黄輪雑貨本店 新館


    「火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・停革記 1

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    フォコの話、250話目。
    停まった革命。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     清王朝は、呆気なく焔軍に降伏した。
     それこそ四肢を絶ち、首を裂き、心臓を突き刺されたかの如く、その末期は惨々たるものだったと言う。

     まず、次代の王に選ばれるだろうと目されていた清双葉、清三守の両名が、宮殿から姿を消していたこと。
     どんな国であれ、その代表・主軸となる者がいなければ、まとまりはしない。まさにその代表であった王が崩御し、次の拠り所を求めようと言う時に、そうなるべき二人ともが、いなくなってしまったのだ。
     この一事だけでも、清王朝が受けた混乱は相当なものだった。

     さらに、渉外役を買って出たはずの商人、サザリー・エール氏も姿を消したこと。
     彼に交渉を任せきりにしていた清王朝の重臣・将軍たちは、白京のすぐ前に現れた焔軍を見て、慌てふためいた。
     交渉の場が立っていたなら、完全武装した大軍に取り囲まれたりなど、されるはずが無いからである。大急ぎで交渉を申し出ようとしたが、制圧・占領するつもりで迫る兵士たちが、それを聞くはずもない。
     結局、相手の混乱を玄蔵やランドが把握し、兵士たちを制止するまでに、半日以上、十数名の犠牲を出すこととなった。

     そしてようやく話し合いに移っても、主権もいなければ渉外役もいない、と言う状態である。
     まともな対応などできるわけもなく、焔軍の到着から2日を待たずして、清王朝は何の条件も付けられずに降伏した。



    「まあ……、なんだな」
     玉座を前にし、玄蔵とランド、その他焔軍に付いていた各州の知事や将軍は、並んで立っていた。
    「座るか、統領殿?」
     知事の一人にそう声をかけられたが、玄蔵は渋る。
    「いや、……うーむ。
     これまでの戦いで、貴君らとはいささかの『騒ぎ』があったからな。すんなり『拙者が央南の王である』と座り込んでは、角が立つと言うもの」
    「ま、そうですね。……とは言え、私たちが座っても、それは同様。
     とりあえず、真っ先にやるべきは清王朝が倒れたと言う報告を、中央政府に伝えないといけない」
    「まあ、そうなりますね」
     知事の意見に、ランドは小さくうなずく。
    「何だかんだと言っても、中央政府から名代職に任命してもらわないと、彼らと国交をつなげることはできませんし。
     それが済み次第、あなた方の中で首席、リーダー格の人物を選出しましょう」
    「ああ、それが妥当な線だろうな」
     と、元清王朝の左大臣、猫獣人の尾形が恐る恐る、声をかけてきた。
    「あのー……、それはちょっと、難しいのでは」
    「なに?」
     玄蔵に聞き返され、尾形大臣はぺたりと猫耳を伏せながら説明する。
    「あのですね、その、確かに今現在のところ、清王朝の政治機能は止まってしまっているわけですが、その止まっている原因はですね、主権の不在にあるわけでして」
    「であるから、拙者らの中からその主権を……」
    「いえ、ですから。主権はまだ、『こちら』にあるんです」
    「は……?」
     話が見えず、玄蔵らは怪訝な顔をする。
    「……あ」
     と、ランドがとある条文を思い出した。
    「世界平定憲法の第43条2項、『名代職の任命』のこと?」
    「え、ええ。そうです。『中央政府は、央中、及び央南における法治の権限を、現地における特定の家系に委譲する権利を有する』と言うもので」
    「それが43条ですよね。で、第2項って言うのが、『名代職に任ぜられた家系は、家長がその権利を放棄、または、中央政府から罷免を命じられない限り、その権利の維持が認められる』、……ですね」
    「ええ、そうです。良くご存じで」
    「昔は中央法の専門家みたいなものでしたから。……で、まあ。確かに言われたら、その通りですね」
    「ご理解いただけたようで……」
     と、話に付いていけない玄蔵が、ランドに尋ねてきた。
    「どう言うことだ?」
    「結論から言えば」
     ランドは肩をすくめ、こう答えた。
    「名代職は、僕たちが勝手になれるものではない、と言うことです」
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