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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・興中記 1

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    フォコの話、339話目。
    金火狐一族の大転換。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    「えー、まずは謝罪をば」
     二ヶ月半ぶりに見る若き総帥――「ニコル3世」こと、ニコル・フォコ・ゴールドマンに対し、一族の半数は不安そうな表情を、そして残り半数は疑念の表情を浮かべていた。
    「野暮用があれこれ重なってしもて、ご迷惑をおかけしました」
    「野暮用て、何があったんや?」
     一人がそう尋ねる。
    「総帥が代替わりして、色々せなアカンっちゅうこの時期に、それを放っぽってまでやらなアカンような用事があったっちゅうんか?」
    「ええ」
     質問に対し、フォコはしれっと答える。
    「僕に子供がおることが分かりましてな。父親の僕が直々に、迎えに行ってたんですわ」
    「な!?」
    「母親の方は、既に亡くなってしもてましてな。これはもう、何としてでも引き取らなアカンと決心しまして。で、引き取ってきたわけですわ」
    「あ、アンタ、いきなり何を言うかと思えば」
    「あ、それからですな」
     フォコはニコニコと笑いながら、自分の右薬指にはまった指輪を見せた。
    「その旅に随行してくれたネール家の方と、婚約しまして」
    「はぁ!?」
     立て続けの告白に、一族は二度ずっこけた。
    「ちょ、お前正気か!?」
    「子供引き取ってから嫁さんもらうて、逆やろ!?」
    「しかもネール家て、一回ウチらを告発したっちゅう話もあるところやないか!」
    「どう言うつもりやねんな!?」
    「あえて理由を付けるなら」
     フォコはこれまた平然と回答する。
    「『先代』が何やかやとしょうもないことばっかりしたせいで、ウチらの信用は急落しとります。その回復が、まず何よりやらなアカンことでしょう?
     で、代替わりしたことで一応、信用をこれ以上落とすことは避けられました。と言うても、まだまだ僕も若輩者ですし、もうちょい社会、世間一般の信頼性を高めたいと、そう考えとりました。
     その方法の一つが、結婚ですな。流石にいつまでも一人でフラフラしとるよりも、しっかりと家族を持ってはる人の方が、世間さんの見方は違いますしな。
     それに今言うてはった通り、ネール家が我々を、っちゅうか先代を糾弾したことは今や、公然の事実。そこと僕、つまり新しい総帥が関係を結ぶっちゅうことは即ち、ネール家とゴールドマン家が和解したと取れるわけです。
     信用回復にこれだけ効果のある手段は、そうそう無いんやないでしょうか?」
    「ま、まあ、そうとも言えるな」
     一族が納得したところで、フォコはぺろっと舌を出して見せた。
    「……ちゅうのんは建前。
     結局、僕も彼女も互いに惚れてしもたんですな。相思相愛っちゅうやつです」
    「おいおい……」
    「じゃあ子供は何のために?」
     その問いに対し、フォコは自分より年長の質問者をにらみつけた。
    「あ? 今何て言わはりました?」
    「いや、子供を引き取ったのにも何か、打算があってのことかと」
    「アンタは子供をダシにして、何か画策しようっちゅうんか!」
     フォコはダン、と机を叩き、非難する。
    「そないな浅ましいこと、よお考えられるな!? 先代やあるまいし、卑怯でえげつないにも程があるで!」
    「あ、いや、その」
    「恥を知らんかい、恥をッ!」
    「……す、すんまへん」
     フォコに叱咤され、質問した者は縮こまった。
     そこでフォコは小さく咳をして、場の空気を切り替える。
    「……と、まあ。僕の新しい家族に関しての話は、以上です。結婚式はおいおい予定を立てて、と考えとります。
     で、ここから本題ですけども」
     フォコは黒板を持って来させ、チョークででかでかと、こう書きつけた。

    「ゴールドコースト構想」

    「……?」
    「何や、それ?」
     首をかしげる一族に、フォコは続けて簡単な街の地図を描いて見せる。
    「現在、このイエローコーストの街は、主に鉱業と水産業を主軸として成り立ってます。いや、厳密に言えばウチらが来て以降は、鉱業従事者が9割を超える状態にある。
     このまま鉱山都市として機能し続けるのであればそれで構わへんでしょうが、金も鉄も、錫も鉛も、いずれは尽きます。そして尽きた時、この街はどうなるか? そしてウチらは?」
    「そら……、尽きたらまた移動して、どこか新しい鉱床を見つけるか」
    「小規模の鉱業主であればそれでええかも知れませんが、既にウチは巨大な商会となっとります。これを移動させるとなれば、かなりの手間と危険が伴います。
     前回の、カレイドマインからここへの移動は、まだ移動するに難しくない程度の規模でしたし、中央軍さんの手助けもありました。今、同じように移動しようとしたら、馬車やら荷車やら用心棒さんやらがどれだけ必要になるか。その間襲われてしもたら、撃退するどころか、無事でいられるかも保証が無い。ここから移動するのは、決して得策やないんです」
    「しかし、掘れるもんが無くなったらどないするんや? ウチは鉱業で成り立って……」
    「そこからの脱却。僕はそれを、提案します。ゴールドマン家は最早、金を掘って売るだけの商家には留まらせません」
     フォコのこの発言に、一族は騒然となった。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    皆様お待たせしました。
    「火紅狐」最終部、開始です。
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