黄輪雑貨本店 新館


    「火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・連帯記 4

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    フォコの話、232話目。
    盤石の体制。

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    4.
     湯嶺での話し合いから一週間後、イールたちは大火の「テレポート」によって、再び青江の地を訪れていた。
    「あんまり、変わった様子は無いわね」
     2年ぶりに訪れた青江の街は、戦時中とは思えないほど穏やかだった。
    「統治がうまく行ってるんだろうな。北方で軍閥がポコポコできてた時とは大違いだ」
    「そーね。あん時は、あたしもあっちこっちで暴れまわって、……って、そんな昔話してる場合じゃないわね」
     敵陣――清朝軍の海軍基地をそっと伺うため、イールたちは港をそれとなく歩いていた。
     ところが、こちらも特に乱れた様子が見られない。
    「兵士が港で乱暴してる感じも無し。……うわー」
     兵士たち2名が、通りがかった漁師に対してさわやかに挨拶しているのを見て、イールはうなる。
    「北方とえらい違いね。あっちじゃあんなこと、まず無かったし。むしろ殴り倒して荷物を強奪、みたいな」
    「そりゃ極端、……とも言いきれないのがなぁ」
     軽くカルチャーショックを受けつつ、イールたち三人は人気の無いところで、今後の作戦を確認した。
    「標的は2名、だったわね。まず、ここの軍を統率してる司令官、ヨウ少将。それから青州知事、ミシマ氏。
     この二枚看板による軍事・政治体制が、セイコウ、そして青州の堅固な防衛力を維持している。……って言ってたわね」
    「その二人を、説得して協力させる。うまく行けば……」
    「セイコウ、そして青州を攻略できる、と」

     大火を湯嶺へ向かわせていた間、ランドはただ釣りに興じていたわけではない。
     今後の展開を見越し、青江にて情報収集を行っていたのだ。その内容は央南全体の事情や世界動向だけではなく、この青江自体についても及んでいた。
     そこで聞いたのが、前述の二枚看板と、その関係である。
    「曰く、『どっちも似た者同士の幼馴染』で、『超が付くほど真面目』で、『曲がったことが大嫌い』だとか。
     そんな関係と性格だから、普段から軍事面・政治面での連携を強めようってことで、閣僚級からの話し合いを定期的に行ってるらしいわ。
     んでもってこんなご時世だし、その頻度も多くなってるとか。……そこでランドが考えたのが、その話し合いの最中、『テレポート』で二人をトウリョウまで引っ張り出して、そこで説得して落とす、って作戦」
    「なるほどなぁ。……んで、その話し合いってのは、いつやってるんだ?」
     イールはそこで、基地を指差した。
    「今日よ」



     その、基地内。
    「……以上で、青玄街道北側における防衛体制の第14次修正を終了します。他に何か、意見はありますか?」
     青州の政治と軍事を司る面々が揃い、極めて真面目に協議を行っていた。
    「一ついいかな?」
     そこで手を挙げたのが、二枚看板の一人、短耳の三縞知事である。
    「どうぞ」
    「三岬から軍事物資が届く、と言う話を先月聞いていたんだが、どうなったんだ?」
    「あ、と」「それについては小生が」
     応じたのはもう片方の、虎獣人の楊少将。
    「軍本営からの伝達では、大月での戦いが想定以上に激しく、やむなく物資をそちらへ回したとか。そのため、我々に送られる分は後回しになっている。もう一月後になるそうだ」
    「そうか。……まあ、青州の備蓄はまだ余裕があるし、そう問題でも無いな。では民間への徴発はまだ、控える方向で大丈夫だろうか?」
    「はい、問題ありません」
    「分かった。……他に議題は?」
     他に手を挙げる者はなく、そのまま協議は終了した。

     協議を終え、三縞知事と楊少将の二人はそのまま会議室に残って、疲れきった顔で茶をすすっていた。
    「いや、まったく気の休まる間がないね」
    「本当になぁ。本営がもう少しまともに仕事をしてくれれば、俺も羽を伸ばせるのだが」
    「まったく同意見だよ、はは……」
     そんな風に、互いに気を抜いて談笑していたところに――。
    「失礼する」
     突然、声が飛んできた。
    「うん?」「誰だ?」
     二人が声のした方に振り向く。
     そこには、真っ黒な男が立っていた。
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