「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第7部
火紅狐・大渉記 2
フォコの話、387話目。
湖のほとりで。
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2.
金火狐財団主導で提唱された央中再開発計画は、当初は懐疑的に見る者も多かったが、ゴールドコーストでの利益が拡大し、好景気が周辺地域に波及している事実もあり、結局、多くの賛同者が財団の下へと集まった。
財団側は賛同者と連携を組み、正式に開発を進めることを決定。そして316年の初め、ついに央中再開発計画は始動された。
フォコの希望と、開発計画における効率的な利益の創出とを両立する形で、開発の第一段階はゴールドコーストとクラフトランドと言う二大商家を直結するルートの構築が採択された。
そのルートの途上――央中最大の湖であるフォルピア湖のほとりで、フォコとランニャ、そしてイヴォラは久々に揃い、話をしていた。
「えらい遅くなってしもて、……ゴメンな、ホンマ」
「ううん、いいんだ」
横に座るイヴォラの頭を撫でつつ、ランニャは嬉しそうに笑っている。
「だってあたし、子供の頃から数えて、もう15、6年は待ってたんだよ。婚約から2年くらい待たされたって、平気さ」
「う、……その」
「あ、ヘンな意味じゃないよ! ……いや、やっぱりそーゆー意味は入ってるかな。
ずっとずーっと、待ち焦がれてたんだから、……ね?」
「うん、……ごめん」
「……でも」
ランニャはイヴォラの頭をクシャクシャと撫でながら、フォコに笑いかけた。
「もうすぐ、その思いも報われるんだ。君と一緒になれるなら、こうして待つ時間もワクワクできるんだから、いいよ」
「……いや、もーそろそろ、落ち着けるはずやし。それが終わったら、ホンマに挙げるから、結婚式」
「うん。楽しみにしてる。……母さんもさ、張り切っちゃって。もうあたしのドレス、10着はあるんだよ。まったく、どんだけデカい式を挙げるつもりなんだかな」
「はは……」
と――二人の様子を見ていたイヴォラが、こんなことを言った。
「お父さん、ランニャ。……なんでさっきから、湖の方、チラチラ見てはるの? いいフンイキやのに、何や変にソワソワしてはる」
「えっ」「あっ」
娘に看破され、二人は揃ってそっぽを向く。
その反応を見たイヴォラは、続けて質問してくる。
「ここに来たんも、もしかして、二人で会うことやなくて、あの島を見るんが目的やない?」
「う……」
「見てたら分かるよ、二人で何回も何回も、あっち見てこっち見てしとるもん。あの島になんか、あるん?」
「……それはちょっとな、今はまだ、話せへんねん」
フォコは苦い顔をしながら席を立ち、イヴォラの前で膝立ちになった。
「もうちょっと後……、君が大人になる頃には、話したげるわ。今はな、『ある人』との約束もあるし、あの湖について、あんまりうわさ、されたくないんよ」
「……うん、分かった。きっと教えてな。きっとやで?」
「うん、約束や」
フォコはイヴォラの手を握り、にこっと笑いかけた。
その一方で、ランニャは湖の中央に浮かぶ、ゴールドコーストの半分程度の面積のある島に目をやりながら、ぽつりとつぶやいた。
「約束、か。……『あいつ』、果たしてくれるのかな?」
「そら、『あの人』は守るわ。それは間違いない」
「……だろーね」
イヴォラが聞きたそうにしていたが、フォコが目を向けると、彼女はぷい、と横を向いてしまった。
「……言えへんのでしょ?」
「あー、……うん。これもな、今言うてしまうとご破算になってしまうからな、何もかも」
「やったら、……聞かへんとくわ」
「悪いな、ホンマ。君にナイショばっかりしてしもて」
「でもいつか、教えてくれるんやったら、ええもん」
父娘のやり取りを聞いていたランニャが、ぷっと吹き出した。
「……なんよ?」
「フォコ、君って本っ当に、……、や、なんでもない」
「何やねんな」
「何でも無いって。……まあ、アレだ。
イヴォラは、フォコに似てきたね。話し方とか、仕草とか。そっくりだよ」
「そう? そんなに似てきとるかな?」
「うん、うん」
顔を向けたイヴォラに、ランニャはクスクスと笑いながらうなずいて見せた。
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湖のほとりで。
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金火狐財団主導で提唱された央中再開発計画は、当初は懐疑的に見る者も多かったが、ゴールドコーストでの利益が拡大し、好景気が周辺地域に波及している事実もあり、結局、多くの賛同者が財団の下へと集まった。
財団側は賛同者と連携を組み、正式に開発を進めることを決定。そして316年の初め、ついに央中再開発計画は始動された。
フォコの希望と、開発計画における効率的な利益の創出とを両立する形で、開発の第一段階はゴールドコーストとクラフトランドと言う二大商家を直結するルートの構築が採択された。
そのルートの途上――央中最大の湖であるフォルピア湖のほとりで、フォコとランニャ、そしてイヴォラは久々に揃い、話をしていた。
「えらい遅くなってしもて、……ゴメンな、ホンマ」
「ううん、いいんだ」
横に座るイヴォラの頭を撫でつつ、ランニャは嬉しそうに笑っている。
「だってあたし、子供の頃から数えて、もう15、6年は待ってたんだよ。婚約から2年くらい待たされたって、平気さ」
「う、……その」
「あ、ヘンな意味じゃないよ! ……いや、やっぱりそーゆー意味は入ってるかな。
ずっとずーっと、待ち焦がれてたんだから、……ね?」
「うん、……ごめん」
「……でも」
ランニャはイヴォラの頭をクシャクシャと撫でながら、フォコに笑いかけた。
「もうすぐ、その思いも報われるんだ。君と一緒になれるなら、こうして待つ時間もワクワクできるんだから、いいよ」
「……いや、もーそろそろ、落ち着けるはずやし。それが終わったら、ホンマに挙げるから、結婚式」
「うん。楽しみにしてる。……母さんもさ、張り切っちゃって。もうあたしのドレス、10着はあるんだよ。まったく、どんだけデカい式を挙げるつもりなんだかな」
「はは……」
と――二人の様子を見ていたイヴォラが、こんなことを言った。
「お父さん、ランニャ。……なんでさっきから、湖の方、チラチラ見てはるの? いいフンイキやのに、何や変にソワソワしてはる」
「えっ」「あっ」
娘に看破され、二人は揃ってそっぽを向く。
その反応を見たイヴォラは、続けて質問してくる。
「ここに来たんも、もしかして、二人で会うことやなくて、あの島を見るんが目的やない?」
「う……」
「見てたら分かるよ、二人で何回も何回も、あっち見てこっち見てしとるもん。あの島になんか、あるん?」
「……それはちょっとな、今はまだ、話せへんねん」
フォコは苦い顔をしながら席を立ち、イヴォラの前で膝立ちになった。
「もうちょっと後……、君が大人になる頃には、話したげるわ。今はな、『ある人』との約束もあるし、あの湖について、あんまりうわさ、されたくないんよ」
「……うん、分かった。きっと教えてな。きっとやで?」
「うん、約束や」
フォコはイヴォラの手を握り、にこっと笑いかけた。
その一方で、ランニャは湖の中央に浮かぶ、ゴールドコーストの半分程度の面積のある島に目をやりながら、ぽつりとつぶやいた。
「約束、か。……『あいつ』、果たしてくれるのかな?」
「そら、『あの人』は守るわ。それは間違いない」
「……だろーね」
イヴォラが聞きたそうにしていたが、フォコが目を向けると、彼女はぷい、と横を向いてしまった。
「……言えへんのでしょ?」
「あー、……うん。これもな、今言うてしまうとご破算になってしまうからな、何もかも」
「やったら、……聞かへんとくわ」
「悪いな、ホンマ。君にナイショばっかりしてしもて」
「でもいつか、教えてくれるんやったら、ええもん」
父娘のやり取りを聞いていたランニャが、ぷっと吹き出した。
「……なんよ?」
「フォコ、君って本っ当に、……、や、なんでもない」
「何やねんな」
「何でも無いって。……まあ、アレだ。
イヴォラは、フォコに似てきたね。話し方とか、仕草とか。そっくりだよ」
「そう? そんなに似てきとるかな?」
「うん、うん」
顔を向けたイヴォラに、ランニャはクスクスと笑いながらうなずいて見せた。
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