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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・封臣記 2

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    フォコの話、349話目。
    中央軍の無敵艦隊。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
     勅命が発せられた、この遠征の陣頭指揮に当たったのは、新しい軍務大臣に就任した狼獣人の軍人、ジョージ・コーネリアス卿である。
     本来ならば大将である彼が自ら戦場に赴くことなど、極めて異例なことなのだが、今回は勅命を受けてのことであるし、何より中央政府の威信を背負った戦いである。万が一にも負けることの許されない戦いであるため、彼が自ら志願し、出向くこととなったのだ。
     コーネリアス卿の意気込みが伝播し、全軍の士気は非常に高いものとなった。

     彼らはまず、央北西部の港、ウエストポートを出航し、そのまま南下した後、一旦央中の名代職、バイエル家の本拠地である港町、オリーブポートに寄港し、休養と軍事物資の供給を行った後、央南の白京まで侵攻する予定となっていた。
     威信をかけた遠征と言うことで、総勢40隻を超える大艦隊が差し向けられることとなったが、統率には特に混乱もなく、艦隊はオリーブポートまでの道のりを消化した。

     問題が起こったのは、このオリーブポートを出航して3日後のことだった。



    「この時点で、まだカーテンロック南岬が見えないか。……船足が大分、遅いようだ」
     艦橋に立ち、船の向う方角を眺めていたコーネリアス卿は、これまでより鈍い艦の動きが気にかかっていた。
    「少し、物資を積み過ぎたかも知れないな」
     そうつぶやいた彼に、側近が肩をすくめて見せる。
    「まあ、今回は何が何でも勝たなければならない戦いですし」
    「……そうだな。むしろ、圧倒的な物量を持って然るべきか。多少の鈍足は、目をつぶるとするか」
     そう話しているうち、彼らの視界の左端に、港町の姿が映った。
    「あれは?」
    「ええと……、イエローコーストですね。確かゴールドマン商会の本拠があるとか」
    「ゴールドマン商会……、前任に取り入っていたケネス・エンターゲート氏の商会か」
    「いえ、今年に入ってエンターゲート氏は失脚したそうです。
     現在は確か、ニコル・ゴールドマン3世とか言う狐獣人が、総帥に就いているとか」
    「そうか。……であれば、既にバーミー一派ではない、と言うことか?」
    「そうなりますが、現総帥は央中天帝教の熱心な信者であり、我々と敵対関係にあります」
    「むう……。応援は、求められそうにはないな。我が艦隊の前線基地にできるかと思ったのだが」
    「難しいでしょう。協力は期待できません。寄港も許可しないでしょうし」
    「まあ、下手に近寄らない限り、計画に支障は無かろう。無視して進むぞ」
     コーネリアス卿は気を引き締め直し、このまま進行を続けることを命じた。

     と、その時だった。
     ドン、と言うくぐもった音と共に艦橋ががくんと揺れ、卿はよろける。
    「な、何だ!?」
     とっさに机の端をつかみ、その場は倒れずに済む。だがつかんだ机が、つつ……、と自分の方に向かって滑り出す。
    「わ、わ、わっ……」
     慌てて机から離れ、卿は壁に身を寄せた。
    「どうなっている、艦長!? 状況を確認しろ!」
     動揺しつつも、卿は艦長に命じ、艦内各部に呼びかけさせた。
    《爆発です! 積んでいた火薬が爆発し、武器庫が吹き飛びました!》
    《船体右後部に穴が! 浸水しています!》
    《浸水、抑えられません! 至急、退避命令を!》
     混乱を聞いた卿の顔から、ざあっと血の気が引いていく。
    「なっ、……艦長! 対応しろ!」
    「は、はい!」
     艦長は大慌てで艦内のあちこちに指示を出し、沈没しないよう対処している。
     と――卿たちの乗る艦の右後方からも、ドンと言う爆発音が響き渡った。
    「どう言うことだ!?」
    「分かりません! 敵の姿はありませんし、侵入された様子も……!」
     そうこうしているうちに、40隻超の軍艦すべてから、火の手が上がり始めた。

     4時間後――。
    「ゼェ、ゼェ……、げほっ」
     ずぶ濡れになり、ゴールドコーストの港に漂着したコーネリアス卿は、海水を吐きながら、呆然とつぶやいた。
    「こ、こんな、ことが……。
     わ、我らの無敵艦隊が、……まさか、た、戦う前に、……沈む、とはっ」



     この「事故」により、中央軍の威信をかけた大艦隊は、戦闘に入ることなく全滅した。
     また、生き残った兵士およびコーネリアス卿は、心神耗弱のためゴールドコーストに逗留することを要請。フォコはこれを受諾した。
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