黄輪雑貨本店 新館


    「火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・序事記 2

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    フォコの話、344話目。
    優れた才と、それを継ぐ者。

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    2.
     313年の4月末時点で、金火狐財団は次の6部門で構成されることとなった。

     まず、財団に関する全権限を有し、各局の行動を統括する「総帥」。
     前述の、総帥の決定と行動を監査し、それが著しく財団の利益と各局間の公正を損ねるものであれば糾弾、および弾劾決議を執り行える権利を持つ「監査局」。
     そしてゴールドコーストの市政を担う「市政局」。この局のトップである市長職には現在フォコが就いているが、現在行っている都市開発が一段落したところで、別の者にこの地位を譲渡することを、フォコは約束している。
     続いて市内の商工業を管理する「産業管理局」。ここにはゴールドマン商会も含まれており、これもまた、現時点ではフォコが局長を兼任している。
     また、財団創設時から議題に挙げられていた港湾の管理に加え、陸路からの出入りも併せて管理する「入出管理局」も設けている。
     そして最後に、市内の治安維持の確保のため、この双月暦4世紀の時代では類を見ない規模の警察組織、「公安局」を設けることを、フォコは提案した。

    「公安局、……なぁ」
     提案した当初、この部門の存在は、あまり重要視されてはいなかった。
    「ここ、どうやって稼ぐとこなん?」
    「稼ぎません。言うてみれば、他の部門が稼ぐのを邪魔された時、それを追い払う役目を持っとります」
    「稼がへんねやったら、いらんのとちゃうん?」
     否定的な意見に対し、フォコは強く持論を押し通す。
    「それは違います。
     僕の経験談になりますけども、かつてクラフトランド近郊のオークボックスっちゅう街は、カジノを中心とする歓楽街で、一見にぎわってはおりました。
     しかしその実、治安は最悪。巷には金を失ったチンピラ同然の人間があふれ返り、街をとことん汚しとりました。そのためにカジノ客、カジノ関係者以外の人間はことごとく街を去り、地場産業は壊滅。
     また一方で、カジノによって加熱するギャンブル需要のために職人が吸い寄せられ、クラフトランドをはじめとする、周辺地域の生産力は激減。はっきり言うて、オークボックスは央中北部における寄生虫、疫病神も同然の街でした。
     今現在は、適切な都市開発の推進によって、まともと言える状態にはなっとりますけども、これと同じことがこのゴールドコーストで起こったら、どれほどの損害になるか。折角整え直した港も、商工業街も全部、機能不全に陥ってしもたら、どれほどバカらしいことか」
    「ふむ……」
    「あと南海においても、警察組織も倫理意識も無い地域が多く、そこは例外なく悪の巣窟、ならず者国家と化しとりました。
     僕自身、誘拐された上に奴隷として人身売買の市場に連れ去られたこともあります。これを真っ当な商売やと思うような人間は、よもやこの中にはおりませんやろな?」
    「そら、まあ」
    「流石にドン引きするわ」
    「まともな労働環境であれば三十数年、かつ、健全に経済を支える存在にあるはずの人間がさらわれて奴隷化し、たったの数年で使い潰された挙句に、稼ぎは全部奴隷主のもの、なんちゅうのんは、正常な経済を著しく損ねる。そう、先代の時代とまったく同じことになる。
     他にも例を挙げれば枚挙に暇がありませんけども、ともかくこのように、まともに治安維持のでけへん街、地域は非常に不経済であり、発展が著しく滞ります。
     僕の目標はズバリ、ゴールドコーストを世界一の街にすることです。一々、犯罪やらろくでもない商売やらで発展を止めることは、絶対にしたくないんですわ」
    「なるほどなぁ」
    「一理あると言えばあるか」
     フォコの説得が功を奏し、この部門も設立されることとなった。

     会議の後、フォコはまた、ジャンニと二人きりで話をしていた。
    「しかしニコル、お前の提案はよぉ通るなぁ。今日の公安局の話なんて、じーさんらが納得すると思わへんかったけども」
    「ま、あっちこっち回って貯め込んだ経験がありますからな。伊達に世界を旅してませんわ」
    「……やっぱりお前が総帥になって、正解やったな。お前やったら本当に、この街を世界一大きくでけるかもなぁ」
    「はは、頑張ります」
     ニコニコと嬉しそうに酒を飲むフォコを眺めながら、ジャンニは彼の姿に、漠然とした不安を感じていた。
    (こいつが自分で言うてたことやけど――金火狐が一度大きくなったのに、結局しぼんでしもた、その理由。初代が広げた商会を、二代目が支えきれへんかったからや、っちゅうことやったよな。
     こいつも、就任して早々、どデカい構想をバンバン打ち出して、財団を作ると言いよった。多分、それは上手く行くやろう。こいつが総帥である限り、その試みは多分、全部上手く行くやろうな。
     ……でも、その後がどうなるか。確かにこいつの娘も賢しそうな雰囲気はありよるけど、『猫』やからなぁ。金火狐の、大多数の反感を買う可能性もある。恐らく、総帥にはなられへんやろな。
     それでもし、こいつ並の商才を持った奴が現れへんかったら、……大きくなった財団と街は、維持できるんやろか)
     ジャンニは財団の未来を思いつつ、フォコと同じように酒を呷った。
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