「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第6部
火紅狐・不癲記 1
フォコの話、304話目。
大勝負の幕開け。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
フォコたちの深遠な企みはようやく実を結び、この広大なカジノ潰し計画はついに、フォコとトランプ翁との直接対決へと持ち込まれた。
カードを配りながら、トランプ翁はルールの追加を提案した。
「と、そうだ。賭け金、ってか賭け点だが、一律100点にしねえか?」
「え?」
きょとんとするランニャに、トランプ翁はニヤニヤしつつ、肩をすくめる。
「あの姐ちゃんみたいに、変なところで一発逆転の勝負なんて仕掛けられて、万が一それが通っちまったりしたら、それまで血道を上げて打ってた勝負が、バカバカしくなって仕方がねえ。
賭けるのは100点のみ、そこから倍付け、三倍付けと進めて、点数をデカくする。構わねえかい?」
「分かりました」
ランニャの代わりに、フォコが同意する。
「ありがとよ。……さ、やるか」
勝負は、まずは静かに始められた。
モールに期待を寄せられたフォコだったが、出だしは好調とは言い難かった。
「ほれ」
トランプ翁が「親」で始まり、引いたカードをそのまま、隣のランニャに渡す。
「んー……」
ランニャが悩んでいる短い間に、フォコは手を推察する。
(引いたカードをそのまんま捨てたっちゅうことは、トランプ翁、もう揃っとったんやな。
……流石にカジノの大親分やっとるだけはあるわ。博打運が太い)
「はい」
ランニャから受け取ったカードを手に、フォコは自分の手をどう進めていくか思案した。
(僕の手元にあるんは、『水・水・雷・雷・土・風』、……に、今来たんは『火』か。
うーん……。『七種七枚』なんて狙うには被りすぎやし、普通に役無し和了も、3枚バラバラでは遅すぎる。
対する翁はもう手がまとまっとるし、翁の子分さんがカードを渡す位置にあるっちゅうことを考えたら、差し込んで即和了、も非常に簡単や。
……この局は、落とすしかないか)
フォコはランニャから受け取った「火」をそのまま、右隣のバルトロに渡す。
「……どうぞ」
「おう」
バルトロはチラ、とトランプ翁を見て、手持ちのカードを出した。
フォコの予想通り、バルトロは「差し込み」――和了できるように、カードを送ったらしい。
「……よし」
トランプ翁はぱら、とカードを卓に並べ、ヒッヒッと笑った。
「アガったぜ。『極刻子』と和了で、3倍付けだ」
トランプ翁の先制で、130億の大勝負は幕を開けた。
とは言え、フォコも負けてはいない。
次局、トランプ翁の一本場(1.5倍付け)で始まったが――。
「……アガリです」
「なに?」
1巡目ですぐ、フォコは和了した。
「『地和』に『天対子』、……で、一本場ですから、6払いですね。一人600、いただきます」
「……なかなかやるじゃねえか、兄ちゃん」
トランプ翁はニヤリと笑い、チップ6枚をフォコの方へ差し出した。
「ほれ、バルトロ。お前さんも払いな」
その一方で、トランプ翁はほんの一瞬だが、チラ、と後ろに立つ、魔杖を持った子分に視線を向けた。
(そんな心配せんでもええですよ、トランプ翁。イカサマも魔術も、ありませんて)
トランプ翁のその仕草を見て、フォコは思わず噴き出しそうになった。
一方で、視線を向けられた子分がコク、とうなずくのを見て、トランプ翁はイカサマが無かったことを信じたらしい。それ以上特に、フォコへ何も言うことなく、次の「親」であるランニャにカードを渡した。
「じゃあ、次、行くよ」
「おう」
配られたカードを見て、フォコは思わずため息をつきそうになった。
(ランニャ……、もうちょい、ええのん配ってほしいんやけどなぁ。『天・火・火・水・雷・土』て、またバラバラやん)
そう思ったが、続いてランニャから回されたカードを受け取って、その思いは反転した。
(あれ、……そーゆーことか。ええね、ありがと)
3巡ほどして、またもフォコがアガった。
「アガリです、『七種七枚』」
「むう……」
二回続けて和了され、トランプ翁は流石に顔をしかめた。
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大勝負の幕開け。
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フォコたちの深遠な企みはようやく実を結び、この広大なカジノ潰し計画はついに、フォコとトランプ翁との直接対決へと持ち込まれた。
カードを配りながら、トランプ翁はルールの追加を提案した。
「と、そうだ。賭け金、ってか賭け点だが、一律100点にしねえか?」
「え?」
きょとんとするランニャに、トランプ翁はニヤニヤしつつ、肩をすくめる。
「あの姐ちゃんみたいに、変なところで一発逆転の勝負なんて仕掛けられて、万が一それが通っちまったりしたら、それまで血道を上げて打ってた勝負が、バカバカしくなって仕方がねえ。
賭けるのは100点のみ、そこから倍付け、三倍付けと進めて、点数をデカくする。構わねえかい?」
「分かりました」
ランニャの代わりに、フォコが同意する。
「ありがとよ。……さ、やるか」
勝負は、まずは静かに始められた。
モールに期待を寄せられたフォコだったが、出だしは好調とは言い難かった。
「ほれ」
トランプ翁が「親」で始まり、引いたカードをそのまま、隣のランニャに渡す。
「んー……」
ランニャが悩んでいる短い間に、フォコは手を推察する。
(引いたカードをそのまんま捨てたっちゅうことは、トランプ翁、もう揃っとったんやな。
……流石にカジノの大親分やっとるだけはあるわ。博打運が太い)
「はい」
ランニャから受け取ったカードを手に、フォコは自分の手をどう進めていくか思案した。
(僕の手元にあるんは、『水・水・雷・雷・土・風』、……に、今来たんは『火』か。
うーん……。『七種七枚』なんて狙うには被りすぎやし、普通に役無し和了も、3枚バラバラでは遅すぎる。
対する翁はもう手がまとまっとるし、翁の子分さんがカードを渡す位置にあるっちゅうことを考えたら、差し込んで即和了、も非常に簡単や。
……この局は、落とすしかないか)
フォコはランニャから受け取った「火」をそのまま、右隣のバルトロに渡す。
「……どうぞ」
「おう」
バルトロはチラ、とトランプ翁を見て、手持ちのカードを出した。
フォコの予想通り、バルトロは「差し込み」――和了できるように、カードを送ったらしい。
「……よし」
トランプ翁はぱら、とカードを卓に並べ、ヒッヒッと笑った。
「アガったぜ。『極刻子』と和了で、3倍付けだ」
トランプ翁の先制で、130億の大勝負は幕を開けた。
とは言え、フォコも負けてはいない。
次局、トランプ翁の一本場(1.5倍付け)で始まったが――。
「……アガリです」
「なに?」
1巡目ですぐ、フォコは和了した。
「『地和』に『天対子』、……で、一本場ですから、6払いですね。一人600、いただきます」
「……なかなかやるじゃねえか、兄ちゃん」
トランプ翁はニヤリと笑い、チップ6枚をフォコの方へ差し出した。
「ほれ、バルトロ。お前さんも払いな」
その一方で、トランプ翁はほんの一瞬だが、チラ、と後ろに立つ、魔杖を持った子分に視線を向けた。
(そんな心配せんでもええですよ、トランプ翁。イカサマも魔術も、ありませんて)
トランプ翁のその仕草を見て、フォコは思わず噴き出しそうになった。
一方で、視線を向けられた子分がコク、とうなずくのを見て、トランプ翁はイカサマが無かったことを信じたらしい。それ以上特に、フォコへ何も言うことなく、次の「親」であるランニャにカードを渡した。
「じゃあ、次、行くよ」
「おう」
配られたカードを見て、フォコは思わずため息をつきそうになった。
(ランニャ……、もうちょい、ええのん配ってほしいんやけどなぁ。『天・火・火・水・雷・土』て、またバラバラやん)
そう思ったが、続いてランニャから回されたカードを受け取って、その思いは反転した。
(あれ、……そーゆーことか。ええね、ありがと)
3巡ほどして、またもフォコがアガった。
「アガリです、『七種七枚』」
「むう……」
二回続けて和了され、トランプ翁は流石に顔をしかめた。
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