「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第6部
火紅狐・弾劾記 3
フォコの話、287話目。
3つのリーク。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「まあ、アンタが直に手を汚すようなことはせえへんやろし、中央軍さんかどっかに、殺すよう依頼したんやろうけどな。
それでもこれが本当やったら、アンタは商人として、いや、そもそも人間として、やってはならんことをしよったことになる。人を殺して、その地位を奪ったんやからな」
「……出鱈目だ」
絞り出すようにそう返し、ケネスは反論する。
「根も葉もない、ただの中傷だ! 事実無根の誹謗で私を失脚させようとしているのが、目に見えている! そんな与太話、信じる方がどうかしている!」
「まあ、確たる証拠はあらへんし、ウソやホンマやと、あーだこーだ言うてもしゃあないけどな。
でもレオンが死んだ後、アンタはいち早く手ぇ挙げて、『自分がなる』『自分がなる』ちゅうてごね倒して、ほんならやっとってもらおうかってなって、アンタは総帥の座を手に入れた。ほんで、その後は中央軍さんの威を借りて、ウチらが絶対反抗でけへんように地盤固めしよったからな。
状況的な証拠は、いくらでもある」
「だから何だと言うのだ!? そんなものは、単に怪しい、単にそう見ることができる、と言う程度のものだろう!? そんな言いがかり、証拠になるものか!」
「……ま、そんなことはどうでもええ。ソレイユ君も、『これで追い出すことはでけませんでしょう。これはただ単に、追い出す大義名分にしかなりませんわ』と言うとったしな。
で、今ちょと触れたけども、アンタが今まで総帥としてふんぞり返ってられたんは、経営力でもみんなからの信頼でもない。結局のところ、中央軍さんの軍事力によってや。
平たく言えば、『自分に対して何らかの危害なり反発なりが起こりそうやったら、いつでも実力行使で追い払ったる』っちゅう、商人の風上にも置かれへんような、最低で乱暴な防御策を持っとったがために、今までウチらはアンタに反抗でけへんかったわけや」
「『今まで』? 今も、だ。今ここで、私を追い出そうとしてみろ。すぐにでも中央政府にかけあって……」「えーよ。やってみたらえーやん」
ジャンニはニヤリと笑い、ケネスを指差した。
「アンタにまだ中央軍の総大将、カーチス・バーミー卿からの信用があるんやったらの話やけどな」
「……っ」
「ソレイユ君からのリーク、2つ目やけどな。アンタ、俺がさっき突きつけた800億の借金のせいで、中央軍からえらい冷たい目で見られとるらしいな、最近は。
そらそうやろうな――『うまい思いさせたるよって、協力してくんなはれや』っちゅうてバーミー卿を抱き込んで、あっちこっちに好き放題軍を出動できる権限を、間接的に手に入れたんはええけども、その約束が全然、果たされてへんもんな。
そればかりか、流石にアホタレの天帝さんも、わけ分からんとこにポンポン軍やらスパイやら送って国費の無駄遣いばっかりしよるバーミー卿のことを、おかしいと思い始めとるそうやないか。今や、関係がえらいこじれて、いつ更迭されるかとバーミー卿さん、ヒヤヒヤしとるらしいし。
で、そうなった原因は他でもない、アンタや。そんな状況で、『ちょっと家族内で内輪揉めしとるさかい、兵隊さん送ってもらえへんかー』なんてふざけたお願い、聞いてもらえるかどうか……、なぁ?」
「ぐ、ぐぐぐ……」
顔を真っ赤にして憤慨するケネスに、ジャンニは畳み掛ける。
「ま、これも直接、アンタを罷免する理由やない。『これはただ単に、ケネスが報復行動に出られへん、つまり彼を罷免しても、何のマイナスも発生しないことを示すものでしかありません』と言うてはったわ」
「……」
ケネスは顔を真っ赤にしたまま、机に視線を落とし、黙り込んでしまう。
そこでジャンニが、ついに3つ目の情報を開示した。
「ほんで、罷免する理由や。言い換えたら、ソレイユ君を総帥にする、したいっちゅう理由になるけどもな。
まあ、800億の肩代わりはさっき言うた。それにもう一つ、どうしても総帥にしたい理由が加わるんよ。それはな……」
そこで言葉を切り、ジャンニは扉に顔を向けた。
「入ってええよ、ニコル」
「……ニコル……だと……!?」
顔を上げたケネスの目に、扉を開けて入ってきたフォコの姿が映った。
@au_ringさんをフォロー
3つのリーク。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「まあ、アンタが直に手を汚すようなことはせえへんやろし、中央軍さんかどっかに、殺すよう依頼したんやろうけどな。
それでもこれが本当やったら、アンタは商人として、いや、そもそも人間として、やってはならんことをしよったことになる。人を殺して、その地位を奪ったんやからな」
「……出鱈目だ」
絞り出すようにそう返し、ケネスは反論する。
「根も葉もない、ただの中傷だ! 事実無根の誹謗で私を失脚させようとしているのが、目に見えている! そんな与太話、信じる方がどうかしている!」
「まあ、確たる証拠はあらへんし、ウソやホンマやと、あーだこーだ言うてもしゃあないけどな。
でもレオンが死んだ後、アンタはいち早く手ぇ挙げて、『自分がなる』『自分がなる』ちゅうてごね倒して、ほんならやっとってもらおうかってなって、アンタは総帥の座を手に入れた。ほんで、その後は中央軍さんの威を借りて、ウチらが絶対反抗でけへんように地盤固めしよったからな。
状況的な証拠は、いくらでもある」
「だから何だと言うのだ!? そんなものは、単に怪しい、単にそう見ることができる、と言う程度のものだろう!? そんな言いがかり、証拠になるものか!」
「……ま、そんなことはどうでもええ。ソレイユ君も、『これで追い出すことはでけませんでしょう。これはただ単に、追い出す大義名分にしかなりませんわ』と言うとったしな。
で、今ちょと触れたけども、アンタが今まで総帥としてふんぞり返ってられたんは、経営力でもみんなからの信頼でもない。結局のところ、中央軍さんの軍事力によってや。
平たく言えば、『自分に対して何らかの危害なり反発なりが起こりそうやったら、いつでも実力行使で追い払ったる』っちゅう、商人の風上にも置かれへんような、最低で乱暴な防御策を持っとったがために、今までウチらはアンタに反抗でけへんかったわけや」
「『今まで』? 今も、だ。今ここで、私を追い出そうとしてみろ。すぐにでも中央政府にかけあって……」「えーよ。やってみたらえーやん」
ジャンニはニヤリと笑い、ケネスを指差した。
「アンタにまだ中央軍の総大将、カーチス・バーミー卿からの信用があるんやったらの話やけどな」
「……っ」
「ソレイユ君からのリーク、2つ目やけどな。アンタ、俺がさっき突きつけた800億の借金のせいで、中央軍からえらい冷たい目で見られとるらしいな、最近は。
そらそうやろうな――『うまい思いさせたるよって、協力してくんなはれや』っちゅうてバーミー卿を抱き込んで、あっちこっちに好き放題軍を出動できる権限を、間接的に手に入れたんはええけども、その約束が全然、果たされてへんもんな。
そればかりか、流石にアホタレの天帝さんも、わけ分からんとこにポンポン軍やらスパイやら送って国費の無駄遣いばっかりしよるバーミー卿のことを、おかしいと思い始めとるそうやないか。今や、関係がえらいこじれて、いつ更迭されるかとバーミー卿さん、ヒヤヒヤしとるらしいし。
で、そうなった原因は他でもない、アンタや。そんな状況で、『ちょっと家族内で内輪揉めしとるさかい、兵隊さん送ってもらえへんかー』なんてふざけたお願い、聞いてもらえるかどうか……、なぁ?」
「ぐ、ぐぐぐ……」
顔を真っ赤にして憤慨するケネスに、ジャンニは畳み掛ける。
「ま、これも直接、アンタを罷免する理由やない。『これはただ単に、ケネスが報復行動に出られへん、つまり彼を罷免しても、何のマイナスも発生しないことを示すものでしかありません』と言うてはったわ」
「……」
ケネスは顔を真っ赤にしたまま、机に視線を落とし、黙り込んでしまう。
そこでジャンニが、ついに3つ目の情報を開示した。
「ほんで、罷免する理由や。言い換えたら、ソレイユ君を総帥にする、したいっちゅう理由になるけどもな。
まあ、800億の肩代わりはさっき言うた。それにもう一つ、どうしても総帥にしたい理由が加わるんよ。それはな……」
そこで言葉を切り、ジャンニは扉に顔を向けた。
「入ってええよ、ニコル」
「……ニコル……だと……!?」
顔を上げたケネスの目に、扉を開けて入ってきたフォコの姿が映った。
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~