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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・序事記 1

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    フォコの話、343話目。
    新時代を迎える街。

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    1.
     ゴールドコースト、そして金火狐財団の整備は、着々と進んでいた。
    「案外早く、港の改築も終わりそうですな」
    「せやなぁ」
     フォコはジャンニとイヴォラを伴い、順調に工事が進む港を視察していた。
    「この分やと、今月末くらいまでには終わるやろ。そうなると次は、市街地の開発になるけども」
    「ええ。何か問題でも?」
    「いや、金は足りてるんかなと思て」
    「まあ確かに、カツカツになる可能性はありますな。港開発で既に、2億ほど溶けてますし」
    「大丈夫なんか?」
     そう尋ねたジャンニに対し、フォコはにっこりと笑う。
    「必要最低限の開発は進められる計算にはなっとります。後は港湾使用料や地代、事業税なんかを取っていけば、4~5年くらいで投資額は回収でけると考えてます。
     それに回収でける頃には、今以上に発展しとるでしょうし、開発予算もザクザク貯まっとるでしょうな。その循環で、いくらでも開発していけるはずですわ」
    「そう上手く行くかなぁ……」
    「既に央中の、小中規模の商会や組合から、ここで商売させてほしいっちゅう申し出が入ってきてますし、ここから一番近い外地域の南海からも、貿易について話し合いたいっちゅう連絡が入ってます。
     そろそろ北方と西方からも打診が来るでしょうし、それが来次第、貿易したいっちゅう皆さんをここに集めて、今後の貿易体制を整える会議でもしようかな、と」
    「どんどん大事になってきよるなぁ。でもまあ、そこら辺が全部うまいこと行ったら、確かに莫大な金が入ってきよるな」
    「ええ。そうなるよう、これから一層の尽力が必要になりますな」
    「せやなぁ。……ホンマに、金銀だけ掘ってた時代は終わりそうやな」
    「時代は変わるもんですわ。特に今は、中央政府の動向も不安定ですし、その反面、央中経済はウチを中心に、急激な回復傾向にありますからな。両者の力関係が逆転しても、まったくおかしくない。
     間違いなくこの数年で、歴史は大きく動くでしょう」
    「新時代の到来、か。そう考えると」
     ジャンニはニヤリと笑い、フォコを軽く小突いた。
    「ワクワクするわ、なぁ?」
    「ええ、これからが新時代ですよ、金火狐一族の」
     そう言って、フォコは手を引いていたイヴォラに笑いかける。
    「見ときやー、もしかしたら僕の次にこの街を動かすのん、君になるかも知れへんのやし」
    「うん」
     にっこりと笑い返したイヴォラに対し、ジャンニは複雑そうな表情を浮かべた。
    「あー、その、ニコル。ちょと、あっちの方で、二人で話せえへんか?」
    「え? ……ああ、じゃあイヴォラ。ここで待っててや」
    「はーい」

     海の方を向き、港の淵に座るイヴォラの後姿をチラチラと確認しつつ、フォコは尋ねる。
    「なんでしょ、話っちゅうのんは?」
    「お前、……あの子を、次の総帥にするつもりなんか?」
     ジャンニに神妙な顔でそう問われ、フォコは彼の本意――ひいては金火狐一族の総意であろう本意を察した。
    「猫獣人やから、もしかしたら本当は僕の子供や無いんではないか、と?」
    「おいおい、それは飛躍しす、……あー、いや。確かにそう言う意見も無いでは無いけども、俺が言いたいんは、……まあ、近いっちゃ近いねん。
     先代こそ――無理矢理に近いねんけども――短耳やったけども、それ以外の、今までの総帥は皆、『狐』やったからなぁ。
     もしお前が将来、次の総帥をあの子にしよかって言い出したら、かなり揉めると思うねん」
    「せやけど大叔父さん。三代目のレオン1世のお母さんは、猫獣人でしたやろ?
     それを考えたら、『猫』がなってもそんな、血筋的には問題無いと思うんですけども」
    「うーん……。まあ、そう言うてしもたらそうやねんけども」
    「それにまあ、あの子にもあの子でやりたいことはあるでしょうし、今から将来を決めてまうのんは気が早いにも程があるっちゅうもんです。
     僕はそう思てますし、何が何でもあの子を次期総帥に、と言う気持ちはありません」
    「さっき言うてたんと違うやんか、それ。お前さっき、イヴォラがこの街を動かすかも知れへんみたいなん、言うてたやん」
    「あくまで『かも』、仮定の話ですわ。そら、なってほしいなって気持ちはありますけども、あの子が別のことしたいっちゅうたら、そっちを応援するつもりですわ。
     まあ、かと言って今から経営の勉強さして、無駄になるっちゅうことは無いでしょうからな。こうして今みたいに、あちこちを見させて勉強さしとくんも、あの子のためになるかな、と思うてのことです」
    「……ん、まあ。何を言うたかて、お前が総帥、ウチらのトップやからな。
     先代ん時みたいな、よほど無茶苦茶なことにならん限りは、俺は口出しする気も無いし、皆もせえへんやろう」
    「……ふむ」
     と、フォコはジャンニの回答で、あるアイデアを閃いた。
    「それは、あんまりよろしくないかも知れませんな」
    「え?」
    「僕が総帥やからって、皆は追従して全部任せっぱなし、では八代目、九代目と同じことですわ。
     ご意見番みたいな部門を、財団に設けましょか」
    「ふむ……、ええかもな」
    「仮に、監査局とでもしときましょか。総帥の行動を監査する局、っちゅうことで。
     良ければ大叔父さん、そこの局長とかどうです?」
    「俺が?」
    「今までも先代に噛みついたり、僕にも色々、意見をぶつけてきてくれますし。適任かと」
    「まあ、ええけど」

     このアイデアはその日のうちに実施され、フォコの要望通り、ジャンニが局長に就任した。
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