「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第6部
火紅狐・弾劾記 4
フォコの話、288話目。
フォコとケネスの対峙。
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4.
「ま、3つ目のリークっちゅうのんは、こう言うわけですわ、みなさん。
それから、……ケネス」
そう言って、フォコは静かに頭を下げた。
「300余年に渡る栄光と、世界に名だたる商人としての誇りに満ちた、金火狐(オーロラテイル)の御方々。
僕、……いえ、私が、『火紅狐』ソレイユこと、ニコル・フォコ・ゴールドマンです」
「……あー、と」
ジャンニが口に手を添えつつ、フォコにささやく。
「ニコル、そのマントやらフードやらは、取ってええんとちゃうかな。えらい垢だらけやし、顔もよお見えんし」
「あ、すんまへん」
フォコは慌ててマントを脱ぎ捨て、服のほこりをパタパタとはたきつつ、場の中央に立った。
「改めまして、みなさん。私が今、ご紹介に上がったソレイユであり、そして同時に、十数年前に両親を暗殺され、この屋敷から亡命した、ニコルでもあります。
そう、この男――ケネス・エンターゲート氏に、命を狙われて」
そう言って、フォコはケネスを指差した。
「……に、偽者だ! 偽者に違いない!」
うろたえるケネスに対し、フォコはフードを脱ぎながら、落ち着いた口調で尋ねる。
「ほう? それは何故? 何の根拠があって?」
「金火狐は、世界的な商家だ。借金が多少あるとはいえ、取り入ることができれば、後々莫大な利益を手にすることができる。
それを狙っての所業だろう、どうだ!?」
「……一々、アホなことばっかりのたもうて」
フォコは頭に巻いていたターバンを取り、ようやく涼しげな軽装になる。
「それはそのまんま、アンタが十数年前、単なる在野の一商人やった頃に考えとったことやろうな。
人のことを何かにつけて偽者、まがい物、メッキ人間やと罵倒して……。それは全部、アンタのことでしかあらへんな。
中央政府と中央軍の力を借りて、金火狐の威を借りて、金まで借りて。アンタ自身の力は、一体どこにある? アンタの真実は、一体どこにあるんや?
アンタの中身、何もかんも嘘ばっかりや」
「う、うるさい……ッ! お前こそ、嘘の塊だッ!」
それを受けて、フォコはくすっと小さく笑った。
「何がおかしい!?」
「何もかんも、嘘、嘘、嘘。嘘で儲けたアンタが、嘘を論拠に人を罵るんか。
せやけど、……教えたる。嘘を何百、何千並べても、真実が一つあれば、嘘は一発で瓦解する、っちゅうことをな」
フォコはそこで後ろを向き、人を呼んだ。
「ちょと、お願いします」
「へいへい」「よい、しょ……、っと」
呼ばれた者たちが木箱を抱え、部屋の中にぞろぞろと入ってきた。
「何だ……?」
床に置かれた木箱を、フォコが開ける。
「なっ……」
「うわ」
「ちょ、それっ」
一族は、木箱の中を見て騒然となった。
木箱の中には、大量の金貨が詰まっていたからだ。
「ま、これは一部ですわ。ほんの、4、50億クラムくらい。まあ、流石に全部ここへ持ってきてしまうと、床の底が抜けるんとちゃうかと思いましてな。ちなみに今回、総帥になるにあたって私が用意した契約金および支度金は、350億クラムです。
改めて、取引内容を提示させていただきます。エンターゲート氏の総帥罷免と、私の総帥就任。これが履行された場合、この350億クラムをゴールドマン商会へ寄贈します。
……これは嘘でもなんでもあらへん。金は実際に、ここにある。実在の人間に、要求しとる。これは本当、真実の、まっとうな取引なんや」
この説明を、ジャンニがニヤリと笑って引き継ぐ。
「……ちゅうわけや。これ一つ取っても、ウチらにとってはとんでもない助け話になる。
あと、さっきも言うてたニコルの身元保証人のうち数名が、アンタがこさえた負債の債権者、貸元でもあるんやけども、そのツテを使て残り450億分も帳消し、または債務履行の期限引き伸ばしがでける、と約束してくれはる。
つまりニコルが総帥になれば、ウチらにとっては800億の穴埋めがでけるし、名目的にも、金火狐の血筋に経営権が戻るわけや。
反対に、アンタをこのまんま続投させる意味が、ウチらにはあらへんのや。借金ばっかり作って、ウチらに乱暴なことばっかりしよる、外様のアンタにはな。
ケネス、そう言うわけやから、そろそろ覚悟決めて、そこをどいてもらわな、なぁ?」
「……う、……ぐ……、うう」
ジャンニの悪辣な笑みに、ケネスは一転、顔を真っ青にした。
「それが嫌や、まだまだ総帥でいたいんやっちゅうんなら、払うもん、ちゃんと払うてもらわなあかん。
平たく言うたら、ゴールドマン商会総帥の椅子は今ここで、競売に出されとるんや。最低落札価格、800億でな。
総帥の椅子は、800億クラムか、800億相当の利権、あるいはそれ以上を用意できる奴のもんや」
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フォコとケネスの対峙。
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「ま、3つ目のリークっちゅうのんは、こう言うわけですわ、みなさん。
それから、……ケネス」
そう言って、フォコは静かに頭を下げた。
「300余年に渡る栄光と、世界に名だたる商人としての誇りに満ちた、金火狐(オーロラテイル)の御方々。
僕、……いえ、私が、『火紅狐』ソレイユこと、ニコル・フォコ・ゴールドマンです」
「……あー、と」
ジャンニが口に手を添えつつ、フォコにささやく。
「ニコル、そのマントやらフードやらは、取ってええんとちゃうかな。えらい垢だらけやし、顔もよお見えんし」
「あ、すんまへん」
フォコは慌ててマントを脱ぎ捨て、服のほこりをパタパタとはたきつつ、場の中央に立った。
「改めまして、みなさん。私が今、ご紹介に上がったソレイユであり、そして同時に、十数年前に両親を暗殺され、この屋敷から亡命した、ニコルでもあります。
そう、この男――ケネス・エンターゲート氏に、命を狙われて」
そう言って、フォコはケネスを指差した。
「……に、偽者だ! 偽者に違いない!」
うろたえるケネスに対し、フォコはフードを脱ぎながら、落ち着いた口調で尋ねる。
「ほう? それは何故? 何の根拠があって?」
「金火狐は、世界的な商家だ。借金が多少あるとはいえ、取り入ることができれば、後々莫大な利益を手にすることができる。
それを狙っての所業だろう、どうだ!?」
「……一々、アホなことばっかりのたもうて」
フォコは頭に巻いていたターバンを取り、ようやく涼しげな軽装になる。
「それはそのまんま、アンタが十数年前、単なる在野の一商人やった頃に考えとったことやろうな。
人のことを何かにつけて偽者、まがい物、メッキ人間やと罵倒して……。それは全部、アンタのことでしかあらへんな。
中央政府と中央軍の力を借りて、金火狐の威を借りて、金まで借りて。アンタ自身の力は、一体どこにある? アンタの真実は、一体どこにあるんや?
アンタの中身、何もかんも嘘ばっかりや」
「う、うるさい……ッ! お前こそ、嘘の塊だッ!」
それを受けて、フォコはくすっと小さく笑った。
「何がおかしい!?」
「何もかんも、嘘、嘘、嘘。嘘で儲けたアンタが、嘘を論拠に人を罵るんか。
せやけど、……教えたる。嘘を何百、何千並べても、真実が一つあれば、嘘は一発で瓦解する、っちゅうことをな」
フォコはそこで後ろを向き、人を呼んだ。
「ちょと、お願いします」
「へいへい」「よい、しょ……、っと」
呼ばれた者たちが木箱を抱え、部屋の中にぞろぞろと入ってきた。
「何だ……?」
床に置かれた木箱を、フォコが開ける。
「なっ……」
「うわ」
「ちょ、それっ」
一族は、木箱の中を見て騒然となった。
木箱の中には、大量の金貨が詰まっていたからだ。
「ま、これは一部ですわ。ほんの、4、50億クラムくらい。まあ、流石に全部ここへ持ってきてしまうと、床の底が抜けるんとちゃうかと思いましてな。ちなみに今回、総帥になるにあたって私が用意した契約金および支度金は、350億クラムです。
改めて、取引内容を提示させていただきます。エンターゲート氏の総帥罷免と、私の総帥就任。これが履行された場合、この350億クラムをゴールドマン商会へ寄贈します。
……これは嘘でもなんでもあらへん。金は実際に、ここにある。実在の人間に、要求しとる。これは本当、真実の、まっとうな取引なんや」
この説明を、ジャンニがニヤリと笑って引き継ぐ。
「……ちゅうわけや。これ一つ取っても、ウチらにとってはとんでもない助け話になる。
あと、さっきも言うてたニコルの身元保証人のうち数名が、アンタがこさえた負債の債権者、貸元でもあるんやけども、そのツテを使て残り450億分も帳消し、または債務履行の期限引き伸ばしがでける、と約束してくれはる。
つまりニコルが総帥になれば、ウチらにとっては800億の穴埋めがでけるし、名目的にも、金火狐の血筋に経営権が戻るわけや。
反対に、アンタをこのまんま続投させる意味が、ウチらにはあらへんのや。借金ばっかり作って、ウチらに乱暴なことばっかりしよる、外様のアンタにはな。
ケネス、そう言うわけやから、そろそろ覚悟決めて、そこをどいてもらわな、なぁ?」
「……う、……ぐ……、うう」
ジャンニの悪辣な笑みに、ケネスは一転、顔を真っ青にした。
「それが嫌や、まだまだ総帥でいたいんやっちゅうんなら、払うもん、ちゃんと払うてもらわなあかん。
平たく言うたら、ゴールドマン商会総帥の椅子は今ここで、競売に出されとるんや。最低落札価格、800億でな。
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