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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・闘焔記 1

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    フォコの話、379話目。
    放置され続けた独立問題。

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    1.
     北方で起こった反乱を鎮め、大火統治による中央政府の権威と威光は、改めて拡大の傾向を示していた。
     しかし一方で、既に大火による粛清から1年余りが経過しており、大臣級・閣僚級の者たちの中には、大火に対する恐怖が鈍くなり始めた者もいた。
    「カツミ様。央北における統治は、十分になされたものと、我々は考えております。そろそろ央中および央南に、我々の威光を今一度、知らしめては如何でしょうか?」
     この大臣のように、あたかも自分が中央政府の権力を握っているかのような発言をにじませる者も少なくなかったが、大火にとっては――。
    (もし俺がここで降りようものなら、こいつらは途端に図に乗るだろうな)
     未だ「システム」維持に足る人材を見つけていない大火は、進言してきた大臣に対し、否定的な態度を執った。
    「なるほど、一理ある。だが俺の目の届かぬ場所はまだ多い。そこで俺にとって不利益なことが計画されていない、とは断言できない。
     まだしばらくは、内政を重視しようと考えている」
    「ですが、カツミ様。つい先日にも北方へ向かわれたわけですし、そろそろ外交にも目を向けられては如何でしょうか? 央南でも、動きがあるとのことですし」
    「動き?」
     尋ねた大火に、大臣は得意満面に説明しようとする。
    「央南の名代問題です。元々の名代一族であった清家を、焔軍なる者たちが……」「その件に関しては、十分に知っている。俺自身が関わっていたからな」「あ、そ、それは勿論、存じておりますが」
     反論されつつも、大臣は説得を続けようとする。
    「しかし前政府でも、この問題は決着していない、と言うか、オーヴェル帝が反故にしようと艦隊を差し向けた次第で……」
    「ふむ」
    「その艦隊も、実は『黒い蓮』に寝返ったと言いますし、……ああ、いや、これもご存じのことであるとは存じますが、……ともかくこの問題については、中央政府側からは実質的に、何の対処もできておらず、この数年間、保留の状態にあります。
     カツミ様、あなたの代になっても未だ、こちらからは通達も、何もしていない状態です。このまま放っておかれては、央南は我々の意向を無視し、独断専横を始めることは確実。
     最悪の場合、離反や独立、あるいは前政府で危惧された、央南全土を挙げての宣戦布告もあり得るかと」
     と、こうまくし立てられた大火に、ふと、ある考えがよぎった。
    「……」
    「カツミ様?」
    「……ああ、聞いている。
     なるほど。言われてみれば確かに、放任にしては少しばかり、度が過ぎたな。
     一つ、『通信』を送ってみるか。その上で必要があれば、出向いてみよう」
    「ええ、そう、そうです! 是非とも!」
     あからさまな大臣の態度に、大火は釘を刺しておいた。
    「言っておくが、単騎と言う条件であれば、俺は今すぐにでも、一瞬で、央南へ向かうことができる」
    「え?」
    「逆に見れば、一瞬で向こうから戻ることも可能だと言うことだ。それを忘れるなよ」
    「……はい。肝に銘じておきます。決してその、鬼の居ぬ間にとか、そう言うことはありませんので、……あ、いえ、鬼と言うのは言葉の綾でして、他意は……」
     もごもごと弁解する大臣に背を向け、大火はその場を離れた。
    「では、準備をしてくる。もし出向くことになれば、不在の間は頼んでおくぞ」
    「……あ、はい。いってらっしゃいませ」



     一方、央南の白京では――。
    「結局のところ、あの戦い以降は、中央政府からは何も言ってこない、……と言うことですね」
    「左様にございます、殿下」
     玉座に座り、玄蔵から話を聞いた双葉は、落ち着いた口調で問いかける。
    「既に、克氏が中央政府を掌握してから2年近くになると言うのに、我々に対してはこれまで通りに清家が統治せよとも、焔家に権限を渡せとも、何も言ってこない。
     ここまでで、わたしの認識に誤りはありますか、閣下?」
    「いいえ、ございません。……殿下、何故突然、そのような話をされるのです?」
    「わたしも央南での戦の時のように、幼いままではありません。齢18、世界に『目』を向ければ、この歳で一国の主になる者もいると言いますし」
     双葉はわざと、目を隠している布に指を当てて見せる。
    「は、はは……、ええ、そうですな」
    「……わたしの冗談、お気に召さなかったかしら」
    「あ、いえ。そんなことは」
    「蓮蔵さんは笑ってくれましたけどね」
    「え?」
    「こちらの話です。
     わたしが言いたいのは、その気になれば盲人のわたしも、政に携わることができる、と言うことです。目は見えずとも、耳は聞こえますし、頭も鈍くありませんから」
    「まあ、確かに不可能ではございますまい。とは言え、今も実質的に、我々がこの白京を占領しているのですから、我々をないがしろにはしていただきたくは無い」
    「存じております。……そこで閣下。わたしと、もう一人から、ある提案があります」
    「ある提案?」
     玄蔵が聞き返したところで、王の間の戸を叩く者が現れた。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    小説、拝読いたしました。
    日常の単調さ、ちょっとした温かみ、そしてそれらがざっと音を立てて引く衝撃。
    そういったものが感じられました。
    続き、頑張ってください。

    こんばんわ! 

    私も昨日から小説を書き始めました。

    書いてみるとやっぱり難しいですね・・・。
    作業時間は2時間~3時間くらいでした。

    初めて書いたのでちゃんと小説として成り立っているか不安ですが、頑張って書いてみました!

    これからも色々勉強させていただきます。
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