「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第6部
火紅狐・不癲記 8
フォコの話、311話目。
130億勝負、決着。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
8.
卓の上に置かれたカードの絵柄は、「氷」を示していた。
「……アガ、った」
ランニャは持っていた残りのカードを、ばさ、と続けて卓に撒いた。
「……く、っ」
その内容を見て、トランプ翁は短くうめき、次いで笑い出した。
「くっ、くっくっ、……ヒヒ、俺も、……ヤキが回っちまったか」
トランプ翁も、カードを卓に捨てる。そこにあったのは――。
「『天・天・氷・土・土・雷』、……だ。3分の2だったな、やっぱり」
「そだ、ね。……『氷・氷・雷・雷・土・土』だったもん、な」
トランプ翁は顔を真っ赤にし、笑っているのか落胆しているのか分からないような表情を浮かべながら、卓に残されていたカードをめくった。
「『風・天・天』、……だったか。欲が、出ちまったんだな」
「『天対子』を崩すのんは、惜しいですからな。……私でも、それはよお切れませんわ」
「……まあ、しゃあねえ。『極刻子』と和了で三倍付けに一本場の1.5倍で、450払いだな」
トランプ翁は両手で顔をゴシゴシとこすり、それからチップを渡した。
フォコ:3350 ランニャ:18550 トランプ翁:17550 バルトロ:550
逆転はしたものの、まだ勝負は付いていない。
ここでフォコかランニャが二倍付け以上で和了すれば、二本場の3倍が加算され、一人当たり600点を支払うことになる。そうなればバルトロは飛び、ランニャの勝利が確定する。
一方でトランプ翁も、同じように和了すれば再度逆転し、そのまま逃げ切ることができる。また、バルトロがここで和了すれば、箱割れの危険から多少遠ざかることができ、勝負はもう少し続行されることになる。
「まだだ、まだ負けてねえぞ……!」
トランプ翁は先程の落胆ぶりから一転、ギラついた目をフォコたちに向けてくる。
その精力的な目つきは確かに、ヤクザの大親分にふさわしい殺気を放っていた。
「……ええ、まだ、ですな」
フォコもランニャも、その眼光に少なからず竦みつつも、落ち着いてカードを確認する。
「はい」
ランニャからカードを受け取り、フォコはそのままそのカードを流した。
「……!」
その様子に、バルトロが戦慄する。
「また揃ってやがるか、クソっ……!」
「慌てんな、バルトロ」
対するトランプ翁も、バルトロから受け取ったカードをそのままランニャへと流す。
「……お互い、もう手はできとるみたいですな。それも飛ばすのんに十分な、デカいのんが」
「みたいだな。お前か俺か、どっちかの和了で、この勝負は決着だ」
二人は同時に、憔悴しきった笑みを浮かべていた。
「……」
場の空気がまた、一気に煮え立つ。
「……」
フォコもトランプ翁も、互いに互いをにらみ合い、自分の持つ情報を相方に伝えることを制している。ランニャとバルトロは、自分の手持ちのどれが二人の当たりカードであるのか、判断が付かなかった。
「……」
ランニャが、恐る恐るカードをフォコへと渡す。
「……」
そのカードはバルトロへと流れ、彼もまた、そろそろとした手つきでトランプ翁へと、手持ちの中からカードを差し出す。
「……」
トランプ翁は静かに首を振り、カードをそのままランニャへと渡す。
「……」
ランニャはそこで、自分の手を見直す。
「……コレは、……どう?」
ランニャはそっと、フォコに手持ちのカードを差し出した。
「……トランプ翁」
フォコは顔を上げ、トランプ翁をじっと見据えた。
「何だ……?」
「自己紹介を、してませんでしたな」
「……そうだな。聞いてなかった」
「改めて、させていただきます」
フォコは額の汗を拭い、カードを伏せて卓に置く。
「私の名前は、ニコル・フォコ・ゴールドマン。ゴールドマン家の、人間でした」
「ゴールドマン……。『あいつ』の、家系か」
「その、そいつに。私の家は乗っ取られました。あの悪逆かつ卑劣な男、非道な冷血漢、ケネス・エンターゲートに。
私は宣言します。そいつから、家を奪い返すことを」
フォコは伏せたカードを、ばっと引っくり返した。
「……この、200億余の金を以てッ!」
開かれたカードは「火・火・火・火・雷・雷・雷」――まさに「火紅狐」フォコを示すような、燃え上がるような7枚だった。
フォコ:6950 ランニャ:17350 トランプ翁:16350 バルトロ:-650
バルトロの箱割れにより、ランニャのトップで終局。
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130億勝負、決着。
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8.
卓の上に置かれたカードの絵柄は、「氷」を示していた。
「……アガ、った」
ランニャは持っていた残りのカードを、ばさ、と続けて卓に撒いた。
「……く、っ」
その内容を見て、トランプ翁は短くうめき、次いで笑い出した。
「くっ、くっくっ、……ヒヒ、俺も、……ヤキが回っちまったか」
トランプ翁も、カードを卓に捨てる。そこにあったのは――。
「『天・天・氷・土・土・雷』、……だ。3分の2だったな、やっぱり」
「そだ、ね。……『氷・氷・雷・雷・土・土』だったもん、な」
トランプ翁は顔を真っ赤にし、笑っているのか落胆しているのか分からないような表情を浮かべながら、卓に残されていたカードをめくった。
「『風・天・天』、……だったか。欲が、出ちまったんだな」
「『天対子』を崩すのんは、惜しいですからな。……私でも、それはよお切れませんわ」
「……まあ、しゃあねえ。『極刻子』と和了で三倍付けに一本場の1.5倍で、450払いだな」
トランプ翁は両手で顔をゴシゴシとこすり、それからチップを渡した。
フォコ:3350 ランニャ:18550 トランプ翁:17550 バルトロ:550
逆転はしたものの、まだ勝負は付いていない。
ここでフォコかランニャが二倍付け以上で和了すれば、二本場の3倍が加算され、一人当たり600点を支払うことになる。そうなればバルトロは飛び、ランニャの勝利が確定する。
一方でトランプ翁も、同じように和了すれば再度逆転し、そのまま逃げ切ることができる。また、バルトロがここで和了すれば、箱割れの危険から多少遠ざかることができ、勝負はもう少し続行されることになる。
「まだだ、まだ負けてねえぞ……!」
トランプ翁は先程の落胆ぶりから一転、ギラついた目をフォコたちに向けてくる。
その精力的な目つきは確かに、ヤクザの大親分にふさわしい殺気を放っていた。
「……ええ、まだ、ですな」
フォコもランニャも、その眼光に少なからず竦みつつも、落ち着いてカードを確認する。
「はい」
ランニャからカードを受け取り、フォコはそのままそのカードを流した。
「……!」
その様子に、バルトロが戦慄する。
「また揃ってやがるか、クソっ……!」
「慌てんな、バルトロ」
対するトランプ翁も、バルトロから受け取ったカードをそのままランニャへと流す。
「……お互い、もう手はできとるみたいですな。それも飛ばすのんに十分な、デカいのんが」
「みたいだな。お前か俺か、どっちかの和了で、この勝負は決着だ」
二人は同時に、憔悴しきった笑みを浮かべていた。
「……」
場の空気がまた、一気に煮え立つ。
「……」
フォコもトランプ翁も、互いに互いをにらみ合い、自分の持つ情報を相方に伝えることを制している。ランニャとバルトロは、自分の手持ちのどれが二人の当たりカードであるのか、判断が付かなかった。
「……」
ランニャが、恐る恐るカードをフォコへと渡す。
「……」
そのカードはバルトロへと流れ、彼もまた、そろそろとした手つきでトランプ翁へと、手持ちの中からカードを差し出す。
「……」
トランプ翁は静かに首を振り、カードをそのままランニャへと渡す。
「……」
ランニャはそこで、自分の手を見直す。
「……コレは、……どう?」
ランニャはそっと、フォコに手持ちのカードを差し出した。
「……トランプ翁」
フォコは顔を上げ、トランプ翁をじっと見据えた。
「何だ……?」
「自己紹介を、してませんでしたな」
「……そうだな。聞いてなかった」
「改めて、させていただきます」
フォコは額の汗を拭い、カードを伏せて卓に置く。
「私の名前は、ニコル・フォコ・ゴールドマン。ゴールドマン家の、人間でした」
「ゴールドマン……。『あいつ』の、家系か」
「その、そいつに。私の家は乗っ取られました。あの悪逆かつ卑劣な男、非道な冷血漢、ケネス・エンターゲートに。
私は宣言します。そいつから、家を奪い返すことを」
フォコは伏せたカードを、ばっと引っくり返した。
「……この、200億余の金を以てッ!」
開かれたカードは「火・火・火・火・雷・雷・雷」――まさに「火紅狐」フォコを示すような、燃え上がるような7枚だった。
フォコ:6950 ランニャ:17350 トランプ翁:16350 バルトロ:-650
バルトロの箱割れにより、ランニャのトップで終局。
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昨日のクイズ、答えはこちら。
フォコ:「水・水・水・水・雷・風」
ランニャ:作中参照。
トランプ翁:作中参照。
バルトロ:「火・火・火・火・風・風」
昨日のクイズ、答えはこちら。
フォコ:「水・水・水・水・雷・風」
ランニャ:作中参照。
トランプ翁:作中参照。
バルトロ:「火・火・火・火・風・風」



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