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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・大渉記 11

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    フォコの話、396話目。
    世界最高の商人になった男の、記念日。

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    11.
     巨額の利権が絡む「大交渉」を、央中側が圧倒的に有利な条件で締結させたことで、フォコの名声はさらに高まった。
    「最早君に、戦いを挑む奴なぞいないだろう、な」
     笑いながらそう囃したルピアに、フォコもクスクスと笑って返す。
    「でしょうな。よほどのことが無い限り、中央政府も、その他どこの国も、僕を狙おうとはせえへんでしょう。
     今回の『偽クラム』と言う見せ手以上に、僕には相当の切り札が用意されとる、と世論は勝手に騒ぎ立てとりますし、それでわざわざケンカ売ろうっちゅうのんは、余程のアホです。
     進行中の央中再開発計画が一段落すれば、金火狐財団の地位は、少なくとも僕の生きとる間は万全・盤石でしょうな」
    「30歳を前にして、実質的に世界最強、無敵の男になったわけか。笑いが止まらんだろう?」
    「正直に言えば、……止まりませんわ。あははは……」
     ひとしきり笑ったところで、フォコはすい、と小箱をルピアに差し出した。
    「うん?」
    「僕がバイエル卿から買った、大公爵位の証明となる勲章です。僕には不要のものですし、ルピアさんに差し上げます」
    「あぁ? 私もいらんぞ、そんなもん。これ以上偉くなるつもりは無い」
    「いやいや、受け取ってください。これを僕が持ってしまうと、対外的に、僕を止める人間がいなくなってしまいますから」
    「なるほど。自分の膝元に監査局を置く、君らしいな。……ま、そう言うことならもらってやるよ。
     それじゃ、ま、付けてくれ」
     そう言って軽く屈み、胸を反らすルピアに、フォコは小箱から勲章を取り出し、付けてやった。
    「似合うてますで、ルピアさん。これで今後は、『ネール大公』ですな」
    「はは……、耳慣れないな」
     そう返し、狼耳をぱた、と震わせた後、ルピアは真面目な顔になった。
    「カツミ君のことだが、聞いたか?」
    「ええ。流石に中央政府の官僚たちと折り合いが悪くなって、政治全般から身を引くことを強く要請され、受諾したとか。
     今後は単なる代表、名誉職に退き、中央政府の政治とは関わらないようにする、……と本人から連絡が来ました」
    「うちの方にも来た。ただ、金はキッチリもらうと言っていたな」
    「ええ。『特別顧問料』とか何とか名目を付けて、年間歳入の1%を取るとか。恐らく、4億か5億かにはなりますな。
     ま、これでも中央政府にとっては、痛手と言えば痛手でしょうけども……」
    「これ以上場を引っ掻き回されるよりはマシ、と判断したんだろうな。とは言え政治嫌いのカツミ君にとっちゃ、むしろ逆にいい待遇になったわけだ。
     ……まったくフォコ、君って奴は、とんでもない男だ。あの『黒い悪魔』、カツミ君でさえ、君を頼ってくるほどだものな」
    「はは、それはコレ、……ですよ」
     その一言を、フォコは唇に手を当てる素振りで返す。
    「おう、そうだったな。『あの時』の約束だった。ま、世間話はこれくらいにして、だ。
     そろそろ行こうか、お婿さん」
    「はい。よろしくお願いします、お姑さん」
    「ははは……」
     二人は並んで金火狐屋敷を後にし、街の広場に設けられている式場へと赴いた。

     この日は皆が待ちに待った、フォコとランニャとの、結婚式の開催日である。



     央中の儀礼上、本来ならば、フォコと共に式場まで歩くのは、彼の両親のどちらかとなるのだが、そのどちらもが亡くなっているため、こうしてルピアを伴うことになった。
    「君の両親が悔しがるだろうな」
    「ルピアさんやったら、両親も納得してくれはりますよ」
    「そうかな」
    「そうですよ」
     式場までの途上、フォコには惜しみない賛辞が浴びせられる。
    「おめでとうございます、総帥!」
    「お幸せに!」
     フォコはそれに、できる限り手を振って応える。
    「式場に着くまでに、手ぇ攣るかも知れませんな」
    「あはは……、だらしないなぁ」
    「まあ、頑張りますわ」
     どうにか手が攣らないうちに、二人は式場に到着する。
    「ほれ、お嫁さんがお待ちかねだぞ。行って来い」
    「ええ。……ありがとうございます」
     フォコはルピアに一礼し、続いて式場に集う皆に一礼し、それから広場の中央まで張られた絨毯の上を歩く。
    「……」
     広場の中央には、純白の花嫁衣装に身を包んだ、ランニャの姿があった。
    「……お待たせ」
    「……えへへ」
     二人は照れ笑いを浮かべながら並び立ち、央中天帝教の神父から洗礼を受けた。

     と――フォコは神父の背後、広場の外れに、ある男を見つけた。
    (素直に来てくれればええのに。……ま、また揉める火種を作ってもしゃあない、ちゅうことやろな)
     ランニャも彼に気付いたらしく、無言でフォコに目配せしてきた。
    (あの人なりに祝ってくれる、ちゅうことや。黙っとき)
    (そだね)
    「それでは新郎、ニコル・フォコ・ゴールドマン」
     そのうちに、洗礼の儀式が終わり、神父が声をかけてくる。
    「あなたは新婦、ランニャ・ネールを妻とし、生涯愛し続けることを誓いますか?」
    「誓います」
    「では新婦、ランニャ・ネール。あなたはしんろ……」「あ、ちっ、誓います!」
     神父が言い終わらないうちに答えてしまい、ランニャは「あぅ」と声を漏らし、赤面する。
     会場はどっと、笑いに包まれた。
    「ちょ、落ち着きって、もう、ランニャ、あはは……」
     フォコも笑い転げながら、もう一度、チラ、と広場の外れを見る。
     そこには既に、あの真っ黒な男――克大火の姿は無かった。

    火紅狐・大渉記 終
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