、労力と対価が釣り合わん」
「じゃ、仕事量が少なけりゃやってくれるんだね?」
「どう言う意味だ?」
ランドは会議から離れて雑談していたイールとレブに手を振り、彼らにも命じた。
「一緒にセイコウに行って、基地に侵入してきてほしいんだ」
「侵入って、まさか暗殺でもしろって言うの?」
嫌そうな顔をするイールに対し、ランドは手を振りながらこう続ける。
「勿論、3対3000でチャンバラやってきてって言うわけじゃない。もっと簡単に、……そう、3対2くらいで仕事してもらうつもりだよ」
「対、……2?」
いぶかしがる三人に、ランドは作戦を説明し始めた。
「結論から言えば、やってほしいのは説得なんだ。
前回の玄州攻略時みたいに、あの時は向こうから――玄州の知事から連絡が来て、『協力し合おうじゃないか』って言われただろ?」
「うむ。清王朝打倒後に玄州の独立、即ち一個の国として存在できるように協力することを条件に、玄州の焔軍への加入を申し出てきた時の話だな」
「そう、それです。結果、僕たちは何か月もかけて破ろうとして来た壁を、すんなり通ることができた。
今回も同じ効果を狙って、青州の知事らに働きかけようと思うんです」
「なるほど」
「ただ前述の通り、まともに乗り込んで説得することは不可能です。使者を送っても、門前払いを食らってしまいましたからね。
だからもっと、直接的に説得しようかと」
「ふむ。つまり、その知事をさらい、ここに連れて来いと言うわけか」
大火の読みに、ランドはにっこりと笑ってうなずいた。
「そう、その通り。で、知事だけじゃなく、もう一人お願いしたい」
「誰だ?」
「青州の防衛を任されてる将軍もさ。
調べたところ、この将軍と知事とは、懇意な関係にある。知事だけを説得しても、軍が反抗的じゃ意味が無い。
説得するなら、両方だ」
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青州併合作戦。
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双月暦311年4月の、終わり。
ランドは次の策として、青江、そしてそこを州都とする青州を陥落させることを提案した。
「ここはコウカイ、ハクケイに並ぶ海運の要所です。ここを陥とせば、清朝軍の機動力は大幅に落ちます。
既に今現在、陸における彼らの勢い、士気は大幅に低下しています。一向に、最初の防衛ラインを奪還するどころか、玄州がこちらに味方したことで、大幅な後退を余儀なくされたからです。
そこで海の主導権も奪ってしまえば、軍や臣民の大半が戦闘意欲を無くすのは確実。戦争を継続するのが困難になるでしょう」
「ふむ、実際に戦う以上に、大きな効果を挙げようと言うわけか」
ランドとの付き合いも2年近くに及び、元々教官になるくらいには頭の良い玄蔵も、戦略理論を多少は理解してきたらしい。
「そう言うことです。ただ、問題は2点。
現在、我々はテンゲンからここへ向かう直通路、青玄街道を北上しつつありますが、流石に守りが堅く、陸路からの攻略は非常に難しいこと。
もう一点は、戦争のために港が封鎖されてしまい、少数の軍艦以外には漁船、商船、連絡船、つまり一般の船も通行不可能になってしまっていること。
即ち、外から攻め込むことは非常に困難となっています」
「では、どうすれば陥落できると?」
「理屈は簡単、外から駄目なら中から、と言う手ですね。
密かに中へ入り、封鎖と防衛を指揮している清朝軍を御してしまえば、容易に陥とせるでしょう」
「なるほど。確かに理屈の上では、であるな。……実際にはどう考えている?」
玄蔵の問いに、ランドはチラ、と大火を見た。
「彼は『反則技』を持ってますからね。ここで使わなきゃ、いつ使うんだって話です」
「何?」
うざったそうに、細い目をさらに細める大火に構わず、ランドはこう命じた。
「タイカ、『テレポート』でここに侵入してくれ」
「簡単に頼むな」
大火は肩をすくめ、反論してきた。
「青江には少なくとも、3000ほどは兵力があったはずだ。それを俺一人で相手など、労力と対価が釣り合わん」
「じゃ、仕事量が少なけりゃやってくれるんだね?」
「どう言う意味だ?」
ランドは会議から離れて雑談していたイールとレブに手を振り、彼らにも命じた。
「一緒にセイコウに行って、基地に侵入してきてほしいんだ」
「侵入って、まさか暗殺でもしろって言うの?」
嫌そうな顔をするイールに対し、ランドは手を振りながらこう続ける。
「勿論、3対3000でチャンバラやってきてって言うわけじゃない。もっと簡単に、……そう、3対2くらいで仕事してもらうつもりだよ」
「対、……2?」
いぶかしがる三人に、ランドは作戦を説明し始めた。
「結論から言えば、やってほしいのは説得なんだ。
前回の玄州攻略時みたいに、あの時は向こうから――玄州の知事から連絡が来て、『協力し合おうじゃないか』って言われただろ?」
「うむ。清王朝打倒後に玄州の独立、即ち一個の国として存在できるように協力することを条件に、玄州の焔軍への加入を申し出てきた時の話だな」
「そう、それです。結果、僕たちは何か月もかけて破ろうとして来た壁を、すんなり通ることができた。
今回も同じ効果を狙って、青州の知事らに働きかけようと思うんです」
「なるほど」
「ただ前述の通り、まともに乗り込んで説得することは不可能です。使者を送っても、門前払いを食らってしまいましたからね。
だからもっと、直接的に説得しようかと」
「ふむ。つまり、その知事をさらい、ここに連れて来いと言うわけか」
大火の読みに、ランドはにっこりと笑ってうなずいた。
「そう、その通り。で、知事だけじゃなく、もう一人お願いしたい」
「誰だ?」
「青州の防衛を任されてる将軍もさ。
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