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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・異軍記 2

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    フォコの話、235話目。
    しましまピエロの戯言。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
     大火は湯嶺でも青江でもない、別の場所に飛んでいた。
    「誰だ、お前たちは?」
     大火の目の前には、まるでピエロのように奇抜な服を身に付けた二人組が並んでいた。
     まず口を開いたのは、白と黒のストライプ柄のピエロ服。
    「ようこそおいでくださいました、旧き世界より現われし奸雄、克大火様」
     続いて口を開いたのは、赤と黒のストライプ。
    「あなた様が此度の戦いに手をお貸しになっているとお聞きし、これは一度および申し上げねば、と」
    「俺を知っているのか? 何者だ?」
     大火が尋ねるが、ピエロたちは小馬鹿にしたように肩をすくめる。
    「まあまあまあまあ、あなた様がそんなことを仰るとは」
    「いつもいつも、『俺が』『俺が』と自意識過剰に振舞うあなた様が」
    「何者だ、と聞いている」
     大火は目の前の子供二人に、苛立ちを覚えていた。
    「あらあらあらあら、お怒りでございますですか」
    「こんないたいけな、可愛らしい子供たちに、なんて態度でございましょうか」
    「ふざけるのもそこまでにしてもらおうか、道化ども」
     大火は刀を抜き、ピエロたちに向ける。
    「それほど分不相応なオーラを放つお前たちが、ただの子供であるわけがない。
     まず、名を名乗れ」
    「クスクスクスクス」「クスクスクスクス」
     ピエロたちは大火の質問に答えようとしない。
     だが、大火にはその笑い方で大体が察せられた。
    「……なるほど、……『あいつ』、か」
    「さすがさすが、流石でございますね」
    「やはりあのお方が唯一お認めになったお方でございます」
     と、ピエロたちは被っていた帽子をそっと脱ぐ。
     その下に現れた顔を見て、大火は表情をこわばらせた。
    「……」
    「どうされました、大火様」
    「何かお気に障る点でも?」
    「非常に不愉快だ。
     俺を知っていると言うのならば、俺の性格も知っているだろう? 何度も同じ質問をさせるな、道化ども」
     大火から6度も同じ質問をぶつけられ――普段の大火であれば、この時点で斬り捨てている――ようやく、ピエロたちは答えた。
     まず、白黒が名乗る。
    「わたくしの名前は、コブラ」
     続いて、赤黒も同様に名乗った。
    「わたくしの名前は、ヴァイパー」
    「わたくしたちは、あなたをここへ誘導し、足止めするために参上いたしました」
    「さあ、わたくしたちとお戯れなさいませ、克大火様」
     ピエロたちは帽子を被り直し、大火に襲い掛かってきた。



     軍港の正門前に着いたイールたちは、中の様子を伺おうとしていた。
    「ねえ、あんた。さっきから中が騒がしいみたいだけど、何かあったの?」
     とりあえず真正面から、門番をしている兵士に尋ねてみる。
    「何者だ?」
    「あたしたちのコトはどーでもいーから。さっき岬にいたんだけど、悲鳴が聞こえてきたのよ」
    「悲鳴? 基地の中からか?」
     思いもよらない話に、兵士は目を丸くする。
    「ええ。入らせてもらえない?」
    「何をいきなり……」
     イールの願いに対し、当然、兵士は首を横に振る。
    「多少何かしらの問題が起ころうと、ここは軍の、いや、国の重要施設だ。おいそれと通すわけには……」
     と、兵士が突っぱねようとしたところで――。
    「たっ、助けてくれーッ!」
     門の奥、基地の正面玄関から、他の兵士たちがバタバタと飛び出してきた。
    「ど、どうした!?」
    「沖からいきなりやって来た将校たちが、俺たちを殺そうとするんだ!」
    「こっちが何言っても、『そうか』『では反抗か』って言うばかりで、聞こうとしないんだ!」
    「もう4人やられた! しかも抵抗しようにも、全然歯が立たない!」
    「な、ん、……え? ちょっと落ち着け、どう言うこと……」
     要領を得ない、しかし、鬼気迫る話に、門番の兵士が気を取られる。
     その隙を突き、イールとレブはひょい、と門を抜けた。
    「あっ、……ま、待て! 待つんだ!」
    「待たねえっ!」「入らせてもらうわよ!」
     イールたちは中から飛び出してくる兵士たちをかき分け、基地の中へ飛び込んでいった。
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