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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・序事記 4

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    フォコの話、346話目。
    直接対決の兆し。

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    4.
     フォコが財団を設立し、ゴールドコーストの開発を始めたのと、ほぼ同時期。
     清家姉弟を連れて央南に戻ったランドは、中央政府の官僚たちと連絡を取り、保留されたままの案件を消化しようとしていた。

     元々ランドたち焔軍側は、清家の本拠である白京を陥落させた後、そのまま清家の家長、即ち清王朝の国王へその諸権利を譲渡してもらうことを要求し、それがまとまり次第、中央政府に正式に、焔軍の統領、焔玄蔵が名代職に就くことを認可してもらう、と計画を立てており、結果としてはその直前、陥落させるところまでは順調に進んでいたのだ。
     しかし清王朝を牛耳っていた商人、サザリー・エールの策略により、後継者である清家姉弟、清双葉、清三守は西方へと連れ去られてしまい、清王朝から焔軍へと、名代職の譲渡を行うことが法律上、できなくなっていた。

     その問題をすべて解消し、ランドは意気揚々と、名代職譲渡の認可と、今後の国交関係を協議する旨を送ったのだが――。



    「……要請は、却下となりました」
    「何故だ? お主の言った問題はすべて、解決したはずではないか!」
     白京、王城の小議事堂。
     声を荒げ、そう問いかけた玄蔵に、ランドは肩をすくめつつ、経緯を説明した。
    「何が何でも、清王朝が以前のまま統治すべきだと、天帝陛下がごねたとか。……ほとんど駄々に近いですね。難癖を付けていると言ってもいい。
     とにかく焔軍が統治することは、絶対に認めない。名代職の譲渡も認可しない。もしも断行するつもりならば、我々は実力行使も辞さない、と」
    「話が違うではないか! 天帝であれど、先人の取り決めを覆すことは無い、お主はそう言ったはずだろう!?」
    「ええ、確かに。しかし……、何と言うか。当代の帝は余程、我が強いようで」
    「どう言う意味だ?」
    「軍務大臣だったカーチス・バーミー卿が更迭、および処刑されたことはご存知ですか?」
    「いや、知らん。大臣ともあろう者が処刑とは、一体どんな罪を犯したのだ?」
    「彼が推し進めていたのは、結果から言えば世界各地の戦乱を激化させるような政策でした。
     名目こそ『世界再平定のための積極的介入』でしたが、その実、やっていたことは武器や弾薬、資金の供給と、自分に与する人間や団体、組織が行った、世界平定憲法や世界戦時法などの法規・法律に触れる行為に対する、超法規的容認。
     つまり、彼らがどんなに世界各地で罪を重ねようと、『絶対に捕まえたり罰したりしない』と大臣が自ら認めると言う、平和・平定につながるようなものでは到底、無かったんです」
    「外道に過ぎるな。まこと、下衆の所業だ……!」
    「ええ、仰る通り。で、これらの計画には、世界中を自分たちの元に平伏せ、隷属させると言うとんでもない本意があったわけですが、それは僕や、僕の友人たちの働きにより、阻止することができました。
     このおぞましい計画は完全に頓挫し、ついに天帝もバーミー卿の本意に気付いたわけです。そして、そのためにバーミー卿は逮捕・更迭され、果てには処刑されてしまったわけです。
     ついでに言えば、バーミー卿に加担していた大商人、ケネス・エンターゲート氏もゴールドマン商会総帥の座を追われて失踪し、バーミー卿の一味は一掃されています」
    「ふむ、どうにか騒動は収まったわけか。
     ……ん? この話が要請の却下と、どう関わるのだ?」
     尋ねた玄蔵に、ランドは説明を続ける。
    「我々も一味と思われているからですよ。世界全域に渡る騒乱を起こした、その一味と」
    「何故に?」
    「元々、清王朝は中央政府側であり、それに対立する者として我々が現れました。その上で、清王朝の叛意が露見するなどして、名代職の権利剥奪、そこから停止に変わり、戦争になった、……と言う流れがあったわけです。
     ここで天帝の気に障ったのが、エンターゲート氏の口添えにより、名代職の権利停止を、凍結と言う処分にしたことです」
    「つまり、バーミー一派の説得によって己の決定を覆されたことを、帝は根に持っていたと言うわけか」
    「そうなりますね。……で、何をどう思ったのか、天帝はこの戦争自体、清王朝と我々の仕組んだ茶番劇だと決め付けたわけです」
    「茶番!? 何ともまあ、ふざけたことを!」
    「まあ、そう思うのも無理は無い。結果的に我々は清王朝の後継者を抱き込み、その権利が譲渡された、と伝えたわけですから」
    「そんなことを茶番の証拠だ、などと思われてもなぁ……」
     苦い顔をする玄蔵に、ランドもうなずくしかない。
    「ええ。……しかし向こうの元首は頑として動かないのは確実ですし、周囲からの諌言も最早、耳には入らない。
     間違いなく中央軍は、我々に牙をむいてくるでしょうね」
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