「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第6部
火紅狐・昔讐記 1
フォコの話、319話目。
「火紅」の、最後の因縁。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
大火の魔術により、フォコはまた西方、セラーパークへと召喚された。
「ランドさん、お久しぶりです」
「久しぶり。変わりなさそうだね」
「まあ、たかだか半年ぶりですからな。ランドさんの方も変わりなさそ、……て」
挨拶を返そうとしたところで、フォコはランドの背後からひょい、と姿を現したランニャを見て驚いた。
「やっほ」
「な、何でおんの?」
「ご挨拶だなぁ。母さんとタイカさんを通じて、あたしにも話が来たんだよ。このヤマはあたしも結構関わってるし、決着は最後まできちっと付けたいんだよ」
「……まあ、ええけど」
「それよりもホコウ」
ランドはフォコの格好を見て、険しい表情になる。
「やっぱり君も、そうなると予想してるみたいだね」
「そら、まあ」
フォコは魔杖に曲刀、ナイフ、ターバン、厚手のローブと、総帥以前によく着ていた、戦闘を重視した格好をしていた。
「西方中の債権者から狙われとるあいつが、わざわざ自分から名乗りを上げるなんて、怪しいにも程があります。
恐らくは何らかの罠を仕掛けていると見て、間違いないでしょう」
「罠? 誰に? ……いや、聞くまでもないか。君だ」
「ええ、多分。進退窮まり、このまま拘束されるくらいならいっそ、堕ちる原因を作った僕を亡き者にしたい、と思うてるんでしょうな。
もしかしたら清家姉弟を匿っとるっちゅうのんは、嘘かも知れませんな」
「恐らくはね。それに、まだ商会が残っていた頃に、僕と君とがつながっているのはエール氏辺りから聞いているだろうし、僕も狙われているのかもね。だから僕に、手紙を出したんだろうけど」
「……ここまで殺意が見え見えやと、正直、行きたくない気持ちもありますな。『大三角形』の方から国の方に頼んで、軍の出動を要請した方がええんやないです?」
「僕もそう思ったし、『大三角形』筋も最初、その線で通そうとしていたんだ。
だけど残念なことに、『たかが一破産者の拿捕に駆り出されるほど、我々は安くない』って怒られたらしい」
「まあ、とんでもない怪物が現れて船が出されへん、……とかならともかくですけど、流石に人ひとりのためには動いてくれませんか。しゃあないですな」
「まあ、嘘か本当か、どちらにせよ、僕にとっては清家姉弟の情報を知っている人間だし、何としても拘束したいところだ。
それに君にとっても、大恩ある人間を殺した仇敵だろう? 居場所が分かっている以上、追わないわけには行かない」
「……ええ、勿論。この因縁は、何が何でも決着を付けなあきません」
フォコがそう意気込んだところで、ランニャがバタバタと手を振った。
「勿論あたしも行くよ!」
「なんでやねん」
「当たり前じゃんか。フォコくんを危ない所へ、一人では行かせらんないもん」
「あのなあ……」
呆れるフォコに対し、ランドは妹の意見を汲む。
「いや、相手が罠を仕掛けて待ち構えている可能性が高い今回、戦闘要員は多い方がいい。ランニャは戦いに長けた人材だし、むしろ居てくれた方が助かるだろう」
「ありがと、お兄ちゃん」
「どういたしまして。
それから、同じ理由から大火とイール、レブも勿論連れて行く。後、マフシード殿下も魔術に心得があると言うことだから、後方支援をお願いした。
あとは……、モール卿がいれば良かったんだけど」
「モールさんやったら、僕が総帥になる直前に、妙な事件がありまして。それを詳しく調べたいと言って、そのまま行方が分からなくなりました」
「そっか、残念だな。
じゃあこの7名で、彼が指定した待ち合わせ場所へ向かう。みんな、準備はできてるかい?」
ランドの問いかけに、そこにいた全員がうなずいた。
「ちなみに待ち合わせ場所は、どこなんです?」
「彼が元々有していた、エカルラット王国内、スカーレットヒルにある軍需工場。そこで僕と君を、待っているそうだ」
「言わば、敵の本丸ですな。……重々、気を付けなあきませんな」
「ああ。……まあ、とは言え」
ランドは傍らの大火に目をやり、にっこりと笑う。
「タイカがいれば、大体のことは問題無いだろう。彼に敵う人間は、モール卿くらいだし」
「……」
大火は何も言わず、代わりにニヤリと笑って返した。
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「火紅」の、最後の因縁。
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大火の魔術により、フォコはまた西方、セラーパークへと召喚された。
「ランドさん、お久しぶりです」
「久しぶり。変わりなさそうだね」
「まあ、たかだか半年ぶりですからな。ランドさんの方も変わりなさそ、……て」
挨拶を返そうとしたところで、フォコはランドの背後からひょい、と姿を現したランニャを見て驚いた。
「やっほ」
「な、何でおんの?」
「ご挨拶だなぁ。母さんとタイカさんを通じて、あたしにも話が来たんだよ。このヤマはあたしも結構関わってるし、決着は最後まできちっと付けたいんだよ」
「……まあ、ええけど」
「それよりもホコウ」
ランドはフォコの格好を見て、険しい表情になる。
「やっぱり君も、そうなると予想してるみたいだね」
「そら、まあ」
フォコは魔杖に曲刀、ナイフ、ターバン、厚手のローブと、総帥以前によく着ていた、戦闘を重視した格好をしていた。
「西方中の債権者から狙われとるあいつが、わざわざ自分から名乗りを上げるなんて、怪しいにも程があります。
恐らくは何らかの罠を仕掛けていると見て、間違いないでしょう」
「罠? 誰に? ……いや、聞くまでもないか。君だ」
「ええ、多分。進退窮まり、このまま拘束されるくらいならいっそ、堕ちる原因を作った僕を亡き者にしたい、と思うてるんでしょうな。
もしかしたら清家姉弟を匿っとるっちゅうのんは、嘘かも知れませんな」
「恐らくはね。それに、まだ商会が残っていた頃に、僕と君とがつながっているのはエール氏辺りから聞いているだろうし、僕も狙われているのかもね。だから僕に、手紙を出したんだろうけど」
「……ここまで殺意が見え見えやと、正直、行きたくない気持ちもありますな。『大三角形』の方から国の方に頼んで、軍の出動を要請した方がええんやないです?」
「僕もそう思ったし、『大三角形』筋も最初、その線で通そうとしていたんだ。
だけど残念なことに、『たかが一破産者の拿捕に駆り出されるほど、我々は安くない』って怒られたらしい」
「まあ、とんでもない怪物が現れて船が出されへん、……とかならともかくですけど、流石に人ひとりのためには動いてくれませんか。しゃあないですな」
「まあ、嘘か本当か、どちらにせよ、僕にとっては清家姉弟の情報を知っている人間だし、何としても拘束したいところだ。
それに君にとっても、大恩ある人間を殺した仇敵だろう? 居場所が分かっている以上、追わないわけには行かない」
「……ええ、勿論。この因縁は、何が何でも決着を付けなあきません」
フォコがそう意気込んだところで、ランニャがバタバタと手を振った。
「勿論あたしも行くよ!」
「なんでやねん」
「当たり前じゃんか。フォコくんを危ない所へ、一人では行かせらんないもん」
「あのなあ……」
呆れるフォコに対し、ランドは妹の意見を汲む。
「いや、相手が罠を仕掛けて待ち構えている可能性が高い今回、戦闘要員は多い方がいい。ランニャは戦いに長けた人材だし、むしろ居てくれた方が助かるだろう」
「ありがと、お兄ちゃん」
「どういたしまして。
それから、同じ理由から大火とイール、レブも勿論連れて行く。後、マフシード殿下も魔術に心得があると言うことだから、後方支援をお願いした。
あとは……、モール卿がいれば良かったんだけど」
「モールさんやったら、僕が総帥になる直前に、妙な事件がありまして。それを詳しく調べたいと言って、そのまま行方が分からなくなりました」
「そっか、残念だな。
じゃあこの7名で、彼が指定した待ち合わせ場所へ向かう。みんな、準備はできてるかい?」
ランドの問いかけに、そこにいた全員がうなずいた。
「ちなみに待ち合わせ場所は、どこなんです?」
「彼が元々有していた、エカルラット王国内、スカーレットヒルにある軍需工場。そこで僕と君を、待っているそうだ」
「言わば、敵の本丸ですな。……重々、気を付けなあきませんな」
「ああ。……まあ、とは言え」
ランドは傍らの大火に目をやり、にっこりと笑う。
「タイカがいれば、大体のことは問題無いだろう。彼に敵う人間は、モール卿くらいだし」
「……」
大火は何も言わず、代わりにニヤリと笑って返した。
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