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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・掲露記 1

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    フォコの話、397話目。
    大火からの密かな要請。

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    1.
     話は双月暦314年――克大火クーデターの直後に戻る。

    (……ただではやられへんで)
     央北からの即刻退去を命じられたフォコは、密かに大火への報復を企てていた。
     幸いにもドミニオン城内の混乱は非常に激しく、フォコはその間隙を突き、財務院の地下にある造幣局に、容易に忍び込むことができた。
    (今後、何らかの形で中央と――タイカさんが率いる新たな中央政府と、戦うことになるかも知れへん。
     とは言え、戦争っちゅうことになれば、僕らには勝ち目は無い。タイカさんを敵に回してしまえば、どうもこうもならんのは明白やからな。
     となれば、神でも悪魔でも、どうにもでけへん領域へ攻撃を仕掛ける、あるいは、仕掛けると脅して、後に起こるであろう交渉を、有利に運ぶように仕込んでおく。
     それが、これや)
     厳重な扉をいくつも抜け――ちなみに鍵は、職員を買収して入手した――造幣局の奥、クラム原版のある金庫室に入る。
    (天帝教の神様でも、『黒い悪魔』でも、どうにも操作できひんもの。それはいくらでもある。例えば季節を一瞬で、冬から夏に変えること。空に浮かぶ月を、3つにすること。
     そして僕にどうとでもできて、向こうにはどうにもでけへんようなこと、それは――お金の操作や。
     かつて北方で起こった、あの恐ろしいインフレ。あれを故意に起こせば、流石の中央政府でも骨抜きになる。今、うちが持っとる貴金属の量であれば、軽くて3倍くらいには、クラム安を引き起こすことが可能や。その上、鉛や亜鉛なんかの卑金属で水増しすれば、10倍にも20倍にもでける。
     その一方で、央中は央中で、別に通貨を作ってしまえばええんや。そう、まさにそれは、僕が北方で起こした『奇跡』――神や悪魔にもでけへんかったことをやってしまえば、……僕の完全勝利で終わる)
     フォコはニヤ、と笑い、その原版を手に取る。
    (もし央中で独自に通貨を造るとなったら、名前は何にしよかな。
     エリザ(Elisa)さんとかルピア(Lupia)さんとか、……後は母さん(Idea)の名前から取って、エル(EIL)とかどないやろな? あ、でもこれやと、イール(Eil)さんと名前被るなぁ。北方の読み方やけど)
     そんなことを夢想していたところで――。
    「……誰や」
     フォコは背後に、気配を感じた。
    「俺だ」
     振り向かないうちに、返事が返って来る。
     その声に、フォコは戦慄した。
    「……タイカさん、ですか」
     フォコは恐る恐る振り向き、大火と向き合った。
    「どうしてここへ?」
    「お前がここに入るのを見た。密かに話をしたかったのだが、好都合だったな」
    「……僕を咎めるとか、そう言う話では無さそうですな」
    「咎める? 何故だ?」
    「中央政府の主権さんが、国力の要であるお金の元を盗まれて、黙ってくれる、と?」
    「ああ」
     大火は両手を広げ、攻撃の意思が無いことを示した。
    「そんなことは、どうでもいい」
    「どうでもええ?」
    「それよりも、だ。……先に謝っておこう。強制退去など命じて、すまなかったな」
    「え、……え?」
     頭を下げる大火に、フォコは動揺してしまう。
     何故ならこの、仏頂面の真っ黒な男が、下手に出ることなど無いと思っていたからである。
    「い、いや、まあ、頭に来たっちゅうのんはありますけど、そこまででは」
    「俺にも思惑があってのことだ。あの混乱を取り急ぎ鎮圧するには、あれしかないと判じて、な」
    「……まあ、そうですな。城の中では軍人さんが威張り散らし、外では市民の暴動。その引き金になったんは、僕ら『黒い蓮』ですからな。
     三方収めるには、僕らの撤退は不可欠でしょうし」
    「理解してくれて、助かる。
     話を戻すが、お前とルピアに、頼みたいことがある。退去後、時間を作れないか?」
    「そら、いくらでも。……ちゅうことは、この件は見逃してくれる、と」
    「勿論。俺にとっては、重ねて言うが、さして重要なことではない」
    「主権さんでも?」
    「俺が欲しいのは、情報と資金だ。政治組織の利権など、他に適任がいればくれてやる」
    「……タイカさん?」
     話の本意が見えず、フォコはこう尋ねた。
    「あなたは一体、何がしたいんです?」
    「……またいずれ、話す。ルピアとお前とが、集まった時に」
     大火はそう言って、その場から消えた。
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