「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第6部
火紅狐・昔讐記 4
フォコの話、322話目。
ゴーレム部隊との衝突。
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4.
大火からの講習を終え、フォコとイール、マフスは浄化術を習得した。
「え、と……、『ホワイトブリーズ』」
マフスが魔杖を振った途端、周りの焼け濁った空気が、清浄なものへと変わる。
「できました!」
「上出来だ。お前には浄化術の素質があるらしい」
「光栄です」
大火にほめられ、マフスは嬉しそうに笑う。
反面、フォコもイールも、憮然とした顔をしている。
「どないです?」
「あんまり……、変わんないかも。もっかい、……『ホワイトブリーズ』!」
イールは魔杖代わりの鞭を何度か振ってみるが、マフスのようにガラリと空気が変わるまでには至らず、ふわっとした風が立つ程度だった。
フォコの方はそれより悪く、何の変化も見受けられない。
「間違うてませんよね、術式とか呪文の構文とか」
「俺が聞く限り、おかしな部分はない。単純に素質の問題だろう。浄化術や治療術などは、極端に使い手を選ぶから、な」
「そら残念ですな。……となると、実質使えるのんは、マフスさんとタイカさんだけですな」
「行動がかなり制限されるね、そうなると」
地図を写し終えたランドが、話の輪に加わる。
「万が一、毒ガスの濃度の高い施設内で分断された場合、タイカやマフス殿下とはぐれてしまうと、生命維持に関わってくる。極力、固まって行動した方がいい」
「賛成ですな。何より、ゴーレムは大量製造が可能なんでしたな、タイカさん」
「ああ。この工場の規模であれば、設備を改造して1時間当たり30~40体は製造可能だろう」
「人目がありますし、改造を終えて製造し始めたんは恐らく、今日からでしょう。
昼から製造を始めたとして、今はもう夜の8時。200体以上はいると見て、間違いないでしょうな」
「恐らく、な。対するこちら側は、ゴーレム破壊に有効な、雷の術が使える者は2名。同様に浄化術が使えるのも、2名。
奴らに強襲され、分断された場合、このガスと敵の多さは非常に危険だ。くれぐれも、離れるなよ」
「ええ」
そこでランドが手を挙げ、地図の写しを皆に見せる。
「4階に総裁室がある。施設内をうろうろして、こんなガスを自分から吸ってちゃ世話無いし、恐らくここに籠っているだろう」
「食堂からやと……、あの階段を上がっていけば、すぐですな」
階段を上がったところで、猛烈な毒気がフォコたち一行にまとわりついてくる。
「うえ……っ」
「あっ、あっ……、『フィールドウォッシュ』!」
マフスが慌てて浄化術を唱え、周囲の空気が浄化された。
「ふむ……。効果範囲は大体、半径10メートルと言うところか。手早く回らないとまずい、な」
「わたしの力が足りなかったのでしょうか……」
しゅんとするマフスに、大火は小さく首を振る。
「いや、俺が唱えたものと相違は無い。ガスがあまりにも濃すぎるのだ」
と、レブが通路の先に、うごめくものを発見する。
「っと、来やがったぞ!」
その声に、全員が武器を構え、警戒する。
次の瞬間、通路の奥からぺたぺたと音を立てて、「工員」たちが駆け寄ってきた。
「グウオオオオ!」「ガアアアアウウ!」
「工員」たちは獣のような咆哮を上げながら、フォコたちとの距離を詰めていく。
「真っ正面から考え無しに突撃、……ホントに能無しなのね。……『スパークウィップ』!」
イールが雷の術を放ち、迎撃する。
それをまともに受けた「工員」たちは、その場で四散した。
「よっし! 一丁あがりっ!」「まだだ!」
反対側からも、「工員」たちが武器を手に走ってくる。
「今度は僕が! 『ファイアランス』!」
後方からの敵には、フォコが応戦する。
発射された炎の槍に、「工員」たちは縦に並んで4体、一直線に貫かれる。
「グボッ!?」「ゴボボボ……」
「工員」たちは一瞬で燃え上がり、液状になって溶けていく。
「火の術にも弱いみたいですな」
「ああ。極端なエネルギーの上昇・加圧に、非常に弱い」
「ま、また来たよ!?」
今度は前後両方から、「工員」たちが押し寄せてくる。
「前は俺に任せろ」
大火が刀を抜き、「工員」たちの前に立ちはだかる。
「『五月雨』ッ!」
ぱぱぱ……、と空気を切り裂く音が立て続けに響き渡り、「工員」たちを一人残らず細切れにする。
「ほな、後ろは僕たちで!」「行くわよッ!」
後方から迫りくる「工員」たちに、フォコとイールは魔術を連射する。
「『ブレイズウォール』!」「『スパークウィップ』!」
火の術と雷の術の波状攻撃に、大量に湧いて出た「工員」たちは、あっと言う間に消滅した。
一行はそのまま警戒態勢を続けるが、新手が来る気配は無かった。
「……もう、来ないみたいね」
「ふう……」
思わず、誰ともなくため息が漏れてくる。
マフスのおかげで、吸い込んだ空気は心地の良いものだった。
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ゴーレム部隊との衝突。
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大火からの講習を終え、フォコとイール、マフスは浄化術を習得した。
「え、と……、『ホワイトブリーズ』」
マフスが魔杖を振った途端、周りの焼け濁った空気が、清浄なものへと変わる。
「できました!」
「上出来だ。お前には浄化術の素質があるらしい」
「光栄です」
大火にほめられ、マフスは嬉しそうに笑う。
反面、フォコもイールも、憮然とした顔をしている。
「どないです?」
「あんまり……、変わんないかも。もっかい、……『ホワイトブリーズ』!」
イールは魔杖代わりの鞭を何度か振ってみるが、マフスのようにガラリと空気が変わるまでには至らず、ふわっとした風が立つ程度だった。
フォコの方はそれより悪く、何の変化も見受けられない。
「間違うてませんよね、術式とか呪文の構文とか」
「俺が聞く限り、おかしな部分はない。単純に素質の問題だろう。浄化術や治療術などは、極端に使い手を選ぶから、な」
「そら残念ですな。……となると、実質使えるのんは、マフスさんとタイカさんだけですな」
「行動がかなり制限されるね、そうなると」
地図を写し終えたランドが、話の輪に加わる。
「万が一、毒ガスの濃度の高い施設内で分断された場合、タイカやマフス殿下とはぐれてしまうと、生命維持に関わってくる。極力、固まって行動した方がいい」
「賛成ですな。何より、ゴーレムは大量製造が可能なんでしたな、タイカさん」
「ああ。この工場の規模であれば、設備を改造して1時間当たり30~40体は製造可能だろう」
「人目がありますし、改造を終えて製造し始めたんは恐らく、今日からでしょう。
昼から製造を始めたとして、今はもう夜の8時。200体以上はいると見て、間違いないでしょうな」
「恐らく、な。対するこちら側は、ゴーレム破壊に有効な、雷の術が使える者は2名。同様に浄化術が使えるのも、2名。
奴らに強襲され、分断された場合、このガスと敵の多さは非常に危険だ。くれぐれも、離れるなよ」
「ええ」
そこでランドが手を挙げ、地図の写しを皆に見せる。
「4階に総裁室がある。施設内をうろうろして、こんなガスを自分から吸ってちゃ世話無いし、恐らくここに籠っているだろう」
「食堂からやと……、あの階段を上がっていけば、すぐですな」
階段を上がったところで、猛烈な毒気がフォコたち一行にまとわりついてくる。
「うえ……っ」
「あっ、あっ……、『フィールドウォッシュ』!」
マフスが慌てて浄化術を唱え、周囲の空気が浄化された。
「ふむ……。効果範囲は大体、半径10メートルと言うところか。手早く回らないとまずい、な」
「わたしの力が足りなかったのでしょうか……」
しゅんとするマフスに、大火は小さく首を振る。
「いや、俺が唱えたものと相違は無い。ガスがあまりにも濃すぎるのだ」
と、レブが通路の先に、うごめくものを発見する。
「っと、来やがったぞ!」
その声に、全員が武器を構え、警戒する。
次の瞬間、通路の奥からぺたぺたと音を立てて、「工員」たちが駆け寄ってきた。
「グウオオオオ!」「ガアアアアウウ!」
「工員」たちは獣のような咆哮を上げながら、フォコたちとの距離を詰めていく。
「真っ正面から考え無しに突撃、……ホントに能無しなのね。……『スパークウィップ』!」
イールが雷の術を放ち、迎撃する。
それをまともに受けた「工員」たちは、その場で四散した。
「よっし! 一丁あがりっ!」「まだだ!」
反対側からも、「工員」たちが武器を手に走ってくる。
「今度は僕が! 『ファイアランス』!」
後方からの敵には、フォコが応戦する。
発射された炎の槍に、「工員」たちは縦に並んで4体、一直線に貫かれる。
「グボッ!?」「ゴボボボ……」
「工員」たちは一瞬で燃え上がり、液状になって溶けていく。
「火の術にも弱いみたいですな」
「ああ。極端なエネルギーの上昇・加圧に、非常に弱い」
「ま、また来たよ!?」
今度は前後両方から、「工員」たちが押し寄せてくる。
「前は俺に任せろ」
大火が刀を抜き、「工員」たちの前に立ちはだかる。
「『五月雨』ッ!」
ぱぱぱ……、と空気を切り裂く音が立て続けに響き渡り、「工員」たちを一人残らず細切れにする。
「ほな、後ろは僕たちで!」「行くわよッ!」
後方から迫りくる「工員」たちに、フォコとイールは魔術を連射する。
「『ブレイズウォール』!」「『スパークウィップ』!」
火の術と雷の術の波状攻撃に、大量に湧いて出た「工員」たちは、あっと言う間に消滅した。
一行はそのまま警戒態勢を続けるが、新手が来る気配は無かった。
「……もう、来ないみたいね」
「ふう……」
思わず、誰ともなくため息が漏れてくる。
マフスのおかげで、吸い込んだ空気は心地の良いものだった。
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