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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第6部

    火紅狐・回西記 4

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    フォコの話、267話目。
    西方人気質。

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    4.
     サーシャのその言葉に、フォコは不穏なものを感じた。
    「最大の敵?」
    「ええ」
    「敵、っちゅうことは、何らかの攻撃なり、制裁を加えようと?」
    「その予定です」
     うなずきはするが、サーシャは詳しい説明をしない。そこでフォコの方から、推理を立ててみた。
    「商人がする攻撃っちゅうたら、資源や資材の差し止めとかですか?」
    「まあ、そんなところですね」
    「トット家の方と協力して?」
    「彼らの手も借ります」
    「他に攻撃があるとすれば、取引の停止ですな」
    「それも行う予定です」
    「西方商人最大の敵と仰ってましたけども、『大三角形』以外にも協力を?」
    「信用できる筋には話を通しているところです」
    「……割と、スラスラ答えていただけますな」
    「あなたも引き込もうかと考えているところです。今のところ私だけ、ですけれど」
     そう言って、サーシャはニコリと笑う。
    「僕たちも、信用していただけたようで」
    「ええ。先程の商談も、派手なうわさとは裏腹に、堅実かつ真っ当なものでしたし、あなたの話がまるきり嘘、とは思えません」
    「ありがとうございます」
     頭を下げたフォコに、サーシャは顔を近付けてきた。
    「今月24日の夜8時、ご予定は?」
    「……空いとります」
     フォコは頭を下げたまま、目を合わさず答える。
    「トット家の本拠、フェルミナ王国の城下町、ブラックヒルの郊外で、我々リオン家とトット家を中心とした会合を開く予定です。
     良ければあなた方も、いらしてください」
    「……はい」
     フォコは顔を挙げ、サーシャにニコリと笑顔を見せた。



     一通りの営業回りを終え、フォコたちは半月ぶりにセラーパークのエール商会本店に戻ってきた。
    「へぇ、『大三角形』を挙げてスパス潰し、か。それがうまく行けば、案外サザリー氏探しもうまく行きそうだね」
     話を聞いたランドは、ほっとした顔をした。
    「そうですな。……と言うか、僕たちが無理無理に介入せんでも、もしかしたらうまく行っとったんやないでしょうか?」
    「と言うと?」
     マフスに尋ねられ、フォコが説明しようとする。
    「ああ、話を聞いてた感じでは……」「嫌われまくってたんだよ、サザリーって奴をかくまってるその、アバントっておっさん。な?」
     が、途中でランニャが口をはさむ。
    「あ、うん、そやね」
    「だからさ、みんながみんな、いつか潰してやろうって思ってたし、そうなればアバント頼みのサザリーも……」「あのな、ランニャ」
     今度はフォコの方から、ランニャの話を遮る。
    「それ、今僕が説明したことやろ? 何で同じ話するん?」
    「え、……いや、ほら」
    「はぁ……。ま、ええけど。
     まあ、アバントの評判や経営能力以外でも、もう一つサザリー氏の逃亡生活が破綻するやろうなって要因があるんよ。思ってた以上に西方の、異邦人に対する『目』は厳しかったっちゅうことや。
     ちょっとでも土地の者と違うと、かなり目ざとく観察してきはるからな。こっちの人間であるサザリー氏はともかく、央南人の、年端もいかへん姉弟がうろうろしとって、それを気にせえへんようなお国柄ではない。
     ちょっとでも気になる奴が街に出とったら、一週間で国中にうわさが広まってもおかしくないようなトコなんや」
     フォコの説明が一段落すると同時に、またランニャが口を開く。
    「中央だったら、あんまり考えられないよな、それ。ウチのところでも、央南から来た職人はいっぱいいたし。ウチじゃそんなの気にしないのに、こっちはもう、変にジロジロ見られるし、かと言ってお店に行ったら、めちゃくちゃ無愛想だし」
    「せやね」
     もう一度ランニャの話を止めて、フォコが本題を続ける。
    「まあ、そんな感じやし、逃亡中の人間がホイホイ動けるような土地やない。
     あと、元々スパス産業の経営が行き詰っとったこともあるし、それにそもそも耳ざとい商人が、央南で国を潰した同業者、サザリー・エール氏の評判を聞いてへんっちゅうことは、まずない。
     逃走してる三人が三人、この国では異様に目立つ存在なんや。どこへ行っても、すぐ見つかってしまうやろな」
    「あ、えっと、うん、そうだよね! あたしもフォコ君とあちこち回って来たけどさー」「ランニャ」
     フォコがここで、ランニャに尋ねる。
    「さっきから何なん? ちょこちょこ口出してくるわりに、話を一々脱線させようとして……?」
    「え? そう? いや、そんなつもりじゃなくてさ、あたしはほら、フォコ君の……」
    「話が進まへん。ちょっと落ち着き」
    「……分かったよ」
     ランニャは憮然とした顔をし、ぷい、とそっぽを向いた。
    「……まあ、話を戻して。
     ともかく、僕たちはその、『大三角形』の会合に招待されたわけですわ。これは今後のことを考えるに、非常に大きなチャンスと言えます。
     うまく行けば、ここにいる元エール家ゆかりの僕たちが、新しい『大三角形』の一角になれます。そしてそれは将来的に、僕とランドさんの最終目標――ケネスたちの経済・軍事支配を破る一助となるでしょう」
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