「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第6部
火紅狐・抱罪記 6
フォコの話、336話目。
抱えた罪を、はなす。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
「どないする気、……っちゅうと?」
尋ね返したフォコに、エリザは呆れたようなため息を漏らす。
《っはー……、ようやく総帥になったっちゅうのに、まだボンクラなトコが残っとるわ。
えーか、よー考えてみ? 敵討ちを全部終わらして見事、商会の総帥になった。6年前、アンタが諦めてしもた野望、コレで全部達成でけたワケや。まあ、ちょっと残念なコトに、お嫁さんを亡くしてしもたんはあるけども。
さ、ココや。アンタの願いは一通り達成でけたワケやけども、そしたらこの先、アンタはどうするつもりなんかな、と。アタシは気になったワケや》
「ああ……。そうですな、今のところはまだ、何にも」
《は? なんも考えてへんの? 何をぼさっとしてんねんな》
にらみつけてくるエリザに、フォコはしどろもどろながら、自分の考えを説明する。
「これからのことを考えるに、やはり僕ではその、器やないなと思っとるんです。
これまで散々、血なまぐさいことに触れてきましたし、僕の手は真っ赤っかですわ。それに今回、ひょんなことから寡(やもめ)になってしまいましたし。そもそも金火狐の本拠から、何年も離れてしもてますし。
そんな僕が、商会の総帥をやってええもんかと。そう考えると、どうしても先のことなんか……」
《で?》
「で、って」
唖然とするフォコに、エリザはケタケタと笑いかけた。
《アッハッハッハ……、アンタ、アタシのコト知らんな?》
「て言うと?」
《まずな、アタシも戦争に参加しとったし、手を汚したコトは一回や二回やあらへん。
後な、寡や言うたけど、アタシもそやねんで? ダンナおらんのに、子供だけおったし。
その上旅したり、中央以外の大陸探ししとったりで、通算10年か15年か、ソレ以上は、本拠のカレイドマインから離れとった。
そ、れ、で、も。アタシは死ぬまでずーっと、総帥やってたんやで》
「で、でも時代が違いますし」
《何も違うコトあるかいな。アンタもアタシも、同じ総帥や。
もしも文句言う奴がおったらな、堂々と言うたったらええねん。『開祖さんも同じコトしとったんや! 僕が同じコトやったかて、何も問題あるかいな!?』てな。
あ、ついでに言うとくとな。ニコル――アンタちゃうで、アタシの弟の方や――もお嫁さん、猫獣人やってん。スナちゃん言うてな、またコレがかわええ……、って、どうでもええな。ま、ともかく。その点も、気にせんでええコトや。
アンタが汚点や、罪やと思っとるコトは、大体『ご先祖様』がやっとるわ。その上でアタシが居座っとったんやし、ほんなら堂々と、『僕が総帥です。僕が金火狐のルールです』って胸張ったらええねん。
……ま、せやからな》
エリザはニヤニヤと笑いながら、フォコに耳打ちした。
《まだまだわだかまりもあるやろけども、自分の気持ちに素直になってみても、誰も文句言わんで。
『あの子』もアンタやイヴォラちゃんの幸せを喜びこそすれ、悲しんだり妬んだりなんてせえへんよ、きっと。ま、もしそんなんあったとしても、アタシが説得したるって》
「あ……、その」
フォコは顔を赤くしながら、エリザに尋ねた。
「滅多に無い機会ですし、お名残惜しいんですけども、……もう目、覚ましてええですか?」
《えーよ。アタシはもうちょい、イヴォラちゃんと話するさかい》
「ありがとうございました、エリザさん」
《当たって砕けろ、や。頑張ってきーやー》
「……はい!」
フォコは慌てて、その場から立ち去った。
フォコは勢い良く、ベッドから飛び起きた。
「……だーッ!」
乾いたのどを無理矢理に震わせ、自分の頬をべちべちと叩いて、まだ半分眠ったままの頭を、何とか目覚めさせる。
(あ、うるさかったかな)
そう思い、イヴォラの方を確認する。
「……むにゃ……うん……すきー……」
どうやら、まだ夢の中にいるようだ。
「……っと、アカン! 早よ追いかけへんと!」
フォコは慌てて着替えを済ませ、部屋を飛び出した。
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抱えた罪を、はなす。
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「どないする気、……っちゅうと?」
尋ね返したフォコに、エリザは呆れたようなため息を漏らす。
《っはー……、ようやく総帥になったっちゅうのに、まだボンクラなトコが残っとるわ。
えーか、よー考えてみ? 敵討ちを全部終わらして見事、商会の総帥になった。6年前、アンタが諦めてしもた野望、コレで全部達成でけたワケや。まあ、ちょっと残念なコトに、お嫁さんを亡くしてしもたんはあるけども。
さ、ココや。アンタの願いは一通り達成でけたワケやけども、そしたらこの先、アンタはどうするつもりなんかな、と。アタシは気になったワケや》
「ああ……。そうですな、今のところはまだ、何にも」
《は? なんも考えてへんの? 何をぼさっとしてんねんな》
にらみつけてくるエリザに、フォコはしどろもどろながら、自分の考えを説明する。
「これからのことを考えるに、やはり僕ではその、器やないなと思っとるんです。
これまで散々、血なまぐさいことに触れてきましたし、僕の手は真っ赤っかですわ。それに今回、ひょんなことから寡(やもめ)になってしまいましたし。そもそも金火狐の本拠から、何年も離れてしもてますし。
そんな僕が、商会の総帥をやってええもんかと。そう考えると、どうしても先のことなんか……」
《で?》
「で、って」
唖然とするフォコに、エリザはケタケタと笑いかけた。
《アッハッハッハ……、アンタ、アタシのコト知らんな?》
「て言うと?」
《まずな、アタシも戦争に参加しとったし、手を汚したコトは一回や二回やあらへん。
後な、寡や言うたけど、アタシもそやねんで? ダンナおらんのに、子供だけおったし。
その上旅したり、中央以外の大陸探ししとったりで、通算10年か15年か、ソレ以上は、本拠のカレイドマインから離れとった。
そ、れ、で、も。アタシは死ぬまでずーっと、総帥やってたんやで》
「で、でも時代が違いますし」
《何も違うコトあるかいな。アンタもアタシも、同じ総帥や。
もしも文句言う奴がおったらな、堂々と言うたったらええねん。『開祖さんも同じコトしとったんや! 僕が同じコトやったかて、何も問題あるかいな!?』てな。
あ、ついでに言うとくとな。ニコル――アンタちゃうで、アタシの弟の方や――もお嫁さん、猫獣人やってん。スナちゃん言うてな、またコレがかわええ……、って、どうでもええな。ま、ともかく。その点も、気にせんでええコトや。
アンタが汚点や、罪やと思っとるコトは、大体『ご先祖様』がやっとるわ。その上でアタシが居座っとったんやし、ほんなら堂々と、『僕が総帥です。僕が金火狐のルールです』って胸張ったらええねん。
……ま、せやからな》
エリザはニヤニヤと笑いながら、フォコに耳打ちした。
《まだまだわだかまりもあるやろけども、自分の気持ちに素直になってみても、誰も文句言わんで。
『あの子』もアンタやイヴォラちゃんの幸せを喜びこそすれ、悲しんだり妬んだりなんてせえへんよ、きっと。ま、もしそんなんあったとしても、アタシが説得したるって》
「あ……、その」
フォコは顔を赤くしながら、エリザに尋ねた。
「滅多に無い機会ですし、お名残惜しいんですけども、……もう目、覚ましてええですか?」
《えーよ。アタシはもうちょい、イヴォラちゃんと話するさかい》
「ありがとうございました、エリザさん」
《当たって砕けろ、や。頑張ってきーやー》
「……はい!」
フォコは慌てて、その場から立ち去った。
フォコは勢い良く、ベッドから飛び起きた。
「……だーッ!」
乾いたのどを無理矢理に震わせ、自分の頬をべちべちと叩いて、まだ半分眠ったままの頭を、何とか目覚めさせる。
(あ、うるさかったかな)
そう思い、イヴォラの方を確認する。
「……むにゃ……うん……すきー……」
どうやら、まだ夢の中にいるようだ。
「……っと、アカン! 早よ追いかけへんと!」
フォコは慌てて着替えを済ませ、部屋を飛び出した。
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