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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・異軍記 3

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    フォコの話、236話目。
    オーバーテクノロジー。

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    3.
     ピエロたちの動きは、いたいけな見た目とはあまりにもかけ離れた、異様な早さと鋭さを伴っていた。
    「しゃッ」「ひゅあッ」
     びゅ、びゅんと、恐ろしい風切り音が立つ。
     だが、大火はさらりと避け、かわしざまに刀で斬り返した。
    「ひゃあ!?」「おおっとっと!?」
    「口真似もろくにできん、粗悪コピーどもめ」
     弾き飛ばされたピエロたちを見て、大火が舌打ちする。
    「『あいつ』の作品にしては、出来が悪すぎる」
    「そう思われますか」「そうお考えですか」
     が、ピエロたちは平然と立ち上がった。
    「あまりわたくしどもを、刀で斬り付けぬ方が懸命かと思われますが」
    「何?」
     言われて刀を見ると、ほんのわずかだが刃こぼれが見受けられた。
    「何……? この『夜桜』が、欠けただと」
    「ですから申し上げました通りでございます」
     コブラがピエロ服を開き、斬り付けられた胴を見せ付ける。
    「仰る通り、わたくしどもは『あの方』の作品でございます。
     チタン鋼とミスリル化シリコンゴムでできた、高性能・高知能ゴーレム。勿論『神器』処理も施されてございます」
     続けてヴァイパーが口を開く。
    「その『黒花刀 夜桜』、大事な大事な、だあいじなお弟子様、お弟子様たちの合同作品でございましょう?
     そう簡単に欠いたり折ったりされてしまっては、『あの子』も悲しむでしょうに」
    「黙れ」
     大火は「夜桜」を納め、空手でピエロたちに構える。
    「まったく……、チタンに合成樹脂、か。なるほど、『この世界』の奴らにしてみれば、異世界の物質も同然だな。お前たちが世に出れば、どんな混乱を引き起こすか。
     その上で、お前たちからそんな説明をさせるとは。つくづく『あいつ』の精神は異常だ。悪魔さえ呆れさせ、忌避するほどの狂人め」
    「『あの方』を侮辱なさいますか」
    「なんと恐れを知らぬ方でありましょうか」
     おののくピエロたちに、大火はフンと鼻を鳴らす。
    「高知能が聞いて呆れるな、道化ども。
     俺は『そいつ』の師匠だったのだ。当然の如く、俺は『そいつ』より偉い。恐れる理由など、どこにある?
     そしてもう一度言おう」
     大火は懐から、何かを取り出した。
    「それは……」「ま、まさか」
    「ベラベラと自分の組成をしゃべり倒し、敵の手や動きも満足に捉えられぬお前たちの、どこが高性能で高知能だと言うのだ。
     寝言は寝て言え」
     大火の手に握られていたのは、金と紫とに輝く、金属性の手帳だった。
    「『テルミット++』」
    「ひえ……」「おやめ……」
     言う暇もなく、ピエロたちは炎上した。
    「刀を使うな、と言うのならば、使わずにおいてやる。
     その魔術は、チタン鋼であろうとミスリル化処理したシリコンゴムであろうと燃やし尽くす高温を発生させる。さっさと融けるがいい、道化ども」
    「ひあぁぁぁ」「うえぇぇぇ」
     ピエロたちは10秒も経たずに液化し、地面に染み込んでいった。
    「お前たちは時代を少々、先取りしすぎた存在だ。もう2、300年は、眠っているがいい」
     大火は輝きの消えた手帳を懐にしまい、その場から消えた。



     基地内に入ったイールたちは、とりあえず壁に下げられていた刀を手に取り、装備していた。
    「タイカみたいにいつもご自慢の愛刀を佩いて、ってのよりも、こうしてその場で用意する方が気楽よね。お手軽に済ませられるし」
    「そっかなぁ……? 俺は欲しいけどな、自分専用の武器。
     っつか、目釘の辺りがカチャカチャ言ってんぞ、これ。ろくな手入れしてねーな」
    「危ないわねぇ。振り抜いたら刀身、ぶっ飛んでっちゃうんじゃない?」
    「……別のを持ってくか」
     と、話しているところに――。
    「繰り返す。これより青江、及び青州は我々の……」
     抜き払った刀から血を滴らせたまま、将校の一人がこちらへ向かってきた。
    「あいつ……、かしら。この騒ぎの原因は」
    「間違いないだろう。……なんかブツブツ言ってんのが不気味だな」
     二人の姿を確認した将校は、フラフラと刀を上げた。
    「武器を持っている。反抗者。処分すべし」
     ぼそ、とつぶやき、将校は突然襲い掛かってきた。
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