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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・黒蓮記 4

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    フォコの話、363話目。
    悪魔に屈した神の軍。

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    4.
     クロスセントラルは、環状に形成された都市である。
     まず中心部に、中央政府の拠点であり、同時に天帝一族が住まう城としての機能を備えている、ドミニオン城。
     それを護る形で政務院や軍務院など、中央政府の全執務院がそれぞれ厚い壁でできた回廊でつながれており、この間に内門が設けられている。
     これが最終防衛ラインとなるが、さらにそれを囲む形で市街地が形成され、これを包み込む形で第二防衛ラインの境界である城壁と、小外門が築かれている。
     そしてその外には、「将来、都市が拡大した際の開発用地」と、「万が一敵が攻めてきた際の交戦地」としての役割を担う緑地が置かれている。
     それらすべてを囲む形でさらに城壁が築かれ、これが第一防衛ラインとなっている。

     ランドたちはこの第一ラインを既に突破し、緑地帯を突き進んでいた。



     突然の敵襲で混乱し、戦意を失いかけていた中央軍も、何とか指揮系統をまとめ直したらしい。
     東小外門の前には兵士が隊列を組み、陣取っていた。
    「集まり直すことは、想定の範囲内だ。流石にここを落とされたら、彼らは路頭に迷うだろうからね」
    「強行突破します?」
     そう尋ねたフォコに、ランドは首を横に振る。
    「いや、このまま乱暴に押し入るような真似はしたくない。それをやってしまうと、市街地に被害が及ぶ。それじゃ、あの街に住む人たちにとって、僕たちはただのならず者になってしまう。
     僕たちの行動はあくまでも、これまで弾圧されてきた央中天帝教が、先に突き付けた要求を無視した天帝に対して武力蜂起し、報復して見せた、……と言う筋書きの上で、行ったことだ。その報復行為はあくまで『中央政府に』であり、民間人にその責任を負わせるのは筋違いだ。
     だからあの布陣も、できれば被害を最小限に留める形で崩したい。と言うわけでタイカ」
     ランドは背後に立っていた大火に、こう命じた。
    「彼らにあまり当たらないように、魔術を掃射してほしい。10分か、15分ほど」
    「……承知した」
     大火は刀を抜き払い、ランドたちの陣から単騎で離れようとする。
    「あ、タイカ」
     と、それをランドが呼び止めた。
    「……なんだ?」
    「刀、新しいのができたんだね」
    「ああ」
     大火はニヤ、と唇の端をわずかに歪ませた。
    「名付けて『妖艶刀 雪月花』――なかなかの出来だ。お前の両親と妹には、感謝している」
    「どうも」
     それだけ交わし、大火は前に進んだ。

     単騎でやって来た大火に、中央軍の兵士たちは若干、戸惑っていた。
    「なん……だ?」
    「交渉に来たのか?」
    「どうする?」
     ざわざわと騒ぎ出す兵士たちを、背後に構えていた将校たちは一喝する。
    「私語厳禁! 黙って警戒態勢を続けろ!」
    「りょ、了解!」
     敵陣が静まったところで、大火は刀を振り上げた。
    「……『五月雨』」
     振り下ろした途端、数条の剣閃が敵陣に向かって飛んでいく。
     ランドに命じられた通り、その剣閃は布陣を突っ切る形で門まで進み、一瞬で破壊したが、兵士は衝撃波で吹き飛ばされただけに留まる。
     だがそれでも、兵士たちを慌てさせ、行動を起こさせるには十分だった。
    「こ、攻撃だ! 応戦、応戦せよ!」
    「はっ、はい!」
     しかしこれも、ランドの計算通りであり――。
    「無血で、か。……面倒なことばかり言ってくれるものだ」
     大火は立て続けに「飛ぶ剣閃」や風の術を放ち、兵士を弾き返す。
     死なない程度に威力を抑えたため、兵士たちはただ転がされ、城壁に叩き付けられるだけに留まるものの、一様に愕然とした表情を浮かべていた。
    「な……、なんだ、今の!?」
    「嘘だろ、一千や二千いる俺たちが……」
    「……一人も、あいつに近付けない」
     多数押し寄せてくる兵士を、大火はまるでボールを投げるかのように、一人残らず城壁へと弾いていく。
     攻撃はおろか、接近することすらできず、次第に兵士たちの士気は乱れていく。
    「て、撤収、撤収だ!」
    「攻撃が通らない! 何もできない!」
    「退却させてくれーッ!」
     散々に無力感を味わった兵士たちは武器を捨て、小外門の中へとなだれ込んでいった。
    「その辺でいい、タイカ。それくらいで十分だよ」
    「そうか」
     大火は刀を納め、陣の中へと戻ってきた。
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