「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
雪鈴遭妖 8
蒼天剣スピンオフ、第8話。
「鏡子」との再戦。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
8.
鏡子が眠ったのを確認してから数分後、彼女に変化が訪れた。
「すう……しゅう……しゅー……しゅるるる……」
「そろそろ怪物化するみたいね。
できる限りで、『マジックシールド』の出力を最大にするわ。ソレなら多分、見つかっても突破される恐れはないはず」
「頼んだわよ」
そうこうするうちに、鏡子はすっかり怪物へと姿を変えた。
「グルルル……」
「ねえ、小鈴」
雪乃も刀を抜きながら、小鈴に疑問をぶつける。
「どうしてあの子は、怪物になるのかしら?」
「何とも言えないわね。記憶によって体型や服装が変わるし、頭の中を反映してるのかしら。それとも『記憶』を取り込むのに、あの姿が都合がいいとか。……まあ、どれも推測でしかないけどね」
「鏡子」はうろうろと、辺りを見回している。
「気付かれたかしら……?」
「かもね。青蛇みたいに、臭いであたしたちのコトを察知してるのかも」
と、「鏡子」はピタ、と動きを止める。
その顔は寸分のブレも無く、こちらに向けられていた。
「……ばっちりバレてるわね」
「小鈴、頑張ってよ」
「も、もしもの時はよろしく」
「ええ」
しばらく止まっていたが、やがて「鏡子」はこちらに向かって駆け出した。
「グアアアッ!」
「『マジックシールド』、出力最大っ!」
昨夜のものより色の濃い盾が、二人の前に現れる。
が――。
「……クエ」
「鏡子」は盾の手前で止まり、すいっと横に動いた。
「えっ」
まさかの反応に、小鈴は目を丸くする。
「……これは覚えてたみたいね」
「ちょ、勘弁してよー!?」
盾をすんなり回避され、二人は慌ててその場から逃げだした。
昨夜は追ってこなかった「鏡子」だったが、今晩は違った。
どれだけ逃げても、しつこく追いかけて来るのだ。
「何でよ、もうっ!」
「『記憶』を喰ってないからよ! 多分、喰うまで追いかけて来るわ!」
二人は森を抜け、小川を越え、岩場を駆けるが、「鏡子」は依然、追走をやめようとしない。
「ゆ、雪乃っ!」
「なに!?」
「ちょっと、刀貸して!」
「どうする気!?」
「あたしの血、ちょこっと撒いとけば、止まるんじゃないかなって!」
「昨日はわたし、一晩動けなくなるくらいの血を流したのよ! あなたも同じことするつもり!?」
「……やっぱナシ!」
と――二人は同時に、唐突に立ち止まった。
「……っ」
逃げる先に、地面が無くなったからだ。
「前には崖、後ろからは怪物。……どうにかできそうなのは、後者しかないわね」
雪乃は覚悟を決め、刀を構えた。
「グルルルル……」
その気迫を感じたのか、「鏡子」は雪乃たちの数メートル前で立ち止まり、姿勢を低くして構える。
「気を付けて、雪乃。一気に間合いを詰めて、攻撃してくるつもりよ」
「ええ、分かってる」
雪乃は「鏡子」の真正面に立ち、刀に火を灯した。
「グルル……、グオオオッ!」
すると「鏡子」も大声を上げ、凶暴に伸びた前足の爪にぼっ、と火を灯す。
「……小癪な、ってところね。まさか我が焔流の秘術、こんな簡単に真似されるなんて」
だが雪乃は臆することなく、不敵に笑う。
「だけど真似たところで、その神髄まで会得できると思わないことね」
雪乃と「鏡子」は、同時に駆け出す。
「『火射』ッ!」
雪乃は「鏡子」の爪を、それこそ間一髪、雪乃の長い髪の先をほんの少し、掠める程度にかわす。
そしてすれ違いざま、雪乃は刀から火を放射した。
「グ、ギャアアア……ッ」
発射された火は「鏡子」の体中に突き刺さり、その全身を燃やす。
そして飛び込んできた勢いを止められず、「鏡子」は火だるまで、崖から落ちて行った。
「やった、……かしら?」
「そりゃ、落ちたんだし。……コレで死んでなかったら、マジでバケモノだわ」
二人は「鏡子」が落ちて行った崖下を、恐る恐る眺める。
「……真っ暗ね」
「かなり深いみたい……。あれだけ燃えてたのに、どこにいるか分からないわね」
と――雪乃の鼻腔を、焦げた臭いが通り抜ける。
「……!」
同時に殺気を感じ、雪乃は飛びのいた。
「小鈴、離れてッ!」
「え?」
雪乃の方に振り向いた小鈴の背後から、全身からブスブスと煙を上げる「鏡子」の影が飛び込んできた。
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「鏡子」との再戦。
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8.
鏡子が眠ったのを確認してから数分後、彼女に変化が訪れた。
「すう……しゅう……しゅー……しゅるるる……」
「そろそろ怪物化するみたいね。
できる限りで、『マジックシールド』の出力を最大にするわ。ソレなら多分、見つかっても突破される恐れはないはず」
「頼んだわよ」
そうこうするうちに、鏡子はすっかり怪物へと姿を変えた。
「グルルル……」
「ねえ、小鈴」
雪乃も刀を抜きながら、小鈴に疑問をぶつける。
「どうしてあの子は、怪物になるのかしら?」
「何とも言えないわね。記憶によって体型や服装が変わるし、頭の中を反映してるのかしら。それとも『記憶』を取り込むのに、あの姿が都合がいいとか。……まあ、どれも推測でしかないけどね」
「鏡子」はうろうろと、辺りを見回している。
「気付かれたかしら……?」
「かもね。青蛇みたいに、臭いであたしたちのコトを察知してるのかも」
と、「鏡子」はピタ、と動きを止める。
その顔は寸分のブレも無く、こちらに向けられていた。
「……ばっちりバレてるわね」
「小鈴、頑張ってよ」
「も、もしもの時はよろしく」
「ええ」
しばらく止まっていたが、やがて「鏡子」はこちらに向かって駆け出した。
「グアアアッ!」
「『マジックシールド』、出力最大っ!」
昨夜のものより色の濃い盾が、二人の前に現れる。
が――。
「……クエ」
「鏡子」は盾の手前で止まり、すいっと横に動いた。
「えっ」
まさかの反応に、小鈴は目を丸くする。
「……これは覚えてたみたいね」
「ちょ、勘弁してよー!?」
盾をすんなり回避され、二人は慌ててその場から逃げだした。
昨夜は追ってこなかった「鏡子」だったが、今晩は違った。
どれだけ逃げても、しつこく追いかけて来るのだ。
「何でよ、もうっ!」
「『記憶』を喰ってないからよ! 多分、喰うまで追いかけて来るわ!」
二人は森を抜け、小川を越え、岩場を駆けるが、「鏡子」は依然、追走をやめようとしない。
「ゆ、雪乃っ!」
「なに!?」
「ちょっと、刀貸して!」
「どうする気!?」
「あたしの血、ちょこっと撒いとけば、止まるんじゃないかなって!」
「昨日はわたし、一晩動けなくなるくらいの血を流したのよ! あなたも同じことするつもり!?」
「……やっぱナシ!」
と――二人は同時に、唐突に立ち止まった。
「……っ」
逃げる先に、地面が無くなったからだ。
「前には崖、後ろからは怪物。……どうにかできそうなのは、後者しかないわね」
雪乃は覚悟を決め、刀を構えた。
「グルルルル……」
その気迫を感じたのか、「鏡子」は雪乃たちの数メートル前で立ち止まり、姿勢を低くして構える。
「気を付けて、雪乃。一気に間合いを詰めて、攻撃してくるつもりよ」
「ええ、分かってる」
雪乃は「鏡子」の真正面に立ち、刀に火を灯した。
「グルル……、グオオオッ!」
すると「鏡子」も大声を上げ、凶暴に伸びた前足の爪にぼっ、と火を灯す。
「……小癪な、ってところね。まさか我が焔流の秘術、こんな簡単に真似されるなんて」
だが雪乃は臆することなく、不敵に笑う。
「だけど真似たところで、その神髄まで会得できると思わないことね」
雪乃と「鏡子」は、同時に駆け出す。
「『火射』ッ!」
雪乃は「鏡子」の爪を、それこそ間一髪、雪乃の長い髪の先をほんの少し、掠める程度にかわす。
そしてすれ違いざま、雪乃は刀から火を放射した。
「グ、ギャアアア……ッ」
発射された火は「鏡子」の体中に突き刺さり、その全身を燃やす。
そして飛び込んできた勢いを止められず、「鏡子」は火だるまで、崖から落ちて行った。
「やった、……かしら?」
「そりゃ、落ちたんだし。……コレで死んでなかったら、マジでバケモノだわ」
二人は「鏡子」が落ちて行った崖下を、恐る恐る眺める。
「……真っ暗ね」
「かなり深いみたい……。あれだけ燃えてたのに、どこにいるか分からないわね」
と――雪乃の鼻腔を、焦げた臭いが通り抜ける。
「……!」
同時に殺気を感じ、雪乃は飛びのいた。
「小鈴、離れてッ!」
「え?」
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