黄輪雑貨本店 新館


    「火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・闘焔記 2

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    フォコの話、380話目。
    焔統領、驚愕す。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
    「誰だ?」
     聞き返した玄蔵に、若い男の声が答える。
    「僕です」
    「お前か。どうした?」
     す、と戸を開き、一人の青年が入ってきた。
     玄蔵の長男、焔蓮蔵である。
    「双葉殿下が言っていた『もう一人』と言うのは、僕のことです」
    「うん?」
    「そこからは、わたしが」
     双葉は蓮蔵に手招きしつつ、こう提案した。
    「わたしの家系、つまり清家と焔家とが親戚関係になれば、話は早いのでは、と言うことです」
    「なぬ?」
    「名代職は同一の家系に与えられる、と言うのが、確か世界的な法で定まっていたとのことですし、それならば一番揉めずに済むのは、わたしがそのまま女王となること。
     とは言え、それでは焔家の立つ瀬は無い。それなら、わたしの婿に焔家のどなたかがなっていただければ、話はまとまるのでは、と。そう考えたのです。
     わたしと、蓮蔵さんが」
    「……つ、つまり? 蓮蔵、お前?」
    「はい」
     蓮蔵は深く頭を下げ、こう返した。
    「双葉殿下、……いえ、双葉とは、実はかなり前から深い仲になっておりまして」
    「それで、思い付いたのです。両家にとって一番話がまとまるのは、『これ』ではないか、と」
     話を聞き終えた玄蔵は、ぽかんとする他なかった。
    「……なんと。……気付かなんだ」
    「すみません、父さん」
     再度頭を下げた息子に、玄蔵はゴツ、と軽く拳骨を見舞った。
    「この馬鹿者っ。よりによってやんごとなきこの方を、口説いたと言うのか!」
    「いえ。わたしの方からです」
     しれっと双葉に返され、玄蔵はもう一度唖然とする。
    「色々とお世話をして下さるうちに、つい」
    「つい、……では済まないでしょう! まったく、ご自分の身分をどう思ってらっしゃるのか!」
    「ええ。これが数年前の政治事情であれば、『つい』では済まなかったでしょう。
     でも焔軍がこの都を占領し、名代問題も片付いていない今であれば、これは逆に、『良い話』ではないでしょうか」
    「……うーむ」
     玄蔵は頭やヒゲをクシャクシャとかきながら、その場をウロウロと回り始めた。
    「うーむ」
    「父さん、あの」
    「うーむ」
    「本当に、その」
    「うーむ」
     蓮蔵が何を言っても、玄蔵の耳に入ってこない。
     と、双葉が立ち上がり、玄蔵に声をかけた。
    「お義父さま」
    「うー、……えっ、な、義父ですと!?」
     ようやく立ち止まった玄蔵に、双葉は続けてしれっとこう言ってのける。
    「そうでしょう? わたしと蓮蔵さんが結婚すれば、あなたはわたしの義父です」
    「……いや、それはそうでありますが」
    「それとも反対なされますか? 他にもっといい案がおありであれば、諦めます」
    「い、いやいや! そんな! ……あー」
     玄蔵は深々とうなずき、ため息交じりにこう返した。
    「……そうだな。これ以上の良案は、かのファスタ卿とて思い付くまい。……いやむしろ、あの朴念仁では、この案には至るまいよ。
     相分かった、早速婚儀の準備を進めるとしようか」
    「ありがとうございます、閣下」
     にこっと笑いかけた双葉に、玄蔵も苦笑いを返すしかなかった。

     と、そこにまた、王の間の戸を叩く者が現れた。
    「焔統領、中央政府の克氏より『通信』が入っております」
    「……なに?」
     つい先程まで和やかだった雰囲気が、一瞬にしてぴりっと緊張した。
    「こちらです」
     伝令から受け取った「頭巾」を取り、玄蔵は応答する。
    「……焔軍統領、焔玄蔵だ」
    《久しぶりだな、玄蔵》
    「おう。……要件は何だ、克」
    《この数年保留としていた件を、処理しようと思い立ったので、な。
     中央政府からの要求としては、元通りに名代として清家を立て、これまで通りに歳入額の年15%を『寄進』、ではなく『上納』するように、とのことだ》
    「15? ……ちと、待て」
     玄蔵は伝令に、清王朝の左大臣だった尾形卿を呼ぶよう指示しつつ、大火と話を続ける。
    「拙者は正直に言えば、政治や経済にはさして明るくは無い。無いが、それはちと、高過ぎるように思うのだが」
    《確かに戦前、清王朝の叛意が明らかになる前は、1.5~2%を前後していたそうだ。
     しかし中央政府側の意見としては、『前中央政府が倒れる原因の一端には、清王朝が引き起こした央南の混乱も加味される。その責任を、金銭で支払う形で取ってほしい』とのことだ》
    「……先程から聞くに、克よ。お主の意見では無く、中央政府の大臣共の意見ではないのか、それは?」
    《その通りだ。俺個人としては、こんな課税などどうでもいい。はっきり言ってしまえば、無くとも十分に運営可能だから、な。不必要に国庫を肥やす名目にしか思えん》
    「ならば何故、お主はそれを拙者らに通達、提案する? お主の地位と性情なら、己の気に食わん意見なぞ、いくらでも撥ね付けられよう」
    《……玄蔵。大臣を呼んだようだが、そいつに聞かせるなよ、ここからの話は》
    「うん……?」
     少しして、尾形卿が玄蔵の元へとやって来たが、丁度そこで、玄蔵は「通信」を切ってしまった。
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