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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・封臣記 7

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    フォコの話、354話目。
    大国崩壊の序曲。

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    7.
     コーネリアス卿はしばらく黙っていたが、不意に杯を振り上げ、酒を一気に飲み込んだ。
    「……げほ、げほっ」
    「閣下、大丈夫ですか?」
    「ああ、……げほっ、大丈夫だ。
     極めて苦渋の決断と言わざるを得ない。私は生粋の、央北天帝教信者だ。愚君といえども、現人神と崇められる陛下には、忠誠を誓っている。それに軍務大臣と言う、極めて重大な責任を担う要職にも就いている。
     君の要求を呑めば、私は今世紀最大の裏切り者となるだろうな」
    「それは無いですわ。そんなん言うたら、閣下と僕、それぞれの先代の方が、最悪の裏切り者ですて」
    「はは……、それもそうか。……ニコル卿、要求を呑むにあたって、いくつか願いを聞いてもらいたい」
    「何なりと」
    「陛下に弓引く以上、央北天帝教の教徒ではいられない。明日にでも、央中天帝教に改宗したい。できるだろうか?」
    「ええ、手配しときましょ」
    「それと、クロスセントラルに残した家族が気がかりだ。私が裏切ったことを知れば、陛下は決して家族を生かそうとしないだろう」
    「それも手配しましょ。安全にこちらに来させるよう、すぐに手を回しときます」
    「それから、街にいる兵士たちも皆、こちらに住まわせてはもらえないだろうか。帰すわけにもいかんし、そうなれば職を失うことになるからな」
    「勿論。既に皆さんの方には話をしとるところです」
     それを聞いて、卿は目を丸くした。
    「そ、そうなのか?」
    「勅令で来たとは言え、沈没騒ぎで士気がだだ下がりでしたからな。向こうの方から、『こっちに住まわしてもらえへんやろか』と」
    「……なんだ、まったく。それならそうと、言ってくれればいいのに」
    「流石に『大臣』には言われへんでしょう。……ま、明日なら皆、気軽に報告してくるでしょうな」
    「明日、か。……大変な夜明けが来るな」
    「もう夜も更けてきましたし、酒も大分回ってきました。今日はもう、ゆっくりお休みください」
    「そうさせてもらおう」



     コーネリアス卿の協力により、フォコたちの側は強力なアドバンテージを2つ手に入れることができた。

     一つは、中央軍を事実上、足止めしたこと。央南攻略に傾注し、大艦隊を差し向けて侵攻している(と中央軍側は思っている)ため、他地域への攻略は後回しとなっている。
     逆の見方をすれば、差し当たって央中や央南に、中央軍が攻めてくることは無い。フォコたちからすれば、何の妨害も受けることなく、悠々と攻撃の準備を整えることが可能になったのである。

     そしてもう一つは、中央軍の陣容が丸裸になったこと。中央軍のトップ、軍務大臣のコーネリアス卿からの情報提供により、現在の中央軍の兵力および装備はすべて把握できた。
     それによれば中央軍の兵力は約10万、うち2万5千が央南制圧に乗り出し、その7割がゴールドコーストに納められている。
     また、残りの7万5千も、その約半数が中央政府の首都、クロスセントラルとその近郊の防衛に当たっており、残る4万弱は央北の各主要都市に散らばっているとのことだった。
    (なお双月暦4世紀のこの時代、中央軍には陸軍・海軍の区別は無い。兵士のほとんどが、水陸両用に扱われている)

     情報を伝え終えたところで、コーネリアス卿は改めて、フォコにこう尋ねた。
    「ニコル卿、これで私の方から伝えることは以上だ。
     そろそろ、君の方の『機密情報』を教えてもらいたい」
    「ええ。……と言いたいところですが、この話をするには、僕より適任がいてます」
    「と言うと?」
    「この大反乱、中央政府攻略を計画した当人。ランド・ファスタ卿です」
    「なんと、ファスタ卿が首謀者だったのか……! なるほど、中央から逐電した後、行方知れずと聞いてはいたが、まさかこんなことを考えていたとは」
    「彼なりに正義・大義とは何かを考えた結果ですわ。
     そろそろ、こちらに着く頃です」
     と、そう伝えたところで――。
    「待たせたな」
     部屋の隅に、いきなり大火とランドが現れた。
    「おわっ!? ……な、何だこれは、ニコル卿!? いきなり人が……!」
    「あの黒い人が、そう言う術を持ってはるんですわ。
     さて、と。早速ですけども、作戦会議の方、しましょか」
     フォコはにっこりと笑いながら、部屋のカーテンを引いた。

    火紅狐・封臣記 終
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