「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第6部
火紅狐・不癲記 7
フォコの話、310話目。
カードカウンティング。
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7.
「う……」
トランプ翁の指摘と行動に、フォコは短くうめき声を漏らした。
「この『雷』、最初と、2順目に回ってきた奴とは違うな? そう――隣の姉ちゃんが、同じもんを渡す振りをして、別なカードをしれっと、お前さんに渡してやがったんだ。
となれば姉ちゃんのところには、『雷』が既に2枚あるはずだ。このまま俺が、ひょいと今来た『雷』を渡しちまったら、それで恐らくアガられちまってただろうな。
ってわけで、この『雷』は俺が抱え込む」
トランプ翁はニヤリと笑い、手持ちのカードを卓に置いた。
「兄ちゃんの手持ちは揃ってたはずだが、『雷』を流したことで、バラバラのはずだ。残るは姉ちゃんの手札だが……、三面待ちにはなってるだろうな。
それが何なのかは、突き詰めていきゃ、大体は見当が付けられる」
トランプ翁は額をゴシゴシとこすりながら、バルトロに目を向ける。
「ま、手札を開いて説明できりゃ丸分かりなんだが、流石にそれはご法度だ。だから、ま、仮にABCで、推理してみようか。
俺は今現在、『雷』と、ABCがそれぞれ2枚ずつの、三面待ちだ。で、姉ちゃんは『雷』を2枚渡されてるから、6枚中2枚はこれで分かる。
で、そもそもの話として、最初に姉ちゃんが『雷』を切ったのは、何故か? まだまとまってない自分の手札に、組み込めなかったからだろう。となると『雷』は2枚無かっただろうし、3人揃ってる状況で、『七種七枚』が作れるわけが無え。
そう考えれば、やっぱ姉ちゃんの手は、既に対子が1つか2つはあったはずだ。そこからカードを有効的に残すのを前提として、不要カードを2枚、兄ちゃんに渡したとなれば、三面待ちは確実。この2種を、D、Eとしようか。
兄ちゃんは、『雷』を3枚渡せて、既に揃ってたようだから、残りは何らかの刻子、仮にFとしようか。だが3枚渡した分、残りはバラバラか、槓子ができてるかのどっちかのはずだ。となると、一属性が丸ごと、お前さんの手に渡ってておかしくねえ。
とは言え、もしも4枚入ってたとしたら、いざと言う時の緊急手段として、お前さんはそのまま抱えておくはずだ。それも仮定するとして、話を進めるぜ。
一方で、揃ってたってことを考えれば、最初に『雷』を2枚、あるいは3枚持っていたはずだ。手持ち分をすべて渡したって可能性もあるが、もしかするとまだ1枚、持ってるかもな。ま、どっちにしてもお前さんの手持ち6枚中4枚については、ある程度の見当は付けられる。
で、バルトロの手札については、三面待ちしてた俺に差し込めねえんだし、ABCじゃ無え。そしてお前さんが抱え込んでいる、Fでも無い。となれば残りは3種。
だが『雷』も、こいつの手札にゃ無いことは明白だ。アガってねえんだからよ。そう考えると、こいつの手持ちは2種、つまり刻子2組か、槓子と対子で持ってたはずだ。これをF、Gとしておく。
と言うわけで、『雷』の在り処については、ある程度の見当は付けられる。三面待ちになった姉ちゃんが『雷』でアガれず、俺とバルトロの手持ちにも無いからな。兄ちゃんが持ってるか、卓上の3枚のうちどれかに入ってるか、だ」
トランプ翁:A A B B C C 雷
ランニャ :雷 雷 D D E E
フォコ :雷 F F F F ? / 雷 F F F ? ?
バルトロ :G G G H H H / G G H H H H
(A、B、C)≠(G、H)
(28枚中24枚はプレイヤーの手にあるが、残り4枚中1枚はプレイヤー間を巡っており、さらに残りの3枚は卓上に置かれたまま、そのゲーム中には使われない)
「それで、だ。この推理を立てた上で、肝心な答えが――つまり姉ちゃんの手札の残り4枚が、一体何か? これが分からなきゃ、何の意味も無え。
で、7種中2種、あるいは3種は、兄ちゃんとバルトロがほとんど握ってるはずだ。これは除外していい(F、G、Hが3枚以上。1枚以下では対子が作れない)。
残る4種で、俺と姉ちゃんがそれぞれ3面待ちになってるはずだ。となれば、A~CとD・Eの中で、1種類以上は確実に重複していることになる。
だからここで俺が、うまく姉ちゃんの待ちを外せば、俺たちの勝ちが決まる」
「……なるほど。私がランニャに、遠回しにカードを送るより、若頭さんがトランプ翁に直で送る方が、そら早いに決まってますな。
となると、ここはギャンブルの中の、さらにギャンブルやっちゅうわけですな」
「そう言うことだ。姉ちゃんの待ちを振っちまえば俺の負け。うまく外せば俺の勝ちだ」
そこでトランプ翁は言葉を切り、自分の手札に視線を落とした。
「……」
ここまで読み切ったトランプ翁でも、流石に不確定要素――卓上に置かれたカード3枚が何なのか、ランニャの三面待ちの構成までは、どうしても推理し切れなかった。
「……こいつに、賭けるぜ」
トランプ翁はカードを一枚引き、ランニャに差し出した。
「さあ、どうだ姉ちゃん? こいつは、当たりか?」
「……」
ランニャは額に汗を浮かべつつ、そのカードを受け取る。
「どうだ……!?」
ランニャは受け取ったカードを――卓の上に置いた。
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7.
「う……」
トランプ翁の指摘と行動に、フォコは短くうめき声を漏らした。
「この『雷』、最初と、2順目に回ってきた奴とは違うな? そう――隣の姉ちゃんが、同じもんを渡す振りをして、別なカードをしれっと、お前さんに渡してやがったんだ。
となれば姉ちゃんのところには、『雷』が既に2枚あるはずだ。このまま俺が、ひょいと今来た『雷』を渡しちまったら、それで恐らくアガられちまってただろうな。
ってわけで、この『雷』は俺が抱え込む」
トランプ翁はニヤリと笑い、手持ちのカードを卓に置いた。
「兄ちゃんの手持ちは揃ってたはずだが、『雷』を流したことで、バラバラのはずだ。残るは姉ちゃんの手札だが……、三面待ちにはなってるだろうな。
それが何なのかは、突き詰めていきゃ、大体は見当が付けられる」
トランプ翁は額をゴシゴシとこすりながら、バルトロに目を向ける。
「ま、手札を開いて説明できりゃ丸分かりなんだが、流石にそれはご法度だ。だから、ま、仮にABCで、推理してみようか。
俺は今現在、『雷』と、ABCがそれぞれ2枚ずつの、三面待ちだ。で、姉ちゃんは『雷』を2枚渡されてるから、6枚中2枚はこれで分かる。
で、そもそもの話として、最初に姉ちゃんが『雷』を切ったのは、何故か? まだまとまってない自分の手札に、組み込めなかったからだろう。となると『雷』は2枚無かっただろうし、3人揃ってる状況で、『七種七枚』が作れるわけが無え。
そう考えれば、やっぱ姉ちゃんの手は、既に対子が1つか2つはあったはずだ。そこからカードを有効的に残すのを前提として、不要カードを2枚、兄ちゃんに渡したとなれば、三面待ちは確実。この2種を、D、Eとしようか。
兄ちゃんは、『雷』を3枚渡せて、既に揃ってたようだから、残りは何らかの刻子、仮にFとしようか。だが3枚渡した分、残りはバラバラか、槓子ができてるかのどっちかのはずだ。となると、一属性が丸ごと、お前さんの手に渡ってておかしくねえ。
とは言え、もしも4枚入ってたとしたら、いざと言う時の緊急手段として、お前さんはそのまま抱えておくはずだ。それも仮定するとして、話を進めるぜ。
一方で、揃ってたってことを考えれば、最初に『雷』を2枚、あるいは3枚持っていたはずだ。手持ち分をすべて渡したって可能性もあるが、もしかするとまだ1枚、持ってるかもな。ま、どっちにしてもお前さんの手持ち6枚中4枚については、ある程度の見当は付けられる。
で、バルトロの手札については、三面待ちしてた俺に差し込めねえんだし、ABCじゃ無え。そしてお前さんが抱え込んでいる、Fでも無い。となれば残りは3種。
だが『雷』も、こいつの手札にゃ無いことは明白だ。アガってねえんだからよ。そう考えると、こいつの手持ちは2種、つまり刻子2組か、槓子と対子で持ってたはずだ。これをF、Gとしておく。
と言うわけで、『雷』の在り処については、ある程度の見当は付けられる。三面待ちになった姉ちゃんが『雷』でアガれず、俺とバルトロの手持ちにも無いからな。兄ちゃんが持ってるか、卓上の3枚のうちどれかに入ってるか、だ」
トランプ翁:A A B B C C 雷
ランニャ :雷 雷 D D E E
フォコ :雷 F F F F ? / 雷 F F F ? ?
バルトロ :G G G H H H / G G H H H H
(A、B、C)≠(G、H)
(28枚中24枚はプレイヤーの手にあるが、残り4枚中1枚はプレイヤー間を巡っており、さらに残りの3枚は卓上に置かれたまま、そのゲーム中には使われない)
「それで、だ。この推理を立てた上で、肝心な答えが――つまり姉ちゃんの手札の残り4枚が、一体何か? これが分からなきゃ、何の意味も無え。
で、7種中2種、あるいは3種は、兄ちゃんとバルトロがほとんど握ってるはずだ。これは除外していい(F、G、Hが3枚以上。1枚以下では対子が作れない)。
残る4種で、俺と姉ちゃんがそれぞれ3面待ちになってるはずだ。となれば、A~CとD・Eの中で、1種類以上は確実に重複していることになる。
だからここで俺が、うまく姉ちゃんの待ちを外せば、俺たちの勝ちが決まる」
「……なるほど。私がランニャに、遠回しにカードを送るより、若頭さんがトランプ翁に直で送る方が、そら早いに決まってますな。
となると、ここはギャンブルの中の、さらにギャンブルやっちゅうわけですな」
「そう言うことだ。姉ちゃんの待ちを振っちまえば俺の負け。うまく外せば俺の勝ちだ」
そこでトランプ翁は言葉を切り、自分の手札に視線を落とした。
「……」
ここまで読み切ったトランプ翁でも、流石に不確定要素――卓上に置かれたカード3枚が何なのか、ランニャの三面待ちの構成までは、どうしても推理し切れなかった。
「……こいつに、賭けるぜ」
トランプ翁はカードを一枚引き、ランニャに差し出した。
「さあ、どうだ姉ちゃん? こいつは、当たりか?」
「……」
ランニャは額に汗を浮かべつつ、そのカードを受け取る。
「どうだ……!?」
ランニャは受け取ったカードを――卓の上に置いた。
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クイズ。
4人の手持ちカードの内訳は、それぞれどうなっていたでしょう。
ヒント①:卓上に置かれていたカードは、「風」「天」「天」です。
ヒント②:310話開始時点でのトランプ翁の手持ちは、「天・天・氷・氷・雷・土・土」です。
答えは明日発表。
正解できるかな?
クイズ。
4人の手持ちカードの内訳は、それぞれどうなっていたでしょう。
ヒント①:卓上に置かれていたカードは、「風」「天」「天」です。
ヒント②:310話開始時点でのトランプ翁の手持ちは、「天・天・氷・氷・雷・土・土」です。
答えは明日発表。
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