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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第6部

    火紅狐・昔讐記 10

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    フォコの話、328話目。
    決着の時。

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    10.
     辛うじてジャガーの腕を落としたものの、ランドと大火の形勢は依然、最悪のままだった。
     大火は依然、半ば這いつくばった状態で、まともに動くこともできない。ランドに怪我は無いものの、武器など扱ったことはなく、魔術も使えない。
     ランドは大火を助け起こそうと、彼に近寄る。だが大火は、それを震える声で制止した。
    「さ、わる、な」
    「えっ、でも……」
     ランドは肩を貸そうと、彼のコートに降れる。
    「……あつっ!?」
    「さ、さわ、るなと、言っ、た、だ、ろう」
     まだ彼の体にこびりついていたミスリル化珪素が冷め切っておらず、ランドは指先に軽い火傷を負ってしまう。
    「クスクスクスクス」
     二人の様子を見て、ジャガーはあの、気味の悪い笑いを浮かべる。
    「惨めでございますね、克大火様。あれほど傲慢に振る舞い、刃向かう者すべて返り討ちにするあなた様が、この体たらく。
     これでようやく、わたくしたち兄弟の犠牲が報われると言うもの。主様も、喜ばれることでしょう」
    「おしゃべりはその辺でいいだろ、ジャガー。そろそろ、とどめを刺すぜ」
    「ええ、お願いいたします」
     ジャガーの許可を得て、アバントが「バニッシャー」を上段に構え、蔑んだ目でランドたちを見る。
    「観念しやがれ、このカスどもめ……!」
    「……クッ、クク、ククク」
     と、倒れ伏したままの大火が――もしかしたら痙攣のせいなのかもしれないが――肩を震わせて笑う。
    「カスと、き、来たか。み、身の、程を、し、し、知らん、な」
    「あぁん?」
    「ジャガー、と、やら。お前、も、同類、だ」
    「何を仰るかと思えば。身の程知らずは、あなたの……」
     そこでジャガーの言葉が止まり、ごとん、と重たい音が通路に響く。
    「……え?」
     音のした方に目をやると、ジャガーの首がごろごろと転がり、通路の淵を落ちていくのが目に入った。
    「な、何をした、てめえ!?」
    「お、俺が、ただ落ちて、戻って、きた、だけ、だ、だと、お、思う、のか」
     そこでようやく、ランドとアバントは通路のあちこちに、薄く刃状になったミスリル化珪素が散らばっているのに気付いた。
    「ど、どんな形に、でも、か、加工、できる、ものが、これだけ、ある、なら、使わん、手は、あ、あるまい?」
     それだけ言って、大火は黙り込む。流石に精根尽き果てたらしく、ピクリとも動けないらしい。
     だが、小心者のアバントを怯ませるには、それだけで十分だった。
    「ち、畜生ッ……!」
     アバントはランドたちに背を向け、逃げ出した。

     しかし空中通路の、その中程で、アバントは立ち止まらざるを得なくなる。
    「あ……、う……」
     クーガーを撃退したフォコたちが、通路へ進入してきたからだ。
    「アバント、……観念せえや」
     フォコはレブから先の折れた剣を借り、アバントの前に歩み出る。
    「ホコウ……」
    「僕と、お前とで一騎打ちや。決着、付けるで」
    「……やって、どうするってんだ」
     アバントはフォコの背後に並ぶ一行と、自分の後方でうずくまる二人とを交互に見て、悪態をつく。
    「お前を殺しても、他の奴らが俺を逃がしゃしない。もうどうしようもあるかってんだ」
    「……まあ、そうやな。やっても、意味は無い」
     フォコは剣を下ろし、アバントに近付く。
    「それよりも話を聞かせてほしい、っちゅうのんが僕の本意や。
     お前はティナのことを知っとる言うてたけど、ホンマか?」
    「……ああ」
     アバントも剣を下ろして、その場に立ちすくむ。
    「何を知っとる?」
    「……ちょうど、ここだ」
     アバントは剣を持っていない左手で、空中通路の手すりを指差した。
    「ここ? 何のことや?」
    「……したのは」
    「何やて?」
     何を言ったのか聞き取れず、フォコはさらに近付く。
     と――アバントの表情が読み取れるくらいの距離で、フォコは、彼がニヤリと笑ったのに気付き、警戒した。
    「……ッ」
    「ここだよ、ここ。
     ここで俺は、あのアバズレを――突き落してやったのさああああッ!」
     アバントは左手をフォコへとかざし、火の術を放った。
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