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銀河農耕伝説(リレー小説)/第二回
「クリスタルの断章」のポール・ブリッツさんから、リレー小説のバトンを受け取りました!
第一回はこちら。
第二回を、僕が執筆させていただきました。
と言うわけで、どーん。(c)
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2
ジローの言葉に、サンライズ教授は笑い出した。
「何をバカな、ちゃんとほれ、そこに……」
ニヤニヤしながら机を指差した教授は、そこで硬直する。
「……そこに、……あれ?」
笑顔から一転、教授の顔は真っ青になる。
ジローも、そしてメリッサも、同様に顔を青ざめさせた。
その場の空気、そして彼らの体温の低下速度たるや、かつて極低温調理法を研究する際に一行が訪れた低温惑星、ゲレルでの日没時を思わせるほどだった。
「ど、どっ、どこじゃ!? どこに!?」
教授はがばっと床にはいつくばり、机の下やケージの裏、孵卵器と孵卵器の間など、老体とは思えない速さで点検し――そして唐突に、またも硬直する。
「……ないっ!」
教授の発した悲痛な叫びに、ジローはへたり込んでしまった。
「そ、そんな……!? 一体、なぜ? どうして……?」
世紀の大発明、夢の食品が失われたその衝撃で、教授もジローも、呆然とするしかなかった。
そして恐らくは、メリッサも呆然としていたのだろうが――まだ彼女の方が若干、冷静になるのは早かった。
「……な、内線! 緊急連絡!」
メリッサは机に腰や腿をぶつけながらも、壁のコンソールに駆け寄り、警備に通報した。
「すぐにこの区画の出入り口を封鎖して! 早く! 産業スパイよ!」
最先端技術の粋を集めたこのP―FARMでは、警備網もそれなりに厳重かつ、精密に制御されたものとなっている。
そのため、通報からわずか2秒後に、教授たちのいる研究モジュールは、他の区画との通行を遮断された。
もしメリッサが叫んだように、産業スパイがいたとして、彼ないし彼女が何らかの方法でシャーレを盗み出し、逃走したとしても、閉鎖までは20秒とかかっていない。
産業スパイがたとえ流体生物や超能力者のような存在であろうと、この区画に閉じ込められたことになる。
しかし教授たちにとっても、大きな問題がもう一つ、発生した。
あまりにも大慌てで閉鎖が要請されたために、警備側はうっかり、準最大級の警備システムを発動させてしまっていたのだ。
これはバイオハザードなど、最悪の事態を想定して設定されたシステムであり、一度発動すると、最低30時間はその解除ができない、と言う厄介なものだった。
そのため、スパイが本当にいたとしても、あと30時間は警備員たちが中に入れない。
「『準』って、じゃあ、最大級だったらどうなってたんだ?」
「決まってるでしょ? 区画ごと焼却、完全殺菌よ」
「うわあ……。焼かれないだけマシかぁ」
「どちらにせよ、30時間が経過するまでは、スパイと一緒に閉じ込められると言うわけか。うむむ……」
教授もジローたちも、一様に頭を抱えるしかなかった。
幸いにも食品の研究所だけあって、食料にも事欠かない。
教授たちは研究室にこもり、封鎖が解除されるのを待つことにした。
「とは言え、本当にあの時、スパイがいたんでしょうか?
確かに僕たちはガムに気を取られてはいましたが、シャーレはすぐ側の机にあったわけですから、誰かが近付いていたら、気が付かないはずはない。
でもあの時、僕たちの他には誰も室内にはいませんでしたし、扉が開けられたような気配も無かった。
一体どうやって、盗めたと言うんでしょうか……?」
「分からん。しかしどこを探しても、シャーレも、中のガムも、見つからんのじゃ。
となれば、誰かが持って行ったとしか考えられんじゃろう?」
「うーん……」
と、そこでメリッサが、何かに気付いたような顔をした。
「……あの、もしかしたら、なんですが」
「なんだね、言ってみたまえ」
「わたしたちがこの部屋に入ってから、今のこの時点まで、誰も出入りしてませんよね。ドアは一度も開いてませんから」
「そうじゃな」
「……え、ちょっと待ってよ、じゃあ」
ジローはメリッサの言わんとすることを察し、身を震わせた。
「出入りしてないってことは――まだ、この研究室にいるって言うのか?」
「……かも知れない」
メリッサは額に汗を浮かべながら、小さくうなずいた。
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ジローの言葉に、サンライズ教授は笑い出した。
「何をバカな、ちゃんとほれ、そこに……」
ニヤニヤしながら机を指差した教授は、そこで硬直する。
「……そこに、……あれ?」
笑顔から一転、教授の顔は真っ青になる。
ジローも、そしてメリッサも、同様に顔を青ざめさせた。
その場の空気、そして彼らの体温の低下速度たるや、かつて極低温調理法を研究する際に一行が訪れた低温惑星、ゲレルでの日没時を思わせるほどだった。
「ど、どっ、どこじゃ!? どこに!?」
教授はがばっと床にはいつくばり、机の下やケージの裏、孵卵器と孵卵器の間など、老体とは思えない速さで点検し――そして唐突に、またも硬直する。
「……ないっ!」
教授の発した悲痛な叫びに、ジローはへたり込んでしまった。
「そ、そんな……!? 一体、なぜ? どうして……?」
世紀の大発明、夢の食品が失われたその衝撃で、教授もジローも、呆然とするしかなかった。
そして恐らくは、メリッサも呆然としていたのだろうが――まだ彼女の方が若干、冷静になるのは早かった。
「……な、内線! 緊急連絡!」
メリッサは机に腰や腿をぶつけながらも、壁のコンソールに駆け寄り、警備に通報した。
「すぐにこの区画の出入り口を封鎖して! 早く! 産業スパイよ!」
最先端技術の粋を集めたこのP―FARMでは、警備網もそれなりに厳重かつ、精密に制御されたものとなっている。
そのため、通報からわずか2秒後に、教授たちのいる研究モジュールは、他の区画との通行を遮断された。
もしメリッサが叫んだように、産業スパイがいたとして、彼ないし彼女が何らかの方法でシャーレを盗み出し、逃走したとしても、閉鎖までは20秒とかかっていない。
産業スパイがたとえ流体生物や超能力者のような存在であろうと、この区画に閉じ込められたことになる。
しかし教授たちにとっても、大きな問題がもう一つ、発生した。
あまりにも大慌てで閉鎖が要請されたために、警備側はうっかり、準最大級の警備システムを発動させてしまっていたのだ。
これはバイオハザードなど、最悪の事態を想定して設定されたシステムであり、一度発動すると、最低30時間はその解除ができない、と言う厄介なものだった。
そのため、スパイが本当にいたとしても、あと30時間は警備員たちが中に入れない。
「『準』って、じゃあ、最大級だったらどうなってたんだ?」
「決まってるでしょ? 区画ごと焼却、完全殺菌よ」
「うわあ……。焼かれないだけマシかぁ」
「どちらにせよ、30時間が経過するまでは、スパイと一緒に閉じ込められると言うわけか。うむむ……」
教授もジローたちも、一様に頭を抱えるしかなかった。
幸いにも食品の研究所だけあって、食料にも事欠かない。
教授たちは研究室にこもり、封鎖が解除されるのを待つことにした。
「とは言え、本当にあの時、スパイがいたんでしょうか?
確かに僕たちはガムに気を取られてはいましたが、シャーレはすぐ側の机にあったわけですから、誰かが近付いていたら、気が付かないはずはない。
でもあの時、僕たちの他には誰も室内にはいませんでしたし、扉が開けられたような気配も無かった。
一体どうやって、盗めたと言うんでしょうか……?」
「分からん。しかしどこを探しても、シャーレも、中のガムも、見つからんのじゃ。
となれば、誰かが持って行ったとしか考えられんじゃろう?」
「うーん……」
と、そこでメリッサが、何かに気付いたような顔をした。
「……あの、もしかしたら、なんですが」
「なんだね、言ってみたまえ」
「わたしたちがこの部屋に入ってから、今のこの時点まで、誰も出入りしてませんよね。ドアは一度も開いてませんから」
「そうじゃな」
「……え、ちょっと待ってよ、じゃあ」
ジローはメリッサの言わんとすることを察し、身を震わせた。
「出入りしてないってことは――まだ、この研究室にいるって言うのか?」
「……かも知れない」
メリッサは額に汗を浮かべながら、小さくうなずいた。
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とりあえず書いてみました。
次回は矢端想さんになるのかな……?
決定はポールさんに委ねます。よろしくお願いします。
とりあえず書いてみました。
次回は矢端想さんになるのかな……?
決定はポールさんに委ねます。よろしくお願いします。
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~ Comment ~
ありがとうございます
ありがとうございます~!!
とりあえずいただいて、うちのブログに貼らせていただきます~!!(問題があるようでしたらおっしゃってください。いえ、ひとまとまりにしておいたほうが読みやすいかと思うので)
続きは矢端想さんに頼もうと思います。
ほかに参加希望者もいないみたいですから、わたしが第4回を書いて、また黄輪さん→矢端想さん→わたし、の全七回で終わらせようと思います。
それではいただいて参ります。
とりあえずいただいて、うちのブログに貼らせていただきます~!!(問題があるようでしたらおっしゃってください。いえ、ひとまとまりにしておいたほうが読みやすいかと思うので)
続きは矢端想さんに頼もうと思います。
ほかに参加希望者もいないみたいですから、わたしが第4回を書いて、また黄輪さん→矢端想さん→わたし、の全七回で終わらせようと思います。
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続きがどうなるか、楽しみですね。
よろしくお願いします。