「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第5部
火紅狐・異軍記 4
フォコの話、237話目。
将校たちの正体。
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4.
「あ、タイカ。どこ行って……」
戻ってきた大火に声をかけようとして、ランドは口をつぐむ。大火が非常に、不機嫌そうな顔をしていたからだ。
と、それに気付いたらしく、大火はいつもの仏頂面をしてみせる。
「……ああ、少し野暮用で、な」
「そ、そっか。うん、野暮用じゃ、ね。
あー、と。その、タイカ? そろそろヨウ少将とミシマ知事を……」
「ああ、そうだったな。二人は居間に?」
「うん。……ねえタイカ、差し支えなければ聞きたいんだけど」
見た目にはすっかり、普段通りの大火に戻ったため、ランドは尋ねてみた。
「なんだ?」
「野暮用って?」
「……差し支えがある」
表情こそいつも通りではあるが、目には苛立ちの色が見える。仕方なく、ランドはそれ以上の追及をやめた。
「そっか。……ならいいや」
「ああ」
大火もそれ以上何も言わず、居間の方へと消えた。
「おっとぉ!」
将校の初太刀を、レブが軽く避ける。
「やる気ってんなら、容赦しねえぜッ!」
そしてかわしざまに、レブは鞘に入ったままの刀をぐりっ、と将校の胸に捻じ込んだ。
通常、単純に「押す」よりも、「捻り込む」方が、生物の柔らかい皮膚・筋肉、そして内臓に与えるダメージが大きい。
レブの執ったこの攻撃も、通常ならば悶絶するくらいの痛みを相手に与えるはずだった。ところが――。
「反抗者。処分。反抗者。反抗者。処分」
「……あん?」
のけぞりはしたものの、将校の表情に変化は無い。何事も無かったかのように、もう一度刀を振り下ろしてきた。
「と、とっ」
予想外の反応だったが、それでもレブは紙一重でかわし、今度は腹に向かって突きを入れる。
「オラッ! ……って、マジかよ」
だが、これも効いた様子は無い。
「丹田(人体の急所。おおよそ、へその下)狙ったんだけどな……?
さっきのと言い、普通なら白目剥いて気絶してるはずなんだが」
「様子だけじゃなく、なんか基本的におかしいわよ、コイツ」
「ああ。……とは言え、事を荒立てたくもないしなぁ」
レブたちは将校と距離を取りながら、互いに困り顔で会話を交わす。
「イール、雷の術でパチッとやって、気絶とかさせられないか?」
「実は軽くやってみた。……んだけど、平気みたい」
「マジで?」
「気絶させる以上に強くやると、命に関わってくるし。……ココで殺しだの何だのって話になったら、いい印象も無いだろうし」
「つっても、向こうは4人やったって言ってるし」
「うーん……」
と、そうこうしているうちに、背後からも別の将校がやって来た。
「囲まれたわね。なら、……やるしかないか」
イールは肩をすくめ、呪文を唱える。
「『サンダーボルト』!」
イールの指先からバチッ、と青白い火花が飛び、前にいた将校に直撃する。
「……が、がガががガ」
すると、将校は人間の声とは思えない音をのどから漏らしながら、その場に「崩れ落ちた」。
「え……!?」
「なっ……、く、首がもげ、……!?」
将校だった「モノ」は首と手足がバラバラに崩れ、半透明の、無数の石に変わり果てた。
「い、イール、お前一体、何を……!?」
「へ、変なコトなんかしてないわよ!? ただ、雷の術を撃っただけ、……なのに」
「いや、……もしかしたら、こいつら、始めっから」
「……ま、まさか」
イールとレブは同時に、こうつぶやいた。
「……人間じゃ……無かった……?」
その直後、背後にいた将校が襲い掛かってきた。
「処分。処分。処分」
二人は同時に、ぞくりと身震いした。
「何が……起こってるんだ……!?」
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将校たちの正体。
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4.
「あ、タイカ。どこ行って……」
戻ってきた大火に声をかけようとして、ランドは口をつぐむ。大火が非常に、不機嫌そうな顔をしていたからだ。
と、それに気付いたらしく、大火はいつもの仏頂面をしてみせる。
「……ああ、少し野暮用で、な」
「そ、そっか。うん、野暮用じゃ、ね。
あー、と。その、タイカ? そろそろヨウ少将とミシマ知事を……」
「ああ、そうだったな。二人は居間に?」
「うん。……ねえタイカ、差し支えなければ聞きたいんだけど」
見た目にはすっかり、普段通りの大火に戻ったため、ランドは尋ねてみた。
「なんだ?」
「野暮用って?」
「……差し支えがある」
表情こそいつも通りではあるが、目には苛立ちの色が見える。仕方なく、ランドはそれ以上の追及をやめた。
「そっか。……ならいいや」
「ああ」
大火もそれ以上何も言わず、居間の方へと消えた。
「おっとぉ!」
将校の初太刀を、レブが軽く避ける。
「やる気ってんなら、容赦しねえぜッ!」
そしてかわしざまに、レブは鞘に入ったままの刀をぐりっ、と将校の胸に捻じ込んだ。
通常、単純に「押す」よりも、「捻り込む」方が、生物の柔らかい皮膚・筋肉、そして内臓に与えるダメージが大きい。
レブの執ったこの攻撃も、通常ならば悶絶するくらいの痛みを相手に与えるはずだった。ところが――。
「反抗者。処分。反抗者。反抗者。処分」
「……あん?」
のけぞりはしたものの、将校の表情に変化は無い。何事も無かったかのように、もう一度刀を振り下ろしてきた。
「と、とっ」
予想外の反応だったが、それでもレブは紙一重でかわし、今度は腹に向かって突きを入れる。
「オラッ! ……って、マジかよ」
だが、これも効いた様子は無い。
「丹田(人体の急所。おおよそ、へその下)狙ったんだけどな……?
さっきのと言い、普通なら白目剥いて気絶してるはずなんだが」
「様子だけじゃなく、なんか基本的におかしいわよ、コイツ」
「ああ。……とは言え、事を荒立てたくもないしなぁ」
レブたちは将校と距離を取りながら、互いに困り顔で会話を交わす。
「イール、雷の術でパチッとやって、気絶とかさせられないか?」
「実は軽くやってみた。……んだけど、平気みたい」
「マジで?」
「気絶させる以上に強くやると、命に関わってくるし。……ココで殺しだの何だのって話になったら、いい印象も無いだろうし」
「つっても、向こうは4人やったって言ってるし」
「うーん……」
と、そうこうしているうちに、背後からも別の将校がやって来た。
「囲まれたわね。なら、……やるしかないか」
イールは肩をすくめ、呪文を唱える。
「『サンダーボルト』!」
イールの指先からバチッ、と青白い火花が飛び、前にいた将校に直撃する。
「……が、がガががガ」
すると、将校は人間の声とは思えない音をのどから漏らしながら、その場に「崩れ落ちた」。
「え……!?」
「なっ……、く、首がもげ、……!?」
将校だった「モノ」は首と手足がバラバラに崩れ、半透明の、無数の石に変わり果てた。
「い、イール、お前一体、何を……!?」
「へ、変なコトなんかしてないわよ!? ただ、雷の術を撃っただけ、……なのに」
「いや、……もしかしたら、こいつら、始めっから」
「……ま、まさか」
イールとレブは同時に、こうつぶやいた。
「……人間じゃ……無かった……?」
その直後、背後にいた将校が襲い掛かってきた。
「処分。処分。処分」
二人は同時に、ぞくりと身震いした。
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